岩瀬「・・・舞佳さん、最後まで言ってないでしょ」

舞佳「ぴぴぃ~ぷ~♪」シラー

紬「あずさちゃん、伝説の二人が目の前にいるわよ~」

梓「伝説になるっていいですね」

澪「伝説だもんな」

律「あぁ、いい伝説だ」

唯「伝説に結ばれた二人だから信じていられるんだね!」

多軌「伝説・・・」

岩瀬「鐘が鳴らなくなったのは舞佳さんが壊したからなんだよ」

夏目「え・・・」

舞佳「へい、すずきお待ち!」

多軌「いただきます」

岩瀬「俺が卒業するその年に直したのは舞佳さん本人なんだけどね」

律「か、感動を返せー!!」

秀輝「おぉ・・・」

岩瀬「伝説といえばね、似たような話が隣町にもあったんだよ」

舞佳「へい、イカお待ち!」

梓「どうもです」

紬「どんな伝説ですか!?」

澪「聞きたい!」

岩瀬「高校の校庭にある一本の樹。その樹の下で卒業の日に、女の子からの告白で生まれたカップルは・・・ってね」

律「素敵じゃないか・・・!」キラキラ

舞佳「私は伝説の坂ってのも聞いたよ」ニギニギ

岩瀬「桜舞い散る中で愛を誓い合った二人は・・・だよね」

舞佳「うん♪」

夏目(とても幸せそうだな・・・)

多軌「ご馳走様です」

舞佳「お粗末さまです」

紬「うふふ」ホカホカ

梓「どうしてむぎ先輩が幸せそうなんですか!」

紬「だって、いいじゃない? 幸せそうな二人って・・・」ポッ

梓「ですよね!」

澪「あ、梓・・・」

秀輝「・・・」

多軌「なんだか、甘い雰囲気になってきたような・・・」

夏目「妙な気配がする・・・」

紬「あら、お姉さん・・・?」

レイコ「・・・」

夏目「うわっ!」

菜々子「お邪魔していいかな?」

律「どうぞどうぞ」

舞佳「先客万来だね~♪」

岩瀬「いらっしゃいませ」

美弥「失礼しますね」

多軌「車掌さんたちも来ていたんですね」

夏目「せ、先生・・・?」

レイコ「お酒の持ち込みはダメだと言われた」

夏目「・・・そ、そうか」

菜々子「ったく! ほら入れって!」

紬「?」

静花「ちょ、ちょっと菜々子さん! ひっぱらないでくださいな!」

菜々子「ほら、隣に座んなよ!」

静花「・・・まったく」

紬「どうぞ~」

静花「し、失礼しますわね」

紬「はい。うふふ」

梓「・・・」

菜々子「へぇ、珍しいね、屋台で寿司なんて」

舞佳「そうでしょ、海外で働いている時に閃いたんだよね~」

澪「か、海外まで行っていたんですか・・・」

舞佳「ダーリンの男を磨き上げるためにね」

岩瀬「あはは・・・」

静花「つ、紬さんは何を食べまして?」

菜々子「なにを緊張してんだよ」

紬「ひらめとすずき、カンパチとカレイです」

舞佳「つむぎって名なのかい?」

紬「は、はい。琴吹紬といいます」

岩瀬「もう一つ伝説があったね、舞佳さん」

舞佳「そうだねぇ」

夏目「?」

美弥「伝説・・・?」

澪「高校卒業の日に告白をして、樹の下で結ばれた二人、鐘の音に祝福された二人
  桜舞い散る坂の上で愛を誓い合った二人、それぞれが永遠に幸せになれるという伝説です」

菜々子「へぇ・・・」

舞佳「それに加えて、新たに生まれた伝説があるのよん」

静花「・・・?」

紬「・・・?」

舞佳「つむぎの樹」

紬「・・・」

舞佳「どんなに離れていても二人の想いを紡ぎ合う願いの樹。そんな樹が存在するのよね」

梓「まるでむぎ先輩みたいですね」

静花「!」

夏目「・・・うん」

紬「まぁ・・・」

梓「む・・・」ジロ

夏目「出会った人を紡いでいくのが琴吹さんだと思ったんですよ!」

多軌「どうして焦っているの・・・?」

紬「そう・・・なのかしら?」

律「そうだな、ヴェガで出会った人たちを紡いだのはむぎ自身だもんな」

澪「うん。それは紛れも無い事実だよ」

唯「そうだね」

梓「・・・」

静花「・・・っ」

菜々子「静花・・・」

紬「・・・」

夏目「中野と静花さんにも言いましたけど。金沢からここ、博多まで・・・
   琴吹さんがいなければ紡がれない人たちがいました」

秀輝「・・・」

多軌「・・・」

夏目「先生とも紡がれなかった時間がある・・・」

レイコ「ん?」ゴクゴク

菜々子「一人で飲んでるね・・・」

夏目「中野が琴吹さんを尊敬する理由はそこなんじゃないかなって・・・思う」

梓「ちょっ!」

紬「まぁ」ポッ

多軌「・・・そうだったんだ」

夏目「うん」

舞佳「いいねぇ、青春だねぇ」

美弥「そうですね」

唯「なっちゃんの言うとおりだよ」モグモグ

レイコ「ほら、飲め」

トクトクトク

美弥「少しだけ・・・」

夏目「あれ、お酒持ち込んでもいいんですか?」

舞佳「構わないよ、ちゃんとお家へ帰ることが条件だけど」

夏目「・・・そうですか」

静花「・・・変わらないのですわね」

紬「しず・・・か・・・さん・・・?」

静花「な、なんでもないですわ」

紬「・・・」

静花「永遠に変わらないものは・・・とても綺麗で美しくて
   とても・・・愛おしいものですわね」

紬「・・・はい」

菜々子「・・・」

夏目「・・・」

秀輝「静花さん・・・」

律「秀輝も頑張れよ!」バシッ

秀輝「いつっ!」

美弥「・・・!」

菜々子「なにを頑張るって?」

律「実はですねぇ」ウシシ

澪「からかうな」

律「いいじゃんか、面白いネタだよな」

レイコ「お前も飲め」

トクトクトクトク

静花「ど、どうも」

夏目(まったく・・・。でも、一人占めしないなんて・・・)

多軌「私もイカをお願いします」

舞佳「はいよ~♪」

菜々子「・・・楽しそうだ・・・憧れるなぁー」

唯「うまうま」モグモグ

梓「唯先輩は幸せそうですね」

唯「こんなにおいしいお寿司食べられるんだよ? 幸せだよ~」ホカホカ

梓「なんだか私も幸せになれますね・・・。サーモンお願いします!」

岩瀬「はいよ」

舞佳「お、板についてきたね」

岩瀬「いつも隣で握っているから、身に付いたよ」

舞佳「そうかい♪」

秀輝「・・・くっ」

美弥「秀輝さん、ひょっとして・・・まだ知らないのですか?」

秀輝「なにがですか?」

美弥「北上緑さんは・・・」

紬「?」

夏目「?」

美弥「博多で、ヴェガを降りられましたよ」

秀輝「―――え」

夏目「!」

律「えっ!?」

紬「そ、そんな!」

美弥「ご存知なかったのですね・・・」

秀輝「―――え」

律「お、おい、しっかりしろ・・・」

秀輝「すいません。お金ここに置いておきます」

舞佳「う、うん。ありがとね」

秀輝「ごちそうさまです・・・。お先に失礼します」

トボトボ

夏目「ひ、秀輝・・・」

紬「緑さんが・・・」

美弥「はい。乗車証も受け取りましたので・・・」

菜々子「・・・秀輝に挨拶も無しか」

静花「・・・っ」

夏目「・・・」

レイコ「行け、夏目」

夏目「あ、あぁ!」ガタッ

タッタッタ

舞佳「・・・」

レイコ「・・・」ゴクゴク

夏目「秀輝!」

秀輝「うん? 夏目か・・・」

夏目「・・・」

秀輝「んー・・・。なんというか、莫迦だよな俺って」

夏目「・・・」

秀輝「時間があると思っていたんだよ。
   まだまだ一緒に居られるって・・・。安心していたんだよ」

夏目「・・・」

秀輝「それがこのザマだよ。なに一つ変わることが出来なかった」

夏目「・・・」

秀輝「俺さ、北上さんと出会って、自分の位置っていうのかな・・・
   そういうのがハッキリと分かったんだ」

夏目「位置・・・?」

秀輝「あぁ、自分が立っている位置な。それがハッキリしているから
   自分を知ることが出来た、自分の小さな世界観を知ることができた」

夏目「・・・」

秀輝「この人と一緒に居ることができれば、自分が・・・大村秀輝がどうあるべき人間なのか
   分かるような気がしていたんだ。隣を歩いてくれれば、しっかり歩いていけるって」

夏目「・・・」

秀輝「・・・」

夏目「・・・秀輝の旅も・・・終わるのか・・・?」

秀輝「さぁ、分からないや・・・。告白して振られるならまだしも・・・、そのチャンスすら掴めなかったからなぁ」

夏目「・・・」

秀輝「今終えたら・・・中途半端になるな・・・」

夏目「・・・」

秀輝「だけど、終着駅に辿り着いたところで、得るものは・・・無い」

夏目「!」

秀輝「・・・少し、一人で考えさせてくれ」

夏目「・・・」

秀輝「・・・じゃあな、夏目」

夏目「降りたり・・・しないよな・・・」

秀輝「・・・おまえは屋台に戻れよ」

スタスタ

夏目「・・・」

舞佳「始まりがあれば終わりがあるように
    出会いもあれば別れもある。ってね」

静花「・・・」

紬「・・・」

梓「降りてしまったんですね・・・」

律「私ら、緑のことなんにも知らないんだよな・・・」

唯「うん・・・」

澪「・・・」

唯「・・・緑ちゃん・・・挨拶くらいしてくれてもいいのに」

紬「・・・うん」

律「・・・」

レイコ「出会いと別れなんて、そんなもんだ」

梓「・・・そうは思いませんけど」

レイコ「・・・ふん」

菜々子「降りなきゃいけない理由があったんだよ。
    それを律たちが思い悩んでいても仕方ないんじゃないかな」

律「・・・うん」

静花「あら、知った口をききますわね」

菜々子「沈んだ空気を浮かそうとしているのに、茶々を入れんじゃないよ」

静花「まぁ、人として成長しましたわね。そんな気遣いができるようになるなんて」

菜々子「おかげさまでね。だけどね、あんたのせいでその気遣いが無駄になったよ」

静花「自分の不甲斐なさを人に押し付けるなんて、やはり成長していませんでしたわね」

菜々子「うるさいよ、毒舌女狐!」

静花「なんですか、この女ターザン!」

多軌「お二人とも・・・」アセアセ

美弥「決められた別れは、ある意味特別なのかもしれませんね」

梓「・・・」

舞佳「お姉さんたちが重い空気を吹き飛ばしてくれて、少し楽になったよ」

静花「それは言わない約束。・・・ですわ」

菜々子「これ・・・京都で?」

レイコ「うむ。うまいだろ」

岩瀬「日本縦断の列車ですか」

梓「はい、北海道からここまで来ました。縦断中なのはむぎ先輩と大村さんだけですが」

紬「・・・」

澪「む、むぎ・・・」

静花「ほら、前を向きなさい」

紬「・・・はい」

静花「彼女は彼女の道を進みましたのよ。あなたがそんな顔していてはいけませんわ」

紬「はい」

静花「・・・」

唯「前を向かなきゃいけないんだね・・・。よぉし、サーモンを!」

律「また食べるのかよ!」

舞佳「は~いよ♪」

唯「だって、おいしいんだよ~とろ~りしてて」ムフフ

梓「さすが唯先輩、切り替えというか、乗り越えがはやい・・・」

多軌「マグロをわさびアリで」

舞佳「はいよ~♪」

梓「わざわざ言わなくてもいいのに」

多軌「乗り越えてみようよ」

梓「食べろって言ってるの? 拒否をする」

美弥「わさびは刺激と同時に食物の殺菌効果、消化、吸収を促進する効果もありますよ」

梓「・・・鼻にくる刺激がいらないと思います。ガリにも同じ作用があると聞きますので
  ガリだけでいいですよ」ガリガリ

律「頑なだな・・・。そこまで嫌か」

岩瀬「舞佳さんと世界を歩いていてさ、色々な土地、様々な人と出会ったんだ」

紬「・・・」

岩瀬「そこで暮らしてみてもいいなと思える場所はいくつもあった」

静花「・・・」

岩瀬「結果的にここに居るわけだから、その場所とは別れてきたんだけどね」

紬「・・・そうですね」

岩瀬「でも、また新しい場所に出会えた。それを繰り返しているんだよね。ありがたいことに」

紬「あ・・・」

静花「二人だから、とも聞こえますが・・・」

岩瀬「あはは」

静花「京都に続いて・・・ここも熱いですわね・・・」

紬「京都?」

静花「えぇ、絵に描いたような大和撫子がいましたのよ。私の次にね」

菜々子「はいはい。さり気に自分を持ち上げるなよな」

舞佳「なになに?」

岩瀬「なんでもないですよ」

舞佳「まぁいいや、へいお待ち!」

唯「来た来た~! むぎちゃんサーモンどうぞ」

紬「・・・うん。ありがとう」

舞佳「へっへへ~」

菜々子「楽しそうだね、憧れるよホントに」

舞佳「楽しいよん!」

唯紬「「 きく~! 」」ツーン

梓「涙目になってるじゃないですか」

岩瀬「はい、お待ちどうさま」

多軌「ほら、梓もどう?」

梓「・・・いいって」 

紬「ネタとシャリと山葵の交響曲ね~♪」

唯「三重奏だよ~♪」

梓「・・・」ゴクリ

多軌「ん~っ、おいしい~」

梓「タ、タキ・・・ひとつ」

多軌「どうぞ・・・っ」ツーン

律「どれどれ」ヒョイ

梓「・・・あ」

律「うまいな!」

岩瀬「ありがと」

梓「す、すいません。マグロを・・・」

舞佳「はいよ!」


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