自宅

唯「・・・」

唯(寝ない、もう寝ない)

唯(もう今日から絶対寝ない)

唯(寝なかったら夢を見なくて済む・・・)

唯(何日でも耐えて見せる)

唯「・・・」

唯「・・・」スースー

唯「・・・」

唯「・・・私のバカ」

唯「大馬鹿だよ私・・・」

唯「なんでまた来ちゃうの・・・」

唯「いやだ・・・」

『あなたにはこれから二つの選択をしていただきます』

『あなたの望む扉を開けてください』

唯「今度は誰・・・?」

『秋山澪が消える』

『田井中律が消える』

唯「あ、あ・・・」

唯「あ・・・」

唯「やああああああ!!!!」

唯「いやあああああああああああああああ!!!」

唯「出して!!ここから出して!!」

唯「誰か助けてえええええええええええええ!!!!!」

唯「いやあああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!」

唯「・・・なんとかしないと」

唯「こんなの選べないよ・・・」

唯「とりあえずじっとしていよう」

唯「そのうち目が覚めるかも・・・!」

私は目が覚める事を期待して夢の世界で時間をつぶし始めました

この世界ではお腹も減らないしトイレも行かなくていいけど、寝る事ができません

何時間、いや何十時間経ったでしょうか、一向に目は覚めませんでした

唯「このままじゃ帰れない・・・」

唯「・・・」

唯「選ぶしかない・・・」

唯「選ぶしか・・・」

唯「どっち・・・?」

唯「どっちを消すの・・・?」

純ちゃんが消えた時と同じなら、ここで私が消した人はもう現実世界には存在しなくなってしまうのです

つまりもう二度と会えない、私以外の人の記憶から消える

澪ちゃんもりっちゃんもお互い親友同士です

その親友がいなかった事になってしまうなんて、こんなに悲しい事があるでしょうか

しかもそれを第三者である私が決めるなんて許される事ではありません

唯「うう・・・」

私は最低です

私がずっとこの空間にいればいいだけなのに、自分が元の世界に戻りたいばかりに扉を開けようとしています

元の世界に戻るためには仕方ない、仕方なく開けるんだって

仕方ないんだって、私は悪くないって

そう自分に言い聞かせ、私は扉に手をかけました

唯「・・・」ギィィ

・・・・・・・・・

唯「・・・」

憂「お姉ちゃんおはよう」

唯「おはよう、憂」

憂「お姉ちゃんどうしたの?なんだか顔色が・・・」

唯「ううん、大丈夫だから・・・」

憂「そう?具合が悪いなら病院行こうね」

唯「ほんとに大丈夫だよ」

唯(何が大丈夫なの・・・?)

唯(私って最低だよ・・・)

唯(もう二度と会えないの・・・?)

唯(いやだよ・・・)

唯「・・・」

唯「学校・・・行こう」


学校

唯「・・・」

律「よう唯」

唯「りっちゃ・・・ん」

律「なんだ?その顔は」

唯「りっちゃん・・・」

律「朝からテンション低いぞー!もっと元気出せー!」

唯「あの・・・澪ちゃんは・・・秋山・・・澪ちゃんは・・・」

律「は?誰だそれ」

唯「!」ブワッ

唯「―――!!」ボロボロ

律「!?おい唯どうした!?」

唯「――――――――!!!」ボロボロ

律「おい唯って!」

和「何?えっどうしたの唯」

律「分かんないよ、いきなり泣き出して」

和「もう、ほら泣きやんで唯」

唯「―――――!!」ボロボロ

ザワザワ・・・

唯「うっ・・・うっ・・・」ポロポロ

律「ったく心配させんなよな」

和「今日はもう帰った方がいいかも」

唯「ううん、ごめんね」

唯「私は平気、私は」

和「私は、って唯以外誰がいるのよ」

唯「・・・」

唯(ごめんね、りっちゃん・・・)

唯(ごめんね、澪ちゃん・・・)


部室

梓「唯先輩どうしたんですか?」ヒソヒソ

律「わかんねーよ、朝大泣きしてから元気ないんだ」ヒソヒソ

唯「・・・」

梓「唯先輩元気出してください!」

唯「うん、元気だよ私・・・」

律(どうみても元気じゃないだろ)

唯(澪ちゃん・・・)

梓「ほら、練習しましょう!練習すれば気が晴れるかも!」

唯「うん・・・」

一人欠けた放課後ティータイムの演奏は、何故かとてもひどく寂しく思えました

一人欠けただけでこんなにも小さくて弱くて悲しい音になっちゃうなんて

私たちのあの演奏はもう二度と戻らない

そう思うとまた涙が溢れてきてしまいました


自宅

唯(もうほんとに寝ちゃだめだ)

唯(もう誰も消えてほしくない)

唯(絶対寝ない・・・!)

唯「・・・」

唯「・・・」スースー

唯「・・・」

唯「そんな・・・」

唯「ベランダで立ちっぱなしだったのになんで寝てるの私・・・?」

唯「寝る事は阻止できないようになってるの・・・?」

唯「次は・・・」

『あなたにはこれから二つの選択をしていただきます』

『あなたの望む扉を開けてください』

唯「誰・・・?」

『真鍋和が消える』

『平沢憂が消える』

唯「・・・」

唯「・・・」ドサッ

唯「・・・無理」

唯「絶対選べない・・・」

唯「助けて・・・」

唯「お願いもうやめて・・・」

唯「憂と和ちゃん・・・」

唯「もう会えないの?」

唯「どっちかにはもう二度と会えないの?」

唯「こんな事ならもっといっぱいお話したり、遊んだり」

唯「いろいろしておけば良かった」

唯「選べないよ・・・」

唯「私には選べない・・・」

・・・・・・・・・

唯「・・・」

唯「・・・」

唯「・・・」ギィィ

・・・・・・・・・

唯(目が覚めた・・・)

唯(って事は、もう・・・)

唯(・・・)

唯(いないんだよね・・・この世界には)

唯(もう二度と会えないんだよね)

唯(私の身勝手で消えて)

唯(さよならも言えないまま・・・)

唯(私って最低だ)

唯「・・・」

憂「お姉ちゃんおはよう」

唯「・・・おはよう、憂」


学校

唯(和ちゃんは・・・いない・・・よね)

唯(もっと一緒に居たかった)

唯(和ちゃんも澪ちゃんも純ちゃんも)

律「おっす唯」

唯(りっちゃんもそう)

唯(もっと皆と一緒に居たかった)

唯(ずっと一緒に居たい)

唯(別れたくない)

唯(もう誰ともさよならなんてしたくない)

律「唯ってば」

唯「・・・あ、おはよっ!りっちゃん!」

律「お!いいな元気があって!」

・・・・・・・・・

それから私はいろんな人と話した

最後になるかも知れないから

もう会えないかも知れないから

さよならって言えないまま

私は大切な人を失っていった

唯「・・・」

憂「お姉ちゃんほんとに大丈夫?」

唯「うん、大丈夫・・・憂がいるから」

そう、憂がいるから

憂さえいてくれるなら私は大丈夫

ううん、そうじゃない

私にはもう、憂しかいない


部室

唯「もう、けいおん部も私一人になっちゃったんだね」

唯「もう皆と一緒に演奏したり遊んだり出来ないんだ」

唯「・・・部室ってこんなに広かったんだ」

唯「とっても静かで・・・あんなに騒がしかったのが嘘みたい」

唯「また皆と一緒に演奏したいな」

唯「・・・」

唯「よいしょ」

唯「ギー太、出番だよ」

唯「君を見てるといつもハートドキドキ」

唯「揺れる思いはマシュマロみたいにふ~わふわ」

唯「・・・」

唯「・・・ごめんね、みんな」

唯「それじゃ・・・さよなら」


自宅

唯(もうギー太を弾く事もなくなっちゃうのかな)

唯(私たちのけいおん部はもう無いし)

唯(・・・楽しかったな)

唯(ギー太を買うためにバイトしたり)

唯(いろんな事があったんだよね)

唯(みんな・・・)

唯(許してもらえるとは思ってないよ)

唯(私はきっと地獄に落ちるよね)

憂「お姉ちゃんそろそろ寝ないと、明日も早いよ?」

唯「あ、そうだね」

憂「それじゃあおやすみ、お姉ちゃん」

唯「おやすみ、憂」

唯「あ、憂ちょっとこっち来て」

憂「ん?なにお姉ちゃん」

唯「憂・・・」ギュッ

憂「え?お姉ちゃん?」

唯「うい・・・」ギュッ

憂「お姉ちゃん苦しいよ~・・・」ギュッ

唯「大好きだよ、憂」ギュッ

憂「・・・うん、私もお姉ちゃんが大好き」ギュッ

唯「ずっと一緒だよ」

憂「うん!」

唯「・・・えへへ」

憂「ふふ、変なお姉ちゃん」

唯「・・・」

唯「・・・」スースー

唯「・・・」

唯「・・・来たよ」

唯「次は誰と誰?」

もう私には憂しかいない

みんな消えちゃった

あとは憂だけ

私の大切な人はもう憂だけなんだよ

憂だけは、絶対に消さない

唯「さあ、早くして」

『あなたにはこれから二つの選択をしていただきます』

『あなたの望む扉を開けてください』

唯「・・・」

唯「・・・!?」

『消えた人間全員が戻ってくるが、平沢唯が消える』

『この夢を終わりにする』

唯「なっ・・・」

唯「え・・・?」

唯「消えた人間全員が戻ってくる?」

唯「でも私が消える・・・ってことは私はその世界には居ないって事?」

唯「そしてもう一つが」

唯「この夢を終わらせる・・・」

唯「この夢から解放される・・・」

唯「・・・」

今まで消えた人が皆戻ってくる

大切な友達

幼馴染

いつもと変わらない日常

とっても楽しい毎日

私たちのバンド

私が望んだ世界が帰ってくる

      • 私がいない世界で

唯「・・・」

これから大学生になって新しい友達が出来て

大人になって働いて

結婚して子供が産まれて

お母さんになっておばあちゃんになって

そんな未来が待ってる

憂と一緒の未来

皆はいないけど憂がいる未来

私もいて憂もいる、二人だけの世界

唯「・・・」

唯「消えたくない」

唯「それに」

唯「憂と・・・」

唯「離れたくない」

唯「ずっと一緒にいたい」

唯「みんながいなくても憂さえいてくれたら私・・・」

唯「私・・・」

唯「・・・」

唯「ううん」

唯「仕方ないよね」

唯「・・・」

―――唯「ずっと一緒だよ」―――

―――憂「うん!」―――

唯「・・・」

唯「・・・」

唯「うん」

唯「仕方ないんだよ」

唯「うん」

唯「考えるまでもないよね」

唯「澪ちゃん、りっちゃん、あずにゃん」

唯「和ちゃん、純ちゃん、さわちゃん」

唯「お父さん、お母さん」

唯「消しちゃってごめんなさい」

唯「・・・憂」

唯「大好きだよ」

唯「・・・」

唯「私の選択は―――」

ギィィィィィ・・・


唯「究極の選択!」
おしまい



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