―――――

憂「あ!!おねえちゃんだ!!」キャー

純「・・・木。あれ顔だす意味あるのか?」

さわ子「純ちゃん、そこはノータッチがマナーよ」

梓(顔だけ・・・)

澪『人の傷を見て笑うのは傷ついたことのない連中だ』

澪『笑いたければ笑え!!・・僕は痛みを知っている』

澪『恋する痛み・・・この胸の疼きを・・・!!!』

梓「・・・」

純「つーか、実際に秋山先輩と律先輩が付き合ってるって知ってるからか、さっきからセリフがムズムズするな」

憂「たしかにね・・・あはは」

さわ子「そのことを知ってる人は今頃、りっちゃんへの憎しみではらわた煮え繰りそうなのかしら」


―――――
佐々木「くそ!!田井中くそっ!!!」カシャカシャカシャカシャ

瀧(佐々木、写真撮りながら嫉妬してる・・・そうだよね、佐々木、本当に秋山さんのことが・・・・)

佐々木「なんで田井中の女装はこんなにかわいいんだよぉおおーーー!!?」カシャカシャカカシャ

瀧「」

瀧「心配して損した!!」

佐々木「ん?なんか言ったか?瀧」

瀧「なーんも言ってませーんよーだっ」プイッ

佐々木「?」

―――――

さわ子「ね?梓くん」ニコッ

梓「なんで俺にふるんですか?」

さわ子「べっつに~~。で、そこんとこどうなのよ、梓くん」

梓「さぁ・・・どうでしょうね。つーか、別に俺、秋山先輩好きとかじゃないですけど」

さわ子「ふふ、あなたもまだまだねぇ~」

梓「?」


律『あぁ、ロミオ!!あなたはなぜロミオなのぉ!!』

唯『・・・』

澪『あの天使のような声は・・・・!!』

梓(このシーンに木が、あの場所にいなければいけない意味があるんだろうか・・・)

律『誓いなどなさらないで。どうしてもとおっしゃるのならあなた自身にかけて』

梓(もし、)

律『あなたがご自信にかけての誓いなら・・・私はその言葉を信じますわ』

梓(もし、本当に唯先輩が律先輩を好きでいるなら、今どんな気持ちで舞台の上にいるんだろう)

唯『・・・』

澪『あなたの愛の誓約を、ぼくの誓いとひきかえに・・・』

梓(俺はとっても先輩が好きだけど、でも、どうしようもなくて。同じ舞台の上にすら立てないでいるけど)

律『それはお求めになる前に、さしあげたわ。できることなら返していただきたいと思うけれど』

唯『・・・』

梓(先輩は同じ舞台の上で、誰よりも2人の傍で。
  存在しているのに存在していないかのように扱われながら、2人を見守らなきゃいけない)

澪『返すだって!?それは一体なんのために!?』

梓(一体・・・どんなにつらいんだろう・・・)

律『あなたにもう一度さしあげるために』

唯『・・・』

律『私、気前のよさは果てしない海の深さのよう、見上げても手を伸ばしても届かない空の高さのよう』

律『そして、それは恋の深さも』

梓「・・・」

律『あなたがいくらでもさしあげてくださるほど、それだけ私も受け取るわけですもの』

律『どちらもきりがないわ。だから、ここで終わりにしましょう?』

梓(どうして・・・)

律『愛しいひとよ、さようなら』

梓(どうして俺は、ここにいるんだろう)

澪『おぉ!しあわせな、しあわせな夜だから、これがすべて夢ということにはなってくれるな』

梓(なんで先輩の傍にいることができないで、こんなところで劇の観客をしているんだろう)

澪『かといって、心とろかす、このせつなさ、この甘さ、現実とも思えない』

律『ロミオ・・・』

澪『・・・ジュリエット』

「きゃ~~~」

梓「いや・・・抱き合っただけでこの黄色い悲鳴って・・・」

純「うは!!!やるじゃん、律先輩!!」ヒュ~

憂「なんだか、ドキドキしちゃうね」ドキドキ

さわ子「なかなかあの身長差での抱擁はこの身をもだえさせるわね・・・!!!!」ハウーン

梓「・・・先輩」

唯『・・・』

律『私たち、また会えるかしら』

澪『会えるとも。そして今のこの悲しみがそのときは楽しい語りぐさになるだろう』

純「つーか、本当に木のいる意味あるのか、あれ」


―――――

信代『どうした、ジュリエットはまだか!!花婿はすでに到着しているぞ!!』

三花『死んだのです!お嬢様はなくなられたのです!!あぁ!!』

唯『・・・』

純「別ヴァージョンの木もあるのか・・・つーか、このシーン室内なんだけど、木・・・」

憂「おねえちゃんかわいい~」

梓「・・・観賞植物・・・的な?」

さわ子「はやくりっちゃんまた出てこないかしら」ワクワク

純「センセー他の生徒の演技も見たげぇ~」


―――――

鈴木『では、ロミオへの手紙は届けられなかったというのか!!!』

鈴木『誠実な若者たちの、なんという不幸なすれ違いの運命なのだろう!!』


―――――

律『これは・・・なに?杯が愛する人の掌のなかに』

さわ子「りっちゃん・・・もう・・・ほんとうにかわいい・・・グスッ」

憂「・・・先生、泣かないでぇ・・・グスッ」

純(憂の泣いている理由とさわ子センセーが泣いている理由はこれっぽちも重ならないんだろうなぁ)

律『毒なのね。ひどい。すっかりのみほしてしまって』

律『あぁ・・・!!!ミオ!!あ・・・ろ、ロミオ!!どうして私の分の毒を残しておいてくれなかったの・・・!!』

「みお」ヒソヒソ

「ミオ」ヒソヒソ

「みお?」ヒソヒソ

純「今、律先輩、『みお』って言わなかった・・・?」

憂「役に入りすぎちゃったんじゃないのかな・・・グスッ」

さわ子「りっちゃん・・・さわこって呼んでよかったのに・・・!!」ズピーッ

律『その唇に、口付けを。そこにまだ毒が残っているかもしれないから。それで死ねれば、あの世で本当の愛を、ロミオ』

梓「え・・・このシーンってなくなったんじゃ・・・」

さわ子「あぁ、一回なくしたんだけど、『2人がより戻したからシーンも元通り』って言ってムギちゃんが」

梓「・・・そんな」

さわ子「っていうか、なんで梓くんがシーンなくなったこと知ってるのかしら?」

梓「あはは・・・ま、まぁ、いいじゃないですか」ははは

さわ子「まったく・・・。もちろん、フリだけよ?本当にするわけじゃないわよ。梓くんったら、大げさなんだから」フフッ

梓(フリだとしても、そんなの・・・頭ではわかってても嫌なものは嫌だろ・・・)

律『あなたの唇、まだあたたかいわ』

「きゃ~~~~~!!!!」

純「お!」

憂「ひゃ~」ドキドキ

さわ子「あぁ~~!!澪ちゃんがうらやましいぃいいい!!!!」

梓「・・・」

「うは、劇でキスシーンとか・・・俺をもだえ殺す気かよ!!!」

「いい話だなぁ・・・エヅッエグッ・・・」

「え、え、え、え!?あれって本当にキスしてない!?」

「え?まっさか~~!!恋人でもない人と劇でキスとかしないっしょー。フリだよ、フリ」

「あ、だ、だよねー、でも、フリでもすっごいリアルだった」アハハハ

純「フリだとしても、あの2人はリアル恋人同士だからね」

憂「というか、フリだとしても劇で人前でキスシーンは恥ずかしいよ・・・澪さん、すごいなぁ」ドキドキ

律『待っていて、この剣が私をあなたの下へ導いてくれる!!』

いちご『お前、そこでなにをしている!!!』

律『はっ・・・・はやくしなくては。剣よ、この胸があなたの鞘。そこにおさまり、そして私を死なせて』

梓「・・・」

律『・・・ミオ』

律『あぁ!』







純「終わった・・・」ジーン

憂「いい話だったねぇ・・・グスッ」ジーン

梓「たしかに・・・いい話だった」

パチ

パチパチ

パチパチパチパチパチ

純「うっは~~~拍手すげぇ~~!!俺も俺も~~」パチパチパチパチ

「いい話だったけど、あれって唯先輩でてる意味あったか~~?」パチパチ

「さぁ、よくわかんね。まぁ、かわいかたけどさ。顔だけだしてさ!!」パチパチ

「おっまえは・・・本当に唯先輩好きなんだな・・・」

「あったりまえよぉ~~!!だてに告白してないっつーの!!」

憂「むっ!!おねえちゃんだってちゃんと劇の練習家でしてたもん!!いる意味あったもん!!」

純「あはは・・・たしかに。木の練習は・・・ずっとしてたよな、家で。なにつったってんだって思ってたけど」

憂「純ちゃん、おねえちゃんの練習見てそんなこと思ってたの!?ひどい!」

純「え、い、いや。その。お、俺にあたるなよぉ~~」

梓「・・・」パチパチパチ

パチパチパチパチ

さわ子「ガチで澪ちゃんがうらやましい・・・うらやましい・・・」ポロポロポロ

梓「せ、先生・・・・泣かないでくださいよ」ギョ

純「あ、つーか、俺ら劇まるまる見ちゃったよ!?」

憂「あ、交代の時間すぎてる!?じゅ、純ちゃん!?」

純「急いでいこう!!あ、梓、じゃあ、またあとでな!!」ダッ

梓「あ・・・おう!あ、平沢さん、喫茶店がんばってね。劇終わったからきっとまた客足ふえると思うから」

憂「うん。がんばるよ、じゃあ、またね!!」ダッ

梓「あ、・・・ん、また・・・」ヒラヒラ

梓「・・・ちょっとだけ、後ろ姿と笑った顔はそっくりだな」ボソッ

さわ子「ん?誰と誰のこと?知らないフリはなしね、ちゃんと聴こえちゃったから」

梓「さぁ、だれのことですかね・・・」

さわ子「・・・あなたはとことんとぼけるわね」

梓「先生には関係のないことですし」

さわ子「まったく・・・いつも強気なのに、そういうメンタルすっごい弱いわねぇ」

梓「なんですか」

さわ子「そうやって知らないフリしようとして何も見ようとしないなら、見落としているものって増えていくだけなのよ?」

梓「見落とす以前に、見たくないんです。迷惑かけたくないし」

さわ子「それを迷惑と受け取るかどうかを決めるのはその相手であって、梓くん自身が決め付けることではないんじゃないの?」

梓「そんなの・・・第三者による勝手な言い分ですよ」

さわ子「そうね・・・。私、他人だし・・・結局はどんなにがんばっても他人事としてしか梓くんには伝わらないのかも」

梓「・・・」

さわ子「それって、ちょっと切ないわね」

梓「・・・すいません」

さわ子「謝らなくていいわ。それって、人と人がそれぞれ全く別の固体として存在しているのなら避けられないことだもの」

梓「・・・」

さわ子「でも、どんなに伝わらなくても、言わずに心の中でとどめて想いを腐らせておくようなことだけは、私したくないの」

梓「先生はもっと、心の中にとどめておいたほうがいい言葉が多すぎると思うんですが・・・」

さわ子「でも、言わずに後悔するより全然いいもの。逆にあなたは言わなさすぎよ」

梓「そうですかね・・・。俺は言って後悔するほうが何倍も嫌です。それが勘違いならなおさら黙っておいたほうが、得ですよ」

さわ子「その歳で損得考えるもんじゃないわよ?いいじゃない。
    損したって。損を被るリスクを背負った当事者だけが、本当の得を得ることができるのよ?」

梓「・・・当事者ねぇ」

さわ子「まぁ、世界は広いからロミオとジュリエットのようにお互いを想い合いながらすれ違うのも美徳かもしれないけどね」

梓「・・・」

さわ子「さてと、柄でもなく梓くんに説教もしたし。そろそろ行こうかしら」スッ

梓「どっか、行くんですか?」

さわ子「あったりまえよ!私こう見えて3年2組の担任なんだからね!!」

梓「あぁ、・・・なら、先輩たちによろしく行っといてください」

さわ子「はいはい。あなたも、そんなぶーたれた顔いつまでもしてないで、舞台にあがってきなさいよっ!!」

梓「ぶーたれた顔って・・・」

さわ子「あなた、りっちゃんのこといつもバカにしてるけど、りっちゃんの方が今のあなたよりも何十倍も男らしいわ」

梓「・・・言われなくてもそれは俺もわかってますよ」

さわ子「やつあたりもほどほどにね!しっかりしなさい!!こんの青春まっさかりっ!!」バシッ

梓「いたっ!?」

さわ子「じゃあね~~」スタスタスタ

梓「・・・・いたた、たた・・・背中叩いていきやがった・・・」ヒリヒリヒリ

梓「・・・」

梓「・・・同じ、舞台ねぇ」

梓「つーか、さわ子先生にまであんなこと言われるなんて・・・」

梓「俺ってバレバレなのか・・・?」

梓「まさかな」アハハハハ

梓「・・・」

梓「・・・部室でもいくか」


34