斑『夏目か・・・』

ヒノエ『おや・・・。どうしたんだい』

夏目「戻ってこないから心配したんだぞ」

斑『ここで一晩中休んでいただけだ』

ヒノエ『楽でいいからね』

多軌「ここに『居た』んだね」

夏目「ありがとう、タキ。見つかったよ」

多軌「ううん」

斑『友人帳目当てで絡んでくるヤツがいないからな、お守りから開放されたわ』

ヒノエ『よく言うよ』

夏目「・・・まったく」フゥ

多軌「ふふっ」

斑『おい、夏目』

夏目「なんだ?」

斑『あの娘、どうする気だ』

夏目「・・・」

ヒノエ『依代姿の斑の声が『聞こえる』のと、妖が『見える』とでは全然違うよ』

夏目「・・・あぁ」

多軌「?」

斑『・・・』

ヒノエ『解呪の時にこの土地の力が宿ってしまったんだね』

夏目「そうだったのか・・・」

多軌「・・・」

夏目「タキ・・・。琴吹さんは今、『見えている』んだ・・・」

多軌「・・・うん」

斑『おまえはどう思う、夏目』

夏目「・・・この景色は・・・『見えなくていい』と思う」

斑『そうか・・・』

どろん

先生「ヒノエならその力を奪えよう」

ヒノエ『しょうがないね』

夏目「・・・」

多軌「・・・」

先生「運よく見つけられれば、娘どもの常識を正常に戻してやれるんだがな・・・」

夏目「誰を見つけるんだ?」

ヒノエ『昨日すれ違ったヤツだよ』

先生「大妖怪がこの地に来ているらしい」

多軌「大妖怪・・・?」

クー「見ろ昇! 透! 鳥居だ! 鳥居があんなところにあるぞー! ひゃっほー!」

昇「待てって、クー!」

透「クーちゃーん!」

タッタッタ

「高上まではしゃいじゃって・・・」

「美咲様は行かれないのですか?」

美咲「え、あ・・・ええと・・・」モジモジ

静花「賑わってまいりましたわね」

菜々子「私は行くよ。じゃあね」

律「また後でー!」

秋子「私も失礼します~!」

風音「私もこれで」

梓「うん。またあとで」

唯「ヴェガでね~」フリフリ

澪「・・・」フゥ

緑「・・・じゃ」

秀輝「・・・うん」

律「・・・」ニヤリ

紬「私たちはどこへ行きましょう」

梓「昨日提案した弥山はどうでしょう」

唯「いいですな! ぜひ行きましょう!」

梓「どういう場所か知っているんですか?」

唯「知りませんな」フフン

梓「・・・行きましょう、先輩方」

紬「静花さんも行きましょう~」

静花「いえ、私も失礼しますわ」

紬「ど、どちらへ・・・?」

静花「人と会いますの・・・。それでは・・・」

スタスタ

紬「あ・・・」

澪「・・・」

律「・・・」

梓「・・・」

夏目「・・・」

先生「ちょうど集まっているな」

唯「・・・お、先生にゃん」

秀輝「先生にゃんって言いづらそうなんだけど・・・。って見つかったのか」

夏目「うん・・・」

先生「おい、小娘」

紬「は、はい?」

梓「こらぁー!」グググ

先生「ふぎゅぎゅ」ムググ

梓「むぎ先輩に小娘っていうな」ジロ

先生「むんっ」ピョン

梓「あ・・・!」

シュタッ

先生「いつまでもやられている私だと思うなよ」キリ

多軌「猫ちゃん~!」ダキッ

先生「ふぉっ!?」

多軌「きゃ~! ツルフカ~!」スリスリ

先生「加減を覚えんか・・・!」ジタバタ

澪「やはりな」ウンウン

律「先生、むぎに用でもあんのか?」

先生「そうだぞ! とぉっ!」ピョン

多軌「あ・・・!」

シュタッ

先生「ふふん」

秀輝「その姿からは想像もつかない身のこなし!」

先生「うるさいわ、アホ!」

秀輝「アホいわれた・・・」

先生「アホー!」

律「やーい、アホー」

唯「りっちゃん・・・大人気ないよ」

律「・・・うん」

夏目「嫌なこと言うな!」ゴスッ

先生「ふぎゅ」

夏目「・・・まったく」

先生「」プシュー

「む、只ならぬ気配を感じます」

美咲「コウさん・・・?」

ヒノエ『おや、この娘も力を持っているようだね』

夏目「え!」

紬「まぁ・・・」

コウ「昇様に近寄らないように成敗致します。えいっ」パサー

ヒノエ『うわっ、なんて娘だい!』

先生「しょっぱいわ!」

唯「おぉ、先生にゃんに塩を撒いてるよ」

美咲「ちょっと、コウさん!」

コウ「えいっ」パサー

先生「ぺっ、ぺっ! やめんか小娘ぇー!」

コウ「本性を現しましたね」

澪「な、なんだこの巫女さんは・・・」

梓「先生を敵として捉えているようですね・・・『聞こえている』ようですし・・・」

美咲「た、高上ー! コウさんがー!」

コウ「み、美咲様・・・、昇様を危険に晒すわけには」オロオロ

先生「ぐぅー、話ができん!」

ヒノエ『いや、ちょうどよかったみたいだよ』

先生「ん?」

紬「ちょうどよかった・・・?」

夏目「?」

律「なんだこのカオス空間は・・・」

澪「さすが厳島神社。昨日でもう慣れっこだよ」アハハ

唯「混乱しております」

梓「・・・」

昇「どうした、佐倉?」

美咲「私にはコウさんを止めることができなくて・・・」

昇「コウが?」

コウ「このネコは取り憑かれています。近づかないでくださいませ」ススッ

昇「うわ、近いってコウ!」

美咲「」ガーン

クー「のっぼるー!」ダキッ

昇「う、うわっ、人の前でくっつくなよ、クー!」

美咲「」ガガーン

秀輝「なにこれ」

夏目「・・・さぁ」

クー「なぁなぁ、もみじまんじゅう買ってくれよぉ~」スリスリ

先生「運がいいな、娘」

紬「?」

コウ「また喋りました、えいっ」パサー

先生「塩をまくでない!」

クー「・・・おまえは」ジロ

先生「久しいな、空幻狐・・・」ジロ

クー「まさか・・・」

先生「ふふん」

クー「誰だ?」

先生「私だ!」カチーン

どろん

斑『この姿に覚えがあるだろう』

美咲「ネコが消えた!?」

クー「ほぅ・・・。中々の大物」

コウ「ここまでの相手ですか・・・」

紬「おぉー・・・近くでみるとふさふさなのね」

律「なにがなんだかさっぱり分からん。ちょっと離れていようか」

唯「そうだね」

梓「ですね」

澪「・・・ふぅ」

多軌「・・・私も」

秀輝「俺も・・・。終わったら呼んでくれ、夏目」

夏目「あ、あぁ・・・」

美咲「どうしてこの人たちネコが消えても驚かないの~」グルグル

昇「さ、佐倉!」ガシッ

美咲「はわ~」グルグル

クー「昇は佐倉を介抱してやれ」

昇「わ、わかった・・・。戦うのか?」

コウ「護り女である私のやるべきこと。昇様を御守致します」グッ

斑『ほぅ、力が途端に上がったようだ。私と戦う気だな、面白い小娘!』

夏目「やめろっ!」ゴスッ

斑『ぐふっ』

どろん

先生「」プシュー

夏目「・・・まったく」

紬「そういうのはよくないですよ」メッ

夏目「・・・」

クー「おい、護り女」

コウ「はい」

クー「術を解け、こいつは昇に害をなすものではない」

コウ「かしこまりました」スゥ

ヒノエ『さっさと起きな、斑』

クー「斑・・・?」

先生「むぅー・・・」

夏目「この人たちも妖の姿の先生とヒノエが『見える』のか・・・」

紬「・・・まぁ」

先生「夏目、コヤツは人ではないぞ」

夏目「え・・・?」

クー「斑か・・・」

先生「ふん、やっと思い出したか」

コウ「知り合いでしたか」

クー「知らんな」

先生「かちーん!」

ヒノエ『話を進めないか、斑』

先生「ぐぬっ・・・! 高貴な私が覚えていて・・・こんなヤツが私を忘れているとは・・・」フルフル

コウ「天弧様に無礼を・・・えいっ」パサー

先生「塩を撒くなというとろうが!」

紬「あなたも先生さんの声が『聞こえる』のね」

コウ「?」

クー「護り女はそういう家系なのだ。力も当然受け継がれておる」

コウ「はい。あちらにいらっしゃる昇様と向こうにいらっしゃる透様の守護を任されております」

紬「・・・あの小さな子ね」

クー「そうだぞ」

夏目「あなたは・・・妖ですか?」

クー「『あやかし』か・・・まぁ、呼び方は違えど同じ類に属することになるな」

コウ「天弧空幻様であらせられます」

紬「てんこーくーげんさん・・・」

クー「ふふん」

先生「おまえ、人間に封じられたと噂に聞いていたが」

クー「解かれたんだよ。私もあの二人を護るようにいわれておる」

先生「人に封じられた妖が人を護るか・・・」

夏目「・・・」

クー「それはそれ、これはこれだ。私は楽しむことにしか興味が持てんのだ」

紬「素敵ですね」

クー「おまえ見所あるな」

紬「うふふ」

先生「空幻狐、おまえに頼みがある」

クー「なんだ?」

コウ「・・・」

夏目「先生が・・・頼み・・・?」

ヒノエ『娘』

紬「私ですか?」

ヒノエ『そうだ。ちょっとこっちへ来な』

紬「はい・・・」

クー「頼みとはなんだ?」

先生「おまえ、幻術が得意であったな」

クー「そうだが?」

先生「この娘、それから向こうにいる小娘どもに催眠術をかけてやってほしい」

夏目「催眠術!?」

ヒノエ『動くんでないよ』

紬「あの・・・?」

スゥゥゥ

紬「あ、あら・・・?」

ヒノエ『・・・』

夏目「ヒノエ・・・なにを・・・」

先生「この娘の力を吸い取っておる。おい、そこのおまえ」

コウ「なんでしょう」

先生「あっちにいる小娘どもを呼んで来い」

コウ「・・・」

クー「呼んできてくれないか」

コウ「かしこまりました」

先生「私には無反応か!」

クー「物の怪であるおまえの言葉に従えないだけさ」

先生「おまえも似たようなものではないか!」

クー「私は今、守り神だ」フフン

先生「私は用心棒だ!」ペシペシ

夏目「張り合うなよ、先生」

紬「ヒノエさんの姿が・・・霞んで・・・」

ヒノエ『おまえは『見えなくていい』んだよ・・・』

紬「ヒノエさん・・・!」

ヒノエ『元の世界へお帰り』

紬「ぁ・・・!」

クー「・・・」

先生「来たか」

律「なんだよ先生、用事って」

唯「なんですかな、先生にゃん」ツンツン

先生「つつくでないわ!」

ヒノエ『・・・どうだい』

紬「『見えない』・・・」

澪「むぎ・・・?」

梓「・・・?」

紬「そこに『居る』のに・・・『見えない』・・・」

多軌「・・・」

先生「本来、妖と人の子とは住む世界が違うのだ」

クー「・・・」

紬「で、でも・・・」

ヒノエ『私は人の子が嫌いだが、レイコのような強さを持ったものは好きだよ。・・・娘』

紬「ヒノエ・・・さん・・・」

夏目「・・・」

先生「まだ『聞こえる』か・・・。おい、空幻狐」

クー「しょうがない。この5人でいいんだな」

先生「うむ。常識レベル・・・。ネコの姿である私が喋るという事実を消してやってくれ」

律「なんだよそれ?」

唯「どういうこと~?」

澪「事実を消す・・・?」

梓「常識レベルを京都以前に戻すという事・・・?」

先生「そういうことだ。おまえたちを『日常』へ帰してやる」

紬「そんな・・・!」

律「へ?」

唯「・・・ん?」

澪「?」

梓「先生の声が『聞こえなくなる』と・・・」

先生「そういうことだな。言葉を交わすことはもうないだろう」

紬「・・・言葉が・・・交わせない・・・のは・・・」

梓「むぎ先輩・・・」

紬「言葉で伝えられないのは・・・辛い・・・ですよ・・・」

先生「・・・」

夏目「・・・」

律「そうだぜ、やだぜそんなの」

唯「いやだよ・・・」

澪「・・・うん。嫌だ」

梓「・・・嫌です」

紬「・・・」

夏目「琴吹さんの為なんです」

紬「え・・・?」

律「?」


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