唯「あ、ムギちゃん今日も貰うね」

紬「うん」

和「唯は本当にムギの沢庵が好きね。はい、分度器」

紬「和ちゃんありがとう」

唯「うん。この絶妙な塩加減とポリポリ感、そして酸味の黄金比」ポリポリ

唯「やっぱりムギちゃんの眉毛は最高だよー」ポリポリ

紬「唯ちゃんは本当に美味しそうに食べてくれるから嬉しいわ」

唯「それにしてもムギちゃんの眉毛は本当に便利だね~。部活の時間にはまた生えてくるんだもん」

和「本当にどうなってるのかしら?」

紬「うふふふ」

紬「今日は洋梨のタルトを持ってきてみました」

律「うおっ、美味そうだな」

唯「その前にムギちゃんの沢庵もらうねー」ポリポリ

梓「あ、また唯先輩両方共たべて……。ムギ先輩、これ」

紬「梓ちゃん。分度器ありがとう」

澪「なぁ唯、ムギの眉毛ってそんなに美味いのか?」

唯「うん」

澪「そんなに美味しいのかぁ…。私も一度ぐらい食べてみたくなってきたな」

唯「駄目だよ。ムギちゃんの沢庵を食べていいのは私だけなんだから」

紬「もう唯ちゃんったら。そんなに求められたら恥ずかしいよ///」

律「唯のはただの食欲だろ……」


>>>数ヶ月後
唯「ムギちゃん。今日も沢庵ちょーだい」

紬「ごめんなさい。今日はちょっと調子が悪くて……」

唯「えーっ」

紬「本当にごめんなさい」

唯「うーん。でもムギちゃんがそう言うなら仕方ないね」

和「ムギが拒むなんて珍しいわね。体調でも悪いの?」

紬「心配してくれてありがとう。でも大丈夫。本当になんでもないから」

唯「ムギちゃんにだってそういう日はあるよね」

紬「……」


>次の日
唯「ムギちゃん、沢庵」

紬「ごめん唯ちゃん。今日も駄目なの」


>次の日
紬「ごめんね。今日も」


>次の日
紬「本当にごめんなさい。今日も駄目なの」


>次の日
紬「ごめん。唯ちゃん…」

>次の日
紬「…ごめんなさい…………」


唯(あの日からムギちゃんは沢庵をくれなくなった)

唯(どうしちゃったんだろう)

唯(それになんだか私のこと避けてるような……)

唯(私のこと嫌いになっちゃったのかな?)


唯(今日もムギちゃんの沢庵はもらえないのかな……)

唯(それなら欲しいって言わないほうがいいよね)

唯(ムギちゃんに気を遣わせちゃうし)


唯「……」

紬「……」

唯「……」

紬「…あのっ……唯ちゃん」

唯「どうしたの?」

紬「久しぶりに私の沢庵食べる?」

唯「…! ムギちゃんの沢庵!? 食べる食べる」

紬「はい、どうぞ」

唯「うーんこの味も久しぶりだねー」

唯「このポリポリ感。滑らかな酸味と絶妙な旨み。ムギちゃんの沢庵ならではだよー」

紬「でね、唯ちゃん。私の沢庵なんだけど」

唯「ん?」

紬「これからもたまにしかあげられないと思うの。それでもいい?」

唯「うんいいよ。ムギちゃんにはムギちゃんの事情があるもんね」

紬「唯ちゃん、ありがとう」

和「そこでムギがお礼を言うのはちょっと違う気がするけど…、まっ、いっか。はい分度器」


唯(ムギちゃんに嫌われているかもしれない、ってのは私の思い過ごしだったみたい)

唯(よく考えたらムギちゃんが私のこと嫌いになるわけないよね)

唯(ムギちゃんとってもいい子だし)

唯(避けられてると思ったのも、きっと気のせいだよ)


唯「澪ちゃんの髪の毛さらさらだねー」

澪「やめろよ唯、くすぐったい」

唯「さっらさらー」

澪「そんなにさらさらか?」

唯「うん。いつまでも触っていたいぐらい」

紬「あらあらまあまあ」

律「澪もまんざらでもなさそうな顔してるなー」

梓「澪先輩はツンデレですから」

澪「恥ずかしいって唯。そろそろ練習しなきゃ」バッ

唯「澪ちゃんのいけずー。仕方ないかいからムギちゃんの髪で我慢しよっと」

紬「あっ……」ススッ

唯「ムギちゃん、なんで後退りするの?」

紬「え、えっと……私の髪なんて触っても面白くないよ…」

唯「そんなことないよー。ムギちゃんの髪だって綺麗だよ」

紬「…………だめなの」

唯「どうして?」

紬「どうしても」

唯「ねぇムギちゃん。最近私のこと避けてる?」

紬「えっ?」

唯「最近ムギちゃん全然スキンシップしてくれないし、私のこと嫌いになっちゃったのかなって」

紬「嫌いになんてなるわけっ……」

唯「そうだよね。今日のお昼だって沢庵くれたし」

紬「……」

唯「でもそれならなんで私のこと避けるの?」

紬「それは……」

唯「言えないの?」

紬「……」

唯「教えてくれないなら、無理やり抱き着いちゃうんだから」バッ

紬「嫌ッ!!」ズル

唯「え?」

律「え?」

澪「え?」

梓「ニャンだと?」

唯「ムギちゃん……つるつる頭? かつら? えぇぇぇーーっ!!」

梓「ムギ先輩がつるっぱげだったなんて……」

紬「ごめんなさいみんな。今日はもう帰るからっ!」ダッ

唯「……いっちゃった」

律「……」

梓「……」

澪「まさかムギがカツラだったなんて、なぁ……」

梓「にわかには信じられません。でもあのつるつる頭……」

澪「昔一緒にお風呂に入ったときは、確かに地毛だと感じたけど」

律「ムギが禿げたのは最近ってことか?」

梓「でも、何が原因で……」

唯「……」

澪・律・梓「あっ!」

唯「え?」

梓「馬鹿馬鹿しい仮説ですけど、それしか考えらません」

律「うむ」

唯「えっ、何かわかったの?」

梓「落ち着いて聞いてください。ひょっとしたムギ先輩が禿げた理由が判明したかもしれません」

唯「ムギちゃんが禿げてしまった理由」ゴクリ

梓「唯先輩は毎日毎日ムギ先輩の眉毛を食べていたんですよね?」

唯「うん」

梓「無尽蔵に生えてくる眉毛はどこから補給されていたのでしょう?」

唯「えっと……ムギちゃんの血肉?」

梓「普通はそう考えます。でももしかしたら、髪の毛で作られていたんじゃ……」

唯「ムギちゃんの眉毛はムギちゃんの髪の毛でできていたってこと?」

梓「あくまで仮説ですが」

唯「じゃあ私が沢庵を食べ過ぎたからムギちゃんは……」


唯(次の日、ムギちゃんは学校にこなかった)

唯(昨日ムギちゃんはカツラを被らずに帰ってしまった)

唯(禿げたムギちゃんが全校生徒に見られてしまったということだ)

唯(私だったら……私だったらそんなことになったら恥ずかしくて死んでしまうかも)

唯(ムギちゃんはどうしてそうまでして私に沢庵を食べさせてくれたんだろう)

唯(…………わかってる。)

唯(ムギちゃんが私を大切に思っていてくれたから…)

唯(禿げてしまって、カツラを被ることになっても、ムギちゃんは私に沢庵をくれた…)

唯(いつだって優しく笑って……)

唯(ムギちゃん……)


和「唯、何くらい顔してるの?」

唯「和ちゃん……」

和「ムギのこと考えてたんでしょ。話は澪から聞いたわ」

唯「ねぇ、和ちゃん。私どうすればいいんだろう」

和「別に何もしなくていいと思うわよ。ムギがしたくてしていたことなんだから」

唯「え……でも」

和「唯もムギにしてあげたいと思ったことをしてあげればいいのよ。簡単でしょ」

唯「…!」

唯「うん、和ちゃんありがとう。私もう帰るね」

和「唯ったら……いいわ。早退ってことでさわ子先生には伝えておいてあげる」



>琴吹宅
唯(ここがムギちゃんの家……大きい)

唯「紬さんはいますかー?」ピンポーン

斎藤「どちらさまでしょうか?」

唯「平沢唯です」

斎藤「少々お待ちを」

___
斎藤「お嬢様。平沢唯様がいらっしゃいましたが」

紬「え、唯ちゃんが!? 今すぐ行くわ」

斎藤「ちょ……待ってください! お嬢様!! その頭で外に出てはなりません!!!」

紬「どうして?」

斎藤「世間体というものがございます」

斎藤「すぐに連れてきますので、どうかお嬢様はここでお待ちしていてください」

紬「…………わかりました」

紬「斎藤! くれぐれも失礼のないように!!!」

斎藤「ハッ!!」

斎藤「お待たせしました、平沢様。お嬢様がお待ちです。こちらへどうぞ」

唯「は、はい」

唯「……」

唯「執事さんですか?」

斎藤「はい」

唯「ムギちゃん落ち込んでましたか?」

斎藤「……落ち込んでいる、というのとは少し違うようです」

唯「え?」

斎藤「今朝のお嬢様は怖がっているようでした」

唯「怖がってる?」

斎藤「はい。あの頭を見られてご学友の皆様に嫌われるのが怖かったようです」

唯「……」

斎藤「平沢様はお嬢様を励ましにいらっしゃったのですよね?」

唯「私は……」

斎藤「違うのですか?」

唯「実は……」

___

斎藤「そうでしたか……」

唯「はい。ごめんなさい」

斎藤「いいえ。お嬢様が自ら進んでやったことです。お気になさる必要はないと思います」

唯「はい。だから私もやれることをやろうと思います」

斎藤「何かお考えがある様子……どうかお嬢様をお願いします」

唯「はい」


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