ガチャ

夏目「・・・まだ寝てるのか」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「本当に疲れちゃったのか、先生・・・?」ナデナデ

先生「ぷー」

夏目「ガイドに京都の名物料理の情報載ってるかな」

先生「ぷー、ぷー」

夏目「にしんそば、京都ラーメン・・・京野菜の漬物か・・・塔子さん喜ぶかな」ペラッ

先生「ぷー・・・」

夏目「和菓子も喜んでくれそうだな・・・」ペラッ

先生「・・・む?」

夏目「和食なんて分からないよな・・・。天ぷらうどんでいいかな、先生は」ペラッ

先生「おいこら」

夏目「あ、起きたのか」

先生「『いいかな』とはなんだ!? こっちにも選ぶ権利というものがあるぞ!」

夏目「はいはい。・・・やっぱり定番の生八つ橋かな」

先生「ちゃんと人の話を聞かんかっ!」トウッ

ガッ

夏目「いてッ!」

先生「・・・野菜ばっかりではないか!」

夏目「野菜がおいしいんだよっ! この中性脂肪妖怪!」ガスッ

先生「ぐふッ! にゃ・・・にゃんだと、もやしばっかり食ってるからもやしのままなんだぞ!かいわれ大根!」

夏目「なんだよこの三段腹!」

先生「みてわからんかアホー、三段も無いわ~」タプン

夏目「十分太っているだろ! 痩せてみろよ!」

先生「もういいわバカ夏目!」

どろん

レイコ「ふんっ!」

夏目「先生、どこへ行くんだよ」

レイコ「知ったことか」

ガチャ

レイコ「ばーか」

バタン

夏目「・・・まったく・・・」ゴロン

夏目「しまった・・・。琴吹さんにニャンコ姿で見つかったこと、ちゃんと注意しとけばよかった・・・」

夏目「どうして荷物棚なんかに・・・寝ぼけていたのか・・・?」

ガタン ゴトン

夏目「草津に到着か・・・」

プシュー

夏目(秀輝とエレナさん・・・? ホームでなにを・・・)

秀輝「エレナ、そのデータ消してくれないかな・・・?」

エレナ「せめて、小麦に見せてからですネ」

秀輝「見られるの嫌だから消して欲しいわけで・・・」

エレナ「往生際が悪いですヨ?」

秀輝「使い方間違ってるぞ。・・・恥ずかしいんだって、お願い」

エレナ「しょうがないですネ~」

夏目「・・・」

エレナ「小麦ー!」

タッタッタ

秀輝「あ、やめろー!」

タッタッタ

澪「・・・」

夏目「秀輝はどうしたんですか?」

紬「・・・分かりません」

梓「澪先輩とむぎ先輩は見ていませんからね、なんといいますか
  カマキリと戯れていたんです。それをエレナさんにバッチリ撮られました」

澪「そんなことが・・・」

紬「まぁ・・・」

夏目「・・・」

梓「発車までのんびり景色を眺めましょうか」

澪「そうだな・・・」

prrrrrrrr

夏目(発車か・・・先生が降りた気配は無いな)

紬「そういえば、お姉さんと一緒じゃないのね?」

夏目「え、えっと・・・どこへ行ったんでしょうね・・・」

澪「・・・」

梓「唯先輩たちは大丈夫でしょうか」

紬「大丈夫よ」キリ

夏目「?」

風音「次は京都ですね」

夏目「うん。・・・どこへ行こうかな」

プシュー

ガタンゴトン

夏目「平沢さんたちがどうかしたんですか?」

澪「草津の近くで映画撮影されているらしい。
  みらいに出演させるとマネージャーが息巻いていたよ」

紬「りっちゃんも居るから大丈夫よ!」キラン

夏目「・・・頑張っているんですね」

澪「きっとうまくいくよ」

紬「おふこーす」

梓「むぎ先輩!澪先輩! 2号車行きましょう、2号車」

澪「梓は2号車がお気に入りだからな」

夏目「どこが気に入ったの?」

梓「色彩・・・かな」キリ

夏目(向こうの座席に先生が座っているな・・・外見てるのか?)

梓「あれ、なんだかスルーされたような」

紬「あずさちゃん、行きましょ~」

梓「は、はい」

テッテッテ

夏目「おれはここで失礼します」

スッ

夏目(聞こえなかったみたいだけど・・・いいか
   先生が人の姿で人とどう接しているのか、座って観察してみよう)

夏目「あ、車掌さん・・・」

夏目(気さくな人だから先生も普通に話の相手をしているな・・・)

緑「・・・」

夏目(妖相手に凄いな車掌さん・・・。知らないとしても先生の高圧的な態度に嫌な顔一つしない)

緑「・・・」

夏目(・・・そういう乗客の相手になれているのかな・・・って、盗み見してるみたいで嫌だな)

緑「・・・あれは誰?」

夏目「先生です・・・よ!?」

緑「・・・?」

夏目「い、いつからそこに・・・」

緑「さっきから・・・。どうでもいいけど・・・なにかあるの?」

夏目「いえ・・・」

緑「・・・そう」スッ

夏目「・・・」

緑「・・・」

夏目(本を読んでいるのか・・・。読書家なのかな・・・)

緑「・・・」ペラッ

車掌「こんにちは」

夏目「・・・こんにちは」

緑「・・・」ペラッ

車掌「あちらに貴志さんのお姉さんがお座りになっていますよ」

夏目「・・・は、はい」

車掌「ケンカでもなさったのですか?」

夏目「・・・・・・はい」

車掌「そうですか」

夏目(なんだか恥ずかしい気分になるな・・・)

車掌「せっかくですから、緑さんに話しかけてみてはどうですか?」ヒソヒソ

夏目「え?」

車掌「うふふ、それでは」

夏目「あ、車掌さん」

車掌「はい、なんでしょう」

夏目「あ、いえ・・・なんでもないです」

車掌「そうですか。失礼します」

スタスタ

夏目(どんな会話していたのか気になるけど・・・気にしすぎだよな)

緑「・・・姉と一緒に乗ってるの?」

夏目「・・・はい」

緑「・・・そう」ペラッ

夏目「・・・」

緑「・・・」

夏目「・・・あ」

レイコ「ふん・・・」プイッ

スタスタ

夏目(なんだよその態度・・・!)

緑「仲がいいのね」

夏目「・・・そういうのとは違うと思いますけど」

緑「・・・別に、どうでもいいけど」ペラッ

夏目(部屋に戻ったのかな・・・)

緑「・・・」

夏目(さとみさんの言うとおり、構いすぎかな・・・)

緑「・・・」

風音「あ、貴志さん」

ピノ『元気してますでしょうか』ピピッ

夏目「うん・・・」

風音「?」

緑「?」

夏目「あ、・・・可愛いね、ピノ」

風音「ふふ、ありがとうございます」

ピノ『まぁ、わたくしにはご主人様がおりますので。申し訳ありません』ピピッ

夏目「・・・」

ピノ『そんな熱い視線を送ってもどうにもならないのだわ!』ピョン

風音「あ、ピノ! 待ちなさい!」

ピノ『ここを離れましょうご主人様!』ピピッ

ピョンピョン

風音「まって!」

夏目(・・・なんだ、あのリスは)

緑「・・・」ペラッ

夏目(あの子のことも先生に聞かないと・・・って、本当に依存してるみたいだぁ・・・)グッタリ

緑「・・・具合悪いの?」

夏目「あ、いえ・・・」

緑「・・・そう」

夏目「顔色悪いですか・・・?」

緑「たまにね・・・。血の気がひいているわ」ペラッ

夏目「・・・そうですか」

緑「・・・」

夏目(しばらく外を眺めていよう・・・何も考えず・・・)

夏目「・・・」ボケー

緑「・・・」

夏目「・・・」グゥー

緑「?」

夏目「朝ごはんまだだった・・・」

緑「・・・いつも貧血しそうな顔だから、ちゃんと食べたら?」

夏目(・・・遠まわしにもやしって言われているような・・・気のせいだよな)

秀輝「お、夏目」

夏目「うん?」

秀輝「特に用はないんだけ・・・どな・・・」

緑「・・・」ペラッ

夏目「・・・?」

秀輝「どうしたんだ?」

夏目「ぼんやりと景色を眺めていただけだよ」

秀輝「ふーん・・・」

緑「・・・」

秀輝「・・・」

緑「・・・」ペラッ

夏目(なんだろう・・・秀輝は北上さんを警戒しているのかな・・・?)

小麦「おーっす。こんなとこでなにしてんの~?」

秋子「おヒマなら娯楽車へ行きませんか~?」

秀輝「いいね、行こうぜ」

小麦「やった、軍資金確保」グッ

秀輝「いやいや、声に出てるから。そういうのは聞かれないようにしような」

小麦「分かったよ~」

秀輝「聞こえなくてもそれは無いけど」

小麦「あはははっ」

秋子「貴志さんも行きませんか?」

夏目「いいです」

秋子「そんなキッパリと~! 北上さんはどうですか?」

秀輝「・・・」

緑「・・・いい」ペラッ

秋子「残念です~・・・」

小麦「しょうがないよ、行こ行こ!」

秀輝「じゃあな」

夏目「あぁ・・・」

緑「・・・」

夏目(賑やかだな・・・)

緑「・・・『最大多数の最大幸福』」

夏目「え・・・?」

緑「・・・多数の幸福の影に入る小数の不幸。・・・どう思う?」

夏目「えっと・・・、その言葉には色んな意味が含まれますから・・・」

緑「・・・そう。これは道徳的な観点じゃない。誤解が生じやすい言葉」

夏目(秀輝が話題にした言葉か・・・。どうしたんだろう)

緑「・・・くだらないわね、こんな話」

夏目「・・・」

緑「気にしないで」

夏目「少数に入れば、視点は変わって・・・多数を恨むのかな・・・とは思います」

緑「・・・面白いこというのね」

夏目「・・・」

緑「自身が多数に入って、小数の立場を忘れることになるのなら・・・これほどつまらないものはないわ」

夏目「え・・・?」

緑「なんでもないわ・・・ちゃんと食べなさいよ」スッ

夏目「・・・はい」

緑「・・・私は少数に入っているのかもね」ボソッ

スタスタ

夏目「?」

夏目(おれのこの『見える』力は不幸なのか・・・。いや、力がなければ先生と出会えなかった・・・色んな妖とも・・・。
   論点がズレてるな。おれがこの力で不幸になっても、誰かが幸福になるなんてありえない)

ガタンゴトン



―――――食堂車


店員「いらっしゃいませ」

夏目「一人ですけど・・・」

店員「はい。こちらへどうぞ」

夏目「さすがに空いてる時間か・・・」

店員「ご注文はなにになさいますか?」

夏目「パンセットをお願いします」

店員「かしこまりました」

スタスタ

夏目(一人か・・・)

店員「おまたせしました!」

夏目「いただきます」

店員「ごゆっくりどうぞ!」

スタスタ

夏目(律さんと平沢さん、飯山の3人がいないだけなのに・・・しずかに感じるのは気のせいだろうか)

レイコ「・・・」ドドン

夏目(おいしいな)モグモグ

レイコ「こら・・・」ゴゴゴゴ

夏目「ん?」モグモグ

レイコ「一人で食べているんだな」ゴゴゴゴ

夏目「先生食べたんだろ?」

レイコ「まだだ! 席が埋まっていたからな!」

店員「さっきはすいませんでした~。ご注文は一緒でよろしいですか?」

レイコ「米だ、ライスを食わせろ」

店員「かしこまりました~」

テッテッテ

夏目「・・・」

レイコ「・・・まったく」ヒョイ

夏目「おい、それはおれのハムだぞ」

レイコ「細かいことにうるさいやつだ」

夏目「・・・まったく」

レイコ「腹が減った」グゥー

夏目「先生、小動物でも妖としての力が宿るなんてことがあるのかな」

レイコ「なんだそれは。小動物ってなんだ」

夏目「リス・・・とか」

レイコ「聞いたこと無いな。狐や猫のそういう話はごまんと聞くが。あと狸もそうだな」

夏目「・・・」モグモグ

レイコ「狐は古代より受け継がれる力がある。猫は人の子の傍で力が宿るのかもしれんな」ヒョイ

夏目「・・・」

レイコ「だから小動物が話すなんて例はあまり聞かん」モグモグ

夏目「動物だとしたらどうなんだ? ライオンとか」

レイコ「類を選ばないで会話だと? それが出来たら虫とも話が出来て不思議ではない」ヒョイ

夏目「おい」

レイコ「なんふぁ?」モグモグ

夏目「おれの分がなくなるだろ。ちゃんと後で来るんだから我慢してくれよ」

レイコ「・・・ふん」

夏目「・・・」

レイコ「深く考えても人の子であるおまえには答えなんて出ないさ」スッ

夏目「そうだな・・・ッ!」バシッ

レイコ「なにをする」

夏目「こっちの台詞だぞ。性懲りも無く手を伸ばして・・・」

店員「朝食セットです。仲がよろしいですね」

夏目レイコ「「 それはない 」」




さとみ「あれは・・・貴志くん」

梓「と、お姉さんです」

紬「なんだか雰囲気が変・・・。少しここから様子を見ましょうか」

梓「?」

さとみ「むぎさん・・・?」


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