さわ子「…という事なの。
    私には、あの和ちゃんがあんな風になるほどの事とはとても思えなくて…」

澪「…なるほど。わかりました」

さわ子「え?」

澪「和は、確かに唯に怒ったりしません。でもそれは……」





五年前。

さわ子「じゃあ帰りのホームルームを始めます」

さわ子が教室に入ってくると、騒がしかった教室内は静かになった。
その中で、唯は姫子と声を潜めて喋っていた。

唯「姫子ちゃん、見て見て」

唯はノートの端に書いた絵を姫子に見せた。

姫子「ぷっ!唯、アンタの落書きってほんと面白いよね」

唯「えへへ~。ねえ、和ちゃんも見て見て~」

和「ホームルーム中よ。後にしてね」

和は前を向いたまま答えた。

唯「ちょっとだけ!ちょっとだけ見てよ~」

和「はいはい、後でね」

真面目を絵に書いたような和にとって、
ホームルーム中に後ろを向いて私語をするなどという行為は、到底無理な話だった。
自分が後ろを向いたら、確実にさわ子に見つかり、唯と姫子と自分が注意されてしまう。
唯がさわ子に気付かれず楽しく喋り続けられるように、和はあえて唯を無視した。
もっとも、さわ子のいる教卓からその様子は既に見えており、
気付かれていないと和が思ったのは、年相応の幼さによるものだった。

唯「ちぇ~。面白いのに~」

唯はぼやきながら、消ゴムで落書きを消して、また他の絵を書こうとした。

唯「あっ…。ふふふ~」



唯は落書きを消す際にできた消しゴムのカスを手に取った。

唯「えい!」

姫子「ぷっ!」

唯はその消しカスを和の頭に投げた。
消しカスはズボッと和の髪の中に入った。

唯「えいえい!」

唯は消しカスを投げ続けた。
和の頭には消しカスがどんどん溜まっていき、フケのようになっていった。

姫子「ぷっ!ちょ、ちょっと唯、やめなって!和怒るよ?ぷふふっ」

唯「えいえい!」

消しカスがなくなると、唯は消しゴムを千切って投げ始めた。

唯「えいえーい!」

和は無視を続けたが、自分が苛立っているのに気付いた。

おかしい。
なんでこんなに苛々するんだろう。

唯「えいやぁー」

唯は構わず、消しゴムの欠片を投げ続けた。

和の身体が怒りで震え始めた。

私はこんなに短気じゃないはず。
唯のおふざけに対して怒りを覚える事なんて今までなかった。
ザリガニ風呂の時ですら、私は怒らなかった。
なぜ、今私は……。

和は自問する。
しかし答えは出ない。

唯はたまに悪乗りをする。そんなの昔からだ。
私はそれにいちいち怒ったりしないはずなのに。

前を向いたまま、和は自問を繰り返す。

唯が何かやらかしても、悪気のない笑顔を見れば私は全部許せてきた。そのはずなのに。

唯「えーい」

無視無視。ホームルーム中なんだから、後ろを向いちゃいけないわ。

唯「ええーい」

ああ、イライラする。
笑顔を見れば許せるはずなのになんでこんなにイライラするんだろう…。

唯「えいやぁ!」

後ろを向いちゃダメ。後ろを向いちゃ…。
後ろ後ろ後ろ後ろ後ろダメダメダメああああああああ!!!

十五年ぶんの怒りが、和の中から沸き上がってきた。
今まで唯の笑顔でどこかに逃がしていたはずの怒りが、大挙して和に押し寄せる。

唯「ふーーっ」

唯は最後に、消しゴムのカスを机に並べて、和に向けて一気に吹いた。

その時、真鍋和の怒りは頂点に達した。






152:以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2010/09/06(月) 20:28:27.91 ID:xQu4tApL0


終わりです
2、3レス目あたりから澪ゲロの二番煎じだと自分でも気づいてしまったorz
お付きあいいただきありがとうございました