――・・・ 一時間後


夏目「駅前に戻ってきてしまった・・・」

先生「・・・人が増えてきたぞ夏目」

夏目「あぁ・・・」

先生「・・・」

「みてみてー、あのネコ」

「うわー・・・。可愛いー」

「え・・・」

先生「・・・聞いたか、夏目」

夏目「・・・うん」

先生「・・・」

夏目「喜ばないのか・・・」

「もし、そこのお方・・・」

夏目「え・・・?」

先生「なんだこやつは」

「ふむ・・・」

夏目「?」

「その猫は猫又と類される生き物なのではないだろうか・・・?」

先生「なぬっ!」

夏目「えっ!?」

「先ほどから何度も声が聞こえているので、気になっていた・・・」

先生「なぜ聞こえる!?」

夏目「ちょっと失礼します」ダキッ

先生「ぅお」

ダダダッ

「・・・行ってしまった」

ナミコ「あの人がどうかした?」

「キョージュが他人に話しかけるなんて珍しいな」

「どうしたのどうしたのー?」

キョージュ「いや・・・なんでも・・・」

「みなさん、金沢の名物料理にですね、冶部煮というのがあるらしいですよ」

ナミコ「お昼にそれを食べるのか如月・・・」

如月「郷土料理なんですよ~」

ナミコ「冶部煮か・・・」

夏目「どうしてあの子に聞こえたんだよ先生!」

先生「知らん!」

夏目「普通の人には先生の声、今のニャンコ姿からは聞こえない筈だよな!?」

先生「そうだとも・・・。いや、待て」

夏目「?」

先生「あの小娘もそういう力を持っているのかもしれん」

夏目「え・・・、妖が見えるって事か?」

先生「恐らくな。実験してみようではないか」

どろん

斑「今のこの私の姿を確認できるのなら、あの小娘も『見える』という事だ」

夏目「あぁ・・・」

斑「『見える』人に会ったからと言って戸惑う事もあるまい。お前が暮らす土地ではないのだからな」

夏目「・・・そうか。そうだな・・・」

斑「行くぞ」

夏目「・・・」


――――

「なんでだよ! やだよ煮物なんてさー!」

如月「伝統料理・・・」

「やだやだー!」

ナミコ「あー・・・。駄々こね始めたぞ、この姫」

姫「わたくしは若者らしくトレンド料理が所望ですわ」オホホ

「流行り物にはうるさいからな、こういう時は頼りになるぜノダ!」

ノダ姫「必殺! 聞き耳センサー!!」キュピーン

ナミコ「意味が分からん・・・。友兼、解説頼む」

友兼「解説しよう! 聞き耳センサーとは周りの人から発せられる言葉から情報を奪い取るという
   精密且つ高度なテクニック技である!!」

ナミコ「なんだ、そのまんまか・・・」

ノダ姫「ピピピピ」

如月「みっちゃんのお勧めなのに・・・」グスン


唯「ハントンライスが呼んでる~!」

紬「待って唯ちゃん!」


ノダ姫「ハントンライス!」

友兼「よっしゃー、きっまりー」

如月「・・・」ウルウル

ナミコ「まぁ・・・その、なんだ・・・。どんまい」ポンポン

ノダ姫「あれ、キョージュは?」

友兼「あっちにいるぜ」

ナミコ「マサはなにをしてるんだ?」

如月「冶部煮・・・」シクシク


斑『・・・』

夏目(『見えていない』ようだな・・・)

キョージュ「先ほどの猫殿は・・・?」

夏目「えっと・・・」

斑『おい、小娘』

キョージュ「・・・」

夏目(妖姿の先生の声も『聞こえない』のか・・・)

キョージュ「一緒に歩いていた猫殿は・・・物の怪でいいのだろうか・・・?」

夏目「・・・うん」

キョージュ「・・・やはり」

斑『どうして話しかけたのか聞け、夏目』

夏目「どうして、話しかけたんですか・・・?」

キョージュ「昔、そういう猫と会った事があって・・・」

斑『それは猫又で間違いないだろう』

ボフッ

夏目「あっ!」

キョージュ「?」

夏目(どこへ行ったんだよ先生!)

キョージュ「その時を思い出して懐かしくなり、声をかけたのだ・・・」

夏目「懐かしい・・・?」

キョージュ「うむ。私の名前は大道雅」

ノダ姫「ノダミキです!」

友兼「友兼だ!」

ナミコ「野崎奈三子」

如月「山口如月です」

友兼「何を隠そう、オレたちが!」

ノダミキ「G A!」

如月「芸術科アートデザインクラス、なんですね」

ナミコ「なんで自己紹介してんの、あたしら・・・」

夏目「夏目・・・貴志・・・です・・・」

先生「な~つめぇ~」

テッテッテ

如月「はぁ~」パァアア

先生「にゃ!?」

如月「だっこするにゃ~」ダキッ

先生「にゃっ!? やめんか!」

キョージュ「如月殿・・・」

如月「なんですか~、キョージュさん~」スリスリ

先生「離さんかこら!」

キョージュ「その猫殿も抱っこしてくれて喜んでいるようだ」

如月「そうですか~」スリスリ

先生「おいっ! おまえ、私の声が『聞こえている』のだろう!?」

キョージュ「・・・」コクリ

先生「出鱈目を言うでない!」ジタバタ

ナミコ「如月って、もっと可愛いのが好みだと思ってたよ」

先生「にゃんだと!」

夏目「ブフッ」

友兼「ん?」

ノダミキ「あー、如月ちゃんばっかりずるいー!」

ナミコ「はいはい、姫は私と一緒にお店を探しましょうね~」グイグイ

ノダミキ「や~だ~」ジタバタ

澪「・・・」

律「・・・」

夏目「・・・はっ」

唯「楽しそうですな、貴志くん」

紬「まぁまぁまぁ」

さわ子「・・・」

みらい「夏目さん・・・」

夏目(まずいっ! 琴吹さんにニャンコ姿の先生を見られると後々面倒になる!)

如月「もふもふするにゃ~」スリスリ

先生「にゃにゃにゃ」

友兼「いや・・・。モフモフしてなさそうだぞ・・・」

夏目「ごめん!」スッ

如月「あ・・・」

先生「にゃふー・・・」

夏目「先生、早く人の姿になってきてくれ」ヒソヒソッ

先生「なんでこんなに忙しいのだ!?」

テッテッテ

キョージュ「・・・」

夏目「・・・」フゥ

友兼「へー、軽音部ね~」

唯「そうだす! ギターとボーカルの唯!」

紬「キーボードの紬!」

律「ドラムの律!」

澪「・・・」

みらい「ベースの・・・?」

澪「みおでーす」

唯紬律「「「 えっ!? 」」」

さわ子「あらら」

友兼「オレらは芸術科アートデザインクラスだ! 主に絵を描いてるんだぜ!」

唯「音楽と絵ですか! 独創性が求められますな!」

友兼「あはは! そうですな!」

如月「同じ芸術ですよね~」

律「アーティストと呼ばれて久しいぜ」フフン

キョージュ「うむ・・・」

夏目「・・・」

紬「どうしたんですか?」

夏目「あ、えっと・・・」

紬「?」

夏目(先生と一緒に行けばよかったのに・・・なにやってんだろうおれは・・・)フゥ

レイコ「待たせたな。さっさ行くぞ、ハントンライス」

夏目「・・・あぁ。それじゃおれ達は行きます」

唯「また列車でね~」

夏目「・・・はい」

キョージュ「少し話を聞きたいのだが・・・」

夏目「え・・・?」

キョージュ「同じ風景を見られる人と会話をする機会がなかったので・・・興味がある」

夏目「・・・」

ナミコ「おーい友兼、マサー! って人多いな!」

ノダミキ「如月ちゃーん!」

如月「は、はーい!」

レイコ「ハントンライス、早くしろ」

夏目「・・・誰がハントンライスだよ」

スタスタ

友兼「そんじゃなー!」

紬「は~い」フリフリ

澪「一緒に行ったんだな・・・」

律「アイツ誰だっけ・・・?」

紬「姉弟で乗車した夏目貴志さんとレイコさんよ」

律「あぁ、食堂車にいたなー」

唯「あれ、あの方向ってわたし達が行くお店じゃない?」

みらい「・・・そのようですね」

さわ子「行きましょ」


―――

「店長、タイムウォッチです」

店長「・・・それでは、20分以内に召し上がってください」

レイコ「前置きはいいから、早く食わせろ」

店長「よーい、スタート!」ピッ

レイコ「はむっ」

チッチッチッチ


キョージュ「放っておいていいのだろうか・・・?」

夏目「あぁ・・・。あれくらいなら食べきれるよ」

澪「結構な量だ・・・」

如月「はい・・・。わたし・・・見てるだけでお腹が一杯になってきました」

唯「まだ食べてないよ~」グゥー

律「しっかし、おいしそうに食べるなー」

ナミコ「ほんとに・・・」

紬「わ、私も挑戦しようかしら」ゴクリ

ノダミキ「一人じゃ食べきれないよ。一緒に食べようよ」

さわ子「それは反則よ」

友兼「腹へったぁー」グゥー

みらい「・・・」シーン

さわ子「どうしたのよ?」

みらい「みなさん個性が強すぎて・・・」

さわ子「そうね・・・。私たちはあっちの席で食べましょうか」

みらい「・・・・・・はい」

ノダミキ「必殺! ノダちゃんオーラ!!」キュピーン

唯「ノダちゃんオーラ!?」

ナミコ「こらー、静かに食べろー」

ノダミキ「はーい」

紬「今のノダちゃんオーラとは・・・?」ゴクリ

ノダミキ「みなさんの手元にあるこのハントンライス、
     わたくしのオーラによってより一層おいしさを増したのです!」

紬「まぁ~」

友兼「ははっ」パクッ

律「そんな馬鹿な・・・」パクッ

友兼律「「 うめえ! 」」

ノダミキ「と、こうなる訳です」

紬「なるほどなるほど」パクッ

唯「いただきます」パクッ

紬「おいしいわ~」キラキラ

唯「うまい!」テレッテレー

ノダミキ「わたくしの力を見まして?」

ナミコ「普通においしいからな。オーラなんて最初からいらなかったんだよ」パクッ

ノダミキ「意地悪な姑さんですこと」パクッ

ナミコ「誰が姑だって・・・?」ジロ

キョージュ「あっちはそろそろ完食のようだ」

澪「・・・すごい」

夏目(早いな、朝に魚を何匹か食べてるのに・・・)


チッチッチッチ

店長「ぐ・・・」

レイコ「もぐもぐ」

店長「ぐぐ・・・」

レイコ「うまいぞ、店長」

店長「光栄です・・・」

レイコ「これで最後か」パクッ

店長「ぐぬっ」

ピッ

レイコ「ごくごく」

さわ子「閉めの一杯ね」

みらい「本当に食べきりました・・・。お皿からっぽです・・・」

店長「10分35秒・・・」

「「「 おぉー!! 」」」


友兼「なんだなんだ!?」

如月「店中が歓声で鳴り響きましたよ!?」

紬「あ、あれを見て!」

律「すっげえ!」

唯「3人前を食べちゃったよ・・・」

ナミコ「細い人ほどよく食べるって聞くけど、本当だったんだな・・・」

ノダミキ「うまうま」モグモグ

澪「・・・」

キョージュ「・・・」

夏目(妖は食べなくて平気だけど、お腹が空いたと気付けば食欲が沸くと言っていたな・・・
   先生は食いしん坊だから・・・関係ないかな)


レイコ「おかわりだ」

店長「なっ!?」

「「「 オォーッ!!! 」」」


友兼「なんだなんだ!?」

如月「さっきの歓声より大きく鳴り響きましたよ!?」

紬「おかわりするそうよ!」

律「すっげえ!」

唯「まだ入るんだ・・・」

ナミコ「プラス3人前・・・」

ノダミキ「うまうま」モグモグ

澪「・・・」

キョージュ「・・・」

夏目「・・・ハァ」


9