―――――

「うわわ・・・暗くてよく見えない・・・」ヨタヨタ

梓(ん・・・りつ・・・先輩・・・?)

ムギュ

梓「いてっ!?」

「あわわわ!?」

どんっ!

梓「ぐふっ!?ちょっと!?り、律先輩!?」ズキズキ

梓「長いすから落ちるとか寝相悪すぎでしょー!?」

律「スヤッ」ZZZ

梓「あ、あれ?ちゃんと寝てる・・・」

「あたたた・・・」

梓「」

唯「ごめんね~、あずにゃん、暗くて下が見えなくて転んじゃったよ」

梓「」

唯「あ、あず・・・にゃん・・・?」

梓「」

唯「お~い」

梓「・・・と、とにかく、早く俺の上からど、どいて・・・くれませんか・・・!?」

唯「あ、ご、ごめんねっ!?重かったよね?」バッ

梓「い、いえ、そういうんじゃないんですけど」

梓(感触的にやばかった!!!)

梓「っていうか、な、なにをしてるんですか!?」

澪「ヴーん・・・」

唯「しー!!みんな起きちゃうよ」ヒソヒソ

梓「す、すいませんっ」ヒソヒソ

唯「いやね、その、ちょっと、・・・に行こうかと思ってたんだけど暗くって転んじゃったしだいであります、はい」ヒソヒソ

梓「あ、・・・そ、そうなんですか」ヒソヒソ

唯「う、うん」モジモジ

梓「あ、はやく行ってきたほうがいいですよ?もらしたら大変ですし」ヒソヒソ

唯「!?」

唯「も、もらす・・・!!あずにゃんがそんなりっちゃんみたいなこと女の子に言うなんて・・・!!」ヒソヒソ

梓「へ?」

唯「あ、あずにゃんのばかー」ダッ

梓「え、あ、はっ!!いや、そのもらすっていうのは別にあの!し、心配していった言葉で別にそういう他意はなくて~!」

しーん

梓「・・・し、しまった・・・先輩に変なこと言っちゃったよ・・・バカだろ、俺。律先輩がうつったか・・・?」

しーん

梓「寝るか・・・」ゴロン

梓(唯先輩もらさずにちゃんとトイレ行けたかな・・・?)

梓(ってなんで、もらす前提で考えてんだ!!もう高校3年だぞ!?もらすわけないだろ、
  いくらなんでももらすとか、疲れて頭の中がおかしくなったのか?)

梓(ねよねよ・・・明日は本当に大変なんだ、しっかり寝ないと)

梓「・・・」

梓(それにしてもさっきの唯先輩、やわらかかったな。寝袋ごしであれとかダメでしょ・・・)

梓「・・・」

梓(・・・だめだ、眠れねぇ。消えろよ、煩悩、俺のばか、マジでばか)アーモウ

唯「あずにゃんや」

梓「ぎゃー!?」

唯「ちょ、ちょっと、驚きすぎだよ!?みんな起きちゃうって!!」シーシー

梓「あ、す、すいません」ドキドキドキドキドキ

梓「というか、もうトイレ行ってきたんですか?早いですね。ちゃんといけました?」ヒソヒソ

唯(なんだか子供・・・というか幼稚園児並みの扱いを受けている気がするのは気のせい?)

唯「そ、それがですねぇ・・・」モジモジ

梓「・・・?」


29通りめ 続く



―――――

梓「・・・ここで待ってるんで」

唯「あ、じゃあすぐ終わるから」

梓「・・・そういうこと言わなくていいから早く行って来て下さい」

唯「は~い」スタタタ

梓「はぁ・・・」

梓「まるで小学生の付き添いしてる気分」ハハハ

梓「さすがにこの時間じゃ作業してる人もいないかぁ。見事にまっくらだな」

梓「お、月が出てる。きれいな満月・・・満月か?ちょっと欠けてるか、あれ」

梓「・・・」

梓(明日が終わったら、先輩たちは引退かぁ)ボー

梓(明日は、大丈夫だろうか。真鍋先輩と純は今日も練習したのかな。俺と律先輩は練習なしの一発本番・・・)

梓(うまくいくかなぁ)

梓(いや、うまく成功させるんだ!!弱気になってどうする!!)ウンウン

梓(俺はやれば出来る子!!)

梓(今までだってそうやって自分に言い聞かせてがんばってきたじゃないか)

梓(大丈夫、大丈夫、俺らはきっと、大丈夫)ウンウンウン

梓「・・・」

そろぉ~

唯「ばぁ!」どん!

梓「ぎゃー!?」

唯「うわわわ!?あずにゃん再び驚きすぎだよ!?」

梓「ゆ、唯先輩!?び、びっくりしたー!」ドキドキドキドキ

唯「ふぇ!?」

梓「まったくなにしてるんですか!ふつーに声かけてくださいよ。
驚きすぎだって言われても、いきなりこんな暗闇で背中押されたら誰だっておどろきますって」

唯(あ、あれ・・・?気のせいだった?でも今たしかに・・・唯先輩って。でもあずにゃんふつーだ)

梓「ん?いきなり黙ってどうしたんです?」

唯「あ、い、いや、な、なんでもないよ、あずにゃん」アハハハハハハハ

梓「?」

唯(意識しないようにしてたのに~。急に「トイレついてきて」だなんてあずにゃんに言ったこと恥ずかしくなってきちゃったよぉ)

梓「・・・」

唯「・・・」

梓「戻りましょうか、部室」

唯「あ、う、うん!そうだね!!そうしよう!!」

―――――

唯「・・・」テクテク

梓「・・・」スタスタ

唯「あ、あずにゃん」

梓「なんですか?平沢先輩」

唯(平沢・・・やっぱりさっきのは聞き間違いだったのかな。私どんだけ下の名前で呼ばれたいんだろう・・・)

唯「ご、ごめんねぇ~。1人でいければよかったんだけど、校舎の中、昼間と違ってすっごく暗くって」テクテク

梓「しかたないですよ。昼間の校舎と夜の校舎って全然雰囲気違いますし。俺でも1人でこの暗い中を歩くのはムリです」

唯「あずにゃんでもこわいの・・・?」

梓「そりゃ怖いですよ。暗闇はそこまで得意ってわけでもないです」

唯「そうなんだ~。あずにゃん、暗いとこ得意そうなのに、なんだか意外だね」

梓「暗いとこ得意っていうイメージはどっから・・・。いや、聞くまでもなく予想はつきますけど」

唯「猫っぽいもんね、あずにゃん!」グッ

梓「あんまうれしくないです・・・もう何回も聞きますけど、そんなに似てますかね?」

唯「似てるよ~。くりそつだよ~。かわいいよぉ~」

梓(か、かわいい・・・かっこいいじゃないのか)ハハハ・・・

唯「・・・それにしてももう明日が本番なんだねぇ~」スタスタ

梓「そうですねぇ。先輩たちは2日連続舞台って大変ですよね」

唯「あずにゃんのクラスは喫茶店だったっけ?憂と純ちゃんがうちでお茶の淹れ方練習してたよ~」

梓「そうなんですか。(どうりで模擬でやったときに純の淹れ方が常備なはずだ・・・)
なかなかお客の入りもよくて。まぁ、売り上げとしてはプラマイ0ぐらいでしょうけど」

唯「売り上げ・・・あずにゃんは現実的だねぇ~」

梓「そうですか?楽しかったっちゃー楽しかったですよ?喫茶店で接待するのも」

唯「え?あずにゃん接待係りだったの!?」

梓「はい。純が『梓はどう考えても売り上げに貢献できるから接客すべき』って言ったらしくて。しらない間に接客係りになってました」

唯「そうなんだ・・・」

梓「楽しかったからいいんですけどね。レストランでのバイトってこんな感じなのかなぁ~って思ったし」

唯「ねぇねぇ」

梓「はい?」

唯「・・・かわいい子とかきた?」

梓「え、か、かわいい子ですか?う~ん」

―――

梓『おまたせしましたー』

女生徒1『きゃーきゃー!あ、ありがとうございますぅ~!』キャーキャー

梓『あ、すいません。これ、とってもらってもいいですか?』

女生徒2『あ、は、はい!!』スッ

梓『あ、す、すいません』

女生徒2『きゃーきゃー!手ふれちゃった~手ふれちゃった~!?』キャーキャー

女生徒1『え~~まじ、女生徒2ちゃんうらやましぃいい!?私もさわりたかった~!?』キャーキャー

梓『あ、ハハハハ、・・・で、ではごゆっくり』ダッ

梓(なんだか今日はどの女子もテンション高くてこえぇええ!?)

『すいませーん、こっち注文おねがいしまーす』

梓『あ、はーい。いまいきます』

すっ

梓(お・・・あの子・・・)

憂『純ちゃーん、そろそろ席どけようか、お客さん多くなってきたみたいだし』

純『ん?あぁ、だな~。次どこ行こうか』

梓(なんだ・・・平沢さんか)

憂『劇の時間まで時間つぶせるとこってどこかなぁ』ペラペラペラ

純『お、梓~』

梓『よっす、純』

純『だれかかわいいこでもいたかー?』ケラケラ

梓『一番最初に聞くのがそれかよ。まぁ・・・とくには』

純『お前はまったく・・・』

梓『なんだよ』

純『一回自分の中の感でもとっぱらって物事でも見てみたらどうだ?かわいい子なんてたっくさんいるぞ~?』

梓『あはは・・・。そう、かもな』

梓(でも、他の人と比べたところで、もっと唯先輩のこと好きになってくだけだ・・・)

純『あ、お前も先輩たちの劇見られるんだよな?』

梓『あぁ、うん。だけど、交代の時間ギリギリだから席とれなくて立ち見かもな』

純『じゃあ、俺たちが席とっといてやるよ』

梓『ほんとか?』

純『おう!どうせ見るなら一緒にみようぜ!な、うい』

憂『うん、そうだね!ちゃんと梓くんの分の席もとっておくから、安心してね』

梓『なら、お願いするわ。ありがと、2人とも』

純『いーっていーって!俺とお前の仲だろ?』グッ

梓『あはは・・・』

憂『純ちゃん、ほら、つぎいこ!』

純『あたた!?行くから腕ひっぱらないで、うい!?』

憂『じゃあ、またあとでね梓くん。がんばって~』

梓『うん、またあとで』

『すいませーん!ちゅうもんまだですかー!!』

梓『あ、はい!!ただいま!!』

―――

唯「わ~その沈黙は・・・かわいい子いたんだぁ~・・・」

梓「あはは・・・。い、いや、あれを『かわいい子がいた』にいれるのはどうかと思うんですが・・・」

唯「へぇ~・・・そっかぁ~・・・」

梓「いやぁ・・・なんというかですねぇ~(参ったなぁ・・・言い訳するにもどうにも理由がなぁ)」

唯「・・・あずにゃんってどんなタイプの子が好きなの?」

梓「へ?いきなりなんですか?」

唯「いやぁ、いきなりではないと思うけど・・・話の流れ的に気になっただけといいますか・・・」

梓「えぇ・・・話の流れとしても強引過ぎるような・・・」

唯「で、どうなんですか?好きなタイプ!」

梓「え、い、言わないといけないんですか!?」

唯「いいじゃん、こんな話めったにあずにゃんとしないんだしぃ~」

梓「うう・・・えぇ~・・・。す、好きなタイプ・・・と、とくにないですけど」

唯「ほんとぉ~?」ジトォー

梓「ほ、ほんとですって!!」

唯「ムギちゃんとか好きなんじゃないの?下の名前で呼んでるし」

梓「ムギ先輩を下の名前で呼んでるのは、ムギ先輩が『ムギ先輩』って呼んでっていうからで他意はないです」

唯「ほんと?」

梓「こんなことで嘘ついてどうするんですか。嘘つくメリットがわかりませんって」

唯「へぇ~・・・(ムギちゃんが頼んだから呼んでるだけなんだぁ)」

唯「じゃあ、じゃあね、じゃあね」

梓「えぇ~・・・まだ続くんですか、この話。もうやめましょうよ」

唯「澪ちゃんは?」

梓「絶対ないです」キッパリ

唯「そうなの?」

梓「そうです」キッパリ

唯「嘘でしょ?」

梓「だから嘘じゃないですってば」キッパリ

唯「そんなこと言って本当は澪ちゃんのこと好きだったりしてぇ~。むしろファンクラブとかこそっと入ってたりしてぇ~」

梓「んな!?秋山先輩が好きとかないですから!ファンクラブも入ってないです!」キッパリ

唯「怪しいなぁ~。さいきんあずにゃん澪ちゃんと仲よかったし、2人で私とりっちゃんが話してたとき抱き合ってたし」

梓「そ、それは・・・秋山先輩がかってに抱きついてきただけだし・・・あんなの事故ですよ事故」

唯「でも澪ちゃんってやっぱり男の子から見たらかわいいし、美人さんでしょ?」

梓「そ、そりゃあ・・・かわいいし美人だなとは思いますけど・・・それだけで好きになるとかサルじゃないんだから」

唯「サル?」

梓「おっと口がすべりました」

唯「えぇ~。澪ちゃんじゃないとしたらぁ・・・ういとか?」

梓「平沢さんは・・・」

梓「・・・ないですね」

唯「ちょっと!?さっきの澪ちゃんのときのキッパリ感がないんじゃないのぉ~中野くん!!」

唯「でも、ういはすでに純ちゃんのものだよ!残念!!」

梓「『中野くん』って・・・誰ですかそのキャラ。別に平沢さんのことも好きじゃないですって」

唯「でも、ちょっと迷ったよね、ういで」

梓「迷ったって・・・ちょっと考えただけです」

唯「考えたってことは、やっぱりあずにゃんはういみたいな子がタイプなのかな?」

梓「『やっぱり』ってなんですか、つーか、俺すきな人いますし」

唯「え」

梓「あ(しまった)」

唯「・・・・・・」


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