ダッダッダッダッ


ヒイロ(まずは武装を確保する。状況がわからない以上、身の安全が第一条件だ)

ヒイロ「くっ、体力の低下も深刻だ・・・!」

ヒイロ(いまの肉体のコンディションではMSの操縦は困難。戦闘に入るとまずい)

ヒイロ「だがこの世界に戦闘は・・・?」

ヒイロ「二期だともしかしたらMSに乗って戦っていたのかもしれない」

ヒイロ「ゼクスものめりこむくらいだからな」

ヒイロ「希望的観測は危険と判断」


ヒイロ「ゼロ、これが幻だとしたら。お前は俺に何を望む」

ヒイロ「・・・俺は・・・どうしたらいいんだ!!!」


純(なんかブツブツいいながらすごい速度で駆け抜けていった・・・)

純(こわぁ・・・)



ヒイロ「正面にアンノウン確認」

澪「あ、唯。もう起きて大丈夫? 心配したんだぞ」

ヒイロ「お前は・・・」

澪「?」

ヒイロ(たしかこいつは・・・秋山澪)

ヒイロ(放課後ティータイム所属のベースギター)

ヒイロ(それ以外の情報は一切不明・・・!)

ヒイロ(危険だ。障害は・・・取り除く)

澪「ゆ、唯、どうしてそんなに怖い顔してるんだ・・・・」

ヒイロ「・・・怖い? 俺がか」

澪「唯・・・・」


ヒイロ(違う。俺はヒラサワ・ユイではない)

ヒイロ(ヒイロ・ユイ、ただの一兵士だ)

ヒイロ(しかし今はヒラサワ・ユイでもある)

ヒイロ(秋山澪がヒラサワ・ユイの友人である以上)

ヒイロ(今後の活動の上で役に立つ。より強固な信頼関係を構築しておくのは定石)

ヒイロ(情報は時に命よりも重い・・・もとから俺の命など安い物だがな)


澪「ほ、ほんとに大丈夫・・・?」


ヒイロ(ならば今はなりきるしかないようだ。ヒラサワ・ユイという存在に)

ヒイロ(偽装工作は得意だ。任務開始)


ヒイロ「秋山澪」

澪「えっ?(なんでフルネーム!?)」

ヒイロ「今日は・・・・れん、練習はしないのか・・・?」


ヒイロ(こいつらは音楽活動を通して完全平和主義を唱えていたはずだ)

ヒイロ(リリーナと同じく、茨の道をいこうとする者……)

ヒイロ(そのためには日々の訓練は怠らない・・・)


澪「当然練習するぞ! でも唯の活動再開は明日から!今日はゆっくり休むんだ!」

ヒイロ「……あぁ、そうさせてもらう。ギターの調子が悪くてな」

澪「・・・」ジー

ヒイロ(これでいい。いまの発言で音楽家であるヒラサワ・ユイらしさが演出できたはずだ)

澪「唯・・・なんかいつもと雰囲気も喋り方もちがうけど」

ヒイロ「!」


ヒイロ(何! 感づかれたか)

ヒイロ(俺の演技は完璧だったはず)

ヒイロ(やはりここで始末・・・いや)

ヒイロ(いつしかデュオ・マックスウェルが言っていたな、レディーには優しくしろと)

ヒイロ(優しく・・・? どういうことだ・・・一緒に踊ればいいのか?)

ヒイロ(いまの俺には理解不能だ・・・)

ヒイロ(とにかくここでトラブルを起こすのは得策ではない)


ヒイロ「すまない、今日はこれで帰らせてもらう」

澪「うん、お大事に。また明日」

ヒイロ「あぁ」スタスタ… ダダダッ



澪「だ、大丈夫か・・・?」




校門前


ヒイロ「帰るといったが・・・」

ヒイロ(俺は・・・どこへ帰ればいい・・・?)

ヒイロ(この世界での情報があまりにも不足している)

ヒイロ「迂闊に動きまわるのは危険だ・・・」

ヒイロ「今日は校舎に泊まるか・・・」

憂「あ、お姉ちゃん!」

ヒイロ「お前は・・・平沢憂・・・ッ!」

憂「梓ちゃんから電話で聞いたよー倒れちゃったんだって? 大丈夫?」

憂「心配だから迎えにきちゃった。一緒に帰ろ?」

ヒイロ「・・・了解」

憂「ほ、ほんとに大丈夫? なんだか喋り方とか変だよ?」

ヒイロ「クッ」


ヒイロ(俺にはわからないことだらけだ)

ヒイロ(教えてくれゼロ、この場合一体どうすればいい)

ヒイロ(ヒラサワ・ユイの喋り方、動作、雰囲気)

ヒイロ(こうなることがわかっていればもっと最初からアニメを真剣に見ていたはずだ)

ヒイロ(あずにゃんに気を取られたのも仇になったか・・・)


ヒイロ「俺の・・・」

憂「?」

ヒイロ「俺のミスだあああああああああ!!!」

憂「お姉ちゃん・・・やっぱり頭ぶつけたんだ」ナデナデ




平沢家


憂「ついたよ? お姉ちゃん?」

ヒイロ「・・・」

憂「お姉ちゃん・・・帰り道ずっとキョロキョロしてたけどどうしたの?」

ヒイロ「・・・・」

憂「私リビングいるから何かあったら呼んでね」

ヒイロ「・・・この家にパソコンはあるか」

憂「え、この間一緒に買いにいったよ!? もう忘れたの!?」

ヒイロ「・・・そうか、そうだったな」

憂「持ってくる?」

ヒイロ「頼む」

憂「制服脱いでちゃんとかけとかなきゃだめだよ?」

ヒイロ「了解」



カタカタカタカタカタカタカタカタカタ


ヒイロ「この世界の状況は大方理解した」

ヒイロ「どうやら俺のいたアフターコロニーとは政治体系から文明レベルまでなにもかもが違うようだ」

ヒイロ「だが問題はない。俺はモビルスーツを扱う兵士としてではなく、いち女学生として行動するのみ」

ヒイロ「オペレーションメテオやバルジ攻略戦に比べるとはるかに難易度の低い任務だ」

ヒイロ「あとは俺の周りの環境とヒラサワ・ユイという人物把握についてだが」

ヒイロ「これらについては明日から緻密な諜報活動を開始する」

ヒイロ「そして最大の問題」

ヒイロ「・・・俺はどうすれば元の世界に戻ることができる?」

ヒイロ「ゼロはなにも言ってくれない。ギー太もなにも言ってくれない」

ヒイロ「俺にこの幻を見せ続ける意図とは・・・・」

ヒイロ「くっ・・・う・・・」

ヒイロ「考えれば頭が割れるようだ・・・」



憂「お姉ちゃんお風呂はー?」

ヒイロ「・・・」

憂「入らないほうがいい?」

ヒイロ「そうだな」

憂「そうだよね。風邪が原因だったら困るもんね」

ヒイロ「あぁ」

憂(ほんとに大丈夫かな・・・ずっとしかめっ面でなんだか怖い)

憂「なんだかいつものお姉ちゃんじゃない気がする・・・・」

ヒイロ「!」

憂「もう寝たほうがいいよ」

ヒイロ「・・・・一つ教えてくれ憂」

憂「なに?」

ヒイロ「ヒラサワユイは・・・・どんな人物だ」

憂「え!?」


憂「お姉ちゃん・・・自分のことがわからないの?」

ヒイロ「い、いや・・・違う。すこし混乱しているだけだ」

憂「頭ぶつけちゃって? 明日病院いく?」

ヒイロ「・・・む」

ヒイロ(まずいな。かなり疑われている。何が原因だ)

憂「お姉ちゃんもっと笑ってよぉ」

ヒイロ(笑う・・・? そうか・・・平沢唯はよくわかっていた・・・)

ヒイロ「任務了解・・・」

ヒイロ「ははは! ははははははははは!!」

憂「怖いよ・・・・」

ヒイロ「はははははははは!!」

ヒイロ(これで平沢憂は俺のことを平沢唯だと認識したはず)

憂「わかった!わかったからもうやめて! ご近所に迷惑だよ!! 今日は寝ようね!」

ヒイロ「・・・」

ヒイロ(・・・・・俺は・・・俺は・・・ッ!!)



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