がぁあっ!?


「ちょっとまった!」

「は、はい!?」


危ない危ない!
何やってんの!あたしの唇はそんなに安くない……

って、だからなんで女同士で何やってんのよ!?

「お姉様!どうしちゃったんですか!?」

「え?え?…あの何か?」

「いやいや!もう少しで…その……キスとかしちゃうとこだったんですよ!?」

「え?姉妹なら、軽いスキンシップぐらいにはするんじゃないでしょうか?」

「し、しませんよぉ!!何言ってるんですか!?」

「え?だって、私の持ってる本には………。それに律ちゃんに聞いたら、姉妹じゃよく有る事だ、って……。おかしいですか?」


アニス「………。よく分かりませんけど、多分その人にからかわれたんじゃないですか?」


分かる……
あたしの周りにも、口から雪崩のように嘘をまいては翻弄される人々を眺めて楽しむ悪魔みたいな性格の人がいるし………

きっとお嬢様だから、間違った知識を騙されて教えられたんだなぁ………


「………とにかく、むやみやたらに他人にキスをしたら駄目じゃないですか。」

「そんな!私だって、ちゃんと相手を見てからしていますわ!」

「それに女子同士なんて嫌でしょ。なんの得にもならないし……」

「いえ……得に嫌じゃないです。」

「はぁ……そうですか。」


「むしろ、やってみたいです!」

「はいはい…………

え?」



あり?
今、なんか嫌な予感がした………


「特にアニスちゃんのような可愛い娘となら……ホント……………」


え?何?その目?
また、小犬がねだるような感じで………


え?
え?
えぇえええ~!?


まさか、このお嬢様ってそういう趣味の人だったの!?


「え!?あ、え!?」


「い、いえ。よければの話ですけどね……」

「あ、あう………
えぇええ!!?」


何!?
この状況!?

ヤバい!
なんか変な汗出てきた!

なんか、今まで感じた事のない恐怖が……
大佐が楽しみにとって置いたケーキを間違えて食べちゃったのがばれた時みたいな………恐怖!?



「はわわ………あ、あたしそろそろ出ようかな!!」


駄目!
今すぐトグナガを持って…………

早く服着ないと!


「きゃわっ!?」

ドスン!

いったぁ~

なんでよりにもよってこんな時に転ぶのよ!?


「あの……大丈夫ですか!?」


「ふぇ?……ぎゃぅあ!?」

肩触られただけで……
素肌触れただけで……
なんか刺激が走った!

何!?もう全身が性感帯なの!?

あたしの身体!なんかおかしくなってるぅうう!!


「せっかくの綺麗な肌が傷ついてはいけません。どこか、怪我してませんか?」


「い、いや………ひゃぁああ!?」


も、もう触らないで!!
身体が……ホントにヤバいんだって!!

気持ち良すぎて、頭が狂ってきちゃううう!!!


「だだだ大丈夫です!!
おおお姉様は、ももうちょっとゆっくり浸かっていった方がいいよ!!!!」


「え?あ、はい……」


いいベッド……
広い………
3人ぐらい寝れるんじゃないかな?


そして、そのベッドの真ん中で布団に包まって子猫のように小さくなってる
あたし…………


「……はぁ……はぁ…」

今、あたしは異常なまでの心拍数、吐息、布団を握り締めて………

とにかく怯えています!!

恐怖しか感じません!


この広いお屋敷の中に、あたしとあのイカれたお嬢様が2人きり!!

あのお嬢様は、あたしの唇………いや、身体を狙ってきます!!

魔物なんかより遥かに怖い!
昔、誘惑し過ぎてロリコンのド変態富豪に屋敷に連れ込まれそうになった時より怖い!
怒った大佐より………


………怖い!!大佐はあたしの身体を傷ものにしたりはしないもん!
心はズタズタにされるけど………

魔物や変態はトグナガで成敗できたけど………



あう~

こんな屋敷、さっさと逃げ出せばいいのに!




嫌!!
念願の豪邸生活を捨てたくない!

そうよ!
玉の輿になれるんなら、多少の障害ぐらい!
我慢すればいいんだ!
所詮、女であるお嬢様があたしにできる事なんてしれてるはず!

それぐらい我慢できなくて、玉の輿なんて無理よ!!

意外と棘の道なんだなぁ…




コンコン

「あの~。アニスちゃん?ちょっといい?」


キターーーーーー!!!!
嫌だあ!!怖い怖い怖い!

お金の為!

でも怖い!


「ど、どうぞ。」


く~
まだ覚悟が出来てないけど………

あたし頑張る!

見てて!イオン様!
守って!イオン様!



「あらあら、やっぱり同じ服を着てる。」

「え?服?」

「せっかくお風呂に入ったのに、また汚れた服をきちゃうなんて……」

「だって……替えなんてないし……」

「はい。これ、私のなんだけど………着れない事はないと思うの。」


服……あ、綺麗。

うわ、めちゃめちゃ豪勢じゃん!

「はぅう~!ありがとうございます!」

「じゃあ着替えましょ。」

「……え?」



ぎゃぁああああ!!

そういう作戦かぁあああ!!!!

服に目が眩んでほいほい裸になった無防備なあたしに………

侮れん!


「いえ、せっかくですが…」

「はい、脱いで脱いで♪」

「え?うわっ……ちょっと!?」


え?何?
凄い力………

え!?嫌!!
ダメ!

ダメ!脱がされる!!

「ちょ、ちょっと!」


もうダメ!トグナガでいっその事………


ってダメー!!

お嬢様を傷つけたりしたら、もうこの家追い出されちゃう!!


「い…いや……だめぇ…………あ……」


あう~………


イオン様……
穢れるあたしをどうか嫌わないでください………


「はい。完成~。」

「…………あ…」

「どう?気に入りました?」

「……可愛い……」


チョーかわいい!!

鏡にうつる私、まるで妖精じゃん!!
服以上に中身の素材が最高なのね!!

いや、服もやっぱ超豪華!そんな服が似合うあたしってば、も~惚れ惚れしちゃう~♪

「可愛いですわ。アニスちゃん。」

「……えへへ………」



見た!?見た!?
恥ずかしがるあたしのきゃわい~笑顔!!
もう天使じゃん!

もうサイコー!!



「あ、ありがとうございます。お姉様。」

「お古がちょうどのサイズでよかった。

でも、下着はさすがになかったわ……。大丈夫?寒くない?」


「はい。スカートの中はドロワなんで特に問題ありません。」

「そう?ならよかったですわ。」




う-ん、せっかくの服で寝ちゃったら、ゴワゴワにならないかな?
高そうなのに、もったいないなぁ~


「あのー……」

「はい?なんでしょう?お姉様?」

「その………。さきほどはすいません。何か私が間違った事をしてしまって……」

「え?いや……別に……いいですよ。」

危うく一生消えない心の傷を貰うとこだったけど……

「あの……。姉妹が一緒のお布団で寝る……と、いうのも変でしょうか?」


「へ?」


一緒の布団で………

…………寝る!?


「私のお友達に、仲がとってもいい姉妹がいるの。
たまにお姉さんの方が一緒のベッドに寝た時の話をするんですけど……。
楽しそうなんです……」


…………

…………はっ!

何考えてるの!?

寝るったって、同じ布団に入って目をつぶるだけでしょ!

宿屋のベッドが一つしかない時とか、よくティアと一緒に寝てたじゃん!



「ま、まぁ…………。
それぐらいなら……」


「よかったぁ~?私、一人で眠るのが淋しかったんです!」

「あはは…。お姉様に喜んで貰えて、アニスちゃんも嬉しい~……」


ただ、寝るだけだよね?


何もしないよね?




「じゃあ、寝ましょっか?」


「は………はい。」

緊張する~!!

なんなのこの感じ!!

「あ………。隣に人がいると、お布団の中ってさらに暖かくなるんですね。」

「あはは……。そうですね……。」



とりあえず相手に背を向けて防御の構え

寝ろ!寝てくれ!

早く熟睡して~!

安心できない!!

あたしの方が先に寝たら、無防備なあたしの身体に何をされるか………


「ふふ………」
ムギュ

「はぅあ!?」


て、起きてる内から攻めてきた~!!!

後ろから抱き付かれたー!

ちょ!?
やっぱそういうつもりだったなの!?


「アニスちゃん……いい感触……やわらかい…」

「はわわわ………」

「なんか、小さい頃にぬいぐるみを抱いて寝ていたのを思い出しますわ~。」


ググ……


そんなに力を込めて締め付けられたら……

確かにアニスちゃんはぬいぐるみ並、いやそれ以上に可愛いけど………


でも
お嬢様の身体も暖かくてやわらかい……



「はぅう~……お嬢様…」

「ホント、かわいい妹……。アニスちゃん……」

……ムニュ……

「………ひゃぅ!?」


え!?胸!?
なんで触るの!?


あ……もう……

「ひゃぁあ……お姉…様……だめ……」


「やっぱりやわらかい……。ぴったり手にはまる…………かわいらしい……」


「………寝るだけ……じゃないんですか……?」


「え?姉妹が同じお布団に入ったら、お姉さんが妹にこうするものなんじゃ?」

「…………また、さっき言ってた人の入り知恵ですか……?」

「え?やっぱりおかしいの?また律ちゃんの嘘?」


……はぁ……はぁ……

なんでこの人はそんな嘘に騙されてばっかなのよ……



ギシッ


「……え?」


お嬢様があたしの顔の前に手を付いた
仰向けになると、お嬢様の体は私のちょうど上においかぶさっていた………


え?え?

なに………この状況……?

………

あたしは今恐怖の絶頂を迎えている………

布団の中であたしの両横に手をついて上に覆い被さっているお嬢様……

その目が……今までと違う



この目………
魔物が獲物を睨むとき、これぐらい眼光がするどくなるよね……

獲物…………

……あたしだ………



「え!?………あ、あの………」


ザッ!

お嬢様の素早い右手があたしの左手首を押さえつけた………

え?まさか……


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