秀輝「祓うのか・・・」

夏目「あぁ、人に害を与える存在・・・、そう認識されているのが妖だから」

秀輝「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

秀輝「『夏目は妖のせいにはしない』か・・・」

夏目「?」

秀輝「携帯電話持ってるぞ、使え」ヒョイ

夏目「う、うん・・・」

秀輝「・・・?」

夏目「・・・」ピッピッピップ

秀輝「使い慣れてない感じだな・・・。ケータイ持ってないのか」

夏目「おれが暮らす土地では持つ必要が無いんだ・・・」

trrrrr

秀輝「・・・俺も持っている必要がないんだけどな」

夏目「?」

プツッ

『もしもし』

夏目「名取さんですか? おれです」

名取『なんだい、悪戯詐欺かな?』

夏目「?」

秀輝「いや、名乗れよ」

夏目「夏目貴志です」

名取『あぁ、キミかぁ・・・。電話を買ったんだね』

夏目「?」

名取『違うのかい?』

夏目「これは友達のです」

名取『うん?』

夏目「えっと・・・、名取さんは特急ヴェガをご存知ですか?」

名取『あぁ、もちろん知っているさ。テレビの特集やらで色々と話題になっているからね』

夏目「それに乗っているんです」

名取『へぇ・・・。自慢の電話かな?』

夏目「・・・」

名取『あっはっは、冗談だよ冗談。キミからかけてくるなんて余程のことだろう?』

夏目「・・・はい」

名取『緊張をほぐしてあげようと思ってたのさ』キラキラ

夏目(うわ・・・)

名取『きらめいててご免』キラキラキラ

夏目(耐えるんだ・・・! 先生の力が奪われている今、この人しか頼れないのだから!)

名取『・・・それで?』

夏目「・・・あ、はい。えっと・・・時間がかかりますが、聞いてください」

名取『休憩中だから丁度いい、ゆっくり聞かせてもらおうかな』

・・・・・・

・・・

夏目「――と言うわけです」

名取『・・・』

夏目「・・・」

名取『キミはつくづく巻き込まれる側なんだねぇ』

夏目「・・・ッ」

名取『すまないが、ここを離れるわけにはいかなくてね。祓いの仕事もこなさなきゃならない』

夏目「・・・・・・そう・・・ですよね」

名取『柊に行かせるとしよう』

夏目「・・・え?」

名取『封印の陣を施した紙を持たせて向かわせる。それを地に書いて封印しなさい』

夏目「・・・は、はい」

名取『よろしい。かなりの大物らしいから、自ら行きたいのだけれど』

夏目「いえ、名取さんの式である柊を預けてくれるんですから、心強いです」

名取『すまないね』

夏目「封印具は使用しないんですか?」

名取『確か、大阪の次は広島だったね』

夏目「は、はい」

名取『神の島と呼ばれる場所がある。その地に永遠に封じ込めればいい。
   柊は山守りでもあるからね、心得てもいる。地の利を最大に活かせるから、封印の壷よりは効果的だ』

夏目「神の島・・・」

名取『そこは私たちにも有名な場所だからね。知らないなら車掌さんにでも聞くといい。
   その場所を口出してはいけないよ。逃げられると厄介だからね』

夏目「はい・・・」

名取『・・・今出来ることはこれくらいかな?』

夏目「・・・」

名取『夏目・・・』

夏目「はい」

名取『無事に帰ってくるのを待っている人たちがいるんだ』

夏目「・・・ッ!」

名取『キミにも、その子たちにもね』

夏目「はっ、はい!」

名取『私も出来るだけ向かうようにするよ。だから落ち着いて、冷静に・・・そこは心配しなくていいかな』

夏目「・・・」

名取『それじゃ、頑張るんだよ』

夏目「あ、柊はいつこっちに・・・?」

名取『そうだな、大阪に向かわせよう。ヴェガの出発に合わるさ』

夏目「どうやって来るんですか・・・? まさか柊一人列車に乗って・・・?」

名取『柊が一人で旅を、か・・・。それは面白そうだが』

『主様っ!』

名取『あはは。まぁどうとでもなるさ。・・・ところで、用心棒くん今までどうやって過ごしてきたのかな?』

夏目「? 人の姿に変身してですけど・・・?」

名取『あぁ、先日キミが瓶に閉じ込められた件のあの姿に・・・。という事は乗車券は一枚余っているんだね?』

夏目「? そうです」

名取『なるほど・・・。ところで、今撮影待ちなんだがどこに居ると思う?』

夏目「???」

名取『キミの学校さ』

夏目「学校?」

名取『それじゃ大阪で待っていてくれ』

夏目「・・・ありがとうございます」

名取『それはキミが封印をして、無事に帰ってきてから聞こうかな。じゃあね』

プツッ

夏目「・・・ふぅ」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・」

秀輝「どうだった?」

夏目「心強い味方がいる」

秀輝「・・・」

夏目「みんなの旅を無事に終わらせたい」

秀輝「うん。手伝うぜ」

夏目「・・・ありが」

秀輝「礼は言わないでくれ、何も出来ないかもしれないんだ。だからと言って手を抜いたりはしないけどさ」

夏目「・・・うん。解決したらその時に」

秀輝「うし」

夏目「今の会話も聞かれていると思う。どこかでおれたちを監視しているんだ」

秀輝「隠れてコソコソと・・・」

夏目「先生の存在が大きいんだ。きっと恐れているから慎重にならざる得ない」

秀輝「なるほど、狡猾なやつだな」

夏目「だからこそ危険なんだ」

秀輝「分かってる。・・・で、なにをすればいいかな。塩でも借りてくるか?」

夏目「・・・」

秀輝「大マジで聞いているんだけど」

夏目「あぁ、分かってる。そうだな、今走行中だからな・・・大阪で手に入れよう」

秀輝「そういうのだったら京都の方が効き目ありそうだな」

夏目「大阪にも寺はあるはず。違いはそうないよ」

秀輝「・・・そうか。それで、他には?」

夏目「そうだな。二つ。『神の島』と『二人の心の隙』が知りたい」

秀輝「後者は・・・」

夏目「・・・うん。でも、ヤツも待ってくれないから、早めに埋めておいて損は」

秀輝「あのな、人の心の隙を埋めてやろうなんてのは傲慢な考えだぞ」

夏目「でも・・・っ」

秀輝「落ち着け、琴吹さんはどうか分からないけど、秋山さんは時間の問題だと・・・」

夏目「・・・」

秀輝「・・・ふぅ、律を連れてくるから待ってろ。神の島は多分広島だろ?
   車掌さんに聞いてくるよ」

夏目「知っているのか?」

秀輝「愛ちゃんから聞いたことがある」

ガチャ

バタン

夏目「松浦さん・・・。自分で心の隙を埋めて妖を祓った、力を持たない普通の人・・・」

先生「ぷー、ぷー」

『バカめ』

夏目「ッ!」

『滑稽だぞ、小僧』

夏目「封印して、何事も無かったように元に戻す」

『勝手に足掻いていろ。ソイツへの怨みはそう簡単に解けやしない』

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・ッ」

『目の前に『居る』のに何も出来ず歯噛みをして悔しがるその表情・・・それも堪らなく旨いな』

夏目「っ・・・」

『私の友人が喰われて、私は敗れた。逃げて辿り着いたそこで、人の子がもつ負の感情に心を奪われた』

夏目「・・・」

『旨くて旨くて、気がつくと力が膨れ上がっていたよ。次第に力をつけることもできた。今のおまえらを潰すのも容易い』

夏目「ずいぶんとせこい手を使うんだな」

『その手には乗らん、ガキの戯言にしか聞こえんよ。
 斑を見つけたときはさすがに飛び掛りそうだったよ我を忘れて、な』

夏目(こいつにもそれほどの友人と呼べる相手が・・・)

『バカだなおまえ。私に心を許そうとしていたな。だからムスメに危害が及ぶのだ』

夏目「ッ!」

『おまえが『見える』存在でよかったよ』

夏目「――ッ!」ズキッ

『明日の朝、楽しみにしているぞ』

夏目「ま、待てッ!」

シュッ

夏目「あいつッ!」

先生「ずいぶんと舐められておるな。柊の到着をまたずに呪いをかける気だ」

夏目「ッ!」ガタッ

先生「待て、どこへ行く」

夏目「二人がッ!」

先生「今行ってもなにも出来やしない。・・・それ・・・よ・・・り・・・三篠・・・を」

夏目「先生・・・?」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・くそっ・・・おれは・・・」

コンコン

「入るぞー」

夏目「・・・なにもできない」

ガチャ

律「邪魔するよん!」

夏目「・・・」

律「・・・あ、料理長のスープ残してやがる」

夏目「・・・」

律「ちゃんと飲めこらぁ!」

夏目「・・・」

律「って、病人に無理強いはいかんな」ウシシ

夏目「・・・」

律「あ、あれ・・・そんな空気じゃないのか」

夏目「・・・」

律「で、話ってなにかね?」

夏目「いえ・・・もう・・・」

律「?」

夏目(間に合わない・・・)

律「ないのか? ・・・じゃ、私が聞く番だな」

夏目「?」

律「『ソレ』」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「先生・・・?」

律「そう、先生はぬいぐるみでもネコでもないだろ?」

夏目「――ッ!?」

律「その反応はマジだな」

夏目「どう・・・して・・・!」

律「むぎと梓の反応みてりゃなんとなく・・・な」

夏目「・・・」

律「伊達にみんなをまとめている訳じゃないのだよ」

夏目「・・・」

律「なんつって・・・な。・・・なぁ、夏目」

夏目「はい・・・?」

律「澪もむぎも・・・唯は分からんけど、まぁ、一応私も・・・だ」

夏目「・・・?」

律「・・・その・・・。なんだ・・・、夏目をさ・・・弟のように思っているわけ・・・で・・・梓のような感じっての・・・?」プシュー

夏目「ッ!?」

律「特に澪が・・・、それに便乗してむぎが・・・。唯は分からんけど・・・だからだな」プシュー

夏目「・・・っ」アセアセ

律「だから、おまえが隠そうとするのなら聞き出さない。
  けど、抱えているのが辛いならみんなに言ってみろ。解決できるかもしれないだろ!」カァァ

夏目(尚更・・・言えない・・・おれが『居る』から呪いを受けることになる・・・なんて・・・)

秀輝「律は?」

律「は?」

秀輝「律は夏目を弟として可愛がっているのか?」

律「うっさいアホー!」ゴスッ

秀輝「いてぇ!」

律「そう言っただろ!」

秀輝「あ、マジで? ・・・聞こえなかった」ヒリヒリ

律「・・・ったく」

秀輝「車掌さんから聞いてきたぜ」

夏目「秀輝っ!」

秀輝「大丈夫・・・。『聞いている』んだよな」

夏目「・・・あぁ」

秀輝「おっけ」

律「『誰が』『何を』だ?」

秀輝「冗談抜きで、聞かないでくれ」

律「・・・。・・・うん」

夏目「秋山さんはいつ降りるんですか?」

秀輝「待て!」

律「さっきからなんだよー」

夏目「?」

秀輝「夏目! おまえ今自分が言ったこと忘れてるぞ!」

夏目「あ・・・!」

律「んー?」

秀輝「ソイツって、先生に憑いていないといけないのかな?」

夏目「多分・・・。回復されたら元も子もないから・・・」

秀輝「さっきの質問は後で教えるよ。というか・・・どうした?」

夏目「明日の朝にすると宣告があった」

秀輝「ちっ、どこまでも狡いな・・・!」

律「・・・」

先生「ぷー、ぷー」

律「理解できないけど、私の質問には答えられるか?」

夏目「!」

秀輝「質問って?」

律「先生が何者なのか・・・だ」

秀輝「・・・」

夏目「・・・ッ」

律「あ、いや。うん、分かった! なんでもないぞ!」

秀輝「一つ条件で聞きたいことがあるんだけど」

律「先生の正体と条件か?」

秀輝「あぁ。秋山さんの心の隙を教えて欲しい」

律「な、なんでだよ!」

夏目「・・・」

秀輝「律が夏目を想って色んな事をしてくれているから、黙っているのもよくないと思ってな」

律「それとこれとは・・・!」

秀輝「うん。でも、それくらいの綱渡りなんだ。先生のことは・・・」

先生「ぷー、ぷー」

律「マジか・・・」

夏目「・・・ごちゃごちゃにして・・・すいません」

律「・・・」

秀輝「・・・」

律「・・・ふぅ。ま、私も澪が抱えているものは分かってないんだけどさ」

夏目「・・・」

律「今、足踏みしている感じだ。自分を変えたくて必死で、自分を追い越そうと一生懸命走っている」

秀輝「・・・だから、小麦やエレナと一緒に・・・?」

律「あぁ。あの二人から沢山のことを学んでいるんだろうな」

夏目「それは埋まりそうですか・・・?」

律「・・・詳しくは知らないんだ。むぎは知っている節があるけど」

秀輝「そうか・・・」

律「それがなにかあるんだな・・・?」

夏目「・・・!」

律「『心の隙』なんて普通聞かないだろ」

秀輝「だな。・・・いいか夏目?」

夏目「あぁ・・・。だけど、おれから話すよ」

律「・・・」

夏目「先生は妖なんです」

律「『あやかし』・・・?」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「妖怪と呼ばれるものの類」


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