―――――


姫子「…」

律「おう!わりぃ!遅くなった!!」ッタッタッタ

姫子「あ…ううん…別に…待ってないし…って!?」

律「ん?」

姫子「田井中くん…でいいんだよね?」

律「あぁ?そうだけど…え?なに?俺、ついに人間としても認識されづらくなってきた?」

姫子「いや…そういうんじゃなくて…その…カチューシャ…」

律「あ!どうりで走ってて前髪が邪魔だと思ったんだよ!!
  …って、つーことはカチューシャ忘れたのか!?くそっ!!ムギか和が明日持ってきてくれうように祈っとこう…」

姫子「…」

律「ん?なんだよ、立花、人の顔じろじろ見やがって…そんなにおかしいか!?」

姫子「え?…い、いや、おかしくないよ?」

律「ははは、お世辞とか別にいいぞ?おかしいと思ってんだろ、どーせ」ケラケラ

姫子「そっ…そんなこと思ってないよ!!」

律「おおう!?いきなり大声だすなよ!?びっくりするじゃねーか!!」

姫子「あ、…ご、ごめん…」

律「へへ…まぁ…おかしくないなら別にいいや、あんがとな、立花」ヘヘヘ

姫子「あ…う、うん…」

姫子「」ハッ

姫子「あ、は、はい、これ!」スッ

律「ん?…あ、これ!!ストロベリーシュガーミルク!!」

律「なんで?」

姫子「いや…いつも待ってくれてるときに飲んでるなぁ~って思って見てた…から…」

律「そかっ!!サンキュ~」へへっ

律「じゃあ、帰るか!」

姫子「あ…」

姫子「…うん」


19通りめ 律和梓純 終わり



唯『わ~~!見てみて!!おっきな入道雲がでてるよぉ~~!!』

『あ、ちょっと、そんな後ろ向きながら歩いてたら危ないって』

唯『だいじょぶ、だいじょーぶ!転ばないから!!』ブイッ

『その自信はいったいどこからくるのやら…それにしても入道雲ほんとにキレー…つか、すっごいでかいなぁ…』

唯『ね!もう夏なんだね!』

『まぁ、…夏というか、お互い夏休みだからこうして会えてるんだけどね』

唯『いつもスカイプしてるからあんま久しぶりな気がしないけどね!…それにねぇ~』

『まぁ、久しぶりな気がしないのはたしかに。…?』

唯『私がもし転びそうになっても、ちゃんと助けてくれるんでしょ?』エヘヘ

『っ!?な、なに言ってんだよぉ!?』

唯『ふふふ、照れない照れない』

『照れてない!!というか、そんなタイミングよく助けるなんてできないからちゃんと前向いて歩こうよ!?』

唯『えへへ』

『なんで怒ってんのに笑ってんの!』

唯『いやー、そんなこと言ってても、いざとなったらちゃんと助けてくれるんだろうなぁ~って思って』

『…いやー、入道雲がキレーダナー』

唯『ふふ…だね。でも、入道雲が月だったらもっとうれしいセリフなんだけどなー』

『…』

『…ゆい』

唯『んー…なに、あ』

~~

唯「ぬふぇ!?」ガバッ

紬「トンちゃん、ご飯おいしい?」パラパラ

唯「え?え?ここどこ?あれ?…あれ?入道雲は?」キョロキョロ

紬「はい、ごちそうさまでしたっと。あ、唯ちゃん起きた?」

唯「…え?あ、ムギちゃん…」

紬「ん?お茶飲む?あと、ここは部室よ」

唯「あ…、私、いつのまにか寝てたんだ…お茶のむ」

紬「じゃあ、淹れるわね。起こそうと思ったんだけど、ものすごく気持ちよさそうに眠ってたから」

唯「…そっすか」

紬「そっす♪」


―――――


唯「ふはぁ~」

紬「ふわぁ~」

唯「あ、ムギちゃんつられあくび」エヘヘ

紬「えへへ、唯ちゃんにつられちゃった」

唯「今日部活ないから1人で練習しようって思ってきたけど、…まぁ、寝てたけど。ムギちゃんが来てくれたからよかったや~」ゴクッ

紬「それは私の煎れたお茶が飲めるから?」

唯「ん~、それはどうかなぁ~」ニヤニヤ

紬「えー」

唯「えへへ、うそうそ!冗談だよムギちゃん!ちゃんとムギちゃんが来てくれたことがうれしいんだよ~」

紬「ん、もう…イジワルだなぁ…唯ちゃんは…」

唯「えへへ…」

紬「今日どうして部活休みなんだろうね?」

唯「さぁ…でも、最近ちょっときまづかったからちょうどよかったかも」ゴクッ

紬「そうね。りっちゃんと、澪ちゃん…大丈夫かな?」ゴクッ

唯「りっちゃん、姫子ちゃんのこと好きなのかな?
澪ちゃんいるのに、バイト帰りに一緒に帰るとか正気の沙汰じゃないよね」

紬「姫子ちゃんは…りっちゃんのこと、どう思ってるのかな?」

唯「あー、どうなんだろうね。彼女いる男の子にそんな風に一緒に帰ってもらってて」

紬「やっぱり…好きなのかな?」

唯「…かな?なんか少女マンガみたいな三角関係だね~」

紬「あー…そうね。少女漫画みたい。幼馴染で付き合ってる設定とか」クスッ

唯「こうゆう時って、たいてい幼馴染同士が元の鞘に戻るだけで、もう1人はカマセみたいな役割になるよね」

紬「そうそう。女の子2人ともがかわいくて頭も良いのに、
その2人が好きになるのがたいして顔がよくない優しいだけがとりえの平凡な男の子っていう設定も王道よねぇ~」

唯「もう何回も見たパターンなのに、登場人物が違うってだけでついつい見ちゃうんだよねー。
結末なんてわかりきってるようなもんなのにー」

紬「それが商売よ、唯ちゃん!」

唯「それが商売かー、大人はこわいね~、ムギちゃん」エヘヘ

紬「…あ!」

唯「ん?どったの?」

紬「王道って言えば、やっぱり初恋よね!!」

唯「うん?まぁ、そうだね。扱いやすい題材ってのでもあるんじゃないかな?」

紬「違うの違うの!もう漫画の話じゃなくて!!」

唯「?」

紬「りっちゃんと澪ちゃんってお互いに初恋さん同士?」

唯「あぁ、そっちね。澪ちゃんは…どうなんだろう。りっちゃんは、初恋は澪ちゃんだって言ってたよ」

紬「やっぱそうなのねー。でも、澪ちゃんみたいにかわいい子とずっと一緒にいるんだから、
好きにならないほうがおかしいわよね」ムムム

唯「…ねぇねぇ」

紬「うん?なにかしら?」

唯「ムギちゃんの初恋っていつ?」

紬「私の初恋…?」

唯「うん。そうだよ。ムギちゃんの初恋」ニッコリ

唯「まさか和ちゃんが初恋なわけじゃないでしょ?」

紬「それはそうだけど…でも、随分小さいときのことだから聞いても全然楽しくはないと思うよ?」

唯「楽しいかどうかじゃないんだよ、ムギちゃん!!私が聞きたいの!!」

紬「…まぁ、本当に対したことじゃないから言えるんだけどね…聞く?」

唯「うん!おせーて!おせーて!!」ワクワク

紬「えっとね」

唯「うんうん!」

紬「…いくつだったかな…多分、3才か4才くらいだったと思うんだけど…」

唯「3才…随分早いんだね…もっと小学校ぐらいかと思ってた」

紬「ふふっ。そのときに、父の会社が主催のクラシックのコンサートに行ったの」

唯「クラシックコンサート…!!一気に話が上流家庭だよ!!」

紬「それぐらいから私はピアノを習っていたし、
勉強の一環ってことでいまならクラシックも聞いてもいいんだけど、
そんなまだ3、4才の時に聞いてもあの頃はまだクラシックのよさってよくわからなくて」

唯「うんうん」

紬「それに…まだ暗いところが怖かったの。演奏中はステージを残して会場のライトはほとんど消えてしまってたから、すごく怖くて」

唯「あー、3才くらいならまだ怖いよね。私もよく憂に夜中にトイレ一緒についてきてもらってたもん」

紬「そうよね…やっぱり怖いわよね…ん?」

唯「?」

紬「…ううん。聞き間違いってことにしておくわ。そのコンサートホールには、私がよく行くし、
行くと必ず怖くなってホールから出たがってたから託児所が出来てて。もちろん、一般の人も利用してたけど」

唯「へー」

紬「でね、いつもみたいにその一室に斉藤さんに連れてってもらったの」

唯「斉藤さん?」

紬「あ、斉藤さんは私が小さい頃からお世話してくれている執事さんね」

唯「」

唯(なんかムギちゃん家の話ってすごいなー。
なんでか無性に和ちゃん家の浴槽に一心不乱にザリガニを入れてたあの頃の私に説教しに行きたい気分だよ…)

紬「いつもは誰もいなくて、私は1人で遊んでたんだけど、その日は先客がいてね」

唯「先客…」

紬「私がいつも1人で遊んでるおもちゃでその子が遊んでて…。
別に私のおもちゃってわけじゃなかったんだけど、ほら、自分が使ってたり、
とっておきの認定をしちゃったものって妙に愛着ってわくじゃない?」

唯「ううん?」

紬「えっとね…、たとえば…行きつけのファーストフードで必ず座っちゃう窓際の席とかさ、あるでしょ?」

唯「あ、うん!」

紬「なんていうか・・・別に自分の席でもないし、予約とかもないから早いもの順で誰でも使っていいはずなのに、
いざ誰かに使われてたらちょっと、自分の空間を害された気分になっちゃわない?」

唯「あるね・・・ものすごいわかるよ、それ・・・」

紬「よかったわかってくれて。
だからね、そのとき、幼心にものすっごくそういう気分になっちゃって。『そのおもちゃ私のなのに!!』って」

唯「ふんっふんっ」

紬「でも、普段大人しか周りにいなくて、自分と同じ年の子とあまり接する機会がなかったから、
どうすればいいのかわからなくて・・・話かけることもしないで、ただその子のこと、横からジーって見てたの」

唯「ちょっと、想像したらシュールだね、その空間」

紬「で、ジーっと見てたら、おもちゃばっか見てたその子がやっろ私のこと気づいてくれて。こっちに顔を見せてくれたのね」

唯「うんうん。それで?っていうか、初恋の人いつでてくるの?」

紬「恋に落ちました」

唯「」

唯「えぇえーー!?え!?ていうか、その子がムギちゃんの初恋の人なの!?」

紬「うん。だって・・・かわいかったんだもん。
  顔見た瞬間にそれまでその子に感じてたモヤモヤ感なんてどっかいっちゃった!」

唯「へぇー。メンクイなんだね。そうみえないけど・・・」

紬「そうかな?」

唯「そうだと私は今の話を聞いて思いました」

紬「うーん。自分としては顔というより心とかで好きになってるつもりなんだけどな」

唯「その子とはどうなったの?」

紬「どうもなってないわ。ただコンサートが終わるまで一緒に遊んだだけ。名前も知らないし、それから1度も会ってないの」

唯「ほえぇ~。ムギちゃんの初恋ってなんだか、少女マンガみたい・・・」

紬「えへへ。ほんとにね。自分で言っててそう思ってた」

唯「でも、なんかいいね。そういう淡い思い出みたいな恋って・・・」

紬「・・・唯ちゃんは?」

唯「ん?」

紬「唯ちゃんの初恋って、どんなの?やっぱり、少女漫画みたいなの?」

唯「・・・」

紬「・・・」

唯「んー・・・どうかな。私のは・・・少女マンガっていうより、夜中にやってるしょっぼいB級映画のそれかな」エヘヘ

紬「?」

唯「まぁ・・・少女マンガでもありきたりすぎて、
  誰も見向きすらしなくなったうすっぺらな設定っていうか、さ」ヘヘヘ

紬「そうなんだ・・・」

唯「・・・もうすぎたことだし。それより・・・ムギちゃん!!」

紬「?」

唯「お茶のおかわりおねがいっ!」ニコッ


20通りめ 唯と紬 終わり



16