レイコ「・・・やらんのか?」

店長「いいでしょう。こちらも負けていられません」

レイコ「うむ」

店長「先ほどの御代は広告通りいただきません」

レイコ「それで、どうするんだ?」

店長「10分の調理時間をいただきます
   それで、また食べきれた場合は、この商品券を進呈いたしましょう」

レイコ「なんだそれは」

店長「金沢駅前のお店ならどこでも使える商品券です
   本屋からゲームセンターまでご利用いただけます」

レイコ「服もか?」

店長「もちろんです」

レイコ「丁度いい」

店長「では、後ほど」

レイコ「分かった」

夏目「先生、食べ切れるのか?」

レイコ「なんとかなるだろ」

夏目「食べ切れなくても、スペシャルセット2人前の半額を払うだけだからこっちは得なんだけど」

レイコ「少し散歩してくる。10分後に来ると伝えておけ」

夏目「あぁ・・・」

レイコ「うまかった」

スタスタ

夏目「先生も楽しめてるのかな・・・」

キョージュ「その様子・・・」

夏目「それで話とは・・・?」

キョージュ「ご飯が冷めないうちにいただこう」

夏目「・・・そうだな」パクッ

キョージュ「もぐもぐ」

澪「・・・」

律「なんだよ唯、海老食べないのかー?」

友兼「如月も残しやがってー」

如月唯「「 後から食べ 」」

律「いっただっきー!」ヒョイ

友兼「もったいねえなー」ヒョイ

唯如月「「 あ 」」

律「ぷりぷりしててうんめぇー」モグモグ

友兼「この歯ごたえ、癖になるぜ」モグモグ

唯「りっちゃん・・・」ウルウル

如月「友兼さん・・・」ウルウル

律「あれ・・・?」

友兼「ひょっとして後で食べるつもりだったとか・・・?」

唯如月「「 うん・・・ 」」

律「ぉう・・・」タラタラ

友兼「マジかよ・・・」タラタラ

唯「楽しみにしていたのに」シクシク

如月「はい・・・。おいしそうでした」シクシク

律「ほ、ほら私のお冷やるよ!」スッ

友兼「あとでおいしい飴玉買ってやるよ!」

澪ナミコ「「 とりあえず、謝れ 」」 

律友兼「「 ごめんなさい 」」

ノダミキ「へぇー、旅行で金沢に来たんだー」

紬「そうなの。午前中に輪島で朝市を見学して、そのまま能登半島へ行ってきたわ」

ノダミキ「楽しそうー。ね、ね! ナミコさん!」

ナミコ「午後も美術館へ行く予定だからダメ」

ノダミキ「そんなー」ブー

ナミコ「あ、でも・・・。漆塗りには興味あるな」

澪「漆黒で、つやがあって綺麗だった」

紬「黒く輝いててとても美しい形をしていたわ」

キョージュ「・・・ナミコ殿」キラン

ナミコ「マサも乗り気だから、見に行ってみるか」

ノダミキ「やったー」

ナミコ「輪島まで行かないけどな」

ノダミキ「じゃあいいや」

ナミコ「輪島に行きたいだけか、このわがまま姫」

紬「美術館へ行ってきたの?」

ノダミキ「そうだよー、21世紀美術館。今日で最後の展示物があったから、みんなで見に来たの」

紬「まぁ~。活動的なのね」

ノダミキ「あはは、日帰りだからゆっくりもしていられないんだけどね」

紬「夏休みだから丁度いいのね」

ノダミキ「そうそう」

ナミコ「こーら、年上に対して失礼だぞ姫」

ノダミキ「紬さん聞き上手だから・・・。うちのお姉ちゃんみたい」

紬「あらあら」ウフフ

唯「姫?」

ナミコ「わがままだから姫なんです」

ノダミキ「オホホホホ」

唯「姫ちゃんなにしてるんだろ・・・」

律「バイトでもしてんじゃねえか?」

如月「ごちそうさまです~」

友兼「ふぁー、うまかったー」

ナミコ「女の子がはしたない・・・」

友兼「ナミコお母さん、食後のお茶をどうぞ」

ナミコ「ありがと。って、誰がお母さんだ」

ワイワイ ガヤガヤ

夏目(賑やかだな・・・)モグモグ

キョージュ「お茶をどうぞ」

夏目「ありがと」ゴクゴク

キョージュ「やはりさっきの方は・・・」

夏目「同一人物。妖なんだ、先生は」

キョージュ「『あやかし』・・・」

夏目「妖怪と呼ばれるものの類」

キョージュ「・・・」

夏目「・・・」

キョージュ「・・・ふむ」

夏目「変な目でみないんだな」

キョージュ「・・・?」

夏目「おれがそう言う話をすると、戸惑わせて相手に距離を取らせてしまうんだ」

キョージュ「・・・」

夏目「常識はずれな事を言っているって」

キョージュ「なるほど・・・」

夏目「そっちは生まれつきなのか?」

キョージュ「そう・・・。先天的なものだと思う・・・」

夏目(妖は見えないけど、先生の声は聞こえる位の力・・・
    田沼やタキと同じ強さってことなのか・・・)

キョージュ「私が小さい頃の話だが、近所で猫の集会が行われていた」

夏目「猫の集会・・・」

キョージュ「よく行われていたみたいで、子供たちの間では有名な場所だった」

ナミコ「ふむふむ」

キョージュ「私も興味本心で見に行くと、一匹の猫・・・
       リーダーのような雰囲気を纏った仔が話をしていた」

夏目(それが猫又・・・)

キョージュ「私は驚いてその場で立ち尽くしていた・・・
      その私に気付いた猫たちは一斉に逃げていったのだ」

澪「・・・」

キョージュ「それからは集会は行われなくなってしまった。そんな記憶が蘇った・・・」

夏目「・・・」

キョージュ「なんだか申し訳ないと、小さいながら思ったものだ」

夏目(それは・・・あなたのせいじゃないというべきだろうか・・・)

澪「ちょっと切ないな」

ナミコ「へぇー、マサにそんな話があったなんてね~」

キョージュ「うむ。あの頃は子供だったから空耳かとずっと思っていたんだが」

ナミコ「違うの?」

キョージュ「いや、空耳で気のせいだったのだろう」

夏目(気を使ってくれたのか・・・)

ナミコ「案外、マジだったりしてな」

夏目「・・・」

ナミコ「マサは動物ともコミュニケーションが取れるからな」

澪「会話が出来るって事?」

夏目「!」

ナミコ「うーん・・・。それに近いですかね・・・」

キョージュ「でも声は聞こえないのだがな」

夏目(また気を使って・・・)

ナミコ「あはは、それでも伝えられるからすごいよ」

澪「・・・」

友兼「そうそう・・・ってなにが?」

ナミコ「聞いていないなら話に乗るな」

如月「みなさん食べ終えましたので、移動しましょう」

ノダミキ「私は、もう少し話してるよ」

紬「あら?」

ノダミキ「朝早かったから少し疲れてるのです」グター

律「そんな気構えでは風邪ひくぞ!」

澪「説得力あるな」

カランカラン

レイコ「準備はできてるか」

店長「丁度今出来上がりましたよ」

如月「キョージュさん、行きましょう」

キョージュ「そうだな・・・」

友兼「えー! 見ていこうぜー?」

ノダミキ「そうだよ! きっとこのお店の名勝負になるに違いないよ」

唯「そうだよ! 歴史は今動くんだよ! 見ないと損!」

店長「・・・。キミたちは食べきれると踏んでいるわけだな」

「店長のプライドが傷つけられた!」

店長「面白い。一つ賭けをしよう」

澪ナミコ「「 賭け? 」」

店長「みんなドリンクを頼むといい。賭けに勝ったらタダだ」

さわ子「負けたら?」

店長「普通の料金をいただくだけ。・・・どうだ?」

律「おもしれえ!」

さわ子「半ば強制的な販売だけど、リスクは同じって事ね」キラン

みらい「・・・あの、トレーニングを」

さわ子「今を楽しんでいなくちゃダメよ」

みらい「・・・はぁ」

ノダミキ「あれ、もしかしてアイドルの飯山みらい?」

みらい「は、はい」

ノダミキ「トモカネ、トモカネ! 飯山みらいちゃんだよ!」

友兼「マジかよ!」

ナミコ「そこ、店内ではしずかにしなさい」

ノダミキ友兼「「 はい、お母さん 」」

律「どっちが勝つかなんて決まってるよなぁ!」

唯「やったー! わたしアップルティー!」

澪「そこも、しずかにしろ」

律唯「「 はい、澪母さん 」」

澪「・・・」

ナミコ「お互い大変ですね・・・」

澪「まったくだ・・・」

ナミコ澪「「 ・・・ハァ 」」

夏目「先生、10分間どうしていたんだ?」

レイコ「走ってきた」

唯律澪如月「「「「 走ってきた!? 」」」」

ノダミキ「おぉー、そのプロポーションはそうやって維持されているのですね」キラン

紬「まぁ・・・」

夏目(妖の姿で金沢の空を翔てきたんだろう。『見える』人からしたらすごい光景だっただろうな)

店長「さぁ、どうする?」

「「「 食べきる方で! 」」」

チッチッチッチ

店長「あと、30秒・・・」

レイコ「もぐもぐ」

如月「さすがに無理でしょうか」

友兼「あぁ、6人前だもんな・・・。ペースがガタ落ちだ」

ノダミキ「わたしたちは食べた分を払うだけだからいいんだけど」

ナミコ「店長の顔が緩んできたぞ・・・」

キョージュ「・・・」

夏目「・・・」

唯「後もうちょっとなのに~」

律「それでもすげえよ」

澪「うん」

紬「はらはら、どきどき」ワクワク

店長「あと、15秒・・・」

レイコ「・・・ふぅ」

友兼「あーっと、ここで敗北のため息がこぼれたー!」

ノダミキ「あと3口くらい残しております!」

ナミコ「大健闘だよね」

店長「あと・・・」ニヤリ

レイコ「私を甘く見るなよ」ガツガツ

紬「おぉー!」

夏目「わざと時間を使って食べていたんだ、先生は」

澪「ペース配分か・・・」

夏目(そこまで配慮してないと思う・・・。店主をからかっただけ・・・)

キョージュ「・・・飲み込めば終わり」

店長「・・・5・・・4・・・」ハラハラ

レイコ「もぐもぐ」

唯如月「「 3! 」」

レイコ「もぐもぐ」

律友兼「「 2! 」」

レイコ「・・・もぐ」

紬ノダミキ「「 1! 」」

レイコ「ごくり」

店長「くぅ・・・時間です」

澪ナミコ「「 食べきった・・・ 」」

みらい「すごいです・・・」

レイコ「店主、サービスいいな」

店長「くっ・・・」

キョージュ「若干量が増えていたようだ。海老が多めだった」

さわ子「あら、そうだったの・・・」

夏目「先生は海老が大好物なんだ」

紬「海老で鯛を釣ったのね」

ナミコ「逃げられましたけど」

店長「ありがとうございましたー・・・」

レイコ「ごちそうさま」

ノダミキ「おもしろかったぁ」

友兼「オレらも騙されたぜ」

如月「騙されていたんですか!?」

キョージュ「店主をからかっていたようだ」

レイコ「中々旨かったな。毎日通ってもいい」

ナミコ「・・・店を潰す気だ」

夏目(来れる距離じゃない)

レイコ「あっちの椅子で座ってるから、これからの予定が決まったら呼べ」

夏目「あぁ・・・」

律「・・・」


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