===

憂「はあ・・はあ」

純「んっ・・・くっ」

ドサッ

憂「純ちゃん!」

純「ご、ごめん・・脚が」

憂「ちょっと待ってね」ごそごそ

憂「エーテル打つよ」

純「駄目だよっ私なんかに貴重な回復薬を」

憂「大丈夫、まだいっぱいあるから」

憂は背負うカバンを見せる
中には注射器が5本ほど入っていた

憂「動かないで」

バシュ

純「くぅ・・ふう」

憂「どう?」

純「すごい・・・体が楽になった」

憂「よかった」ニコッ


純「なんとか持ちそうだね」

憂「絶対生きて合格しようね」

憂(生きて・・・お姉ちゃんに会うんだ)


「いたぞっ!」

純憂「!?」

ズダァンッズダァンッ

純「憂!」

憂「・・・」

純「憂っ何してるの!逃げるよ」

憂「・・・どこへ逃げても追われるんだもん」

憂「それに残ってるペアは恐らくあの人たちだけ」


憂「これで決めるっ」ザッ

純「憂っ!!」

憂「ごめんね純ちゃん」

ドンッ

純「あっ」

憂が純を押し倒す

純「わあああああああああああ」

斜面を転がり下の雑木林へ姿を消した

憂「・・・・」

女1「・・・武器はどうした」

憂「必要ありません」

女2「・・・狂ってやがる」

憂「いきますっ!!」


~~~


純「・・・・んん」

どのくらい立ったのだろう

真っ暗だった空にぼんやりとした灯が昇る

夜が明けた

純「ハッ」

そうだ憂が・・・

純「ういー!ういー!!」

滑ってきた斜面を登る

うつ伏せになった憂と襲ってきた女二人が倒れていた

純「ういっ!」

憂「・・・・・」

純「うううういいいいいいいいい!!」

憂「・・・じゅん・・ちゃん」

純「!!!憂っ」

憂「だいじょうぶ・・ふたりとも気絶してるだけだから」

純「ばかっ向こうは殺しに来たんだよ?銃を使えば憂なら楽勝だったじゃん!」

憂は腹部に二発と右肩を撃たれていた
弾は抜けているようだが
右腕が力なくだらりと垂れ下がる
触ってみて鎖骨が折れているのが分かった

純「そうだ」

純は憂のカバンを漁る

純「待ってて、今エーテル打ってあげるから」

憂「・・・いいよお」

純「何言ってるの!今使わずにいつ・・つか・・・

純「なにこれ・・・・

純「全部注射器水あめじゃん!」

憂「・・・」

純「まさかあの時私に使ったのが最後の一本だったんじゃ」

憂「えへへ・・・」

純「えへへじゃないよ!なんでそんな嘘ついたんだよ」

憂「ごめんね・・・許して」

純「・・・・」

憂「お願い」

純「バカ」

憂「!・・・純ちゃん?」

純「ばかばかばかばかっ!憂なんて嫌いだ」

憂「じゅんちゃん・・」

純「嘘つき!嘘つきっ!」

憂「ごめんね・・ごめんね」

純「嘘つきは・・・・・

泥棒の始まりなんだぞぉ」ぐすっ

憂「・・・ありがとうじゅんちゃん」

純「うい?」

憂「私・・純ちゃんとお友達になれて本当によか・・・た・・

ストッ

純の手から憂の砂と血に塗れた手が力なく落ちた

憂「・・・・」

純「う・・・い・・?」

憂「・・・・」

純「お姉ちゃんに会うって言ってたじゃん」

憂「・・・・」

純「喫茶店開いたら毎日来てくれるって約束したじゃん」

憂「・・・・」

純「憂の好きなカニグラタンいっぱい作ってあげるよ」

憂「・・・・」

純「ねえ」

憂「・・・・」

純「返事してよ」

憂「・・・・」

ビイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ

島全体に響き渡るような馬鹿でかいブザー音が鳴った
驚いたであろう野鳥が何羽か東の方の海へ飛び立っていく

『無人島バトルロワイヤル6泊7日サバイバルツアー終了のお知らせです
合格者のみなさまおめでとうございます、そしてお疲れ様でした』


みなさまなんて言われても私たちしか残っていないだろうに

純「あ・・ああ」

純「憂っ!」

純「すーーーっ」

右手で憂の鼻を軽くつまみ左手で顎を幾分上げる

純「ふーーーっふーーーーーっ」

これが正しい蘇生法なのかはその時の私には判断できなかった
ただ生きて欲しい
その思いが行動となる

純「憂、絶対死なせたりなんかしないからね」

下衆大学無人島バトルロワイヤル6泊7日サバイバルツアー

受験者60名(30組)

不合格者58名(29組)


気絶16名

負傷39名

死亡3名


合格者~卒業~





平沢 憂
鈴木 純


憂はこのサバイバルで支給されたグロック17のセーフティを一度も下ろさなかった

===


純「・・・」

憂『あのときは純ちゃんがじ、人工呼吸してくれたから//』

純「そそそそっちじゃなくて」

純「えーっと」

憂『?』

純「うん、いいよ」

純「仕方が無いからやってあげる」

憂『!』

純「感謝しなさいよ」

憂『ありがとう純ちゃん大好きっ』


今度は私が憂を守る番だ

鈴木純22歳が参る


和『純、久しぶりね』

純「お久しぶりです和先輩、下衆大卒業以来ですね」

和『そうね、もっといろいろお話したいけど後回しよ、今はそんな暇がないわ』

純「ええ、それで私は来るミサイルを弾いておババ様に当てればいいんですね」

和『弾くだけで大丈夫よ、あとは自動でとみ婆に当たってくれるわ』

純「へえ」

和『ただ聞かなくても分かると思うけどミサイルを跳ね返すのよ』

純「・・・・」

和『並みの人間じゃ触れただけで木っ端64よ』

純「・・・下衆大卒の私なら出来ると?」

和『憂公認だもの』

純「さもありなん」ニィ

純「・・・」

和『見えたと思ったら瞬き禁止、瞬けば一瞬で目の前にあるわ』

純「はい」

和『大体の時間はこっちで教えるけどあくまでおおよそだからね』

和『タイミングは自分の腕を信じるしか』

純「・・・勝率は」

和『神のみぞ知るってところね』

和純『「さもありなん」』ニィ

和『その調子ならいけそうね』

純「任せてください」

和『頑張って』

両手を天にかざす

西南西からお出ましらしいので目算でその方角を向く

純「すーっはーーーっ」

目を閉じて深呼吸

心を落ち着かせよう

正直、怖い
ものすごく怖い

さっきから脈拍がドンドン加速していくのがわかる
不安で不安でしょうがない

でも大丈夫
きっと成功する
うん

純「よっしっ!」

和『あと30秒ってところね・・・純、準備を』

純「はい」


もう一度手をかざす

うわーよく見るとガサガサだ
洗剤が合わないのかな
安いハンドクリーム使ってるからかな
憂におススメのやつ教えてもらおうかな

純「・・・・・」

あれ?

おかしいな

目が疲れてるのかな

純「・・・・・」ブルブル

手がぼやけて見える

純「・・・・・」ブルブルブル

いやこれは

純「・・・・・」ブルブルブルブル





手が震えてる?


純「!!?」

和『どうしたの純!』


純「ハッ・・ハッ・・・ハ」

脚元がふらつく
力が入らずその場にしりもちを突いてしまった

呼吸が乱れる
息が上手くできない

視界にもやのようなものが入り霞んでいく

手どころか全身がガタガタと震えていた

純「やぁ・・・なにこれ・・」

元気があれば何でもできる
やる気があれば何でもできる

生きていく上で多少の見栄、強がり、粋がりは必要なのだと私は思う

虚栄心が自分を強くすることだってある

ナルシズムこそが自らの存在価値を引き上げる唯一の方法なんだ


から元気

それが私のアイデンティティ


22年間その自己一貫性を押し通し、確かではないがそこはかとなく
食いつないできた



初めて感じた

これが絶望なのか


無理だ

でか過ぎる

誤魔化すことなんて不可能な大きさだ

怖い

怖くて怖くてどうしようもない


怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

純「ひっ・・・・」


純は恐怖に慄いてしまった


純「あ・・ああ」


ごめんね憂

私、弱い人間だった


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