唯「折角思い出したのに訳が分からなくなってきたよ」

律「ん?」

唯「どうしてあずにゃんはりっちゃんは亡くなったなんて言ったんだろう」

律「そーれはな。私が梓と勝負してるんだよ」

唯「勝負?」

律「そ!唯はさっき私が書いた論文、胎児の夢は見ただろ?」

唯「うん」

律「それの心理遺伝の仕組みは分かるか?」

唯「え、えっと記憶しているのが細胞だとしたら、親とかの心理が遺伝されるっていうことだよね?」

律「だとしたら、じゃなくて細胞なんだよ。まぁそこの窓からあの人を見てくれ」

唯「あの耕してる男の人?」

律「そう。あの人は元からあんなに働き者じゃなかったんだよ」

唯「確かに体は細いし無理にやってるようにしか思えないよ」

律「そう思うだろ?だけどあの人の先祖がまたさー」

律「名前は分からないだろうから言わないけど、物凄い働き者だったんだ」

律「一度畑を耕すと昼までずっと耕して昼になると食事をとる。食事をとったらまたすぐ畑を耕すんだ。日が沈むまで」

唯「えぇ?すごいねえ」

律「だろ?その人の記憶が遺伝してあの人も畑を耕しているってわけさ」

唯「じゃああの人の家系はみんな畑を耕していたの?」

律「いい質問だな」

律「そういうわけでもないんだよ」

律「心理は遺伝されているってだけで普通の人はその先祖の記憶なんてないんだよ」

律「唯、唯は先祖の記憶を思い出せ。って言われても思い出せないだろ?」

唯「う、うん」

律「だから普通の人はそう。だけど何かの拍子でその先祖の記憶が現代の人の意識と入れ替わってしまうんだよ」

唯「何かの拍子?」

律「それは人によって様々だけど、あの人の場合は鍬だな」

律「鍬を握ることによって自分の中で眠っている先祖の心理が起きて、その本人と移り変わったわけだよ」

律「それで、あの人は意識が先祖だから畑を耕し続けている。」

律「今名前と時代を聞いても先祖の名前と生きていた時代を答えるだろうね」

唯「ふーん」

唯「それがどう関係しているの?」

律「私は憂ちゃんが起こしたこの事件が心理遺伝の発作によるものじゃないかと疑っていたんだ」

唯「憂の先祖が憂と入れ替わってギターを振り回したの?」

律「私はそういうことだと思っている。」

律「そういう仮説を立てたわけだな」

唯「それがあずにゃんが嘘をつくことにどう関係してるの?」

律「梓にとっては迷惑なんだよ」

唯「迷惑?」

律「私は梓を良い奴だと思ってた。この事件は憂ちゃんのせいじゃないとあたしが証明することに納得してくれると思ってた」

律「だけど違ったんだ。梓はそんなことは無い。犯人は紛れも無く憂って言ったんだよ」

唯「つまりどういうことなの?」

律「簡単に説明すると、梓は法医学部の教授だろ?最初に犯人は憂と決めつけたんだ」

律「当然みんな賛成。だけど急に私が犯人は別にいるって言い出したもんだから教授の立場としてたまったもんじゃないよ」

律「梓の言っていることにヒビが入れば信用は落ちてしまうからね」

律「だから私としての目的は唯の目が覚めたら心理遺伝の発作の引き金になった何かをききたいんだ!」

唯「引き金ってさっきの人でいったら鍬なんだよね?」

律「そうだ。そういう詳しいことをきこうとしていたんだけど梓が邪魔ばっかしてきてな」

律「梓としては自分の推理が外れるなんて嫌だから、あたしと唯を会わせたくないんだよ」

律「スッキリ、憂が暴れた。という事実だけを言って欲しかったんだ」

唯「だから死んだって嘘をついたんだ」

律「そこで梓はお前が起きるなり、すぐに事件資料がある教授室に連れていこうと思ったわけだ」

律「だけど教授室にはでっかな私の写真があることを思い出したわけだ」

律「そこで梓は律の事を思い出していたらマズい、あの写真で思い出されたらたまったものじゃない」

律「そこで咄嗟に思いついたのが私の死。死んだことにすれば思い出しても死んだのかーで済むからな」

唯「ふーん」

唯「だけどあずにゃんはさすがに馬鹿なんじゃないの?だってりっちゃんは教授室にいたわけじゃん。いるのに死んだって嘘をつくなんて馬鹿にもほどがあるよ」

律「あー説明してなかったな」

律「私、ストーブの中に隠れてたんだよ」

律「そこで大学を出たフリをしてたんだよ」

律「梓からすればチャンスだろうな」

律「邪魔な律はいない。律に関する情報は資料から取り除いて唯の記憶を操作しよう。とな」

律「そこで唯を迎えに言ってる隙に私がストーブから出て、キチガイ地獄外道祭文と胎児の夢の論文を資料に混ぜてやった」

唯「な、なるほどー」

律「こうさせた後で私の印象つけとけば出てくる時楽だからな」

唯「つまりあずにゃんとりっちゃんは頭脳戦を繰り広げていたんだ…何か恐ろしいな」

律「さて、本番だぞ。事件に関することで何か思い出さないか?」


律「一応調べはついてるんだよ」

律「憂、唯の先祖は平沢彩子っていう人がいたんだ」

律「その人は姉を友達に取られる悔しさで暴れてしまったわけだね」

律「その心理が遺伝したと私は考えている」

唯「確かに筋書き通りだね」

唯「憂が嫉妬しただなんて」

律「ただ分からないことが一つあるんだ」

律「その引き金がなんだったかってことだよ」

律「最初はギー太かと思ったんだけど憂ちゃんが触ってないはずがないよな?」

唯「うん。憂は何度も1年の頃から触ってるよ」

律「とすると2年たってからっていうのは流石にあり得ない。何度も機会はあったはずだしな」

唯「なんなんだろうねぇ」

律「それが謎なんだよな」

律「それさえ分かれば憂ちゃんは無実になるぞ。また二人で暮らせるぞ」

唯「そっか、そうだよね。あんなに酷いことをしたって意識が乗っ取られていたんなら仕方が無いよね」

律「そういうことだ」

唯「でも、事件の時の記憶は殆ど無い」

律「頼む!思い出してくれ」

唯「フウンだけど少し疲れたかな」

律「まぁ、今日一日だけで凄い話きいたもんな、少し休んでもいいぞ」

唯「そうするよ。じゃあこのソファーで」

律「ああ」



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