秀輝「なんの音だ・・・?」

多軌「なにかぶつかったような音だったけど・・・」

ガチャ

先生「」プシュー

夏目「お願いな」

多軌「う、うん・・・」

秀輝「どうして先生がダメージを受けているんだ?」

夏目「壁に突撃したんだよ」

多軌「そ、そうなんだ・・・」

先生「いつつ・・・ヒノエめ裏切りおった・・・」ヒリヒリ

夏目「じゃ、停車したらホームに降りてるから」

多軌「うん」

バタン

秀輝「先生、『聞こえる』?」

先生「なんだ?」ヒリヒリ

多軌「・・・」

秀輝「大したことじゃないんだけどさ・・・」

ヒノエ「あの小僧はどうしたんだい?」

夏目「先生に話があるんだって」ガサゴソ

ヒノエ「そうかい」

夏目「・・・よいしょっと」

夏目(これで・・・降りる仕度は済んだな・・・)

ヒノエ「やっと帰れるねぇ」

夏目「・・・そうだな」

ガタンゴトン

夏目(今、ホームに入った・・・。終わりが・・・来たんだ・・・)

夏目「・・・」

ヒノエ「・・・」

ガタンゴトン

ガタン

ヒノエ「どうした、夏目」

夏目「・・・いや、なんでも・・・」

ガタン ゴトン

ヒノエ「怖いのかい?」

夏目「!」

ヒノエ「やれやれ」

夏目「・・・」

ガタン

プシュー

夏目(着いた・・・)

ヒノエ「降りないかい、夏目」

夏目「・・・」

ガチャ

多軌「あ・・・」

先生「遅いではないか、なにをチンタラしている」

夏目「・・・悪い」

ヒノエ『・・・』

多軌「・・・」

夏目「・・・秀輝は?」

多軌「風音さんを見送りにいったよ」

夏目「・・・そうか」

多軌「・・・うん」

夏目「・・・」

先生「・・・やれやれ」

ヒノエ『・・・』

車掌「どうかしたんですか?」

夏目「あ・・・車掌さん・・・」

多軌「・・・これ、乗車証です」

車掌「はい、確かに」

夏目「・・・」

車掌「ホームに降りましょう」

夏目「はい」

先生「・・・」



―――――阿蘇駅


夏目「乗車証、お返しします」

車掌「・・・さて、どうしましょう」

夏目「・・・え?」

多軌「?」

車掌「規定違反になるので、私には判断しかねます・・・」

夏目「???」

車掌「貴志さんの判断に委ねてよろしいでしょうか?」

夏目「え? え???」

ヒノエ『なにを言っているんだい』

先生「ふむ、なにかと不思議が多いな・・・」

多軌「・・・」

車掌「うふふ、あちらをご覧ください」

夏目「―――え?」

多軌「あ・・・!」

先生「あの小娘はたしか、夏目の看病をしたやつだな」

ヒノエ『あぁ、あの時の小娘』

夏目「北上さん!」

ダダダッ

多軌「な、夏目くん!」

先生「・・・くだらん」

夏目「ど、どうしてここに!?」

緑「・・・見送り」

夏目「だ、誰を・・・?」

緑「あなた以外いないでしょ・・・」

夏目「・・・それだけじゃない・・・と思う・・・」

緑「えぇ・・・。その・・・」

夏目「・・・」

緑「・・・乗ってる?」

夏目「え・・・?」

緑「――・・・は・・・乗っているのか聞いているの」

夏目「???」

緑「・・・っ」

夏目「・・・」

緑「秀輝くんは・・・乗っているのかって・・・聞いて・・・!」

夏目「は、はい。います。そうか・・・車掌さんはこれを・・・」

緑「・・・そう。・・・それじゃ」

夏目「会わないんですか?」

緑「彼に・・・酷いことをして・・・約束を破ったから・・・」

夏目「秀輝は会いたがっています」

緑「・・・いいの。・・・・・・降りてしまったんじゃないか・・・気になってただけ」

夏目「・・・」

緑「・・・」

夏目「この乗車証使ってください」

緑「・・・え・・・?」

夏目「車掌さんがそうしろと・・・」

緑「・・・」

夏目「おれの代わりに最終駅まで乗ってください」

緑「・・・・・・うん」

夏目「・・・よかった」

緑「・・・・・・ありがとう」

夏目「北上さんには助けられましたから」

律「おいこらー! 夏目ー!」

夏目「あ・・・」

律「風音はもう行ってしまっ・・・のわぁっ! み、緑!?」

緑「・・・」プイッ

律「ななななんで!?」

夏目「・・・それが」

緑「言わないで」

律「びっくりした・・・・・・けど、なるほど。まぁいいや、緑ちょっと来い」グイッ

緑「なに?」

律「サプライズだ・・・。実際私もビビったから本人はもっと驚くだろ」ウシシ

夏目「・・・」

律「夏目は早くむぎんとこ行け、みんな待ってるぞ」

夏目「は、はい」

律「乗車証は夏目のか?」

緑「・・・えぇ」

律「列車の中で待機だな」

夏目(秀輝ビックリするだろうな)

紬「夏目さ~ん!」

夏目「・・・待たせてしまって、すいません」

秀輝「どこ行ってたんだよ」

夏目「・・・悪い」

澪「今度は律がいない・・・」

唯「もぉ~・・・」

梓「風音がよろしくって」

夏目「・・・うん」

秀輝「まったく、最後の挨拶がないと寂しいものなんだぞ」

夏目「そ、そうだな」

車掌「・・・」ニコニコ

多軌「・・・」ニコニコ

先生「・・・」

静花「貴志さんのお姉さんがいると思っていましたが・・・」

菜々子「なんでだよ」

静花「うーん・・・。常に一緒に居る感覚といいますか・・・」

菜々子「はぁ?」

静花「梓さんの言動がそう思わせましたの」

梓「私ですか?」

静花「えぇ、仲がいい割には別れに対してあっさりとしていましたから」

梓「な、仲がいいなんて誤解ですよ」

先生「そうだぞ」

夏目(喋るなよっ!)

静花「繋がりが見えた。・・・それだけですわ」

紬「ふむふむ」

先生「さっさと小娘どもに別れを言え、帰るぞ夏目」

夏目「・・・」

梓「タキ、そのぬいぐるみをちょっと貸してほしい」

多軌「う、うん」

ガシッ

先生「おいこら! ぞんざいに掴むな!!」

梓「すぐ戻ります!」

テッテッテ

梓「あずにゃんどうしたの?」

澪「最後に抱きしめたいならこの場所でいいはずだよな」

秀輝「・・・・・・なるほど、俺と中野さんは同じだったか」

紬「?」

夏目「?」

梓「ここなら大丈夫かな・・・」

先生「まさか・・・」

梓「むぎ先輩に小娘って言うなって何度も言ってるでしょぉおお」グググ

先生「ふぎゅぎゅ」ムググ

梓「・・・ほら、はやくレイコさんに変身してよ」

先生「なんで私の声が『聞こえる』のだ」ヒリヒリ

梓「催眠術にかかっていないからだよ。時間が無いから急いで」

先生「ぬ・・・」

どろん

レイコ「曲者とはお前のことだったのか」

梓「曲者?」

レイコ「聞かせろ。どうしてかかっていない」

梓「あの人の手を見なかったから。・・・それで回避できたんだと思う」

レイコ「そうじゃない」

梓「・・・あの時、私は夏目に酷いことを言ったから」

レイコ「・・・」

梓「それは、絶対に言ってはいけない言葉だと思う」

レイコ「それを根に持つほど、アイツは小さい人間ではないぞ」

梓「夏目が忘れても、私は忘れていいことじゃないと思ったから。記憶を残す選択をしただけ」

レイコ「・・・」

梓「むぎ先輩たちが待っているから、行こう」

レイコ「・・・なるほど、面白い」

梓「?」

律「どこ行ってたんだ、梓」

梓「せ、先生を見つけてきましたよ」

紬「あ、あら・・・?」

レイコ「しょうがないから来てやったぞ」

澪「・・・よかった」

唯「ちゃんとお姉さんに挨拶ができるよ~」

菜々子「静花が言っていたことは間違っていなかったのか・・・?」

静花「・・・」

律「なんで、梓が夏目のお姉さんを『先生』と呼んでいるんだよ」

澪「うん、私も気になっていた」

梓「え、えっと・・・いいじゃないですか」アセアセ

秀輝「『知っている』からだよな・・・」

多軌「うん・・・。『聞こえている』から」

夏目「・・・え!?」

梓「・・・」

律「よく分からないな・・・。ま、いいや・・・夏目」

夏目「は、はい」

律「ありがとな、とても楽しかったぜ」

夏目「!」

唯「楽しかったよ・・・」

夏目「・・・は、はい」

菜々子「タキちゃんも元気でね」

多軌「は、はい・・・っ」

レイコ「・・・」

秀輝「先生、ありがとうございました」

レイコ「ふん、変わってしまったおまえはつまらなくなってしまったがな」

秀輝「あはは」

律「よし、今がいいタイミングかも」

テッテッテ

澪「りつ・・・?」

紬「タキちゃん・・・。楽しかったわ」スッ

ギュ

多軌「はい・・・私も・・・楽しかったです」

紬「・・・」

多軌「・・・」

紬「夏目さんと仲よくね」

多軌「ふふっ・・・はい」

梓「タキは夏目を支えているよ、ずっと見てきたんだから、分かる」

多軌「うん。ありがとう、梓」

レイコ「・・・」

秀輝「夏目のことよろしくね」

多軌「はい。色々と楽しく過ごせました。ありがとうございました」

秀輝「おれはなにもしてないよ。してもらったことが多すぎて・・・」

多軌「ふふっ、後ろ見てください」

夏目「・・・」

秀輝「うしろ・・・?」

紬「あっ!」

菜々子「あれっ、あんた!」

静花「しずかになさい、ムードを壊してしまいますわ」

緑「・・・」

秀輝「緑・・・」

律「うしし、呆気に取られてやんの」ウシシ

緑「べ、別に・・・」

律「なにがだ」

澪「ど・・・で・・・?」

律「どうしてかって? 秀輝に会いに来たんじゃないかね」

秀輝「・・・」

緑「私も・・・最後まで行けることになったから・・・」

秀輝「・・・うん」

レイコ「後はおまえ次第だぞ」

秀輝「あ、・・・うん」

唯「ビックリだけど、よかったよー!」

澪「あぁ・・・!」

夏目「・・・」

澪「夏目、別れの挨拶だ」スッ

夏目「・・・!」

澪「握手で別れよう」

夏目「・・・っ」

レイコ「・・・」スッ

ギュ

澪「ん?」

レイコ「私では不服か?」

澪「い、いえ・・・」ビクビク

梓「脅さないでください」

レイコ「じゃあな」

澪「はい、お元気で。姉弟仲良く」

レイコ「ん?」


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