「いやだなぁ………ここは……別世界………大佐の声がするわけ………」


後ろも見ずにそう呟く………

てか、見たくない……



「はは。では、これは私ジェイド・カーティスを懐かしむあまり、アニスの頭の中に生まれた幻覚というわけですね。いや~、参りましたね……。」


「………本当ですね~。アニスちゃん、ついに頭がおかしくなっちゃったのかな?………あ、きっと疲れて頭が機能してないんだ。もう寝よ。よい子は寝る時間だし~♪」


「おや?裸で寝ると風邪を引きますよ?」

「…………。ま、幻覚の大佐になら見られても~。てか本人に見られても別にいいし~。お金取るけど。」


「ええ。では、子守唄代わりにでも聞いてください。私は確かにオールドラントからこちらの世界にやってきました。
今回はアニスが飛ばされた様な奇跡的なルークの超振動の力ではなく、ディストが自分の研究施設で開発していた疑似的に超振動を引き起こす装置の力です。……やれやれ、あの馬鹿には今回の件で死にもの狂いに働いて貰いましたよ。おかげで5年も掛かってなんとか装置を100台作らせて、多くの超振動を一気に融合させました。」


「5年!!?……あたしは、まだ一週間しか………」


「私は超振動で次元に穴を開けて、後はルークがおこした時の次元の余波に一番近い磁場を追いました。」


「磁場………?」

「まあ、磁場とは言っても、理論上の命名です。次元空間にあるのですから、もっと特別な何かでしょう。」

「つまり、あたしは元の世界に帰れるんですね!?」


「ええ。アニスが、この世界に執着していてなければの話ですが……」


「……はい?つまり、どういう事ですか?」


「帰ったら二度とこちらへは戻って来れない、と言う事です。」

「………え?それって……」


「アニス。あなたはオールドラントに帰りたいですか?それとも、そこのお嬢さんとこの世界で………結婚ですか?………いやぁ~、アニスの玉の輿計画も、まさかそこまで熱心な物だったとは………」


「いえ……この結婚はあたしの心の底からの物です!」

「そうですか。それなら、なおさら帰りたいと思ってるんですか?
実感は湧かないでしょうが、装置でこじ開けた次元の穴はもう数時間ももちません。穴自体を保持している装置そのものがそこまで保ち堪えれないでしょう。多分、帰る頃には壊れています。向こうが閉じれば、この世界に開けたものも閉じます。

その装置というのもまだ未完成な上に、掘り起こされた物であるらしく創成暦時代の失われた技術。私やディストが生涯を掛けて手を尽くしても解明するのは不可能です。」


「……装置はそうでも、ルーク様の超振動が……」


「いえ、あれも。どうやら、ヴァンやアッシュが近くに居たらしく、ヴァンの中にいたローレライが超振動に影響した……と考えられます。それで、超振動の中心にいたあなたとアリエッタだけが次元の彼方に飛ばされてしまいました。
ローレライが解放された今、彼にもう一度その時の様な超振動を手伝って貰えればいいのかもしれませんが、それでも難しいです。


それに、私が今この世界に、あなたが生きている時間に立っているのも奇跡的。たとえこの世界に来れていたとしても、あなたがこの世界にやってくる1000年前、あるいは100000年後の世界だったかもしれません。」


「うはっ………。じゃあ、今こうやって大佐と会話できるのも……」


「はい。まさに奇跡です。恐らく、一度次元の穴が閉まってもう一度穴を作ったところで、次にあなたに出会う確率は0でしょうね。あなたを探す為にあらゆる世界のあらゆる時間に行きましたから、そろそろ装置もガタが来ていますし。

ただ、私は色んな世界に行けて楽しめました。それぞれの世界には数時間しか居れませんでしたが、いい思い出も沢山あります。私としては、この世界の思い出として、アニスの婚約の一報をルーク達に持って帰るのもそれでいいかと。」


「………。あたし、残ってもいいんですか?それとも、もうオールドラントにもうあたしの居場所はないんですか?」


「いえいえ。オールドラントは今、私達によってヴァンも倒され、モースも死に、トリトハイムやあなたのご両親を中心とする新生ローレライ教団やキムラスカやマルクトを中心に新たな時代を迎えています。つまり、あなたが無理をして帰るような状況ではありません。」


「…そ、そうなんですか………」

「そうですね~。一応、ルーク達やご両親にはあなたの幸せそうな写真でも渡しておきましょうか。」

カシャッ

「いや~、この世界には便利な物がありますね。しかしこちらの世界で“現像”しとかないといけませんね。多分、オールドラントにはまだその様な技術ないでしょうから。」


「はぅ~。大佐はまだ来て数時間なのに、どうしてそんなにこの世界に馴染み掛けてるんですか~?」


「はは。あなたこそ。私は数時間で世界を去る事には慣れました。名残は惜しいですがね。
あなたはどうします?」

「私は………帰りたいです。………けど………約束したんです!この子と……紬お嬢様と。ずっと近くに居て見ててあげるって!」


「はい。なら、ここに残りなさい。他の皆さんはさぞ悲しむでしょうが、アニスが決める事ですから。私は、死ぬ前に再びこうしてアニスの幸せ~な顔が見れて満足ですし。」


「大佐………私は……」

「私はこの屋敷をもう少し拝見させてもらいますね。そして、次元の穴がある屋敷の庭には一時間ぐらいしたら向かいます。
もしオールドラントに帰りたいと思うなら、その時そこにいてください。では………」

「あ、大佐……」


「そうそう。別にお土産を持って帰りたいなら構いませんよ?例えば……豪邸のベッドに寝ていたお嬢様を1人……とか。」


大佐はいつも通り、涼しい口調だった……


私は………




「……アニスさん……」


「え!?あ、お嬢様!!いや、ムギちゃん!」

……起きていた!?……聞かれてたの……?


「…………私……その……」

「ムギちゃん!大丈夫だから!あたし………」


「アニスさんの世界に行きたい!」


「…………え……?」


「行きましょうよ!一緒に!そしたら、アニスさんは帰れるし、私は約束を守って貰える!!」



「ダメだよ………ムギちゃん………」

「え?なんで?どうしてですか……?」

「泣いてる。ムギちゃん、笑いながらまた涙ながしてる。」


「……これは……そんな……」

「知ってる。私、リビングにある写真立て。あの写真に写る、ピアノを弾いてたムギちゃん。幸せそう。あの周りの4人の人達のおかげでしょ?」

「……………」

「ムギちゃんにだって、あるじゃん。この世界に大切な物が………だから、ダメだよ……」

「そんな!!私、嫌!アニスさんと離れたくない!」


「あたしだって………嫌だよ……でも……」



―――
エンディング
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※ENDグロ注意  ※あとがきはEXTRAの最後にあります。