律「おっしゃー! 出来た、出来たぜ!」バッ

唯「おぉ、すごいよ律っちゃん! さすが部長だよ!」

梓「ふぅ……。なんだかドッと疲れましたね」

唯「えー、なんであずにゃんが疲れるのさー。助手の助手なのに」

梓「誰のせいですか…誰の。あ、そういえば」

律「ん? なんだ梓」

梓「さっきから思ってたんですけど。
  このニッパーの刃の途中で空いてる穴ってなんなんですかね」ヒョイ

律「……………え?」

唯「あ、ホントだ。なんだろコレ? 不良品なのかな、ねぇ律っちゃん」

律「…………ぁ、うん?」

梓「んー…、でもホームセンターとかで売ってるのも
  全部こんな形だったような…。ねぇ律先輩」

律「そ…、そいやぁぁ!!」ブォン

ガシャコーン!

梓「ちょ、ちょっと、そんな乱暴に工具箱に仕舞わないで下さいよ!」

律「さ、さて。そんじゃさっそくファミコンやろーぜ! ファミコン!」

唯「そうだね! テレビ画面でカラーだなんて夢のようだよ!」

梓「まったくもう…。仕方ない先輩ですね」




唯「さてさて、いよいよですなぁ。あずにゃんや」ワキワキ

梓「なんですか、その妙な手の動きは?」

唯「ふふーん、ゲームウォッチで鍛えた腕がなってるんだよ!
  このファミコンっていうのはどういうゲームが入ってるの?」

梓「ファミコンに? そんなの入ってませんよ」

唯「…え。えぇっ!? ゲームが入ってないって!」

律「おいおい、待てよ梓! 私の苦労はなんだったんだよ!?」

唯「そうだよ! このコントローラーをポチポチするだけなの、
  ファコンコンって!」カチカチカチッ

梓「ちょっと落ち着いて下さいよ。……ぷっぷぷぅ…」

律「あ、また含み笑いしてるぞコイツ! 先輩をからかうんじゃねーよ!」

梓「ここが先輩たちのモノと違って、
  次世代機と言われる所以なんですよ」チッチッチ

唯「人差し指でチッチしてる!? あずにゃんなのにチッチしてる!」


梓「いいですか、良く聞いてくださいよ。
  ファミコンというのはこのファミコンカセットを差し替えて
  いろんなゲームが出来るんですよ」

唯・律「な、なんだってーー!!」ガッタタッ


唯「それじゃ、ファミコンとカセットさえあれば
  この先ずっと色んなゲームを楽しめるというの!?」

梓「まさに、その通りなんですよ。
  ここがゲームウォッチなどとは違う、最大の特徴なんです!」

律「す、すげぇぜ…ファミリーコンピューター…。
  こいつはいままでのゲームの全てを覆すんじゃないのか」

梓「そうです。オクトパスにパラシュート、
  オイルパニックなどと、全てのゲームがファミコンに集まるんですよ!」バッ

唯「こんなにあずにゃんが眩しく見えるなんて初めてだよ…」ゴクッ

梓「もっとも、値段も相応なんであんまり持ってないですけどね」ゴソゴソ

唯「いやいや、今はそれで十分だよぉ。律っちゃん何のゲームする?」

律「これは…。ギャラクシアンにゼビウス…?
  こ、コイツはゲーセンに置いてあるゲームじゃないか!」

梓「さすが律先輩、眼の付け所が鋭いですね。
  そう、ファミコンはアーケードのゲームを移植しているんです」

唯「お家でアーケードのゲームが出来るなんて…。
  すごすぎて言葉を失うよ、ファミリーコンピュータ!」

律「ど、どれにしようか!? マッピー…、
  いやエキイトバイクも捨てがたいぜ」ゴソゴソ

梓「ふふっふ。そんなに慌てなくてもファミコンは逃げませんよセンパイ」

唯「律っちゃん、コレにしようよ! スーパーマリオブラザーズ!」サッ

梓「それを選ぶとは…。やはり唯先輩、鋭い感をしていますね」



律「えっと…、ここのカバーを外して、カセットに接続っと」ガチャ

唯「んでんで!? どうするの。コレ? コレを押せばいいの!?」ガチャチャチャッ!

梓「ちょっと!
  そんな適当にボタンを押さないで下さいよ! 壊れちゃうでしょう!」ペチン

唯「はふぅん!」

律「唯の押してたのはリセットボタンだな。スイッチは隣のボタンだ」ペラペラ

唯「分かったよ律っちゃん! えいしゃおらぁー!」バンッ

梓「だから、そんなに乱暴にも押しちゃダメ! 精密機器なんですよ」

唯「いやーゴメン、ゴメン。ついついテンションが上がっちゃって」

律「……ん? なんだコレ」

唯「どうしたの律っちゃん! 始まった? まりおぶらざーず始まった!?」グイッ

律「なんか画面が一面緑色なんだけど…。どうなってんだ?」

唯「ありゃ。何だろうねコレ。これがまりおぶらざーず?
  むしろ白黒よりも一色減ってるじゃない、あずにゃん!」

梓「私に言われても…。
  おかしいな、純の家で遊んだ時はちゃんと表示されたのに…」オロオロ

律「ボタン押しても何も動かないぞ。
  あーずさー、どうすんの? 私達のだだ上がりになったテンションどうしてくれるの?」

梓「だから私に言わないで下さいってば。
  もしかして唯先輩がバンバン叩くから壊れたんじゃないですか?」ビッ

唯「えぇー?
  違うよ、あれは愛情がこもってたんだもん! 壊れるわけないじゃない!」

梓「そんな無機物に愛情なんか関係ないですよ! どうしてくれるんですか先輩!」

律「落ち着けよお前達…。お前の話だと、佐々木さんはちゃんとゲームできたんだろ?」

梓「鈴木ですよ。それがどうしたんですか?」

律「だったら電話して聞いてみなよ。原因が分かるかもしれないだろ」

唯「そ、そうか!? さすが律っちゃんだよ、ナイス提案だね!」



梓「そう…うん、動かないのよ、きっと唯センパイが。
  …え、違う? そうなの……うん」

唯「あ、あずにゃんまだ私の事疑ってるよ!」

律「コラ、電話中なんだから静かにしろよ」

梓「分かった、うん。ありがとね、それじゃ…」ピッ

唯「どうだったあずにゃん! 治るの?
  このファミリーコンピュータ治るの!?」グイッ

梓「えっとですね。どうやら、良く起きる現象らしいですよ。
  カードリッジと本体の接触が原因らしいです」

律「そっか、安心したぜ…。
  でも接触って言われても、私はちゃんと奥まで差し込んだぞ」

唯「きっとまだ足りないんだよ。私に任せて! えいしゃおらー!!」ババッバン!

梓「だーかーらー! そんな乱暴に扱ちゃだめって言ってるでしょ!」ペチン

唯「はぅん…!」

梓「おそらく原因は接触部に詰まったホコリが原因だと思います」

律「ホコリかぁ。なるほどな、
  ファミコンは梓の言う通りの精密機器。小さなホコリでも命取りになるって訳か」

唯「そっかー。だったら一回カセットを取って…っと!」ガチャコン!

梓「あーあー! ダメですよ強引に抜いちゃ、取り出すレバーがあるでしょ!」

唯「あ、ホントだ! ごめんよあずにゃぁん!」

梓「…なんだか、もう怒る気力もないですよ」ガックシ

律「そんな事じゃ軽音部としてやっていけないぞ。んで、唯そいつをどうするんだ」

唯「こうやって逆さまにして振るんだよ!」シャカシャカ

律「なるほど、これでホコリが落ちるわけだな」



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