―――――比叡山


レイコ「・・・予兆か」

夏目「先生、シーサーの気配とか分かる?」

レイコ「あっちに憑いて行ったようだ。私がいるからここは無用だと思ったんだろう」

夏目「そうか・・・。でも、常識なんて簡単に覆されるんだな」

レイコ「覆しではない。上書きだ。田沼、タキもその範囲で説明できる」

夏目「・・・」

レイコ「田沼は気配、いわゆる勘で妖を感じ取り、存在を認識することで一般の常識を上書きし、
    私と会話が出来るようになった」

夏目「ニャンコ姿の先生とだな」

レイコ「うむ。タキも陣を書き、その上を通過する妖を認識したのだ」

夏目「先生が妖だという常識が上書きされたと・・・」

レイコ「そうだ」

夏目「琴吹さんと中野の二人は妖の姿を見ることはこの先無いんだよな」

レイコ「私らと別れれば、それらと会うことはまず無いからな
    今までの常識が浸透していくのだ。今が夢であったかのようにな」

夏目「そうか・・・」

夏目(よかったと思っていいんだよな・・・)

レイコ「・・・」

夏目(『聞こえる』だけで・・・終わるんだから、妖と関わりを持たなくて済むのだから・・・)

レイコ「・・・おい、低級」

低級「ひっ! 人の子!」

レイコ「そのやりとりは飽きたわ」ヒョイ

低級「はなせー!」ジタバタ

レイコ「美味そうな酒が沸く幹の在り処は知らんか?」

低級「誰が人の子なんぞに教えるか、イーっだ」

レイコ「・・・ほぅ」ピキピキ

夏目「どこが高貴なんだ・・・」



―――――ヴェガ


夏目「まさか本当にあるなんて・・・」

レイコ「これは取って置く」

夏目「すぐ飲まないんだな」

レイコ「一人ではもったいないからな。すぐ戻るから動くなよ。飯だ、飯を食いに行くぞ」

タッタッタ

夏目「誰かと一緒に飲むってことか・・・?」

夏目(食い意地が張ってるだけじゃないんだな・・・。ちょっと意外だ)

律子「あら、貴志くんじゃない」

夏目「あ、秋月さん・・・飯山も・・・どうしたんですか?」

みらい「荷物を取りに来たんです。唯さん達はまだ戻ってないですか?」

夏目「おれたちも到着したばかりだから、分からないな」

みらい「そうですか・・・」

律子「みらい、急いで」

みらい「は、はい!」

テッテッテ

夏目「飯山は降りるんですね」

律子「えぇ、うちの事務所に入ることになったからこれから忙しくなります」

夏目「・・・そうか、よかった」

律子「・・・」

夏目「前のマネージャーがどういうヤツか知ってますか?」

律子「えぇ。実力はあるって話ですね・・・」

夏目「・・・」

律子「でも、素材を活かせないのなら先は短いわ」

夏目「飯山はどうですか?」

律子「あの子は歌って踊るより、演技方面を固めていく方がいい。歌を辞めたりしないだろうけど」

夏目「・・・」

律子「平沢唯さん含め、HTTのみなさんにお礼を伝えておいてくれると助かります」

夏目「会って言わないんですか?」

律子「・・・酷かもしれないけど、この業界に居る限り時間に追われる日々なので。お願いします」

夏目「・・・」

律子「・・・」

みらい「・・・お待たせしました」

律子「居なかったのね」

みらい「・・・」

車掌「飯山みらいさん。当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

みらい「はい・・・。これ、乗車証です」

車掌「確かに受け取りました」

夏目「・・・」

律子「時間よ」

みらい「もう少しだけ」

律子「・・・」

みらい「・・・」

律子「テレビで頑張り続けていたらあの子たちも納得してくれるわ」

みらい「で、でも」

律子「・・・遅れるわけにはいかないのよ」

みらい「・・・・・・はい」

車掌「・・・」

律子「みらいがお世話になりました」

みらい「あり・・・っ・・・がとうございました・・・っ」

車掌「私も応援していますからね」

みらい「はいっ!」

夏目(行ってしまったか・・・)

車掌「彼女は強いです。たくさんの勇気を与えて、たくさんの勇気を貰って・・・」

夏目「・・・」

車掌「・・・ふふ、負けていられませんね」

夏目「・・・はい」

車掌「あら、秀輝さん」

秀輝「車掌さん、マスコミ連中はもう引き上げたんですか?」

夏目「?」

車掌「はい。少し前に・・・。唯さんと一緒ですか?」

秀輝「は、はい。入り口で待機させてますよ」

車掌「先ほどみらいさんが降りていかれましたよ」

秀輝「えっ!?」

車掌「まだ駐車場におられると思います」

秀輝「分かったッ!」

ダダダダッ

夏目(平沢さんに伝えに行ったのか・・・)

夏目「車掌さん、マスコミって・・・?」

車掌「名古屋城で撮影された演奏がネットで反響を呼んでいるそうです」

夏目(秋月さんが撮ったやつだ・・・!)

車掌「情報を求めてマスコミ関係者が放課後ティータイムの皆さんを探しています」

夏目「・・・それで、秀輝が様子を見に?」

車掌「はい。目を逸らす為に手伝ってくれていますよ」

夏目「・・・秀輝が・・・・・・」

レイコ「ここにいたのか」

車掌「?」

レイコ「飲むぞー♪」

夏目「車掌さんに迷惑だぞ、先生ッ!」

タッタッタ

レイコ「夏目はどこへ行ったんだ?」

車掌「みらいさんのお見送りかと・・・。申し訳ありません、飲酒はもう・・・」

レイコ「・・・それはいかん」

車掌「・・・え、と」アセアセ


――・・・


秋月「そろそろいくわよ」

みらい「はい。・・・HTTFが復活できれば・・・いいなと思ってます」

梓「そうだね」

律「気が向いたらな~」

澪「大物だなぁ」

紬「うふふ」

唯「・・・」

みらい「・・・」

唯「・・・君にはあの太陽が見えるか、あの空が見えるかい?」

みらい「うん。空には輝く太陽がある、とても眩しく
    その事を胸にわたしは・・・夜を駆け抜ける」

唯「自分がどこにいるかさえ見失いそうになったら、太陽を」

みらい「世界を覆う影を明るく照らす、月を」

唯「見つけてキミを想うよ」

みらう「みつけてあなたを想います」

唯「・・・」

みらい「ありがとう・・・。それじゃあ・・・行ってきます」

唯「うん」

みらい「・・・」

唯「じゃあね! みらいちゃん!」

みらい「はい! ありがとうございました!」


夏目「・・・」

さとみ「行ったわね~」

律「これからが正念場なのに」

澪「それなのに笑顔を崩さなかったな」

さとみ「・・・負けてらんないな~」

律「お、なんかあるのか?」

澪「探るなっ」ビシッ

律「あいたぁ」

さとみ「ふふっ、みんなが眩しいわ」

夏目「・・・」

澪「夏目はみらいのドラマを見たことある?」

夏目「いえ・・・?」

律「唯が憂ちゃんと練習したドラマのやりとりだよ、今のは」

夏目「・・・」

さとみ「そのドラマ見てないけど、今の状況と合ってたわね」

澪「唯が太陽かな」

律「みらいが太陽でもおかしくないんだよな」

夏目「・・・」

さとみ「どっちも太陽で、月で・・・お互いの存在を認め合って」

澪「うん」

律「そんな感じだな」

夏目「・・・」



―――――京都駅前

秀輝「みんなは?」

夏目「ご飯を食べに行ったよ」

秀輝「そっか・・・」

夏目「どうしてそんなに一生懸命なんだ?」

秀輝「ん? ・・・なにが?」

夏目「平沢さんの為に走ったよな」

秀輝「・・・旅の終わりが挨拶も無しなんて、寂しいじゃん」

夏目「・・・」

秀輝「平沢さん、みらいちゃんの為にめちゃくちゃ頑張っていたから・・・って感じだ」

夏目「・・・そうか」

秀輝「俺もあんな風に旅の終わりを迎えられるといいけど」

夏目「・・・どうかな。もっと頑張らないといけないんじゃないのかな」

秀輝「そうだとしたら気が抜けないな。・・・って、いつ休めるんだよ」

夏目「休んだら時間がもったいない・・・」

秀輝「ちぇっ・・・。妙に元気になったな」

夏目「ふふ」

緑「旅行なんてただの暇つぶしよ」

夏目「・・・あ」

秀輝「・・・」

緑「顔色・・・よくなったのね」

夏目「そんなにハッキリ分かりますか・・・?」

緑「えぇ・・・」

夏目(やっぱり疲れていたんだな・・・)

秀輝「暇つぶしなら楽しめないんじゃないの?」

緑「・・・楽しいの?」

秀輝「楽しいよ、色んな事が起きて毎日が充実してる」

緑「そう・・・」

夏目「北上さんは旅行としてヴェガに乗ったんじゃないんですか?」

緑「・・・」

秀輝「・・・だんまりですか」

緑「別に・・・。どうでもいいでしょ・・・じゃ」

スタスタ

夏目「・・・」

秀輝「自分の事はぜんぜん喋らないんだよな・・・」

夏目「・・・そうなのか」

秀輝「ご飯食べに行こうぜ、せっかくの京都だ!」

夏目「そうだな。先生を捕まえてからだ」

秀輝「ヴェガにいるのか?」

夏目「うん・・・。車掌さんに迷惑をかけてないといいけど」



―――――ヴェガ


レイコ「どこへ行っていた!」プンプン

夏目「見送りに行ってたんだよ」

レイコ「飯だぞ、京都ラーメンに湯豆腐!」

秀輝「湯豆腐なんて・・・渋いな先生」

レイコ「行くぞ!」

夏目「先生、車掌さんに迷惑をかけていないだろうな」

レイコ「無論だ」

秀輝「車掌さんも大変だよな。いろんな乗客がいるから」

夏目「だから手助けしてるんだ、秀輝は」

秀輝「ま、そんなとこ。・・・俺もラーメンにしようかな・・・京野菜たっぷりの」

レイコ「・・・」ジュルリ



―――――ヴェガ


レイコ「満足だ」ゲフ

夏目「うん。おいしかったな、にしんそば」

秀輝「先生、ラーメン3杯も食べた・・・」

車掌「お帰りなさいませ」

秀輝「ただいま~」

レイコ「寝るか・・・ふぁ」

夏目「・・・」

車掌「秀輝さん、さとみさんを知りませんか?」

秀輝「ご飯を食べに行ったきり見てないですよ」

車掌「・・・そうですか。学校関係者の方が尋ねていらしたので」

夏目「?」

秀輝「さとみちゃんを探していたのか・・・。わざわざこの時間に京都まで・・・」

レイコ「悪いことしたんだな」

夏目「さとみさんが・・・?」

車掌「秀輝さん・・・」

秀輝「分かりました、さとみちゃんに伝えておきます。心構えがあった方がいいですよね」

車掌「助かります」

秀輝「それじゃ、駅前で待ってみますね」

タッタッタ

夏目「・・・」

レイコ「自分を変えようとしているんだな」

夏目「自分を・・・」

車掌「無事に終えられるとよいのですが」

夏目「・・・」


――・・・


車掌「当特急ヴェガへのご乗車誠にありがとうございました」

さとみ「こちらこそ、突然の乗車を快く受けてくださって感謝しています。ありがとうございました」

車掌「いえ・・・」

さとみ「乗車証を・・・お返しします」

車掌「はい、確かに」

夏目(別れの時か・・・)

レイコ「・・・」

エレナ「寂しくなりますワ」

小麦「うん・・・」

さとみ「二人とも元気で・・・。あなたたちには元気をたくさんもらったわ」

エレナ「そういってくれると嬉しいですワ」

小麦「うん!」

さとみ「ありがとう」

澪「・・・」

さとみ「むぎさん・・・、これ和さんが取った景品だけど・・・」

紬「いいの?」

さとみ「うん、大事にしてね」

紬「大切にするね!」

梓「・・・ここでいいんですか?」

さとみ「自分の足でヴェガから離れて行きたいの」

梓「そうですか・・・」

唯「さとみちゃん・・・」

さとみ「急でごめんね、唯ちゃん・・・」

唯「・・・二人も降りちゃうなんて」

さとみ「私にもそんな顔してくれるのね・・・ありがとう」

唯「さびしいよ・・・」

さとみ「みんながいるじゃない、大丈夫!」

澪「げ、元気で・・・ね」

さとみ「うん! ベースとってもかっこよかった。忘れないわ」

澪「あ、ありがとう」

さとみ「むぎさんに髪型変えられた事、少し恥ずかしかったけど楽しかったわ」

澪「うん!」

律「・・・」

さとみ「・・・」

律「じゃあな」スッ

さとみ「・・・宣誓?」

律「ハイタッチだよっ」

さとみ「あ、あぁ。そうね、分かったわ」

パァン

律「へへっ、元気でなっ」

さとみ「うん!」

秀輝「じゃ、俺も」スッ

さとみ「ありがとう、秀輝くん!」

パァン

秀輝「名前で呼んでくれた」

さとみ「空気は読むわよ~」

律「ジョルノだろおまえは」

秀輝「違います」

エレナ「ワタクシもハイタッチですワ」

小麦「私もー!」

さとみ「ふふっ」

パンパァン

澪「わ、私も!」

さとみ「もぅ・・・ちょっと恥ずかしくなってきたんだけど」

パァン

唯「じゃ・・・っあ・・・ね!」

さとみ「唯ちゃんはいつまでもそのままでいて欲しいな」

パァン

梓「さようならです!」

さとみ「少しなまいきだけど、とっても可愛い子」

パァン

紬「よし、こぉーい!」

さとみ「不思議な人ね~」


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