教師編END AFTER


 ―――更に月日は流れ、数年後の春……。


教師「山中学年主任、コーヒーをどうぞ」

さわ子「ええ、ありがとうございます……」

 後輩の先生が淹れてくれたコーヒーを飲み、一息つく。

 教師としての仕事も順調に進み、業績を積んだ私も今は学年主任として、この学校に欠かせない存在へとなって行った。


 ……あれから、結婚の“け”の字もない生活が続けていたけど……それでも私は今が幸せだった。

 好きな仕事をやれてる今が……とても幸せだった。


さわ子「っかし……菫ちゃん達も卒業して……軽音部はまたも廃部寸前……かぁ……」

 現在活動中の部活動が記入された書類を眺め、私は何度目かのため息を吐く。

 吹奏楽部、合唱部、ジャズ研と続く音楽部の欄で唯一、軽音部にだけ『廃部』の項目がチェックされていた。

 このままでは菫ちゃんも直ちゃんも浮かばれないだろう。

さわ子(何とかしないとなぁ……でも、どうすれば良いのかしら……)

 どうしようかと考えあぐねいていたその時、職員室の戸が開かれ、数人の生徒の元気な声が聞こえて来た。


生徒「すみませーん、あの……音楽の先生いらっしゃいますか?」

さわ子「はい、私ですけどあなた達は……ああ、そのタイは新入生ね? どうかしたの?」

生徒「あの……私達、軽音部に入りたいんです!」

さわ子「軽音部……に?」


生徒「はい!私、佐藤聡美っていいます! こっちは、幼馴染の日笠陽子!」

生徒「日笠陽子です……私、ベースをやりたいと思ってます!」

生徒「私、豊崎愛生! ギターはあまり弾けませんけど……でもやってみたいです!」

生徒「寿美奈子と申します、キーボードしか弾けませんけど……けど、それでも私達、やってみたいんです!」

一同「――先生! 私達を軽音部に入れて下さい、お願いします!」

さわ子「………」

 その姿が、かつての“彼女達”の姿と重なる。

 目の前の彼女達の顔は……遠い昔、私が見た顔そのもので……それが、すごく懐かしくって……!


さわ子「そう………」

さわ子「いいわ、私が“また”、面倒見てあげる!」

一同「『また』……?」

さわ子「さあ、みんなついてらっしゃい!」

一同「は……はいっ! 先生!!」


堀込「山中先生? …ったく……まーた騒がしくなりそうじゃな」

堀込「ま、それも良いか……」

堀込「山中……頑張れよ……」

 職員室を抜け出し、私は生徒を連れ、音楽室へ走り出す。

 この子達なら……きっとやれる……! あの子達に似た笑顔のこの子達なら……きっと………!


 春が始まる。

 あの日のように騒がしく……また暖かく……輝きに満ちた三年間が、これから始まる……!


 私は紡ぐ。 いつまでも……どこまでも……!

 ―――先生として、この子達の顧問として……! 一人の軽音部員として……!


さわ子「さーて!! 軽音部! 行っくわよぉぉっっ♪」

 音楽室からは今日も、賑やかな歌声と……生徒達と私の、絶える事の無い笑い声が絶えず、響いていた……。



さわ子「結婚……かぁ」教師編END

おしまい



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