カラン カラ~ン♪ カランカラ~ン♪ 

「大当たり~!」

梅雨が明け、夏の模様を映し始めた商店街

その福引場で店員の声と鐘の音が鳴り響く

「・・・」

なにが起こったのか理解するまで少し時間を要している少年

店員「おめでとう少年! 特賞の超特急ヴェガの乗車券だぁ~!」

「超特急ヴェガ?」

店員「そうです! 超豪華特急列車ヴェガ!」

「・・・」

店員「?」

「おれ、三等が欲しいんですけど、交換できませんか・・・?」

店員「えぇっ!? 『たこ焼きフライパン』の方がいいと言うんですかっ!?」

「え、えぇ・・・まぁ・・・」

と困り顔の少年。そっちの方が価値があると言わんばかりの表情に店員も少したじろいでしまう

店員「いや、いやいやいや! ちゃんと聞きなよ少年? 今や話題沸騰中のこの乗車券。
   稚内から鹿児島の最終駅まで日本を縦断するという、夢のような列車の乗車券なんですよ?!」

「・・・」チラッ

困り顔で三等を見つめる少年

店員「・・・分かった! じゃあこうしよう。今の今まで一枚とも出なかったこの乗車券
   ペアで差し上げよう! これなら友達と行けるでしょ?」

「いや・・・それより・・・」

少年が本当に困ったという顔をする

店員「こんなプラチナチケットを遠慮するなんて見上げた根性だ! もってけー!」

「う・・・!」

店員「いい旅をしろ!」メラメラ

「おーい、なーつめ~!」

「おーい」

夏目「北本、西村・・・」

西村「どうしたんだよぉ~、しけた顔してんなー」

北本「どうしたんだ?」

夏目「塔子さんに福引券の抽選を頼まれたんだけど・・・」

西村「ポケットティッシュかぁ~。それは残念だなぁ~」

北本「いや、持っているのはティッシュじゃないぞ」

西村「ありゃ?」

夏目「列車のチケットだって・・・」

西村「おいおい、マジかよー!」

北本「そのチケットがどうしたんだ?」

夏目「うん・・・。実は困ってて」

西村「ぬぁにー! こんな幸運を掴んで困るだとー!?」

北本「知ってるのか、西村?」

西村「知ってるも何も! いいか、よく聞けよ!?」

夏目「あぁ・・・」

北本「・・・」

西村「8月1日から8月15日をかけて夢の超特急ヴェガは日本を縦断していくんだ。
   稚内を出発後、順に札幌 青森 仙台 東京 松本 金沢 名古屋 京都 大阪 広島 博多
   各都市に24時間停車。最終日には鹿児島の駅に到着!」

夏目(そんな列車のチケットなのか・・・困ったな・・・)

西村「ヴェガの概要なんだけどな、動力車を先頭に寝台車・シャワー室のある売店車・客車1号車・2号車・3号車・4号車
   食堂車・娯楽車と続き、最後尾・展望車となるんだ」

北本「よくカンペも見ずに喋れるな」

西村「乗りたいと思っていたんだよ、俺も! 抽選で何度も何度も回したさ」

夏目(誰かに譲ったほうがいいな・・・旅行なんて・・・できないだろうから)

西村「白い玉が何度も何度も転がってきて・・・」シクシク

北本「いいから、もういいから・・・」ポンポン

西村「・・・ひっく」

夏目「じゃあさ、やるよ」

北本「え?」

西村「え?」キラキラ

夏目「おれには過ぎたモノだから、二人で行くといい」

西村「ホントにいいのかー!?」キラキラキラキラ

夏目「あ、あぁ・・・」

北本「・・・」

西村「さっすが夏目だぁー!」ヒャッホウ

夏目「あ、はは・・・」

北本「ちょっと待て、西村」

西村「へ?」

夏目「?」

北本「それ、塔子さんに頼まれたって言ってたよな」

夏目「あぁ・・・」

北本「それは、塔子さんに渡すべきなんじゃないのか?」

西村「あ、そうか・・・」

夏目「・・・」

北本「塔子さんと滋さんに渡すと喜んでくれると思う」

西村「そうだな。そうしろ、夏目」

夏目(そうか・・・。それが出来たんだ・・・)

北本「じゃあな、夏目」

西村「じゃっあな~」

夏目「あぁ、明日学校で」

スタスタ

北本「・・・」

西村「・・・ナイスアシストだ、北本」

北本「塔子さん達が喜んでくれると夏目も嬉しいだろうな」



小さい頃から時々変なものを見た

他の人には見えないらしい それはおそらく

妖怪と呼ばれるものの類


ガラッ

夏目「ただいまー」

「・・・」

夏目「うわっ!」

「夏目貴志様・・・友人帳をお持ちですね・・・」

夏目(妖!? 玄関ではまずいっ! 外へ)ダッ

妖「逃がしませんよ!」

グイッ

ドサッ

夏目「ぐッ」

妖「さぁ、およこし・・・」

「おい夏目、ガルガリ君ソーダ味の袋をあけてくれ」

夏目「せ、先生・・・ッ」

先生「なんだ、また絡まれてるのか」ヤレヤレ

妖「人の子が持っていていいものではないのだよ!」グッ

夏目「うぐッ」

先生「おいこら、続きはアイスの袋を開けてからにしろ」

妖「なんだこのブサイクネコは・・・」

先生「にゃ、にゃんだとー!!」

夏目「・・・せん・・・」

先生「本当の姿を見せてやろうではないか!」

どろん

「グルルルルァ・・・」

妖「き、貴様は斑!?」

斑「そいつは私の獲物だ、さっさと立ち去れ」

妖「ひっ、ひぃぃいい」

シュゥウウウ

斑「ふんっ」

夏目「げほっ、げほっ」

斑「あんな小物をまだ追い払えんのか、夏目」

夏目「げほっ・・・塔子さん・・・は・・・?」

斑「まだ帰ってきていない」

どろん

先生「まったく・・・。塔子に気付かれないようにしていたのか分からんが
   怪我をしては元も子も無いぞ。・・・ほれ、開けてくれ」

夏目「・・・よかった」

先生「あの小物め・・・私の友人帳を奪おうとするとは・・・」

夏目「・・・ふぅ」

先生「もっと自覚をもたんか夏目!」

夏目「・・・」

先生「その友人帳は名前の書かれた妖を操る事のできるお宝品なのだぞ!」ペシペシ

夏目「はいはい・・・」

先生「それを奪われてしまっては私のやっている事も無駄になるではないか!」プンスカ

夏目「だったら用心棒としてしっかり働いてくれよ」パリッ

先生「だから、小物くらい追い払えと言っておろうが!」プンプン

夏目(乗車券は夕食時に話そう・・・)ハムッ

先生「あ、こらっ!」

夏目「あ、ごめん・・・先生のアイス食べてしまった・・・」

先生「なつめぇー!」


―――――夜

先生「にゃんっ、にゃふん!」ガツガツ

「まぁー、ニャンキチ君ったら、よっぽどお腹が空いてたのね~」

「どれ、私の刺身もあげてみよう。どうかなニャンゴロー」

先生「にゃんっ♪」キラキラ

夏目(ニャンコに成りつつあるな、先生・・・。妖なのに)モグモグ

先生「にゃふんにゃふん」ガツガツ

夏目「あ、塔子さん」

塔子「なにかしら?」

夏目「福引の抽選で当たったヤツなんですけど・・・これをどうぞ。滋さんと一緒に」

塔子「まぁまぁまぁまぁ」

滋「それは?」

夏目「北海道から鹿児島まで、日本を縦断する列車の乗車券です」

塔子「まぁ、そうなの~」

滋「今話題になってる・・・」

夏目「ペアチケットなので、お二人で行ってきてください」

塔子「・・・」

滋「・・・」

夏目「留守番は僕が・・・」

塔子「・・・ありがとう。貴志くん」

滋「ありがとう」

夏目「いえ・・・。元々塔子さんの福引券でしたから」

塔子「うふふ~。嬉しいわ~」ニコニコ

滋「あぁ・・・」

夏目(よかった・・・。喜んでくれた)

塔子「滋さん」

滋「うん」

夏目「・・・?」

塔子「これは貴志くんが使って」

夏目「え・・・?」

滋「それは確か、8月の上旬だったね」

夏目「は、はい・・・」

滋「私の休みは中旬、13日からなんだ」

夏目「・・・」

滋「なに、気にする事はない。貴志が旅行先の話を私たちに聞かせてくれればそれでいい」

夏目「・・・あ、・・・でも」

塔子「お友達と行ってきたらどうかしら~」ウキウキ

滋「そうするといい」

夏目「・・・」

塔子「あぁ~、なんだか楽しみになってきたわ~」

滋「貴志」

夏目「は、はい」

滋「楽しんできなさい」

夏目「・・・はい」

先生「・・・」


―――――翌日

夏目「――という事になってしまった。ごめん、西村」

西村「なんで謝るんだよ。俺と行けばいいじゃないか」

北本「そうはさせん!」

西村「北本はお留守番だぁー!」

北本「お前にだけいい思いはさせない!」

ギャーギャー

夏目「おれが行く事になったから・・・。一枚余ってしまった」

「よう。騒がしいな」

夏目「田沼・・・」

田沼「どうしたんだ、そこの二人は」

夏目「あ、そうだ。田沼は8月の上旬って空いてるか?」

西村北本「「 な、夏目ー!? 」」

田沼「な、なんだ・・・?」

「ちょっと、朝っぱらからうるさいわよー?」

西村「げっ・・・」

北本「委員長・・・」

委員長「夏目くん・・・それってひょっとして・・・!」

夏目「え・・・?」

委員長「特急ヴェガの乗車券!」

夏目「笹田も詳しいんだな・・・」

笹田「私も当てようと一生懸命」

田沼「ヴェガ?」

笹田「8月1日から8月15日をかけて日本を縦断する列車なのよ!」

田沼「へぇー・・・。それで聞いたのか?」

夏目「あぁ、よかったら・・・」

田沼「悪い、家の手伝いで離れられなくて」

夏目「そうか・・・。うん、分かった」

笹田「なになに? どうしたの?」

西村「だから俺が夏目と行くって!」

北本「それは俺がさせないって!」

ギャーギャー

夏目「一人で行くのも・・・味気ないからなぁ・・・」フゥ

田沼「ポン太と行けばいいんじゃないか?」

夏目「ネコだぞ・・・」

田沼「ははっ。退屈はしないんじゃないかってさ」

笹田「じゃ、じゃあ私が」

「みんなおはよー。そろそろチャイムが鳴るよ?」

西村「多軌さん!」キラキラ

夏目(この一枚どうしようかな・・・)



          8月7日


松本駅に一つの列車が佇む

特急ヴェガは出発の時刻を今か今かと待ちわびていた


夏目「なんでいるんだよ先生!」

先生「にゃふふ~ん」

夏目「誤魔化すな! ペットの乗車は禁止なんだぞ、先生!」

先生「む・・・。じゃあこうすればよかろう」

どろん

「どうだ? 人の姿に変身していれば文句無いだろ」

夏目「ハァ・・・」

「どうした?」

夏目「制服を着た女子と、私服の俺が並んで歩いていたら変だろ」

女先生「なにかと面倒だな人の子は」

夏目「それに、名前・・・どうするんだ?」

女先生「斑でいいではないか」

夏目「この時代の女子にそんな名前をつける親は居ないよ」

女先生「・・・」

夏目「・・・」

女先生「レイコでいいな」

夏目「・・・ハァ」

レイコ「なぜ北海道から乗らんのだ」

夏目「先生は北海道知ってるのか?」

レイコ「知らんな」

夏目「じゃあ聞くなよ・・・」

レイコ「ふん、退屈しのぎになるかと思って付いて来たが」

夏目「・・・」

レイコ「つまらん。人が多い。鬱陶しい」

夏目「人ごみが苦手なのはおれも同じだよ」

レイコ「・・・」

夏目「人前でネコの姿になったり、妖の姿になったりするなよ、先生」

レイコ「妖の姿になっても誰にも見られないではないか」

夏目「いや、人が忽然と姿を消すんだ。それは大騒ぎになる」

レイコ「・・・」

夏目「今のままの人の姿でいてくれ」

レイコ「しょうがない、分かったよ」

夏目「頼むぞ」

レイコ「はいはい」

夏目(どうして付いて来たりしたんだろう)

タッタッタ

ドンッ

夏目「うわっ」

「おっとぉー、ごめんごめん」

夏目「いえ・・・、ビックリしただけです」

「急いでてぶつかってしまった」アハハ

夏目「・・・」

レイコ「なんだコイツは」

「お? 恋人同士・・・ではないか、姉弟?」

夏目「そ、そんなものです」

レイコ「・・・」

「ふーん。松本に観光なんだ」

夏目「い、いえ・・・。ヴェガに乗るんです・・・これから」

「ほぉ! 私も乗ってたんだよん!」

レイコ「・・・」

夏目「乗ってた・・・?」

「稚内から乗って、ここ松本で降りたから、『乗ってた』ってこと!」

夏目「はぁ・・・」

「私の名前は山口星奈・・・って、自己紹介する必要もないか~」アハハ

夏目「・・・」

レイコ「・・・」

星奈「急いでるから! ほんとゴメンね! じゃあねー!」

タッタッタ

夏目「・・・」

レイコ「騒がしいヤツだ」

夏目「つ、疲れた・・・」グッタリ

レイコ「帰るか?」

夏目「塔子さんと滋さんに旅行の話をしたいんだ・・・。帰れないよ」

レイコ「・・・」

夏目「これがヴェガ・・・」

レイコ「・・・これがどうなるんだ?」

夏目「電車とは違って、速度があるんだ」

レイコ「ふむ」

夏目「・・・」

レイコ「それだけか、つまらんな」

夏目「他にも違うところがあると思うけど・・・説明できない」

レイコ「・・・」


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