本日の夕食メニューは、
 麦飯(麦三分米七分)
 春雨スープ(春雨、ナルト、鶏肉)
 ポークケチャップ(豚肉、玉葱)
 カボチャそぼろ煮(カボチャ、豚挽き肉、グリーンピース)

朝食と夕食の時は交談禁止という訳じゃありません。
だから、一日の仕事を終えた後の夕食タイムは特にお喋りが多くなります。
今日は澪ちゃんがお喋りの中心。うーん、珍しい。

澪「でさぁ、朝早くから洗車してピッカピカにしてさ。フッと見るとちょっと汚れたとこがあるんだよ」パクパク

律(また例の洗車の話か。もう何十回聞いたかな、これ)ズズーッ

澪「んで、それキレイにして、チラッと視線を移すと『あっ、ここも汚れてる』」パクパク

唯「ふんふん」モグモグ

澪「そこキレイにしてさ。そしたら、また『あっ、ここも汚れてる』『ありゃ、こっちも汚れてる』」パクパク

梓「」ハフッガフッズルッズルズルッガツガツズゾッスハフクッチャズバブクッチャ

澪「そんな事をくり返して、気がついたらもう夕方になってたんだよ。ハハッ、そりゃ人が見たら
  変に思うよな。一日中、車洗ってんだもん」パクパク

唯「うーん、確かに怖いかも」モグモグ

澪「異常に集中しちゃうんだよね。シャブ打つと」パクパク

配食係「しょゆそ~~~す」ガラガラ

律「おっ、醤油もソースも減ってるな。もらうか」

梓「ぷぅ。ごちそうさま」ゲフッ

澪「もう食べたのか? 早いなぁ」パクパク

梓「もっと早く食べる気になれば、これくらい一分以内で食べれるです」

唯「ホント早いよね、あずにゃん」モグモグ

律「さすが、食い逃げあずにゃん」モグモグ

紬「ねえ、澪ちゃん。その、覚醒剤の注射って自分で自分に打つの?」

澪「ん? そうだよ。まず、口でこうグッと袖をだな、こう……」グッ ギュッギュッ

律「おっ、出たぞ。澪お得意のエアシャブ」

澪「まあ、これ箸だけど、こうして、こう……」スッ スーッ

澪「んはぁ~…… エヘンッ! ってやってさ。も、ギンッギン!」ブンブン

紬「……澪ちゃん、本当に薬止める気あるの?」

澪「うっ…… や、止めるよ。パパもママも悲しんでるし……」

紬「……自分で注射する姿って汚いよね」

澪「うん、汚い…… 今度やったら本当に家庭崩壊して、何もかもおしまいだから…… 止めなきゃ……」

紬「大丈夫。澪ちゃんなら止められるわよ。ね?」

澪「う、うん」

梓「あれ? 澪先輩、ご飯が半分も残ってますよ。食べないんですか?」

唯「ホントだ。澪ちゃん、どしたの?」

澪「ん? ああ、今ダイエットしてるんだ。ご飯半分ダイエット」

唯(自分が残す分には、いくら残してもお咎め無しだけど……)

梓(他人から食べ物をもらうのは、沢庵一切れでも不正配食で即懲罰房行き……)

唯梓(ああ、あの残ったご飯食べたい! 全然足りない!)


キーンコーンカーンコーン

午後7時00分、就床。つまり布団を敷いて寝る準備。早いなぁ。
7時から9時までの就床時間はパジャマに着替えて、布団に寝転がってテレビを見たり、雑誌を
読んだり。自由時間って感じだね。

律「うぃ~っし、就床就床」

澪「はい、テーブルの上は片づけて。たたむぞ」

紬「さあさあ。お布団敷いて、パジャマに着替えましょうね」

唯(ん~む、りっちゃんと澪ちゃんはお父さんっぽいね。ムギちゃんは勿論お母さん。我が房は
  アットホームだなぁ)ヌギヌギ

紬「あら、唯ちゃん。まだ官物(※)のブラとパンツなの?」     ※刑務所支給の物品

唯「んー? あ、うん。タダだしねー」

紬「でも、ゴワゴワだし、サイズ違いが酷いし。私物用の下着セットを買ったら? 千円ちょっとで
  着け心地が全然違うわよ?」

唯「もう少しお金に余裕が出来たら、そうするよ。それにホラ、こんなすごい下着、絶対よそでは
  着れないからいい思い出になるし」

梓「ん~♪ ん~♪」シャコシャコシャコ

紬「フフッ、そうね。じゃあ歯磨き中の梓ちゃんはどんな下着かしら」グイッ ズルズルッ

律「ブッw ム、ムギ、お前っ……w パンツまで下ろしてるじゃねーかwww ブハハッwww」

唯「な、なんで私との会話からそういう流れにwww おかしいでしょwww てゆーかあずにゃん、
  早くパンツとズボン上げてwwwww」

澪「馬鹿、梓w 早く直せよw 見つかるぞwww」

梓「ん~」グイグイ

紬「ごめんね。ついw」

澪「今度点数引かれたらこの房、テレビ視聴禁止だぞ。ふざけすぎないようにしような」

唯「あ、そうだ。テレビテレビ」ピッ

岡村『ぅおいし~~~コレ!』

律「だぁあああ! 今日、ぐるナイの日かよ! しかも二時間ゴチスペシャルかよ! 唯、なんてもん
  見せるんだ!」

唯「だ、だってぇ!」

澪「ああ…… 美味そう…… 甘そう……」

梓「はっきり言って料理よりもデザートに目がいきますね。目が、目ががががが」ガクガク

紬「この甘味の誘惑を断ち切るには、やはり梓ちゃん分を補給するより他は」ギューッ

唯「ムギちゃん天才」ギューッ

梓「じゃあ私は何分を補給すればいいんですか。つかムギ先輩、耳の穴に舌入れんな」グイーッ

澪「いかんいかん。ちょっとトイレ行って落ち着こう。よいしょ」

梓「ちょw マジでw いやマジでw」ドッタンバッタン

紬「まあまあまあまあw まあまあまあまあw」ドッタンバッタン

唯「アハハハwww こんなお母さん絶対やだwww アッハハハハハwwwww」ドッタンバッタン

澪「おい、やばいぞ。ちょっと騒ぎ過ぎだって」

律「お前ら、いい加減に――」

さわ子「こらぁ! お前ら、ここをどこだと思ってるんだ!!」バシーン

律澪唯紬梓「……」

さわ子「修学旅行に来てんじゃねえぞ! わかってんのか!」

唯「はい……」シュン

紬「すみません……」ズーン

梓「反省してます……」ガビーン

さわ子「外で苦労してる家族の事を考えてみろ!!」

澪(あーあ、アウトか……)

律(来月から一ヶ月間、テレビ視聴禁止……)

午後9時00分、消灯、就寝。



第一話 終わり



午後12時20分 運動場

受刑者達「いっち、にー、さん、しー! いっち、にー、さん、しー!」ザッ ザッ ザッ ザッ

さわ子「全体ィ~~~止まれェ!」

受刑者達「いっち、に!」ビタッ

さわ子「はい、体操!」

唯「はい!(前に出てっと)」ダッ

唯「田井中さん、基準!」

律「基準!」ビッ

唯「田井中さん基準で体操体形に開いて下さい!」

受刑者達「」ダッ

唯「腕を前から上に上げて背伸びの運動! いちにいさんしい、ごおろくひちはち!」

受刑者達「いちにいさんしい、ごおろくしちはち!」

唯「にいにいさんしい、ごおろくひちはち!」

受刑者達「にいにいさんしい、ごおろくしちはち!(『ひち』って言うなw)(ダメ、笑ったら
     怒られるw)(早く終われ早く終われ早く終われw)」

皆さん、こんにちは。平沢唯受刑者です。
今日は屋外での運動の日。
運動の日は他の房の受刑者との交流の場でもあります。
だから、半数以上の人は運動をせずに、ベンチや芝生でお話をしてたりします(運動場に出るのは
強制だけど、運動そのものは自由なので)。
実は私もその一人だったり……



第二話



私とりっちゃん、澪ちゃん、ムギちゃんはベンチで他の房の人達とお喋り。
一緒にいるのが、214号室の四人以外では一番仲良しの和ちゃんと、あとは最近よく喋るように
なった姫子ちゃんと信代ちゃん。
あ、ちなみにあずにゃんは全力で野球をプレイ中。

律「うう、寒いなぁ。もう師走だもんなぁ……」

姫子「でさ、もう悩んで悩んで…… でも、やっぱりやるしかないって思ってマスクかけてさ、
   本当にもう怖くて怖くてドキドキしながらさ、レジの前で黙って包丁出したら、すぐお金
   出してくれてさぁ」

唯「ふんふん」

姫子「『なぁ~んだ、良かった』って思って、それからやりだしたんだ。連続コンビニ強盗」

律「シャバではどんな仕事してたんだよ」

姫子「コンビニ店員」

唯「もうすぐ仮釈放だね」

澪「シャバで正月か。いいなぁ」

和「……」

姫子「でも、正月に出ても仕事が無いでしょ? お金も全然無いし。まいっちゃうよ。ホント、
   どうしよう……」ハァ

信代「百万や二百万の貯えはあるでしょ?」

姫子「いやぁ、全然無いよ。ここで稼いだ作業賞与金が六万円くらいあるだけ」

信代「それじゃアンタ、何の為に強盗やったかわかんないじゃん。うっはははははw」

澪「しかし、ここにいるのはお金が無い連中ばかりだな」

律「どうしてそんなに金が無いのか不思議でしょうがないよ。十万や二十万はあるだろって思う
  けどなぁ」

信代「貧乏の天才だね。うはははw」

紬「あの~、中島さんは拳銃で人を射殺して、家で寝てるところを逮捕されたんですよね?」

信代「うん、そうだよ。貸した金を取り立てに行ったらね、トチ狂っちゃって包丁振り回して
   くるからさ」

紬「ええ」

信代「バーン! 討ち取ってやった。ま、人一人殺して七年なら安いもんだよね。うっはははははw」

紬「たまには殺してしまった方のご冥福を祈ったりします?」

信代「しない。そういう事は全然しないね。うはははw」

律「えらい! 自己確立してるね」

紬「和ちゃんは? どうして、ここに?」

唯(そういえば、私もまだ聞いてなかったな。和ちゃんの過去)

和「……」

唯「あ、話したくなかったら……」

和「……子供にミルク飲ませてたら友達が来てね」

和「『ねえ、あいつ殺すから来てよ』って言うから出てみたら、みんなが車に乗ってて」

和「それで、山に連れて行って絞め殺しちゃったの。綱引きみたいに、両側から、みんなで」

律「殺される時ってピーピー泣いたりする?」

和「ううん、『もう殺して』って目をしてたわ。その子、ヤクザからもお金引っ張れるだけ
  引っ張ってたから、もう行き詰まって死にたかったのかもね」

律「そんな生き方してたら殺されて当然だろ……」

和「ああ、子供が抱きたいな…… 一人が宗教に目覚めて、自首なんかするから」

律「大馬鹿野郎だな、そいつ」

和「はぁ…… もうすぐお正月ね」

唯「……ねえねえ、お正月はようかんが出るってホント?」ワクワク

和「ん? 出るわよ」クスッ

澪「唯の頭の中は甘い物の事でいっぱいだな。まあ、ここにいたら、みんな多かれ少なかれ
  そうなるか」

信代「お正月はいいよぉ。おいっしーもんがたらふく食べられて。うはははw」

唯「ホント!? わぁああぁあああ……」キラキラ

信代「大晦日の夕食時におせち料理と年越しそばが出るよ。小ぶりなみかん三個と袋菓子もね」


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