律「澪・・・!」

律「・・・」

律(何を話したら・・・)

澪「なあ律、最近調子はどうだ?」

律「え?えっと」

律「まあぼちぼちだよ」

澪「そっか、学校とかはどうなんだ?」

律「まあ順調だよ」

澪「じゃあ就職とかは?」

律「一応決まったけど」

澪「そっか、良かったな」

ほんとは他にもっと話すべき事がある

でもそんな事はもういいんだ

いや、良くはないんだけど

そんな事を今聞かなくてもいい

こんな取りとめのない会話がなんだか嬉しかった

澪「放課後ティータイムはどんな感じ?」

律「ベースがいないからな、いまいちさ」

澪「そっか」

澪「新しいベースとかはいないんだ」

律「当たり前だ」

律「放課後ティータイムのベースは澪しかいないだろ」

澪「・・・ありがとう」

律「だから当たり前の事だって言ってるだろ」

澪「・・・うん」

律「今日は泊まっていくんだろ?」

澪「えっ」

律「もう遅いし泊まっていけよ」

澪「そんな、悪いよ」

律「悪いと思うなら泊まっていけ」

律「嫌ならいいけど」

澪「そんな、嫌なわけないよ」

律「じゃあ決まりだな」

澪「う、うん」

律「澪が家に泊まるのなんていつ以来だろ」

澪「昔はよくお泊りしてたな」

律「そうだなー・・・」

ふと澪の彼氏の事が頭をよぎる

彼氏とはお泊りしてたんだろうか?

でも私はもう何も聞かない事にした

私が聞くんじゃなくて、澪が話してくれるのを待とうと思った

いつか自分から話してくれる日を待とうと

それがほんとの優しさってもんじゃないかと思ったから

律「晩御飯は食べたのか?」

澪「まだ」

律「じゃあ作ってやるよ」

澪「ありがと」

律「ハンバーグでいいかな、ちょうど材料もあったし」

澪「うん」

律「高校の時みんなで家にご飯食べに来た事あったよなー」

澪「そうだったな、懐かしい」

律「聡ももう高校生になったんだぜ」

澪「へえ、あの聡が」

律「生意気でさー、反抗期ってやつかな」

律「私と目合わせないんだぜ?」

澪「照れてるんじゃないのか?」

澪「律ももう大人の女性だから」

律「ぶっ」

律「何言ってんだ気持ち悪い」

澪「あはは」


律「出来たぞ」

澪「いただきまーす」

律「おいしい?」

澪「うん、おいしい」

澪「律は意外と女の子してるからな」

澪「可愛らしいとこあるよ」

律「だからさっきから変な事いうな!」

律「ったく、久々に会ったのにいつもとおんなじかよ」

澪「ふふ、いいもんだな」

澪「こういうのって」

律「・・・そうだな」

澪「ごちそうさま」

律「おそまつさま」

澪「お腹いっぱいだ」

律「じゃあ洗い物してるから風呂でも入ってこいよ」

澪「いいの?」

律「いいよ、着替えも出しとくから」

澪「それじゃお言葉に甘えて」

律「・・・」

律(やっと)

律(やっと戻ってくるんだ)

律(澪が)

律(私たちの日常が)


澪「お風呂あがったよ」

律「ああ、じゃあ次は私が」

澪「一緒に入っても良かったのに」

律「家の風呂に二人は狭いって」

澪「狭いからいいのに」

律「ほんと何言ってんだお前は」

律「そういうの一番恥ずかしがってたくせに」

澪「ま、ちょっとだけ大人になったのかもな」

律「へいへい」

律「じゃあ入ってくるから部屋で待っててくれ」

澪「分かった」


律「ふう、いい湯だった」

律「全く澪の奴下ネタみたいな事いいやがって」

律「なんか調子狂うなー」

律「澪ー」ガチャ

律「あれ?」

律「澪・・・?」

律(嘘だろ、いない!?)

律(なんで?なんでいないんだ?)

律(まさかまた居なくなって)

律(そんな!せっかく会えたのに)

律(嫌だ!もう会えなくなるのは嫌だ!)

律「澪!澪どこだ!」

澪「な、なんだよ」

律「へっ?」

澪「別に部屋荒らしたりしてないぞ」

律「じゃなくて、えっとどこにいたの?」

澪「お手洗いだよ、どうしたんだよ大声出して」

律「は、ははは・・・」

律(良かった・・・)

律(そうだよ、澪は帰って来たんだ)

律(もうどこにも行かないんだ)

律「なあ澪、みんなにはまだ会ってないのか?」

澪「うん、律にだけ」

律「そっか」

嬉しかった

澪が私の事を一番に想ってくれてるような気がして

律「みんなにはいつ会うんだ?」

澪「まあぼちぼち」

律「せっかくだしみんな呼ぶか?」

律「驚くぞ、澪がいるなんて言ったら」

澪「・・・みんなには私からちゃんと言うから」

澪「今日は律と一緒にいたいんだ」

律「真顔で言うな、照れるだろ」

澪「照れろ照れろ」

律「このヤロー」

澪「まあ今日は律と一緒でいいじゃないか」

律「ちゃんと皆にも謝っとけよ」

澪「・・・うん」

律「さて、何する?」

律「ゲームでもやるか?」

律「ちょうど聡がPSP置いて行ったし」

律「軽音部!授業中ライブでも・・・」

澪「なあ律」

律「ん?」

澪「放課後ティータイムの曲って増えたのか?」

律「・・・いや、増えてないよ」

律「澪がいなくなってから新曲は一つも作ってない」

律「甘々な歌詞を書く作詞家もいないからな」

澪「えー私は可愛い歌詞だと思うけどなー」

律「そのセンスは未だ健在か・・・」

澪「なんだよ」

律「なんでもない」

澪「あ、外見て」

律「ん?」

澪「雪だ」

律「・・・」

澪「高校2年の時にさ、私一人で海に行ったんだ」

澪「冬が私を呼んでたんだよ」

律「・・・確か歌詞考えに行ったんだよな」

澪「ちょうどその頃に出来たのが『冬の日』なんだけど」

律「知ってる」

澪「あれって半分律の事書いたんだ」

律「あ~・・・」

律「いやまあそうだろうな」

律「いろいろと思い当たる歌詞あったもん」

澪「でも途中でなんか照れ臭くなって、結局自分でも誰にあてて書いたのか分かんなくなった」

律「まあラブソングだもんな」

澪「それでメインボーカルも唯に頼んだんだけどさ」

澪「あの歌は私が歌うべきだったのかも、って後からちょっとだけ後悔した」

律「ふうん」

澪「一応私から律への歌って事もあったし」

澪「なんか照れちゃってほんと良く分かんないまま完成した曲だけど」

澪「それでも私が歌うべきだったのかなって」

律「それで?」

澪「今歌ってもいいかな」

律「え?」

澪「冬の日」

澪「アカペラだけど」

律「あ、うん」

律「じゃあお願い」

澪「良かった」

澪「じゃあ聞いてください」

律「はい」

澪「冬の日、秋山澪バージョン」

律「おお~」パチパチ

澪「ゴホン」

澪「どんなに寒くても僕は幸せ」

澪「白い吐息弾ませて駆けてく君を見てると」

律「・・・」

律(澪・・・)

律(綺麗になったな)

律(大人っぽくなった)

律(外見だけじゃない、歌もそうだ)

律(高校生の可愛らしい声じゃない)

律(透き通るような大人の声)

律(こんなにこいつの事をまじまじと見るのは初めてかも知れない)

律(私のために)

律(歌ってくれるなんてな)

律(澪・・・)

澪「何から話せばいいのかな」

澪「好きから始めていいかな」

澪「舞う雪踊った気持ちみたい」

澪「なんか嬉しいね」

律「・・・」

澪「・・・どうかな?」

律「うん、すごく良かったよ」

澪「そっか、それなら良かった」

律「・・・」

冬の日

こんな歌だったんだ


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