―――――金沢駅


夏目「のんびりしすぎたな」

レイコ「もう出発か」

夏目「先生って楽しんでいたのか・・・?」

レイコ「酒も料理もおいしかったからな」

夏目「・・・」

レイコ「海でも遊べたし、庭で一休みできた」

夏目「・・・そうなのか」

レイコ「人ごみは嫌だからあれくらいが丁度いい」

夏目「それじゃこれからもそういう場所を回ろうか」

レイコ「うむ」

「あ、あのぉ・・・」

夏目「は、はい・・・?」

「ひ、人とはぐれてしまって・・・ですね・・・。わたし・・・ここに来たの初めてで・・・迷ってしまいました」

レイコ「・・・」

「それで・・・その・・・、券売機はどこでしょうか」

夏目「えっと・・・改札口に行けばいいと思うけど」

「そこが分からなくて・・・。案内板みても要領得なくて・・・」

レイコ「どんくさいヤツめ」

「はぅ」グサッ

夏目「こら、先生」

「・・・教師ですか?」

レイコ「似たようなもんだ」

「・・・」

夏目「一人できたの?」

「いえ、アパートの住人とです・・・」

夏目「・・・そう。改札口でいいの?」

「は、はい。多分みんなもいると思いますので!」

夏目(それにしても小さい子だな・・・中学2年生くらいかな)

「宮ちゃんに携帯電話渡したっきりなのが運のつき・・・」ハァ

レイコ「なにかと面倒に巻き込まれるな、おまえは」

夏目「うるさいぞ、先生」

「・・・」ションボリ

夏目「・・・すぐ見つかるから、元気出して」

「・・・はい」

「おーい! ゆの~!」

ゆの「あ、宮ちゃん!」パァァ

宮子「迷子になっちゃダメじゃない」

ゆの「ごめんねぇ・・・」

夏目「お役目御免かな」

ゆの「は、はい! すいませんでした」

宮子「うちの子がお世話になりました」

ゆの「もう、宮ちゃん」

宮子「えっへへ、沙英さん達も改札口でまってるはずだから」

ゆの「そっか・・・あれ、わたしのケータイは?」

宮子「ヒロさんに預けてあるよ」

ゆの「どうして?」

宮子「ゆのに電話しようと思ったけど、あたし操作できないから」

ゆの「あ、そっか。宮ちゃんケータイ持ってないもんね」

レイコ「・・・ふぁ」

夏目「それじゃあね」

ゆの「ありがとうございました!」

宮子「ところで改札口ってどこ?」

ゆの「よろしくおねがいします!」

夏目「はは・・・」

「沙英~! こっちよ~」

沙英「よかった。ヒロ、・・・あれ、夏目は?」

ヒロ「夏目さんならお手洗いよ」

沙英「そっか。ゆのが迷子になって、宮子ともはぐれてしまったよ」

ヒロ「ゆのさんのケータイ、ここにあるから連絡取れないわね」

沙英「さっき、宮子はゆのに電話しようとしたよね」

ヒロ「えぇ、ゆのさんのケータイからね」

沙英「まぁ・・・持っていないから分からんでもないけど」

ヒロ「そうねぇ・・・」

沙英「ヒロ、あの二人って・・・」

ヒロ「あ、よかったぁ~」


夏目「え・・・二人は同級生だったんだ・・・」

ゆの「そうですよ・・・?」

宮子「高校2年生なのだ」

夏目「・・・」シーン

ゆの「?」

宮子「ゆのっちが小さいから驚いたんだよ~」

ゆの「ちっちゃくないよ!」

レイコ「あっちに鏡があるぞ」

宮子「あはは~」

ゆの「うぅー・・・」


唯「あれは貴志くんですな」

紬「まぁ、楽しそうね~」

律「まったくだな」

沙英「あの男の子と女性の方は、知り合いですか?」

紬「は、はい」

ヒロ「側にいる二人は私たちの連れなんです」

唯「そうであったか」

律「小さい子は夏目の三つ下の妹みたいな感じだな」

沙英「え、夏目・・・?」

紬「男の子の方です」

沙英「あ、あぁ・・・びっくりした」

ヒロ「・・・夏目さんはおいくつですか?」

律「確か・・・、私たちの一つ下だな。高校2年生だ」

ヒロ沙英「「 中学生に見られてるんだ・・・ 」」

紬「?」

ゆの「沙英さーん!」

沙英「よかった。発車時間に余裕を持って乗れるよ」

ヒロ「二人とも見つかってよかったぁ~」

紬「よかったですね~」

宮子「ハントンライス食べ放題ですか!?」

レイコ「あぁ。駅前にあるぞ」

宮子「ヒロさん!」

ヒロ「どうして私にフルのかなぁ~?」

夏目「食べ放題じゃないよ、20分で食べ切れたらタダだぞ、先生」

レイコ「似たようなもんだ」

律「全然ちげえ・・・って、その服いいな」

紬「うふふ」

宮子「行こうか、ゆのっち」

ゆの「これから帰るんだから、乗り遅れちゃうよ」

宮子「え~! せっかくのタダ飯がっ!」

沙英「だから、タダじゃないって」

宮子「・・・」グゥー

紬「苺大福買ってきましたからベンチに座って食べませんか?」

宮子「ごちそうになります!」

ヒロ「まぁ~」

唯「発車まで時間あるから平気だよね」

律「えーと、時計はっと・・・・・・うん、大丈夫だな」

ゆの「沙英さん、私たちの時間って・・・」

沙英「切符は買ってあるから大丈夫、余裕もあるよ」

ゆの「やったぁ」

夏目「・・・」

レイコ「私たちは先に乗ってるか」

夏目「そうだな・・・って、苺大福に食いつくと思っていたんだけど」

レイコ「苺大福?」

紬「じゃじゃーん」

宮子「・・・」ジュルリ

レイコ「・・・」ジュルリ

「沙英~!」キラキラ

律「ん? ・・・嬉しそうに走ってくるあの人は誰だ?」

沙英「夏目です」

夏目「人が多い!?」

夏目「え、夏目?」

夏目「はい、そうですが?」

夏目「そうですか・・・」

夏目「・・・?」

律「混乱してんな」ウシシ

ゆの「あのヴェガに乗っているんですか?」

紬「そうよ~」

ゆの「羨ましいです!」キラキラ

沙英「へぇ~、あのヴェガにねぇ」

宮子「おいしい~」モグモグ

ヒロ「甘くておいしい~」モグモグ

沙英「ヒロまで・・・」

レイコ「うむ、もうここに思い残す事はなくなった」モグモグ

夏目(先生は満喫できたみたいだな)

律「うめえ」モグモグ

唯「北海道からここ、金沢まできたんさ」

ゆの「山梨は通りましたか!?」

唯「いいえ」

ゆの「・・・あ、そうですか」

宮子「ゆのっちの故郷は通らなかったんだね」モグモグ

夏目「よ、よかったらこれもどうぞ」

紬「まぁ、ありがとうございます」

夏目「い、いいのよ。・・・お、おいしいわね、沙英」モグモグ

沙英「お土産用に買ってたのに、今食べるんだ」

夏目「べっ、別にいいでしょ!」

沙英「うん。みんなで食べるのもいいよね」

夏目「そっ、そうよっ」

夏目「・・・」

ゆの「なずなちゃんと乃莉ちゃんも来られたらよかったのにね」

宮子「もぐもぐ」ウンウン

ヒロ「そうねぇ~、都合が合わなかったからしょうがないけど」

沙英「ちょっともったいなかったね」

夏目「観光に来たの?」

宮子「21世紀美術館に来たんだよー。もう一個もーらいっ」

唯「あー! 私の分が~!」

宮子「あ、すいません」

律「食べていいよ」

唯「りっちゃん!?」

宮子「遠慮なく」ハムッ

律「澪が買ってくるから私たちは買わなくていいってメールがあった」

紬「そうそう。買ってしまった分は食べちゃいましょう」

夏目(だから提供したのか・・・。いい人だな)

ヒロ「沙英、飲み物買ってくるわね」

沙英「うん」

宮子「もぐもぐ、おいしぃ~!」

律「おいしそうに食べるなこの子・・・」

ゆの「宮ちゃんは食べる才能もありますから」

沙英「あはは」

宮子「しあわせ~」ホンワカ

紬「まぁ・・・。勧誘したときの唯ちゃんを思い出したわ」

唯「こんなに幸せそうだったの?」

夏目「沙英、口にあんこが・・・付いてるわよ・・・」

沙英「え・・・?」

夏目「しょ、しょうがないわね」

ゆの「じっとしててくださいね」フキフキ

沙英「ありがと、ゆの」

ゆの「いえいえ」ニコニコ

夏目「」ガーン

紬「・・・」キラキラキラキラ

夏目(よく分からない人間模様・・・)

レイコ「ごちそうになったな」

紬「いえいえ」

レイコ「行くぞ、夏目」

夏目「あ、あぁ・・・」

ゆの「あ、ありがとうございました!」

夏目「・・・ううん。それじゃね」

スタスタ

ゆの「・・・」

律「夏目って、なんかぎこちないな」

唯「そうかな?」

律「なんていうか、愛ちゃんと被る」

紬「・・・」

ヒロ「これ、お礼です。みなさんで飲んでくださいね」

ガジャガジャ

律「うぉ」

紬「まぁ、ありがとうございます」

ヒロ「おいしかったです」ニコニコ

紬「もっと時間があったら展望車でお茶会ができましたのに」

ヒロ「小さなお茶会・・・。残念ですね」

宮子「おぉー、残念だよぉー」

ゆの「・・・うん」

沙英「展望車?」

唯「ヴェガの最後尾だよ」

宮子「なぁに、それ」モグモグ

沙英「今話題になってる列車だよ」

ゆの「昨日テレビに出たよ、宮ちゃん」

宮子「あぁー・・・、もしかして」

夏目「超特急ヴェガ?」

紬「超特急ヴェガです」


―――

夏目「あ、秀輝・・・」

秀輝「見てたぞ、夏目」

夏目「なにを・・・?」

秀輝「周りは女の子ばっかりで居心地悪そうな顔をだよ」ニヤリ

夏目「な・・・」

秀輝「うらやましいな」

夏目「なら、秀輝も声をかければいいだろ」

秀輝「俺もあんな顔になるだろ? 勘弁してくれ」プクク

夏目「・・・」

秀輝「冗談は置いておいて、どうだった? 金沢の名所は」

夏目「・・・うん」

秀輝「楽しくなかったのか?」

夏目「いや、楽しかったよ」

秀輝「・・・」

レイコ「満足だ」

秀輝「・・・」

レイコ「どの列車だ?」

夏目「えっと・・・」

秀輝「あのさ、夏目」

ドンッ

秀輝「おっと?」

「・・・」

スタスタ

夏目「大丈夫か・・・?」

秀輝「あの人にぶつかっただけだよ」

夏目「そうか・・・。さっき何か言いかけたよな?」

秀輝「いや、後で話すわ」チラッ

レイコ「・・・ふぁ」

夏目(先生についてか・・・?)

愛「あ、秀輝さんと夏目さん・・・」

秀輝「愛ちゃんも今戻ったんだ。金沢どうだった?」

愛「は、はい。楽しかったです」

pipipipipipi

愛「あ、すいません・・・」

ピッ

愛「・・・はい、もしもし」

夏目「先に乗ってるから」

秀輝「はいよ」

レイコ「眠い・・・」

愛「お、お母さん!?」

夏目「?」

秀輝「?」

愛「ッ!」

ピッ

秀輝「ちょっと・・・愛ちゃん?」

愛「・・・っ」

夏目「・・・」

レイコ「乗らないのか?」

夏目「先生は先に個室に行っててくれ」

レイコ「鍵をよこせ」

夏目「あ、あぁ・・・。部屋番号覚えてるよな」

レイコ「・・・大丈夫だ」

スタスタ


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