梓「ブフッ」

紬「あずさちゃん?」

梓「な、なんでもないですよ」

律「お姉さん、私も握手だ」スッ

ギュ

レイコ「うむ、じゃあな。でこ娘」

律「は、初めて言われた・・・」

唯「・・・さようならだね」スッ

ギュ

レイコ「うむ、じゃあな。小娘」

唯「・・・うん。元気でね」

梓「しまった・・・唯先輩たちにまで言ってる・・・」

夏目「・・・っ」

多軌「夏目くん・・・」

ヒノエ『前を向きな、夏目。ちゃんと別れないと後悔するよ』

夏目「!」

夏目(レイコさんとヒノエは・・・!)

レイコ「じゃあな、娘」

ギュ

紬「うふふ、お元気で」

レイコ「うむ」

梓「色々とお世話になり――」スッ

バシッ

梓「あいたっ!?」

レイコ「ふん、おまえとは別れの言葉などいらん。ネコ娘」

梓「誰がネコ娘ですか!」フカー!

紬「本当に仲がいいのね~」ニコニコ

多軌「はい」ニコニコ

菜々子「弟さんと仲良くな」スッ

ギュ

レイコ「気が向いたらな」

静花「ごきげんよう」スッ

ギュ

レイコ「そんなに弱い相手ではないぞ」

静花「えぇ、承知しておりますわ」

紬「・・・」

夏目「・・・」

緑「夏目くん」

夏目「・・・」

緑「ここへ来られたのはあなたのおかげ・・・」

夏目「?」

緑「秀輝くんと約束をしていたんだけど、・・・怖くて逃げたの・・・私」

夏目「・・・!」

緑「合わせる顔もないから、帰ろうと思ったとき・・・あなたがここで降りることを思い出した」

夏目「・・・」

緑「ここであなたにお別れを言うことで、私の旅を終わらせようと思っていた」

夏目「!」

緑「些細な繋がりだったけど・・・来て・・・よかった。・・・ありがとう」

夏目「――ッ!」

車掌「夏目貴志さん、多軌透さん、当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

多軌「お世話になりました」

夏目「・・・っ」ペコリ

車掌「お姉さんも、ありがとうございました」

レイコ「なかなか楽しかったぞ」

車掌「これ以上無いお言葉です」ニコ

ポタッ

ホーム内に雨が振っている

それは違うと分かっている。これはおれの涙だと分かっている

泣いているから恥ずかしくて前を向けない

別れが寂しいと感じることはいくつもあったんだ

だから今回も平気だと思っていたんだ

だけど――


『あなたが泣いているのは悲しいわ』

夏目「え――」

紬「動かないでね」

夏目「あ・・・! ごめんなさい!」

紬「ほら、動かないで」フキフキ

夏目「・・・!」

紬「これでよし・・・ね」

夏目「寂しい別れが・・・かけがえのないものだと、知っていたんです」

紬「・・・」

夏目「だけど、言葉でしか知らなかったみたいです・・・っ」グスッ

紬「夏目さん・・・」

夏目「おれ、色々あって・・・人に礼を言わることなくて・・・」ボロボロ

多軌「・・・!」

夏目「そんな人と別れたことは・・・今までなかったんです・・・っ」ボロボロ

レイコ「・・・」

夏目「だからっ・・・!」グスッ

紬「・・・」

夏目「とても、胸が痛い・・・っ・・・」

紬「うん。その痛みはきっとあなたを強くしてくれるわ」フキフキ

夏目「!」

紬「その分、あなたの周りの人を紡いでいってね」

夏目「・・・はい」

紬「・・・!」

夏目「琴吹さん・・・?」

紬「・・・大事なことを、思い出せた・・・」

夏目「・・・」

紬「・・・ありがとう。あなたに出会えてよかった」

夏目「・・・っ!」

唯「貴志くんっ!」ダキッ

梓「あっちです」ドン

唯「ぬおっ」

ガバッ

多軌「ゆ、唯さん・・・!」

秀輝「方向修正か」

律「そういうのやめろよなー。こっちにも移るっての」グスッ

紬「うふふ」

律「ほら、夏目」スッ

夏目「・・・!」

律「ハイタッチで別れようぜ」

夏目「・・・はい!」

パァン

律「元気でな!」

夏目「律さんも、お元気で」

唯「タキちゃーん」ギュウウ

多軌「唯さん~!」

澪「じゃあな、夏目」スッ

夏目「とても、楽しかったです」スッ

パァン

澪「忘れないよ、この出会いを」

夏目「おれもです」

菜々子「それじゃついでに私も」スッ

夏目「高いっ!」スッ

パァン

梓「末永くお幸せに」スッ

夏目「よく分からないけど、先生の事どうして・・・?」

梓「律先輩と唯先輩、澪先輩はむぎ先輩のために、
  むぎ先輩は夏目のことを考えて幻術にかかった・・・」

夏目「・・・」

梓「私は、あの出来事を忘れない。忘れてはいけないから」

夏目「・・・うん」スッ

梓「元気で」

パァン

prrrrrrrrrrrrr

車掌「みなさん、最後の運行になります」

紬「はい!」

静花「それではお元気で」スッ

夏目「はい。さようなら」スッ

パァン

静花「それでは乗りますわよ、みなさん」

菜々子「じゃあな!」

澪「バイバイ!」

律「じゃあなー!」

唯「おぉ、なっちゃん!」スッ

夏目「ふふ」スッ

パァン

唯「じゃあね!」

緑「・・・じゃ」

夏目「はい、お元気で」

秀輝「じゃあな、夏目!」スッ

夏目「あぁ! 最後まで頑張れよ秀輝!」スッ

コツン

レイコ「・・・」

ヒノエ『・・・』

静花「紬さん、急いで!」

紬「すぐ行きます! しずねえさま!」

夏目「ッ!?」

紬「それじゃあ、いつかまた、どこか遠い空の下で」スッ

夏目「は、はい」スッ

パァン

律「走れむぎー!」

澪「時間が!」

唯「むぎちゃーん!」

梓「手に掴まってください!」スッ

ギュウ

紬「うふふ」

梓唯澪律「「「「 よいしょー! 」」」」 

多軌「みなさんさようならー!」

紬「また会いましょう」フリフリ

レイコ「じゃあな、ネコ娘」

梓「ネコ娘って言う――」

プシュー

梓「」フカー!

ガタン

ゴトン


ガタンゴトン

ガタンゴトンガタンゴトン


夏目(後少しだけ・・・ヴェガの旅は続くんだな・・・)

『ふーん。最終駅の一歩手前か・・・。なんかもったいないな』

夏目「確かに・・・。もったいなく感じるよ、秀輝」

多軌「ぅっ・・・」ボロボロ

ヒノエ『悪くなかったね』

レイコ「行くぞ」

多軌「っ・・・ぅっ」ボロボロ

夏目「タキ・・・」

ギュ

多軌「!」

夏目「帰ろう」

多軌「うん!」


話したいことがたくさん出来た

今までは伏せなくてはいけないことが多すぎて、

ちゃんと伝えられなかったかもしれない

だけど、この旅の話は余すことなく伝えられそうな気がする

塔子さんと滋さんに伝わるだろうか

今のこの気持ちを

胸に宿った大きな暖かさと小さな胸の痛みを

いつまでも大切に残していきたいと、心から願う


なにから話そう



                 End


お嬢様特急 エンディング

いつかみた空の下で
http://www.youtube.com/watch?v=F2w-s8LUUFs



ガラガラガラッ


夏目「ただいま帰りましたー」

パタパタ

塔子「お帰りなさい、貴志くん」

夏目「ただいまです、塔子さん」

塔子「・・・」

夏目「?」

塔子「今ね、たい焼きを焼いているの。よかったらどう?」

夏目「はい、いただきます」

塔子「荷物を置いたら降りてきてね」ニコニコ

夏目「・・・」

『ようやく帰ってきたでありますか』

夏目「留守番ありがとな、ちょび」

ちょび『チンケな用心棒はどうしたでありますか』

夏目「先生はすぐに遊びにいったよ」

ちょび『左様でありますか。わたしもこれで失礼するであります』

夏目「この家を守ってくれてありがとう。今度お礼をさせてくれ」

ちょび『時間を持て余していたのでわたしはいいであります。三篠殿に言うであります』

スゥゥゥ

夏目「三篠も守ってくれていたのか・・・ちゃんと礼を言わないとな・・・」

「貴志くーん」

夏目「はーい! 今行きまーす!」

『友人帳をもつ夏目様でございますね』

夏目「さっそく来たか・・・。悪いが夜に出直してきてくれないか」

『・・・』

夏目「これから出かけたいんだ。本当に悪い!」

『分かりました・・・。それでは今晩参ります・・・』

スゥゥゥ

夏目「・・・ふぅ」

夏目(日常に・・・戻ってきたんだな・・・)

塔子「座って座って~」

夏目「はい」

塔子「さ、どうぞ~」

夏目「・・・」

塔子「お茶でいいかしら」

夏目「は、はい」

塔子「~♪」

コポコポコポ

夏目(数日空けただけなのに・・・。とても懐かしくて落ち着く・・・)

塔子「どうぞ」

夏目「いただきます」ハムッ

塔子「・・・」ニコニコ

夏目「?」モグモグ

塔子「楽しかった?」

夏目「・・・・・・はい」

塔子「良かったら話を聞かせてくれないかしら?」ニコニコ

夏目「そうですね・・・。列車の最後尾に展望車があるんです」

塔子「うんうん」

夏目「ちょっとしたラウンジのようで、ピアノもあって・・・のんびりと過ごすにはいい場所なんです」

塔子「・・・」

夏目「ある人が、そこでお茶会を開くんです。人が集まってきてみんなでおしゃべりしたりして」

塔子「まぁ、いいわね~」

夏目「最初は戸惑いましたけど、会を重ねるうちに、僕も自然と参加するようになっていて・・・」

塔子「うふふ」

夏目「その人が淹れてくれるお茶が輪をつくるんです。それがとても・・・」

塔子「・・・うん。楽しかったみたいね」

夏目「え・・・?」

塔子「貴志くんの顔を見ていたら、それが伝わってくるわ」

夏目「・・・そ、そうですか」モグモグ

塔子「それでそれで?」

夏目「――。」

塔子「あら、いけない。もうこんな時間なのね。お買い物にいかなくちゃ」

夏目「・・・」

塔子「今晩の夕食時にでも続きを聞かせてくれないかしら」

夏目「・・・はい。滋さんにも聞いて欲しいです」

塔子「本当に・・・」ニコニコ

夏目「?」

夏目「よいしょ」

塔子「これからどこへ行くの?」

夏目「友人たちに会いに行こうと思って」

塔子「・・・」

夏目「今、独りでは居たくないんです」

塔子「・・・そう」

夏目「それじゃ、先に出ますね」

塔子「・・・えぇ。晩御飯は豪勢にするから、お腹すかせてきてね」ニコニコ

夏目「ふふ・・・。はい」

塔子「いってらっしゃい」

夏目「―――行ってきます」



                 終