ガチャ

先生「とうっ」ピョンッ

夏目「ニャンコせんせーお菓子をうぐッ」ガスッ

シュタッ

先生「暇だぞ夏目!」

ヒノエ「八つ当たりするんじゃないよ」

夏目「お菓子買ってきたけど・・・絶対にあげないからな」

先生「にゃぬ!?」

夏目「一人で食べてやる」バリッ

先生「おいこら!」

夏目「もぐもぐ。ヒノエもどうだ」

ヒノエ「いただくよ」

先生「よ、よこさんか!」

夏目「ダメだ」

先生「ぐぬー!」

ヒノエ「お茶でも欲しいね」

夏目「ほら」

ヒノエ「ありがとよ」

先生「まったりするでないわ!」

夏目「うるさいぞ、ニャンコ先生」モグモグ

先生「おいしそうに食べおって・・・!」

prrrrrrrrrrr

夏目「発車か・・・。色々あったな・・・」

先生「もぐもぐ」

プシュー

夏目「次に停車する博多でさ、海の中道という場所があるんだ。自然があっていいみたいだぞ」

ヒノエ「そうかい、退屈だったら行ってみるとするかね」

先生「もぐもぐ、酒はあるのか、もぐもぐ」

夏目「あるんじゃないかな、屋台のような・・・」

先生「そこへ連れてけ!」

夏目「また屋台でお酒を飲むつもりか、ダメだぞ」

先生「どうしてだ! 窮屈で退屈している私を労おうと思わんのか!」プンスカ

夏目「妖が人間社会で満喫しようとするなよ・・・」

ヒノエ「多軌の小娘に連れられて来たはいいが、いつ帰るかは分からないんだよねぇ」

夏目「あ・・・、えっと・・・。明後日の昼前に到着するよ」

ヒノエ「そうかい。それじゃもうちょっとの辛抱だね」

先生「私は行くぞ」

夏目「ダメだ」

先生「むむぅ」イライラ

夏目「お菓子全部食べたじゃないか」

先生「足らん!」

夏目「それじゃ、ガイドブックでも読んでてくれ」

先生「読みきったわ。新聞はないのか!」

夏目「しょうがないな・・・。分かったよ」

緑「・・・一つ」

店員「はい、ありがとうございますぅ」

緑「・・・どうも」

店員「いらっしゃいませ~」

夏目「新聞ありますか?」

店員「申し訳ないですぅ。たった今売り切れてしまって」

夏目「あ・・・。そうですか・・・」

緑「読み終わったらあげるわ」

夏目「・・・あ、ありがとうございます」

夏目(他に読み物とかないかな・・・)

緑「・・・」

菜々子「あ、緑・・・」

緑「・・・」

夏目(昼の出来事で・・・。戸惑うな・・・)



―――――1号車


菜々子「どうして私を叩いたのか、聞かせてくれ」

緑「・・・別に」

夏目「・・・」

菜々子「その答え方だと理解できないんだよ。ちゃんと言ってくれないかな」

緑「・・・」

菜々子「・・・正直に言うと、私と静花は・・・友達じゃなかったんだよ」

夏目「!」

緑「・・・」

菜々子「あの時点まではさ・・・。だから動けなかった。見てはいけないものを『見てしまった』
    遠い場所にいる静花とどう接しればいいのか・・・って」

夏目(それは、今までのように関わってはいけないということ・・・)

菜々子「それでも、なにか理由があれば動けたかもしれない。
    紬ちゃんの為、律に頼まれたから・・・とか理由があれば」

緑「・・・」

菜々子「緑に叩かれて、諭された時・・・、頭が真っ白になった」

夏目「・・・」

菜々子「どうしようもなく嫌いなはずなのに、ケンカばかりしてるのに、
    どこかで繋がっていたことを知ったから」

緑「・・・」

菜々子「それが途切れてしまったことに、気づいたから」

夏目「・・・」

菜々子「でも、また・・・。なんとか・・・繋ぐことはできたかな」

緑「・・・そう」

菜々子「だからさ、あの一発はけっこう効いたんだよ」

夏目「・・・」

緑「・・・あの時のあなたが、苛立ったから」

菜々子「・・・」

緑「・・・それだけ」

菜々子「そっか。・・・分かった」

夏目(菜々子さんの表情が穏やかになった気がする)

緑「・・・静花さんは?」

菜々子「色々と考えてみるって、個室に篭ってるよ」

夏目「・・・」

菜々子「そんじゃ、仕事に戻るよ。付き合ってくれてサンキュ、夏目」

夏目「・・・いえ」

緑「・・・」ガサッ

夏目(話は終わったとばかりに・・・新聞を広げた・・・)

夏目「後で夕食をとりに食堂車へ行きます」

菜々子「待ってるよ。じゃあね」

緑「・・・」

夏目(・・・おれも戻ろうかな)

緑「・・・あなたはどこまで行くの?」

夏目「阿蘇駅で降ります」

緑「・・・そう」

夏目「北上さんはどちらまで・・・?」

緑「・・・次」

夏目「?」

緑「・・・」

夏目(博多まで・・・?)

秋子「あ~! こちらにいらしてたんですね!」

夏目「え・・・?」

緑「・・・」ペラッ

秋子「私、次の駅で降りるのでご挨拶にきました」

夏目「あ・・・」

秋子「金沢からここまで、楽しく旅ができました~! ありがとうございました!」

夏目「い、いえ・・・」

秋子「お姉さんにもよろしくお伝えください!」

夏目「は、はい」

秋子「北上さんも、ありがとうございました」

緑「・・・別に」

秋子「それでは~!」

タッタッタ

夏目(そうか・・・。降りてしまうのか・・・)

緑「・・・」

夏目(この気持ちはなんだろう。寂しいのかな)

緑「はい、あげるわ」

夏目「あ、ありがとうございます」

緑「・・・どうしたの?」

夏目「秋子さんの挨拶で・・・旅の終わりが見えてきて、寂しいのかもしれない・・・です」

緑「・・・そう」

夏目(こんなことが言えてしまえるのは、おれがこの人に心を許しているからだろうか)

緑「人は、出会えば必ず別れるものよ」

夏目「・・・」

緑「必ずね。・・・それじゃ」

スタスタ

夏目(少し、悲しい言葉だと感じた)


紬「・・・そうなのかしら」

梓「なにがですか?」

紬「別れは寂しいけれど・・・。悲しいことではないと思うの」

梓「・・・はい」

紬「だからね、さっきの北上さんの言葉に違和感を感じたのよ」

梓「そうなんですか・・・」

夏目(個室に戻りたいのに捕まってしまった。先生、もうすこし待っててくれ)

紬「・・・うーん」

梓「なにか考えているんですか?」

紬「うん。あのね、あずさちゃんと私が別れて、幾つかの歳月が流れたとするでしょう?」

梓「・・・はい」

紬「その時間の流れの中で、あずさちゃんが私を忘れてしまったことは――」

梓「忘れるわけありません」キリ

紬「まぁ」ポッ

夏目(そろそろお暇させてもらおうかな)スッ

「グァア」

夏目「うわっ!」

紬「あら、ゴロウちゃん」

梓「あ・・・また抜け出してきたのかな」

夏目「く、熊!?」

梓「風音呼んできます」スッ

紬「お願いね~」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

紬「本当は触らない方がいいと思うけど・・・よいしょ」スッ

ゴロウ「グァ・・・」

紬「ここに座っていてね」

ゴロウ「・・・」

夏目「な、慣れているんですね」

紬「何度か会っているのよ」

夏目「色んなことが起きて・・・。飽きさせませんね」

紬「うふふ、そうね~」

ゴロウ「・・・グァ」

ピノ『ここにいたのね!』ピピッ

紬「あら、ピノちゃん」

ピノ『ご主人様を呼んで来るのだわ』ピピッ

夏目「どこにいるんだ?」

ピノ『食堂車ですわ』ピピッ

夏目(中野が向かったのは寝台車だから反対方向だな・・・)

ピノ『おしゃべりしている時ではないのだわ』

夏目「ピノはここにいてくれ、おれが呼んで来るよ」

ピノ『よろしいのかしら?』ピピッ

夏目「食堂車で匂いを嗅いで・・・」ハッ

紬「・・・」ジー

夏目「食堂車にいたらピノが走り回って料理長に怒られると思うなー」

紬「なちゅらるに会話していました」ジー

夏目(やばい! こんなことを積み重ねたらまた常識が上書きされてしまう!)

夏目「な、なんとなくですよ」アセアセ

紬「・・・そうですか」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

律「夏目とむぎか、ちょうど良かった。ゴロウを・・・ここにいたか!」

夏目「え・・・?」

紬「りっちゃんも探していたのね」

律「おう、むぎが保護してくれてたんだな。・・・呼んでくる」

テッテッテ

ピノ『ご主人様とゴロウの為に一生懸命探してくれていたんですのよ』ピピッ

夏目「・・・」

ゴロウ「・・・グァ」

梓「個室にいませんでした」

紬「今、りっちゃんが迎えにいったから平気よ~」

梓「そうですか。律先輩も探していたんですね」

紬「うん」ニコニコ

ピノ『感謝するのだわ』ピピッ

夏目「・・・」

澪「か、可愛い・・・」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

澪「・・・な、撫でたい」

唯「ダメだよ澪ちゃん。風音ちゃん以外の人に慣れたら今後ゴロウちゃんが危険なんだよ」

澪「そ、そうだったな・・・。堪えろ私っ」グググ

梓「唯先輩も探していたんですね」

唯「うん。一大事だからね~」

紬「そうね、事情を知らない人に見つかったら大変よね」

ゴロウ「グァ」

夏目(守られているんだな・・・)

ピノ『あ、ご主人様!』ピピッ

風音「す、すいません!」

紬「いいのよ。それより、はやく個室へ連れて行ったほうがいいと思うわ」

風音「は、はい。行くよ、ゴロウ」

ゴロウ「・・・」モゾモゾ

ピノ『ありがとうなのだわ』ピピッ

夏目「・・・」

風音「本当にありがとうございました。失礼します」ペコリ

紬「それでは~」

律「無事解決だなー。夕飯食べに行こうぜ」

澪「いいけど、博多で食べないのか?」」

唯「博多到着が8時だからね、お店開いてるかな?」

紬「屋台が有名よね、おでん屋さんないかしら」

梓「博多の屋台でおでんですか・・・」

夏目(おれたちはどうしようかな・・・)

律「私はお腹空いているんですよ、今食べたいのですよ」

澪「そうか」

律「どーすんだー?」

紬「多数決にしましょう」

梓「それでは、博多で食べたい人挙手を」

紬「はい!」

澪「はい」

唯「はい」

梓「・・・律先輩すいません。私もです」

律「しょうがないなぁ、もぅ・・・」

唯「もみじ饅頭食べないからだよ」

律「食べたけどさ・・・一個だぞ」

唯「わたしは2つだよっ」チョキ

梓「・・・」パー

夏目「あの、屋台ってラーメンしかないんでしょうか」

紬「どうなのかしら、観光ガイドにも載っていないから分からないわ」

夏目「そうですよね・・・」

澪「夏目も一緒に行こう」

夏目「え?」

澪「夕食を一緒に、だ」

夏目(先生もいるから・・・断るしかないよな・・・)

多軌「私も行きたいです!」

夏目「タキ・・・」

澪「うん。みんなで行こう」

梓「決定ですね」

唯「それじゃ、秋子ちゃんと遊んでくるよ~」

律「そうだな、博多まで時間無いからそうしようぜ。澪も行くぞ」

澪「うん。それじゃ二人とも、到着したらホームで待ち合わせだ」

多軌夏目「「 はい 」」

紬「ラーメン以外にもあるのかしら」

梓「おでん屋さんはありそうですね」

紬「たまごと白滝が食べたいわ」キラキラ

梓「のど越しがいいんですよね」

多軌「座っていい?」

夏目「どうぞ」

紬「夏目さんとタキちゃんははどこで降りるの?」

多軌「阿蘇駅です」

梓「最終駅の一歩手前だね」

夏目「・・・」

多軌「せっかくみなさんと仲良くなれたのに・・・」

紬「うん。さびしいわね」

梓「むぎ先輩、さっきの話の続きですけど」

紬「うん・・・?」

夏目「・・・」

梓「私がむぎ先輩を忘れない理由は、この旅で自分が変われたと自覚しているからです」

紬「・・・」

梓「変わった自分がそこにいるのなら、忘れたことにはならないと思います」

紬「・・・」

梓「変えてくれたのは、他ならぬ・・・むぎ先輩ですから」

紬「あずさちゃん!」ダキッ

梓「むぎせんぱいっ!?」

多軌「・・・」

夏目「・・・」

紬「ありがとう~」

ギュウウ

梓「・・・い、いえ」

紬「変わった自分がいるのなら、人を紡ぐことができているのなら、忘れたことにはならないのね」

梓「はい!」

多軌「・・・」

夏目(そうか・・・。琴吹さんの心の中で静花さんは存在しているんだ・・・)

ガチャ

先生「とうっ!」ピョン

夏目「・・・」サッ

先生「かわされたッ!?」

バコーン

先生「ふぐっ!」

ヒノエ『哀れだね』

夏目「壁に突撃なんて、無謀すぎるな」

先生「」プシュー

多軌「よいしょ」ギュウ

夏目「もうすぐ博多に到着だけど、ヒノエはどうする?」

ヒノエ『ここにいるさ』

夏目「そうか、分かった」

ガタン ゴトン

多軌「あ、ホームに入ったよ」

夏目「・・・あぁ」

プシュー

多軌「よっと!」ピョン

夏目「博多、到着・・・と」

多軌「夏目くん」

夏目「ん?」


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