―――――地下街


秀輝「さとみちゃんにもお詫びしないとな・・・」

夏目「律儀だな・・・」

レイコ「うまい」モグモグ

秀輝「おいしそうに食べますね・・・。夏目は食べないのか?」

夏目「あぁ、さっき弁当食べたから。えびふらい弁当」

秀輝「はは、名古屋名物を堪能してるな」

夏目「・・・うん」

秀輝「ライブ・・・すごかったな・・・」

夏目「うん。盛り上がってた」

秀輝「みらいちゃんに勇気を・・・か、やろうと思って出来ることじゃないよな・・・」

夏目「・・・なぁ、どうして毛嫌いされているんだ?」

秀輝「・・・」

レイコ「・・・」モグモグ

秀輝「夏目って、俺より一つ下なんだよな・・・」

夏目「あ・・・」

秀輝「年下に話すのも俺の余計なプライドがな」

夏目「・・・ごめん」

レイコ「私はおまえの何倍も生きているぞ」

秀輝「・・・」

夏目「・・・」

レイコ「・・・」モグモグ

秀輝「ごめんな、夏目」

夏目「・・・」

秀輝「最初に会ったとき、年なんか気にしないで接してくれって言ったのに、
   今、それを盾にしょうもないプライドを守って、不愉快にさせただろ?」

夏目「いや・・・そんなことは・・・」

レイコ「夏目の分頼んでいいか?」

夏目「おい先生!」

秀輝「あははっ、いいですよ。夏目の分なら」

レイコ「よし、おい!」

店員「は、はいっ」

レイコ「うなぎのひまつぶしだ」

店員「・・・」

秀輝「ひつまぶしお願いします」

夏目「あれ?」

店員「か、かしこまりましたぁ」

スタスタ

夏目「あ、ひつまぶしが正しいのか・・・」

レイコ「それで?」

夏目(先生・・・興味あるのか・・・他人の話に耳を傾けるなんて珍しいな・・・)

秀輝「底が浅いっていうか、ちっぽけっていうか」

レイコ「もぐもぐ」

秀輝「俺の家庭はさ、父が医者で母が議員で」

夏目「エリート家族なのか・・・」

秀輝「そう。姉が獣医、兄も牧場を経営してる。エリート家族ってやつ」

レイコ「ふむ・・・」モグモグ

秀輝「そんな人たちに囲まれているから、勉強は嫌いじゃなく、運動も好きになれて」

夏目「エリートの仲間入り・・・?」

秀輝「さぁ・・・。親父のように人を助けたいとか、母のようにその土地に暮らす人たちを・・・とかは全く無い」

レイコ「・・・」モグモグ

秀輝「小さい頃から言われてきた『素敵な家族ね』。俺も思う。誇りに思える家族だって」

夏目「・・・」

秀輝「高校で進路の話がでる度に聞く言葉。『おまえは選択肢が広がっていて羨ましい』」

レイコ「・・・お、来た」

店員「おまたせしました、うなぎのひつまぶしです」

レイコ「うむ」

店員「それでは」

秀輝「あ、お冷のおかわりを」

店員「はい」

夏目(休憩か・・・)ゴクゴク

秀輝「夏目もなにか頼む?」

夏目「いや、水でいい」

秀輝「俺がお冷だからって遠慮する必要ないぞ?」

夏目「飲めるならなんでもいいよ」

レイコ「オレンジだ」

夏目「おい、お冷でいいって意味でなんでもいいって言ったんだぞ」

レイコ「もぐもぐ」

秀輝「さすがお姉さん」

店員「失礼します」コポコポ

秀輝「オレンジジュース追加でお願いします」

店員「かしこまりました」

レイコ「うまいうまい」モグモグ

秀輝「えっと・・・俺の進路のところまでだな。『選択肢が広がっていて羨ましい』」

夏目「・・・うん」

秀輝「成績優秀で運動も出来る、家は金持ち、素敵な家族が居る。恵まれた人生だ」

レイコ「・・・ほぅ」モグモグ

夏目「・・・」

秀輝「でも、友達はいない」

夏目「・・・」

秀輝「周りはいい人たちだぞ、言っとくけど」

夏目「どうしていないんだ?」

秀輝「漫画で読んだ人物で言うなら、『孤独な天才』ってやつ?」

レイコ「・・・面白いなおまえ」

秀輝「はは、皮肉じゃなくそういわれたの初めてですよ」

レイコ「おまえの勝手な解釈だろ。皮肉を込めたぞ」

秀輝「いえいえ、いつも感じる爽快感を感じなかった」

夏目「爽快感?」

秀輝「うん。コイツ皮肉で言ったな、と感じると爽快な気持ちになれる」

レイコ「・・・ククッ」

秀輝「『今、おまえは俺より成り下がった。自分で認めたな』ってね」

夏目「うわ・・・」

秀輝「・・・な、毛嫌いされるわけだろ?」

レイコ「・・・どういう人の子だおまえはっ・・・クククッ」

秀輝「こんな俺をみても笑ってくれるんだな、お姉さんは」

夏目(人ではないからな・・・)

店員「オレンジジュースです」

夏目「あ、どうも・・・」

秀輝「・・・」

レイコ「・・・どうして列車に乗った」

秀輝「え?」

夏目「・・・視野を広げる為?」

秀輝「あ、うん・・・。『井の中の蛙大海を知らず、』を体感するべきかなって・・・」

レイコ「蛙の器でもないがな」

秀輝「・・・」

レイコ「おまえは只の無知な人の子だ。偉そうに語るな」

秀輝「・・・」

夏目「おい、先生・・・」

レイコ「面白いから見ていてやる」

秀輝「・・・」

夏目「す、すまん・・・高圧的で・・・」

秀輝「謝らなくていいよ。してきたことをされただけだから・・・」

レイコ「変わったのか、おまえは」

秀輝「いえ・・・。稚内からここまで来て、変われてません」

レイコ「・・・そうか・・・ほむ」モグモグ

夏目「自分で分かることじゃないんじゃないか・・・?」

秀輝「今朝、思い知ったよ」

夏目「松浦さんとの事・・・?」

秀輝「うん・・・。愛ちゃんを守ってやるなんて気概も無い、小さい人間だってさ・・・」

夏目(結構堪えているみたいだな・・・)

レイコ「後悔してるのか」

秀輝「いえいえ、そんな・・・。そんなんじゃ律にまで嫌われる」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「律だけじゃない、琴吹さんにも、さとみちゃんにも、小麦たちにも・・・」

レイコ「・・・ほぅ」

秀輝「仲間に嫌われるのは・・・つらい」

夏目「仲間・・・?」

秀輝「そう、旅の仲間・・・。・・・不思議な感じだな・・・こんな台詞を吐くなんて」

夏目「『、されど空の高さを知る。』じゃないか?」

秀輝「うまいな。蛙は井の中でも、空の高さを知っているんだよな」

夏目「仲間と呼べる人たちに出会えたんだ、変わったと思う」

秀輝「マジか・・・」

夏目「うん・・・」

秀輝「ヴェガの旅が半分終ってしまったけど、まだ半分あるんだな・・・」

夏目「最後まで行くの?」

秀輝「行ってみたい。そこで俺がどうなっているのか、知りたい」

レイコ「それは見届ける事ができないな」ゴクゴク

夏目「・・・そうだな。もったいないな」

秀輝「ふふっ、そうだな・・・っ」

レイコ「よし、満足した。行くぞ」

店員「ありがとうございましたー」

レイコ「うまかったぞ」

夏目「ごちそうさま、秀輝」

秀輝「いいよ、俺も先生と一緒に食べればよかったな」

夏目「先生?」

レイコ「うむ、許可する」

秀輝「夏目に釣られて言ってしまったけど、許可されたな・・・」

夏目「ふふっ」

秀輝「先生って、何者なんです?」

レイコ「教えん」

秀輝「そうだよなぁ・・・」

夏目「ストレートだな」

秀輝「顔は似ているのに血は繋がっていないみたいだし、
   何倍も生きてるっていうけど、その割には見た目10代だからさ」

レイコ「勝手に疑っていればいいさ」

秀輝「そうする」

夏目(なんとなく安心だな・・・秀輝は吹聴したりしないだろうし・・・)

秀輝「高校入学と同時に家族と離れて住んでて、なんでも一人でやってきたんだよ」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「なんでも余計に出来るもんだから、叱られたことなんて、ここ数年なかった」

夏目「なかった?」

秀輝「今朝、律に叱られた」

夏目「ふふっ」

秀輝「そして、さっき先生に・・・な」

夏目「よかったな」

秀輝「いや、叱られて喜ぶって変だろ」

夏目「おれも叱られる事なんてなかったよ・・・」

秀輝「?」

レイコ「・・・」

夏目(塔子さんに叱られた時は、落ち込んだけど・・・少し嬉しかった・・・)

小麦「おっ、獲物はっけーん!」

エレナ「オー、御三家ですワ!」

小麦「エレナ・・・それ、違う・・・」

秀輝「獲物ってなんだよ、また変なの買わせる気か?」

小麦「あー、その手があったねぇー」

夏目「変なもの?」

秀輝「アクセサリーとかブリーチとか、資金がつきそうになったら露店を開いているんだ」

小麦「そーいう事!」

エレナ「ですが、ここでは難しいですネ」

小麦「それじゃ長島スパーランドへ行こうよ!」

エレナ「グッドアイデアですヨ!」

秀輝「行ってらっしゃーい」

小麦「秀輝くんも行くの!」

秀輝「なんで!」

小麦「あれあれ~? さっきの貸しを忘れたのかな~?」

夏目「貸しって、小麦さんにも作ったのか・・・」

秀輝「う・・・」

エレナ「そうと決まれば、銭は稼げ! ですワ!」

小麦「違うよ、げんは担げだよ」

秀輝「善は急げだろ・・・」

小麦「いいから、行くよ~!」

エレナ「急ぎまショウ!」

夏目「行ってらっしゃーい」

秀輝「夏目も来いよ!」

レイコ「人ごみは嫌だ」

秀輝「そんな!」

エレナ「サァサァ」グイグイ

小麦「あはははっ」

夏目「・・・」

レイコ「行くか」

夏目「・・・うん」



―――――東山動植物園


紬「あら?」

夏目「琴吹さん・・・」

唯「今から入るの~?」

レイコ「そうだ」

和「残念ね、時間が合えば一緒に周れたのに」

憂「・・・」

梓「お勧めはコアラですよ」

夏目「へ、へぇ・・・」

紬「うふふ、それでは楽しんでらしてね~」

唯「バイバーイ」

憂「それでは」

夏目「これからどこへ?」

和「長島スパーランドよ」

梓「澪先輩・・・はしゃいでいるんでしょうか・・・」

紬「そうね、楽しんでいるわきっと」

唯「楽しみだよ~」


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