さとみ「楽しそうね」

夏目「え、と・・・」

さとみ「千歳さとみよ。秀輝くん、むぎさん見なかった?」

秀輝「さぁ・・・?」

さとみ「展望車かしら・・・」

夏目「琴吹さんなら食堂車へ行きましたよ」

さとみ「そう・・・。それなら邪魔しちゃ悪いわね」

秀輝「どうかしたの?」

さとみ「ううん、なんでも・・・。私も座っていい?」

秀輝「どうぞどうぞ」

夏目(入れ替わり激しいな・・・)

さとみ「二人は金沢の観光場所決めた?」

秀輝「武家屋敷に行ってみる」

さとみ「いいわね~。夏目くんは?」

夏目「あ、ハントンライスを食べることしか決めてないや」

秀輝「能登半島目指して、輪島の朝市とかどうだ?」

夏目「そうだな・・・。面白そうだ」

さとみ「いいわね、朝市。漆塗りとか新鮮なお魚とか」

夏目(先生が暴れそうだな・・・。やめておこう・・・)

秀輝「片町はキレイな城下町だってさ。エレナと小麦に観光を誘われたよ」

さとみ「いいわね~」

夏目「明朝は雨と天気予報で言ってたけど、朝市大丈夫かな」

秀輝「そうか・・・。それなら検討し直さなきゃいけないな・・・」

さとみ「そうね・・・。やっぱり兼六園にしようかな」

夏目「あ・・・すいません・・・」

秀輝「え?」

さとみ「どうして謝るの?」

夏目「楽しみを削ってしまったみたいで・・・」

秀輝「・・・」

さとみ「・・・」

夏目「・・・すいません」

秀輝「・・・」

さとみ「貴志くんは遠慮がちなのね」

夏目「・・・」

秀輝「雨なら雨で楽しみ方があるさ、そんなんで削られないって」

さとみ「そうそう」

夏目「・・・・・・はい」

さとみ「へぇ、一つ下なんだ」

夏目「・・・はい」

さとみ「ずっと秀輝くんと接してきたから、年下の男の子と話すのは新鮮ね」

秀輝「・・・左様ですか」

さとみ「うふふ」

夏目(みんな仲がいいんだな・・・。出会ってそんなに経っていないはずなのに・・・)

秀輝「さとみちゃんはどこまで行くんだっけ?」

さとみ「え? えーっと・・・行けるところまで、かな」

夏目「それじゃあ、最後まで・・・?」

さとみ「そうね。当てのない旅・・・なの」ニコニコ

秀輝「嬉しそうだね」

さとみ「やってみたかったのよ、こういう事。だから楽しいわ」

夏目「それなら、前日は寝付けなかったんじゃないですか?」

秀輝「・・・?」

さとみ「え・・・?」

夏目「? それほど楽しいのなら前夜はきっと・・・」

秀輝「ブフッ」

さとみ「ちょっと、秀輝く~ん?」

夏目「あ、すいません・・・。遠足前の子供じゃないですよね」

秀輝「あっはっは!」

さとみ「もぉ~!」

秀輝「ごめんごめ・・・ブフッ」

夏目「え?」

さとみ「実は・・・。私、この列車に間違えて乗っちゃったの」

夏目「・・・?」

さとみ「計画的に乗車したわけじゃないのよ」

秀輝「さとみちゃん・・・前夜はどんな気分だったの?」

さとみ「もぅ! ただ、東京へ用事を済ませないといけないと憂鬱だったわよ!」

秀輝「ごめんごめ・・・グフッ」

夏目「間違えて乗車・・・」

さとみ「そうよ~」

秀輝「どうして乗り続けたんでしょうか?」

さとみ「・・・さぁ、どうだったかしら」ツーン

秀輝「あ、すいません」

夏目「どうして・・・?」

さとみ「むぎさんと話をしているうちに、私の気持ちが動いたの」

夏目「・・・」

さとみ「そして、もう一押ししたのが『きっと、旅に出たいのですよ』ってむぎさんが」

夏目「・・・」

秀輝「へぇ、そうだったんだ」

さとみ「・・・」ツーン

夏目「面白いですね」

さとみ「えぇ、何が起こるかわからないわね」ニコニコ

夏目「・・・」

さとみ「それじゃ、失礼するわね。貴志くん」

秀輝「いや、あの、ほんとにスイマセン」

さとみ「うふふ、それじゃ」

スタスタ

秀輝「・・・ふぅ」

夏目「いろんな人が乗っているんだな」

秀輝「あぁ。3人降りちゃったけど、面白い人がいたんだぜ」

夏目「へぇ・・・」

秀輝「聞きたい?」

夏目「うん」

秀輝「俺の幼馴染がいて、画家の卵がいて、騒がしいヤツがいたんだ」

夏目(一番最初に会った・・・)

秀輝「稚内から乗車したのが――」

秀輝「――で、松本まで到着したと」

夏目「・・・」

秀輝「日本縦断の3分の1は終ったわけだな」

夏目「秀輝は観光名所での集合写真って・・・、撮っただけなのか?」

秀輝「うん、そうだ」

夏目「ふーん・・・」

秀輝「遠慮してたんだよ。女性ばっかりで、ちょっとな」

夏目「そうか・・・」

秀輝「その内実感するだろうさ」

夏目「・・・」

秀輝「いつの間にか外真っ暗だな」

夏目「そうだな」

秀輝「散歩してくるわ。話聞いてくれてサンキューな」

スタスタ

夏目「・・・ふぅ」

ガタン ゴトン

夏目(色んな事が起こるんだな。展望車でライブまで・・・)

夏目「先生どうなったかな・・・。出てこないって事は、まだ寝ているのかな」

夏目(もう少し待って、様子を見に行くか)



―――――寝台車


夏目(外に出た形跡は無いな。もうしばらくうろついてくるか)

紬「・・・」ジー

夏目(見られてる・・・。
    自分の部屋の前で突っ立ってるのって変だよな、どう考えても・・・)

紬「・・・」

夏目(仕方ない、封印を解除して入るか)

紬「お暇でしたら、展望車へ行きませんか?」

夏目「・・・え?」

紬「無理にとは言いませんが・・・」

夏目「・・・」

みらい「」スヤスヤ

紬「・・・」ファサ

夏目(飯山が寝ていたからタオルケットを取りに行ってたのか・・・)

エレナ「オォー、ナツメさんじゃないですカ」

小麦「やっほ」

夏目「どうも・・・」

唯「しぃー! みらいちゃんが起きちゃうよ」

みらい「」スヤスヤ

エレナ「ソーリー」

小麦「・・・ごめーん」

和「・・・」

澪「・・・」カキカキ

夏目(おれは離れて座っていよう・・・)

小麦「あたしもここ座っていいー?」

夏目「・・・どうぞ」

エレナ「失礼しますワ」

小麦「澪ちゃん作詞してたね」

エレナ「ノドカさんは小麦が書いた記事を読んでいましたネ」

夏目「記事?」

小麦「そうだよ、展望車でライブをした時の記事。あんまり楽しそうだったから書いちゃった」

夏目「演奏したってやつですよね」

エレナ「ソーですワ。素敵でしたネ」

夏目「・・・」

小麦「読んでみてよ」ペラ

夏目「は、はい・・・」

夏目(結構しっかりした内容なんだな・・・。って、失礼だな)

   『部長の自己紹介が衝撃的だ“辞書の最初の頁の言葉が大好き!あこがれています!ズバリ愛!!”
    エネルギー溢れる人物だが、意外と乙女な一面もあるようだ』

夏目(風邪で寝込んでいる人の事だよな・・・読まなかった事にしよう・・・)

エレナ「陽が沈んで、家のアカリが灯り始めマシタネ」

小麦「あーほんとだー。こういうのワクワクするよね」

エレナ「ト、イイマスト?」

小麦「だって、本来なら家の中に居なきゃいけないんだよねー」

紬「分かります」

エレナ「ホゥホゥ」

夏目(自然に混ざったな・・・。キーボード担当の琴吹さんだよな)

小麦「外が暗くなってきたなー。電気点けなきゃーって」

紬「そうね~、それからご飯を食べる時間になるのよね」

澪「私も一緒だ。大体この時間に食べているな」

夏目(ベースの秋山さん・・・)

エレナ「ワタクシは、今日の分のマトメ作業をしてますネ」

小麦「そんな何気ない時間が流れているんだよ、あの灯りの下では」

エレナ「ナルホド」

夏目「それがどうしてワクワクするんですか?」

小麦「しない? なんていうか、ここ・・・ヴェガの車内だけ特別な時間の中にいるって感じ」

紬「うんうん。しますします」

澪「・・・」

夏目(・・・しないな)

エレナ「ワタクシは旅に慣れてしまったので、そういうカンカクを忘れていましたワ
    ありがとう、小麦」

小麦「えへへー」

紬「ワクワクしません?」

夏目「・・・・・・はい」

澪「・・・」

エレナ「ナツメさんの旅は始まったばかりですから、これから実感していくと思いますワ」

小麦「そうだねー。最初は新しいことばっかりで、落ち着かないもんね」

紬「似たような事を唯ちゃんとあずさちゃんとで話したわ~」

澪「唯と梓は共感してた?」

紬「えぇ、『貴重な時間に思えてきたからなにかしよう』って唯ちゃんがウノを提案していたわ」

澪「ウノか・・・」

紬「愛さん、つばさちゃん、桜井さんを含めた6人でね」

澪「へぇ・・・楽しそうだ」

小麦「あれ、星奈ちゃんと秀輝君は?」

紬「色々あったのよ~」ウフフ

小麦「ほほぅ・・・。これは徹底的に調査しなくっちゃ!」

エレナ「小麦ー、人様のプライベートに頭を突っ込むのはよろしくないですワ」

夏目「・・・頭?」

澪「首だよ、エレナさん」

エレナ「オー」

紬「こうやってお喋りするのも大切な時間ですよね」

澪「・・・うん。そうだな」

小麦「ジッとしていられなくなるよね~」

エレナ「日常から離れて特別な時間を共有する。それが旅の醍醐味ですワ」

澪「・・・」ジーン

夏目(・・・なんとなく分かってきた
    そういうのとあまり縁がなかったからかな)

紬「あら?」

レイコ「・・・」ドン

夏目(北本と西村で泊りで勉強した日、名取さんと温泉に行った時
   そういう気分になれたっけ・・・)

澪「な、夏目・・・」

夏目「はい?」

澪「すごい形相しているんだけど・・・」

夏目「誰がですか?」

小麦「お姉さんがだよ」

エレナ「風神雷神ですワ」

夏目「・・・え?」

レイコ「これはなんだ、夏目」

夏目「先生、いたのか」

小麦「それは縄だよね」

紬「それは封印・・・」

レイコ「封印だと・・・?」

夏目「ち、違うぞ先生」

レイコ「この私を封印しようとは、ずいぶんと小癪な真似を」ゴゴゴゴ

夏目「人の忠告を無視するからだろ」ゴゴゴ

小麦「さぁ、白熱してまいりました」

紬「小麦さん、煽ってはダメよ」

小麦「えへへ」

レイコ「ちょっと面貸せ」

澪「」ガクガク

夏目「まったく・・・。それでは失礼します」ガタ

スタスタ

エレナ「スケバンですネ。もう絶滅したと聞いてたヨ」

小麦「実在したんだね」

紬「・・・封印・・・妖・・・先生・・・猫・・・弟を苗字で呼ぶ・・・姉」キラン

澪「」ブルブル


――――

夏目「先生がニャンコの姿で歩き回るからだぞ」

レイコ「だから封印を施すのか、手間をかけさせるな」

夏目「人の姿になればどうってことない仕掛けだっただろ」

レイコ「少し力を必要としたぞ。妖としての力をな」

夏目「? 札とか印がなかったのに?」

レイコ「無意識か・・・、今回は大目に見てやる」

夏目「?」

レイコ「二度と私を封印しようとしないことだ!」

夏目「おれが先生を封印するわけないだろ」

レイコ「さっきの娘がそう言ってたではないか」

夏目「あれは・・・、言葉のアヤっていうか・・・」

レイコ「・・・」

夏目「先生・・・怒っているのか? 封印されたのかと思って」

レイコ「・・・」プイッ

夏目「・・・」

レイコ「・・・」ムス

夏目「ごめん・・・」

レイコ「・・・」ツーン

ガタン ゴトン

夏目「減速したか・・・」

レイコ「・・・」

夏目「明日の朝になるけど、朝市に行く?」

レイコ「なんだそれは」

夏目「おいしいお魚や漆塗りがあるんだって」

レイコ「魚か・・・」

夏目「海が近いんだよ」

レイコ「なら海に行こう。獲ってきてやる」

夏目「ふふ、分かった」

澪「・・・」

レイコ「海か・・・久しぶりだな・・・」

夏目「久しぶりってどのくらい?」

レイコ「・・・レイコに会う前だから」

澪「ん?」

夏目「先生ーっ! 金沢着いたぞー!」

プシュー

レイコ「低級共はいるかな」ウキウキ

澪「低級?」

夏目「どうしたんですか?」

澪「夏目・・・さっきの話変じゃなかったかな。レイコさんがレイコに会う前って・・・?」

夏目「テレビの話ですよ」

澪「・・・そうか」

レイコ「さっさと降りるぞ夏目」ウキウキ

夏目「分かった。・・・それでは」

スタスタ

澪「まぁ、いいか・・・。それより律の様子を見に行かないと」イソイソ


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