エリ「キャアアアア!!」

信代「紬ィィィ!!!」

澪「う、うぅ……見えない聞こえない見えない聞こえない……」

いちご「……」

悲鳴の大合唱は、帰りのホームルームを終えた他のクラスの生徒にも聞こえた。
騒ぎをききつけた生徒が、何事かと教室に集まってきた。


紬「ひっ…がっ……は…あ…」

その生徒達の目に、信じられない光景が飛び込んできた。
品行方正で知られる生徒会長が、軽音部の琴吹紬に尋常ならざる暴力をふるっているのだ。

和「ダハァァァ!!」

和は紬の口に鉄拳をお見舞いした。

和「どらぁ!!」

和は紬の頭を掴むと、そのまま地面に叩きつけ、馬乗りになった。

それから紬の口に手を入れ、一気に口を引き裂いた。

紬「ぐぎゃぁぁ!!」

いつも鳥が囀ずるように喋る紬があげた醜い悲鳴は、事の異常さを強調した。

ビニールが裂けるような音に、その場にいた全員が耳を塞いだ。

紬「ひっ…ひ…ぎひぃぃぃ…」

紬は涙と鼻水と涎と血にまみれながら、耳まで裂かれた口で必死に命乞いをしようとした。
その顔に、かつてその美貌を羨まれた琴吹紬の面影は最早なかった。

和は両手の親指を紬の目に当てると、ぐっと力を込めて、眼球を潰した。

紬「っ…あ、ああああああ!!!」

光を失った紬は、いよいよ恐怖に飲み込まれた。
漏らした尿の匂いにも気付かず、ばたばたと手を動かして、紬は力なく抵抗した。

和「はっ!」

和が紬の首をごきんと鳴らすと、紬の抵抗は止まった。

しんと静まりかえる教室。

和はその中で、淡々と紬の身体を解体し始めた。
耳を引きちぎり、鼻に指を入れて顔の皮をむしる。
臍に指を食い込ませ、腹を破って臓物をそこら中にぶちまける。
最後に和は立ち上がり、思い切り紬の頭を踏みつけ、頭部を粉砕した。

誰もが悲鳴をあげる事すら忘れるほどの恐怖に包まれていた。

その中にあって、和は悠々と教室を出る事が出来た。




一方、律と春子は保健室で唯を宥めながら、同時に自分を落ち着かせる作業に必死になっていた。
保険医が出張でいなかったため、姫子の治療はできなかった。
もっとも、保健室はおろか、どんな名医でも姫子を救う事ができないのは火を見るより明らかだった。

唯「ふっ…う、うううぅ……」

律「だ、大丈夫。大丈夫だから…」

そう言いながらも、律は自分の身体の震えを抑える事が出来なかった。

なぜ、あの温厚な和があんなに怒り狂っていたのか。
恐らくその原因は唯にあるのだろうが、
今の唯は言葉を失っていたため、律と春子は問い質す事をしなかった。

春子「みんな大丈夫かな…」

律「……」

律は答える事ができなかった。
澪や紬の事が心配だったが、あの教室に戻る勇気はなかった。

春子「私、ちょっと教室に戻ってみるよ」

律は驚いて春子のほうを見た。

春子「大丈夫。いざとなったら和より私のほうが力はあるし」

確かに、律達のクラスで一番の腕っこきは春子だった。
紬もかなりの力もちだったが、春子や信代には及ばない。

律「き、気を付けろよ…」

春子「おう。唯のこと頼んだよ」

そう言うと、春子は保健室を出ていった。

律「…くそっ」

律は、不甲斐ない自分を恥じた。
教室にもどった春子に比べ、律は安全な保健室でただ震える事しか出来なかった。



唯「り……りっちゃん…」

唯がガチガチと鳴る歯の奥から、言葉を絞り出した。

律「な、なんだ?どうした?」

唯はゆっくりと話し始めた。

唯「わたし…私のせい…で……」

焦点のあわない唯の目が、律の顔を探した。
律は唯の手を握り、答えた。

律「今は気にしちゃダメだ。落ち着いてから話せばいいから。な?」

唯「でも、私…私がイタズラしたから……」

律「いいから…。後で聞くから…」

唯「消しゴム……私…が……」


ぎゃああああああああああ!!


突如保健室の外から聞こえた悲鳴が、唯の言葉を切った。


唯「い、今の……春子……ちゃんの……」

律「そ、空耳!空耳だから……」

恐怖は一瞬にして二人の身体を駆け巡り、心を隈無く覆った。

律「大丈夫、大丈夫だって……」

その言葉を遮るように、部屋のスピーカーからさわ子の声が鳴り響いた。


『生徒に連絡します。今校舎に残っている生徒は、
 教室に鍵をかけて絶対に外にでないでください。
 繰り返します。今校舎に残っている生徒は…』


唯「……」

律「……」

沈黙。
重い沈黙。

二人は身を寄せあい、息を殺した。



次の瞬間、保健室のドアが勢いよく蹴破られた。

和「ばああああああああああ!!!!」



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