―――――ヴェガ


秀輝「こんなとこでなにしてんだ?」

夏目「律さんが、『秀輝が来たら展望車につれて来い』って」

秀輝「ふーん・・・。で、多軌さんと先生は?」

夏目「先生を部屋で休ませるために連れて行った」

秀輝「なるほど、ネコの姿にならないといけないからな。行こうぜ」

夏目「うん」

秀輝「いよいよ明日で終わりかー・・・」

夏目「一人で散歩してなにを考えていたんだ?」

秀輝「うーん・・・。それを聞くか普通・・・」

夏目「わ、悪い・・・」

秀輝「いいけど。俺は『見えない』だろ?
   だから『あやかし』が隣を歩いていたりするのかなーって考えてた」

夏目「・・・」

秀輝「そう考えても、『見えない』から・・・夏目と別れたらそう意識することもなくなって、
   常識が戻っていくんだろうなぁってさ」

夏目「・・・それがいいんだ」

秀輝「夏目」

夏目「?」

秀輝「『律! むぎさんを陣の外へ!』」

夏目「――ッ!!!」

秀輝「あっははっは! 一生忘れないよ!」

夏目「わ、忘れてくれ!」

秀輝「無理無理っ、今の夏目の顔のおかげでずっと残ってしまう!」

夏目「うわぁー・・・ヤなやつ・・・」

秀輝「まぁ、封印する時は必死だったからな。しょうがない」ウンウン

梓「なにを封印するんですか?」

夏目「うわっ!」

秀輝「な、なんでもないよ?!」

梓「・・・」

律「待たせすぎだぞ、夏目!」

澪「待たせたのおまえだぞ、律!」

唯「はやく展望車おいでよ~」

紬「あら、タキちゃんは?」

梓「先生もいませんね・・・」

夏目「あ、先生は・・・帰りました・・・」

唯「え?」

夏目「家に・・・です・・・」

唯「お姉さんが!?」

澪「あ、挨拶してないぞ!?」

律「勝手に帰らせるなよ!」

紬「そうなの・・・」

梓「身勝手な人だから大丈夫ですよ、行きましょう」

秀輝「・・・」

多軌「展望車に誰も居ないと思ったらここに居たんですね」

風音「私もお呼ばれしてもいいんですか?」

紬「もちろん~」

静花「菜々子さんは仕事に戻りなさいな」

菜々子「ぐっ・・・!」

秀輝「あはは」

夏目(明日、終わるんだな
   『今』を刻みつけよう )

律「うっしゃー! 前夜祭だー!」

紬「おぉー!」

澪梓唯「「 おぉー! 」」」

多軌風音「「 お、おー! 」」

静花「うふふ」

菜々子「へへっ」

秀輝「はは・・・」

夏目「・・・」


   時を越えてまたいつか

   あの日を誇れるように

   左回りの時計をひとつもって



8日目終了--------



8月15日


ガタン ゴトン

ガタンゴトン

夏目「ん・・・」

ヒノエ「おや、起きたね夏目」

夏目「あ、あぁ・・・。おはよう、ヒノエ」

ヒノエ「ひどい顔してるね」

夏目「結構遅くまで遊んでいたからな・・・ふぁあ・・・」

先生「とうっ」

シュッ

夏目「・・・」サッ

先生「ぬ、やるではないか、夏目」

夏目「そう何度もくらわないよ」

先生「腹が減ったぞ! 朝飯を持って来い!」

夏目「はいはい」

ガチャ

夏目(おっと・・・)

澪「・・・ふぅ」

夏目「おはようございます、秋山さん」

澪「おはよう、夏目」

夏目「どうしたんですか、ため息なんかついて」

澪「うん・・・。話は食堂車でしないか?」

夏目「あ、えっと・・・」

澪「ふふ、タキも声をかけようか」

夏目「あ、・・・はい」

夏目「1号車・・・」

澪「ん?」

夏目「なんとなく、目に焼き付けておこうと思って」

多軌「それじゃ私も・・・」ジー

澪「・・・そうだな」

夏目「2号車・・・」

梓「・・・ふぅ。・・・あ」

多軌「仲間発見。朝ごはん食べに食堂車行こうよ」

梓「う、うん」

澪「ここでなにをしていたんだ?」

梓「散歩していたんです」

夏目「3号車・・・」

律「・・・ふぅ。お、なんだ? ロールプレイングゲームか?」

澪「違うぞ」

律「わーかってるよー。そんなすぐに否定すんなよな」

多軌「律さんも食堂車行きましょう」

律「もちろん!」

梓「この流れだと次は・・・」

夏目「4号車・・・」

梓「いませんね・・・」

澪「誰を探しているんだ?」

梓「唯先輩がいると思っていたんですけど・・・」

多軌「見つけた、座席に座っているよ」

律「唯~?」

唯「・・・ふぅ」

梓「ど、どうしたんですか? 胸を押さえて」

唯「苦しいんだよ、切ないんだよ」

澪梓律「「「 あ、一緒だ 」」」

多軌「?」

店員「いらっしゃいませ~!」

唯「けさみちゃんはいつも元気だね~」

けさみ「当然ですよ~、いつもの席へどうぞ~!」

唯「はいよ~」

梓「さっきまで切なそうにしていた人とは思えませんね・・・」

澪「・・・だな」

律「あり・・・、むぎは?」

梓「先に向かっていると思っていました」

多軌「私呼んできますね」

澪「タキ、声をかけたからすぐ来るよ」

多軌「そうですか」

菜々子「いらっしゃーい、早く席に着きな」

夏目「・・・はい」

律「その子さん、いつものやつを」キリ

その子「かしこまりました」ニコニコ

澪「最後もいつも頼んでいるやつにするのか・・・うん。それもいいかもしれないな」

梓「私もいつものやつで」

唯「いつもの~」

多軌「わ、わたしも」

その子「はい、かしこまりました」

夏目「おれはフルーツセットを・・・あ」

律「秀輝のヤツ・・・一人できやがったな」ウシシ

澪「むぎと静花さんも一緒だぞ」

梓「ということは、私と大村さんを入れ替えすればいいんですね」

唯「どういうこと?」

夏目「じゃあ、おれが向こうへ行きます」スッ

梓「・・・」

夏目「おはようございます」

紬「おはよう~」

静花「みなさん揃っていますのね」

秀輝「ふぁ・・・ねむ・・・」

菜々子「ほら、座んな」

紬「よいしょ」

夏目「あれ?」

紬「どうしたの?」

夏目「いえ、琴吹さんが座れるように席を空けたつもりなんです・・・」

紬「風音さんも来るから、そこに座ってもらいましょう」ニコニコ

夏目(それだと、中野に睨まれそうなんだけどな・・・やっぱり)

梓「・・・」ジロ

唯「なんかね、胸が締め付けられるんだよ」

澪「分かるぞ」モグモグ

梓「やはり朝はご飯に納豆、味噌汁海苔玉子ですね」

風音「そうですね、日本らしい食文化が彩られています」

律「風音も梓と同じこだわりをもっているのか」モグモグ

多軌「・・・」モグモグ

唯「ため息がこぼれちゃうんだ」

澪「そうだな」モグモグ

律「本来なら私ら家に居るはずだからなー」

梓「そうですね。家にいたらこんな気分にならなかったはずです」

多軌「そのせいで胸が締め付けられるんですか?」

唯「そうなのかな・・・」

風音「私も一緒かもしれません。ゴロウとの別れがそこまで来ていますから」

澪「あ・・・」

律「決めたのか・・・?」

風音「はい。阿蘇山で私たちは・・・別れます」

唯「!」

風音「だから、栄養をちゃんと取らなきゃいけませんね」モグモグ

多軌「そうだね・・・」

律「・・・」

澪「ほら、律もちゃんと食べないと」

律「あ、あぁ・・・そうだな・・・」

唯「・・・っ」

梓「唯先輩・・・」

多軌「みなさん、乗っていなかったらどうしていると思います?」

律「ん?」モグモグ

澪「今頃は・・・起きて朝食かな・・・?」

唯「そうだね、そして勉強・・・しないでギー太と練習してるよ」

梓「ちょっと複雑ですね・・・。勉強もしてほしいですけど、練習しているから・・・うーん」

律「悩むなよ。・・・私はまだ寝てるかなー・・・」

澪「起きろ、律」

律「もしもの私を起こすなよ」

風音「クスクス」

唯「帰ったらみんなで図書館に行こうよ」

梓「私も行っていいですか?」

唯「モチのオッケーだよ。和ちゃんも誘おう」

澪「そうだな」

律「めんどうだなー・・・」

澪「面倒なのか、しょうがないな・・・」

多軌「そんな時間が存在していたんですね」

菜々子「隣の席は賑やかだね~。はい、お待たせ」

静花「どうも、ウェイターさん」

菜々子「いつまでそれ言ってるつもりだよ、あんた」

紬「いただきまーす」

秀輝「いただきます」

夏目(しまった、先生の事すっかり忘れてた。今戻ったら変だよな・・・)

秀輝「どうした」モグモグ

夏目「なんでもない・・・。いただきます」

静花「しっかり食べなくてはいけませんわ」

紬「そうですよ」

夏目「・・・・・・はい」

静花「貴志さんのお姉さんが帰られたのは、今朝ですの?」

夏目「は、はい」

静花「そうですか・・・」

秀輝「どうしてそんなことを聞いたんですか?」モグモグ

静花「いえ、少し・・・気がかりといいますか・・・」

夏目(なんだろう・・・、変なところをみられたのかな)

紬「気がかりですか?」

静花「なにか引っかかっていまして・・・さほど重要な部分ではありませんのでお気になさらず」

秀輝「・・・」モグモグ

夏目(なんだろう、気になる)

紬「夏目さんは荷物まとめました?」

夏目「はい。大体は」

紬「・・・そうですか」

静花「どうしてがっかりしてますの?」

紬「手伝おうかと思っていたんです」

夏目「!」ギクッ

静花「そうですわね、時間もありませんし」

夏目「い、いえっ! 大丈夫ですよ!」

紬「どうしてそんなに慌てているの?」

秀輝「いやいや、夏目はこんな顔していても男ですから。女性に手伝わせるのは如何なものかと」

静花「あ、そうでしたわね」

紬「あ、そうですね」

夏目「ちょっ」

秀輝「今思い出したみたいだぞ、夏目が男だって」

夏目(なんだか複雑だなー・・・)ハァ

ガチャ

夏目「あれ、先生・・・?」

先生「遅いわ夏目ぇ!」トウッ

ドカッ

夏目「いつッ!?」

ヒノエ「後ろから狙うなんて卑怯だね、斑」

先生「私の朝ごはんを持ってこないこやつが悪いわ!」プンスカ

夏目「いてて、壁に張り付いていたのか・・・」ヒリヒリ

ヒノエ「待っている間、必死に踏ん張っていたんだがね」

夏目「ふふっ」

先生「笑うなっ! はやく飯を出さんか!」ペシペシ

夏目「・・・はいはい」

コンコン

夏目「!」ギクッ

『夏目くーん』

夏目「なんだ、タキか・・・びっくりした」

ヒノエ「誰だと思ったんだい」

夏目「いや・・・別に」


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