『痴漢』


――――――――――――ガタンゴトン・・・


紬(サラサラの黒髪ショートヘア、シックなセーター・・・)

紬(それにこの匂い・・・満員電車だから直撃してくるのよね・・・)

紬(う~ん軽音部には黒髪ショートがいないから余計にそそられる・・・)

紬(・・・いけないわよね、うん、いけないわ)

紬(嫌でもちょっとお尻に触れるくらいならありなんじゃ、それに女の子同士だし、ねぇ?)

紬(まぁちょっと感触を確認するぐらいならいいんじゃないかな女の子同士だし、ねぇ?)

紬(いいだろでしょ!?ねぇいいだろでしょ!?よしいいよな!?)

紬(自然に自然に、次にくる揺れを待って、ちょっとした事故を装って、クイック&ソフトなタッチで・・・)


――――――――――ガコンッ! グラ・・・


紬(じゃ、いっきまーーーーーーーす ^^)


サワッ


紬(あれ!?)

紬(私のターゲットに、私のじゃない手が触れてる!!!!!)

紬(この手は・・・・・・おっさん!!!!!!)

おっさん「サワサワサワサワ・・・・」

女「・・・・・・・」ガクガク・・・

紬(痴漢悪漢女の敵!!!!許せませんわ、制裁を加えてやる!!!!)

紬「エィっ!」ギュウウウウウッ

おっさん「ぐぎゃああああああああ!!!!!」手がバキメキゴキャグチャ

紬『おっさんは手を粉砕骨折し死亡が確認されました。以下は痴漢からか弱い女性を救った後の話です』



女「あの、ありがとうございました!」

紬「あららいいのよ、痴漢は女性の共通の敵だもの」

女「恐怖で震えて、何をしたらいいかわからなかったから、ほんとに助かりました!」

紬「わかるわー(手の骨を砕けばよかったのよ)」

女「あなたが颯爽と痴漢の手の骨を粉砕してくれたあの時、まるでヒーローみたいだった・・・」

紬「うふふふふふふ(間違いなく濡れてるわねこの子もうこれはヒップをソフトタッチどころかa●sをfu●kできるレベルだわ)



タッタッタッタ

男「おい女ァ!大丈夫か!!痴漢にあったんだって!!!??」

紬「!?」

女「あ、ともきゅぅぅぅん!うええええん恐かったよぉぉぉ!!!」」ダキィィィ

紬「・・・・・・・(え、なにこれは)」

男「おおよしよし恐かったなぁ!あの、あなたが助けてくれたんですか?」

紬「・・・・・・・・・・・・ええ」

男「ありがとうございました、女があなたのことヒーローだって言ってましたよ!」

女「ともきゅん、今日怖かったこと、忘れさせて?」 ンッ・・・

男「ん?ああそうだな」 チュウウウウレロレロレロ・・・・・

紬「・・・・・・」

紬(あ、急がなきゃ学校遅刻しちゃうわ・・・・)






『今』


――――――――ガタンゴトン キィィィィ ガクンッ プシュゥッ ガラガラガラ・・・――――――――


――――――――――――――――テクテク・・・

紬「・・・・・・・・・・」テクテク

紬(・・・今でも、ふとした拍子に思い出すことがある)テクテク

紬(2年生の文化祭、唯ちゃんが遅れてやってきて、泣いて、ふわふわ時間を演奏して、そして・・・)テクテク

紬(私が勇気を出してアンコールのキーボード弾いたら、りっちゃんがすぐドラムを合わせてくれて、それで・・・)テクテク

紬(澪ちゃんのベースがいっぱいに響いて、梓ちゃんのギターが元気なコードをかき鳴らして、で、唯ちゃんが『もう一回!』って)

紬(あの時はほんとうに最高だったなぁ・・・)テクテク

紬(もうすぐ高校最後の文化祭だけど・・・)テクテク

紬(私たち、あの時みたいな演奏できるかな?あの時みたいな最高の・・・)テクテク

紬(あの演奏のことを思い出すと、同時に不安も沸き起こる・・・)テクテク

紬(あれが私たちのピークだったんじゃないのかなって)テクテクテク



タッタッタッタ

唯「ムギちゃーーーん!!おっはよーー!!」

紬「唯ちゃん・・・おはよう♪」にこっ

唯「えへへ♪ん、どうしたの?なんか「しりあす」な顔してるよ?」

紬「え、そ、そうかな・・・」

唯「もしかして文化祭のこと?」

紬「・・・うん、最近少し不安で」

唯「そうだねー、最後のライブだもんね。私もちょっと緊張してるかな?」

唯「でもねー大丈夫だよ!私家でも毎日いっぱい練習してるから、ギターとMC!」

唯「だからきっと2年生の時よりもっともっと凄いライブになるよ!」

紬「!!!」

タッタッタッタ

律「唯ーーームギーーー!!おーっす!!」

ぽんっ

紬「りっちゃん!お、おーっす!」

唯「りっちゃんおーっす!」

タッタッタ

澪「ちょっと・・・律・・・早い・・・ハアハア、あっムギ、唯、ハアハア・・・おはよう」

唯「澪ちゃんおはよ!」

紬「おはよう、澪ちゃん♪」


律「唯、ムギ、昨日は徹夜で練習してきたから今日は完璧に叩けそうだぞ!」

澪「また古雑誌叩いてたんだろ?聡ノイローゼになるぞ」

律「だって、最後のライブは2年生の時よりもっとうまくやりたいだろ?」

澪「・・・まぁそうだな、最後のライブだもんな」

紬「・・・」

唯「私今MCのセリフいっぱい考えてるんだよ!」

律「MCに熱中しすぎてギターの方を忘れてたりして」

澪「ありそうだ・・・」

唯「ギー太のことも忘れてなんかないよぉ!ねっ、ムギちゃん?」

紬「・・・ふふふ、そうね♪」

紬(そっか、私馬鹿だったな・・・)


紬(みんな、過去に捕らわれずに向上心を持って頑張ってるのね)

紬(なのに私、後ろ向きにばっかり考えちゃって・・・)

紬(私も、あの時のライブを越えられるように、もっといっぱい練習しなきゃね)

紬(そうすれば、過去よりもずっと最高の『今』が手に入れられるはずだもの)

紬(そう、『今』が一番大事なはずだわ!!!)








紬『だから電車の中で漏らしたあの過去はもう忘れてしまいましょう・・・・・』


――――――――――――ガタンゴトン・・・ガタンゴトン・・・


おわり

最終更新:2011年12月29日 01:31