和「ふぅ……」

唯「和ちゃん疲れてるの?」

和「え、どうして?」

唯「さっきから溜め息ばっかり。気づかなかった?」

和「ああ……ううん、別に」

唯「?」

和「……」

和「ねぇ、唯」

唯「うん?」

和「もし唯が……――――」

クーガー「OH! ジャマー! ジャマー!」

唯・和「!?」

クーガー「あ、これ前に俺の地元で流行ってたコトバ。つまらなかったかな、寒いかな、ヒイちゃったかな、痛かったかな~?」

唯「なんだクーガーくんかぁ~急にビックリしちゃったよ」

クーガー「いや、悪い悪い」

和「……」

クーガー「君とはまだあんまり話をしたことがなかったな。何かゆりと大事な話でもしてたか、それともあんまぁ~いガールズトーク?」

和「いえ、別に。気にしなくていいわ」

クーガー「空気読めてないのなら遠慮なく言ってくれ」

和「お気づかないなく」ス…

唯「あれ、和ちゃんどこ行くの?」

和「お手洗いよ」

クーガー「ふぅむ、中々嗜みのある女性だ」

唯「だって和ちゃんだし! 私の幼馴染だし!」

唯「……って、あれ? クーガーくんー?」

唯「また急にどっか行っちゃった!」



和「……」

クーガー「用はスッキリ足せたかい?」

和「! あ、あなた……急に現れるのやめてくれないかしら」

クーガー「んんー、できるだけ気をつけよう」

和「で、私になにか用?」

クーガー「トイレっていいと思わないか」

和「は……?」

クーガー「最近の若者はトイレがどれだけ崇高な物かまったくわかっていない」

クーガー「トイレは排出行為をする場所だけでなく緩やかに物事を考えることの出来る偉大なる個室空間なのだ
     個人宅のトイレもいいがやはりついならば公共トイレの個室だろう他人が近くにいて天井と足元に隙間があるというのにプライベートが保証されている矛盾に満ちた空間
     自らの恥部をさらけ出した開放感に酔いしれつつ今後の生き方を考えるも良し過去を振り返るも良し壁に書かれている落書きを楽しむのもまた一興
     しかも誰かに覗かれているのではないかというマゾヒスティックな要求にも覗きたいというサディスティックな要求にも答えてくれる柔軟性がある
     ここに速さは必要ありません気持ちを落ち着かせ開放感にひたりながら便器と友達になるその便器は友達ですトイレットドクター? アーハーン?」

和「……なにが言いたいのかは理解しがたいけれど、一つだけわかったことがあるわ」

和「私に構わないで。あなたのこと、好きになれそうにないから」スタスタ…

クーガー「がぁーー……っん……」バタリ

クーガー「……あの目、あの気抜け感、とても見覚えがある」




放課後

律「第一回! ストレイト・クーガーの正体を暴け! 会議を始める!」

澪「二回目もあったりするのか」

律「場合による!」

梓「急にどうしたんですか、クーガーさんって確か昨日の人ですよね?」

紬「そうそう。よく覚えてたわね」

梓「もう学校中クーガーさんの話題ばっかりですよ。まぁ、転校生でしかも男子ということもあるからかもしれませんけど。ほら、あの、キャラも濃いし……」

唯「楽しいのになー、クーガーくん。それにみんなが言うほど悪い人にも見えないよ? いい人だよ」

澪「悪いだなんて私も思ってないよ。唯を助けてくれたこともあるし」

律「それはだなー……ああやって私たちを安心させて自然にちゃくちゃくとこの学校を乗っ取るためにー……」

律「とにかく注意するべきだ! あいつには!」


クーガー「ほぉ、誰に?」

律「きまってぎゃああああああああぁぁぁぁぁっ!?」

クーガー「そこまで驚くか、フツー」

律「う、うるひゃいっ!」バタバタ


紬「どうぞ~」

クーガー「おおぉ、ありがたい。つみきの淹れてくれる茶は文化を感じる~」

梓「お茶に文化ですか? 適当に言ったんじゃ……」

クーガー「ワビ・サビ」ゴクゴク

唯「お菓子も美味しいんだよ~! 食べて食べて!」

澪「唯、お前が持ってきたお菓子じゃないだろー? ふふっ」

唯「えへへっ」

クーガー「あー……」

律「なに不抜けた顔してんだよぅ!」

クーガー「気に食わないか? 俺が」

律「……得体の知れないやつは信用できないだけ」

クーガー「まぁ、そいつが人の性だと俺は思うわけさ」

律「は?」

クーガー「くっくっくっ、考えることも人の性だな。りく」

律「律だよ……(なんなんだよっ)」



クーガー「~♪」ウキウキ

唯「準備おっけー」

律「……不服だけど、んじゃいくぞー!」




ジャジャジャ、ジャーン ダカダン

澪「って感じなんだけど、どうかな?」

クーガー「……」

梓「クーガーさん……?」

唯「も、もしかして下手っぴだった!?」

紬「最近練習してなかったもんね、クーガーくん。はっきり言ってくれていいのよ」

クーガー「お前たちッ!」

「!!」

律「な、なんだよ……」

クーガー「あんまり上手くないですねッ!」クイクイ

律「うるせぇーよー!!」



クーガー「という冗談はおいておくとして……」

梓「え、冗談?」

クーガー「悪くはないが、何かが足りていない」

紬「足りてない? それってなにが?」

クーガー「さてな」

律「わかんないのかよ!」

クーガー「問題点は指摘されて直すより自分たちで見つけて直した方がいい」

梓「そんなこと言わずにはっきりと言ってくれた方が……」

クーガー「あじさ。それになによりもそっちの方が直しがいがある。な?」

梓「あずさですけど……でも」

唯「よくわかんないけど……そうだね!」

唯「みんなでどこがおかしいのか頑張って探そうよ!」

紬「そうね~」

律「あんたに私たちの何がわかるってんだよ……」

梓「律先輩?」

律「パッと出の奴にダメだしされる筋合いなんてないよ!」

澪「り、律!」

律「面倒くさいのに聞かせてやったらこれだ!」

クーガー「ふむー?」

律「わー!」タタタタタ、ガチャリ、タタタタ…

紬「ああっ、りっちゃん!」

唯「お、追いかけようよ! りっちゃんが非行に走る前に!」

梓「それはないかと……」

澪「私が追いかけるよっ、みんなはここにいて」ガチャリ

唯「大丈夫かなぁ」

紬「澪ちゃんに任せよう? きっと大丈夫」

クーガー「文化的だな」ニコニコ

梓「え?」




学校外

律「なんだよ、なんだよ!」タタタタ、ピタ

律「はぁ……はぁ……」

律(逆ギレなんてみっともない……)

律「あいつのことは確かに気に食わない……けど言ってることは本当だよな」

律「……なんで反発したくなるんだろ」


ヒュン、ヒュン、ヒュン…


律「癪だけど帰ってみんなにあやまろう。あとクーガーのやつにも……」


ヒュンッ


律「ん?」

律「何の音? まさかクーガー? おい、いるなら返事――」


ヒュンッッ


律「!?」


<ピピピピピピ……>


律(なんじゃこりゃあ……)

ヒュン、ヒュン

律「なんか見たことあるぞ……そうだ、ガンダムに出てたファンネr」

ビー!

律「うわわっ!?」

律「ビーム! なんでビームが出るんだよ!?」

律(ていうか私っ、あれに狙われてる!?)

ヒュン

律「わぁー!! くるな、くるな、くるなぁーっ!」

ヒュン、ピピピピピ…

律「わああああぁぁぁぁぁ!!!」

「律!」


ガシッ


澪「こっちだ、律。逃げよう!」

律「み、澪!?」

タタタタタ…



律「どうして……」

澪「お前が心配だからに決まってるだろ」

律「こ、怖くないの? あれ」

澪「怖いよっ!! だからこうして逃げてるんだ!」

律(澪……)

澪「なんなんだ、なんなんだよあれは……!」

律「澪! ここ! ここに隠れよう!」グイッ

澪「う、うわっ」



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