唯「あーずにゃん、あーずにゃん! やったよ、やったよ!」ドバタバ

梓「なんですか先輩? 部室内で走らないで下さいよ」ゴソゴソ

唯「見てみて、ゲームウォッチで新記録が出たよ! すごいでしょ」バッ

梓「ゲームウォッチ? あの上から竹やりとか刀が振ってくる忍者のやつですか」

唯「そうそう。どう、褒めてもいいんだよあずにゃん!」

梓「んっふ……」

唯「あっ! いま鼻で笑ったね、ひどい娘だよ!」

梓「なんとでも言ってくださいよ。私はもうそんなモノに興味はないですから」

律「あぁ、よく言ったぜ梓。もう時代はゲームウォッチじゃないんだ」

唯「えぇ、律っちゃんまでそんな事言うの!?
  私の才能に嫉妬してるんじゃないの」

律「ちげーよ。これからは、このシュウォッチの時代だぜ!」バッ

唯「シュ…シュオッチ!? なんなのその黄色いゲームウォッチは!」

律「正式名称は、シューティングウォッチ。
  自分の連射能力を測ってくれるスグレモノなんだぜ!」

唯「ま、まさかあずにゃんも、このシュオッチを?」クルッ

梓「ぶっふ……ぷっぷー!」

律「あ! あきらかに馬鹿にした笑いするんじゃねーよ中野!」

梓「だ、だって、二人とも
  そんな白黒の液晶で満足してるんですもの…。ぷっぷー」

唯「いったいどういう事なの、あずにゃん!
  ゲームは白黒じゃないの」

律「そうだぜ。
  シュオッチを持ってないからって負け惜しみ言うんじゃねーよ」

梓「チッチッチ…。
  もうゲームウォッチもシュオッチも時代遅れなんですよ」

律「なんだと、言っていいことと悪い事があるぞ!
  ハドソンを侮辱するのかよ」

唯「そうだよ~。今謝ればあずにゃんにもやらせてあげるからさ」


梓「言ったでしょう時代遅れだって…。
  これからはこのファミリーコンピューターの時代なんですよ!」バッ

唯「ファ…ファミリーコンピューター!?」


律「なんだコレ? でっかいコントローラーが付いてるけど」

唯「これもゲームウォッチの一種なのかな? でも画面がないよ」

梓「画面なんか必要ありませんよ」

律「いや、必要だろうが。どうやってゲームをするんだよ」

梓「このファミコンは、テレビに接続してゲームをするんです!」バッ

唯「テ、テレビでゲームを!? あの大きな画面でゲームができるの!」

律「まじかよ…、こいつはすげぇぜ…」ゴクリ

梓「驚くのはまだですよ。
  しかも、同時発色数が25色。つまり色がつくんです!」

唯「カ、カラーでゲームを!?」ビクッ



梓「それじゃさっそく、このポータブルテレビに接続っと…」ゴソゴソ

唯「いいなぁ…、あずにゃんのゲームだけ。ずるいよね律っちゃん!」

律「べ、べつにぃ…。私は、このシュオッチがあるから関係ないぜ」

唯「えー。私もカラーでゲームがしたいよぉ」

梓「んーと…、こうやって、こうだから…。あれ?」ゴソゴソ

唯「どうしたのあずにゃん? 困ってるみたいだけど」

梓「上手くテレビと接続できないんですよ…。どうやるのかな」ゴソゴソ

唯「そんなケーブルじゃ、入るわけないじゃない。
  この四角いパーツを使うんじゃない?」

梓「四角の? あぁ、これならテレビ側に刺さりますね」ガチャ

唯「これで大丈夫かな。いっかいスイッチを入れてみてよ」

梓「いや、待ってくださいよ唯先輩。
  この四角いのは刺さりましたけど、ケーブルはどうすんですか?意味無いですよ」

唯「あ、そっか。でも、部品はこれくらいしか入ってないみたいだよ」ゴソゴソ

梓「えー…。どういうことなんですか、
  これじゃテレビとケーブルが接続できないじゃないですか!」

唯「わ、私に言われても困るよぅ」

律「ぷ……、ぷっぷーぷ!」

梓「あ、何ですかその可哀相な子を見るような笑い方は!」

律「いやーゴメンゴメン。お前らの様子が滑稽だったからね」ツヤツヤ

梓「なんですかその勝ち誇ったような顔は…。なんだか腹が立ちますね」

唯「ひどいよ律っちゃん。律っちゃんなら接続できるっていうの?」

律「あぁ、そりゃもちろんだぜ。こんなの朝飯前過ぎてヘソで茶を沸かせるぜ!」

梓「ほ、本当ですか!? だったら、やってくださいよ。早く!」

律「おーっと、ちょっと待つんだな。ひとつ条件がある」サッ

梓「条件ですか? なんなんですかそれは」

律「接続できたら、まず一番最初に私にやらせること。いいな」

梓「えー、なんですかソレ! ずっこいですよ、興味ないみたいな事言ってて」

律「だったらいいんだぜ。私はシュオッチで楽しんどくから」

梓「ぐっ…、なんて卑怯な。それでも部長ですか!」

唯「あずにゃん落ち着いて。
  ここは冷静になるんだよ。ここで断ったらファミコンできないんだよ」

梓「そ、それはそうですけど…」

唯「条件を飲めば、あずにゃんは私の後。つまり三番目にプレイできるんだからさ」

梓「ちょっと待って下さいよ!
  なにさりげなく割り込んでるんですか。私が二番です!」

唯「ちぇ~。さすが鋭いねあずにゃん」

律「おっし、それじゃ取引成立って事だな」

梓「仕方ないですねぇ。わかりましたよ」


律「んじゃ、準備しないとな。
  確か、倉庫の中にニッパーとかがあったっけか…」ゴソゴソ

梓「準備? なんでファミコンをするのにニッパーなんて必要なんですか」

律「少しは説明書でも読むんだな。ほれ、ここに書いてあるだろ」サッ

唯「RFスイッチにアンテナプラグを取り付ける…。うわっ、ナニコレ!」

梓「こんなの子供だけで出来る訳ないじゃないですか! 一体何を考えてるんですか」

唯「酷いよねぇ。でも律っちゃんが居てくれて助かったよ」

梓「そうですね、こういう事だけは器用ですから」

律「だけは余計だってーの。コレをこうやって。………あ!」ブッチ

梓「…………え?」



律「……あ、うん」グイグイ

梓「うん。じゃないですよ? 大丈夫なんですか。
  なにか今、やっちゃったなぁみたいな声出しませんでした?」

律「……ん? ばっかだなぁ、ぁずさ。そんな訳ないじゃぁ…」グイグイ

梓「え? 何ですか、
  語尾が小さすぎて聞き取れなかったんですけど、本当に大丈夫なんですか?」

律「……ぇぃ」プチッ

唯「…!? け、ケーブルがぁ!
  り、りっちゃぁん、ケーブルが切れっちゃたよ!!」ガダダダッ!

梓「な、なにやってんですか先輩!!
  ケーブルはこの一本しか無いんですよ!」グイッ

律「あぁ……、今は後悔してる」

梓「航海でも何でもして来て下さいよ! そんな事よりファミコンが!!」

律「……人生何が起きるか分かんねぇな」

唯「待って、あずにゃん! セロハンテープでくっつかないかな!」サッ

梓「無理に決まってるじゃないですか!
  ファミコンは精密機器なんですよ、子供の工作じゃないんですから!」

唯「で、でももしかしたら。……ってあれ?」

梓「どうしたんですか? 何か方法でも!」

唯「このケーブルって金太郎アメみたいになってるよ」

梓「金太郎アメ? どういう事ですか」

唯「間違って切断しちゃっても、
  切断した部分からまた保護ビニールを剥けばいいんだよ」

律「……!?」ガバッ

律「あ、あぁ! 実はそういう事だったんだぜ。
  つまり、お前らは私に踊らされただけなんだぜ!」ビッ

唯「そ、そうだったんだぜ!? てっきり騙されちゃったよ!」

梓「ハッタリに決まってるじゃないですか…。
  一番踊らされてたのは律先輩でしょ」

律「うるせー。こんなややっこしいケーブルにするからイケナイんだよ!
  なんで最初から接続されてないんだ」

梓「う~ん…、コスト削減とかそういう事なのかな?
  F1並のスペックを大衆車の価格で売ってるようなものですから」

唯「へー、そうなんだ。オモチャ会社も大変なんだね」

梓「まぁ、推測ですけど。それよりも今度は気をつけてくださいね。
  ちょっと短くなっちゃったんですから」

律「分かってるって。私のドラムさばきは知ってるだろ。
  こういう小手先の作業は朝飯前だぜ」

梓「思いっきり失敗してましたけど…」



唯「あずにゃぁーん! 汗っ!」グルッ

梓「え? あぁ、はいどうぞ。
  …というかこんな近いんだから聞こえますよ」サッ

唯「律っちゃん、大丈夫かな!
  頑張って、律っちゃんならきっと出来るよ!」フキフキ

律「し、集中力が乱れる…。唯ちょっと静かに…」サクサク

唯「ここからは、カッターで慎重にいったほうがいいかな!?」

律「あぁ、そうだな…。ニッパーだとまたケーブル事いっちまう…」サクッ

唯「あずにゃぁぁーん!! メスぅ!」グルッ

梓「だから、聞こえますってば……」サッ

律「後は、こうやって一周して…。ケーブルを剥がせば…」キュキュ

唯「あーずにゃぁぁんっ!! ピンセットぉおぉ!!」グルッ

梓「だ・か・ら、うるさいですっ! そんなのありませんよ!」



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