8月10日




  忌々しい






夏目「ッ!」ガバッ

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・なんだ・・・今の・・・」

先生「ぷー」

夏目(今・・・2時7分・・・か・・・。いやな時間帯だな・・・)

先生「ぷー、ぷー」

夏目「・・・ふぅ」モゾモゾ

夏目「」ウトウト

夏目「」スヤスヤ


ガタン ゴトン

ガタンゴトン



ガタンゴトン ガタンゴトン

ジリリリリリ

カチッ

夏目「・・・ん・・・? ・・・発車していたのか・・・」

夏目「・・・ふぁ、あれ・・・・・・先生は・・・どこだ?」

夏目(また車掌さんのとこへ行ったかな・・・)

ガチャ

バタン

夏目(とりあえず、先生を探そう・・・)

さとみ「おはよう」

夏目「おは・・・あれ?」

さとみ「あ、この荷物? ・・・ふふ」

夏目(不自然だな・・・?)

さとみ「私ね、名古屋で降りる予定だったの」

夏目「・・・」

さとみ「だけど、むぎさんと梓ちゃんに手を引かれて・・・乗っちゃった」

夏目「・・・そうですか」

さとみ「うん。よろしくね♪」

スタスタ

夏目(なんだか、すっきりした表情してる・・・)

――――

店員「いらっしゃいませぇ」

夏目「京都の観光ガイドと、オレンジ、お茶をください」

店員「どうぞ~」

夏目「・・・」

店員「どうかしたんですかぁ?」

夏目「早いなって・・・」

店員「用意していたんですぅ」

夏目「・・・そうですか・・・。ありがとうございます」

店員「ありがとうございましたぁ」

夏目「・・・車掌室の中かな?」

コンコン

「はい」

ガチャ

車掌「貴志さん・・・。どうかなされましたか?」

夏目「用ってほどじゃないんですけど、先生と一緒だと思っていたので・・・。
   仕事中にすいませんでした」

車掌「いえ、お気になさらないでください。
   そうですね・・・あのお方の居場所はわかりかねます。申し訳ありません」

夏目「いえ・・・」

車掌「それでは、失礼します」

バタン

夏目「・・・どこだ?」

夏目「一号車・・・には居ないな」

澪「おはよう、夏目」

夏目「おはようございます」

澪「いい朝だな」

夏目「列車の中から見る朝日って新鮮です・・・。・・・こんな景色なんだ」

澪「・・・・・・うん」

夏目「あ、先生見ませんでしたか?」

澪「え? あ、あぁ・・・見てないぞ」

夏目「・・・?」

澪「な、なんでもない。じゃあな!」

スタスタスタスタ

夏目「?」

夏目「二号車・・・は」

梓「あ、おはよう」

夏目「おはよう。そういえば、山中さん達はどうしたんだ?」

梓「出発する前に降りたよ」

夏目「そうか、挨拶していなかったな・・・」

梓「・・・」

夏目「よろしく伝えておいてくれ」

梓「・・・うん」

夏目「先生みなかったかな」

梓「お姉さんだよね? 見てないけど」

夏目「そっか・・・、ありがとう」

梓「それじゃ」

夏目「あぁ」

夏目「三号車・・・」

律「おっはよん!」

夏目「おはようございます」

律「どうした、朝から元気ないぞ!」

夏目「律さんは朝から元気ですね」

律「まぁな~! 新しく旅が始まったんだ、気合入れて楽しむぜ!」バシーン

夏目「・・・」

律「このポーズについて何か言って欲しいんだが・・・」

夏目「その・・・」

律「夏目はあれか、ツッコミもボケもしない観客側か」

夏目「・・・・・・はい」

律「よーし、ツッコミスキルを伝授してやる! いいか、よく聞けよ」

夏目「・・・」

律「ボケを発見したらツッコミを入れる事から始めてみよう」

夏目(長くなりそうかな・・・。すいません、失礼します)スィー

律「私が夏目に『おまえは澪かっ!』って突っ込むから―――」

夏目「四号車」

唯「貴志くんではないか、座んな!」ポンポン

夏目「すいません、人を探しているので・・・」

唯「お姉さん?」

夏目「はい。見かけませんでしたか?」

唯「見てないよ」

夏目「・・・そうですか」

唯「お姉さんが好きなんだね?」

夏目「・・・・・・いえ」

唯「悪い事じゃないんだよ?」

夏目「いいえ。違いますから」キッパリ

夏目「食堂車・・・に絶対居ると思ったんだけど・・・」

緑「・・・・・・おはよう」

夏目「あ、おはようございます」

緑「・・・」

店員「いらっしゃいませー!」

緑「・・・」

スタスタ

夏目(朝食とるのかな・・・って、この時間だから当然だよな)

秀輝「おはよう、夏目も一緒に朝ごはん食べようぜ」

夏目「悪い、先生を探しているんだ。見てないか?」

秀輝「見てないけど・・・、一緒に探そうか?」

夏目「いや、あと2車両だから」

秀輝「そっか、それじゃ俺は先にとってるな」

夏目「うん」

店員「いらっしゃいませ」

秀輝「混んでますねー・・・」

店員「北上さんとご一緒でよろしいでしょうか?」

秀輝「・・・はい」

夏目「次は、娯楽車か・・・居ないと思うけど」

店員「いらっしゃいませ。遊んでいかれますか?」

夏目「いえ・・・」

店員「そうですか、失礼しました」

夏目(娯楽車で遊んだりするのかな、先生は・・・)

秋子「あ、貴志さん!」

夏目「秋子さん・・・」

秋子「一緒に遊びませんか~?」

夏目「人を探しているので・・・すいません」

秋子「そうですか・・・」ションボリ

小麦「あたしと遊ぼうよ!」

店員「!」

エレナ「小麦ー、店員サンの顔が強張りましたネ~!」

小麦「あっははは! 冗談だよ~!」

店員「・・・」ホッ

夏目「?」

秋子「どういう事ですか?」

エレナ「小麦は、機械類に弱くてですネ、すぐ設備機械を不調にさせてしまうネ」

小麦「そういう事!」エッヘン

エレナ「威張ることではありませんことヨ?」

店員「申し訳ありません」

夏目(謝られてる・・・)

夏目「展望車にもいない・・・どこで見落としたんだ・・・?」

ガタンゴトン

夏目(座って休むか・・・。オレンジとお茶買ったのにな、温くなってしまうぞ先生・・・
   まさか、降りてしまった・・・なんてことは・・・)

夏目「・・・」ゴクゴク

プシュー

紬「・・・」

夏目(琴吹さん・・・? なにを抱えて)ゴクゴク

先生「・・・」

夏目「ブフーッ!」

紬「まぁ・・・」

先生「・・・」

夏目「げほっ、げほっ!」

紬「大丈夫ですか?」

先生「・・・」

夏目「大丈夫っ! どうして琴吹さんが!?」

紬「このネコちゃんぬいぐるみですか?」

夏目(バレてないのか!?)

先生「・・・」シラー

夏目(目を逸らすな!)

紬「・・・?」

夏目「そ、そうです。そのぬいぐるみ・・・」

紬「さっき、客車の荷物棚にあったのを見つけたんです。持ち主を探していたんですが・・・」

夏目「おれのです・・・」

紬「・・・やっぱり」ボソッ

先生「感づかれておるぞ」

夏目(喋るな!)ギロッ

先生「聞こえとりゃせんわ。それより早く受け取れ」

夏目「ありがとうございます」スッ

紬「・・・えっと」

夏目「?」

紬「しばらく貸してくれませんか?」ニコニコ

先生夏目「「 な!? 」」

紬「うふふ」

夏目「ど、どうして・・・」

紬「・・・理由はですね」ジー

夏目(なんで探っているんだ!?)

先生「はやく受け取ってくれぇ~」

紬「・・・無いんです」

律「無いんかい!」ビシッ

夏目「あ・・・」

律「こら、置いていったな・・・夏目」

夏目「す、すいません」シラー

律「目をみて謝れ! 別にいいけどさー」

みらい「おはようございます」

夏目「・・・・・・おはよう」

唯「どうしたの~?」

紬「みてみて~」

唯「おお、でっかいネコにゃん!」

律「変な顔だな・・・悪いけど」

紬「そうかしら? 個性的な顔してると思うわ」

先生「・・・」

夏目(先生、表情変えられないから固まったままだな・・・。面白い状況だけど、放置できないな・・・)

澪「どうしたんだ?」

紬「大きいぬいぐるみを拾ったのよ~」

澪「むぎ、貸してくれ!」

先生「・・・」

紬「どうぞ」

夏目(まずい・・・どんどん状況が悪化していく・・・)

澪「ツルツルふかふかしてる・・・」

先生「・・・」

唯「か、貸して欲しいんだよ!」

みらい「わ、わたしも抱っこしたいです!」

律「私はパス」

先生「このプリチーな容姿を!」

紬「あら?」

夏目(動くなバカ!)

先生「・・・」シーン

律「どうした?」

紬「夏目さん、このぬいぐるみにはギミックが装備してあるんですか?」

夏目「あ、ありますよ」

律「へぇ・・・。どうすればどうなるんだ?」

夏目「買ったばかりなので、分からないんで・・・す・・・」

紬「そうなんですか」

先生「・・・」

澪「ツルツルふかふか~」

唯「澪ちゃん! 渡してくれませんか!」

夏目(ウソを・・・吐くのか・・・この人に・・・おれは・・・)

先生「・・・」

澪「どうぞ」

唯「おぉ~、ツル・・・ふかふかしてないよ~?」

澪「ちゃんとスリスリしてみるんだ」

律「澪が・・・へぇ・・・」

澪「ひくな!」

梓「ここでなにしているんですか?」

唯「むふふ」スリスリ

先生「・・・」

紬「夏目さん、どうかしたんですか? 急に様子が・・・」

夏目「・・・なんでもないです」

梓「あ・・・そのぬいぐるみ・・・」

紬「あずさちゃん、知ってるの?」

梓「はい。夏目のです」

澪「え・・・」

律「ひくなよ」

夏目「・・・」

先生「・・・」

みらい「ゆ、唯さん、私にも抱っこ」

紬「唯ちゃん、夏目さんに返してあげて」

夏目「ッ!」

唯「はいよ、どうぞ」

みらい「あ・・・あ・・・!」

律「諦めろ」ポンポン

みらい「・・・はい」

夏目「・・・どうも」ギュウ

先生「・・・」

紬「あずさちゃん、売店へ観光ガイドを買いに行きましょ」

梓「そうですね、行きましょう」

紬「次はいよいよ京都よ、修学旅行ぶりね」

梓「先輩方と行けるなんて嬉しいです!」

プシュー

唯「みらいちゃん! 仕事を探すよ!」

みらい「はい! マネージャー!」

律「はは、立派なマネージャーになったもんだな」

唯「えへへ」

律「多少なり皮肉を込めたんだけどな」

夏目「・・・」

先生「・・・」

澪「な、夏目・・・?」

夏目「失礼します」

トボトボ

プシュー

ガチャ

バタン

夏目「・・・」

先生「・・・」

夏目「・・・ウソを吐いた」

先生「なら本当のことを言えばよかろう。これはぬいぐるみではないとな」

夏目「・・・言えるわけないだろ」

先生「・・・」

夏目「・・・」

先生「ふんっ」

どろん

レイコ「朝飯食ってくる」

夏目「あぁ・・・」

レイコ「行かないのか?」

夏目「・・・今はいい」

レイコ「じゃあな」

ガチャ

バタン

『私の尊敬する人』

夏目「中野の尊敬する人・・・」

夏目(どうして尊敬しているのか、なんとなくだけど分かっていた)

夏目「だから・・・ウソを吐いたことにショックを・・・受けているのか」

夏目(些細なウソのはずなのに・・・それにショックを受けている自分が居る)

夏目「・・・」


24