―――――



律「ただいまー」

澪「お、おじゃま…します…」

しーん

律「あれ?おかーーさーーん」ドタドタドタ

澪(…あ、行っちゃった…)ポツーン

澪(…人の家って…はじめて…きた)キョロキョロ

澪(…あ、りっちゃんの匂い)

律「みおちゃーん」ドタドタドタ

澪「きゃっ!?」ビクッ

律「あ、ごめんね、おどろかせて」

澪「あ…う、ううん」

律「おかーさん、買い物行っちゃっていないみたい!!あがってあがって!!」

澪「あ…、うん。お、おじゃましま…す」ヌギヌギ

ガチャ

律「ここにランドセルおいていいからー」ドスン

澪「うん…」トン

律「じゃあ!ちょっとまっててー」タタタタタタ

パタン

澪「…」ポツン

澪「…」


ガサガサ



律「あれーー?おかーさんどこにしまってるんだろう…」

ガサガサ

律「あ、あった!!」

むんず

律「へっへ~~!!これこれ!!これがあれば~~♪」タタタタタ



ガチャ



律「みおちゃーん」

澪「…」

律「って、ずっと立ってたの!?」

澪「あ、…う、うん。…どうしたらいいかわからなくて」

律「てきとーに座っててよかったのに~」

澪「…だ、だって…人の部屋ってあんまり入ったことなくて…よくわからないから…グスッ」

律「あわわわわ!?な、泣かないで!?ほら!!ほら見てみて!!」

澪「…?…グスッ」

律「うるとらまーん」

律「せぶん!!」シャキーン

澪「…」キョトン

律「ほら!!うるとらまんせぶん!!」シャキーン

澪「プッ…」クスクス

律「ん?」

澪「スプーン目に当ててる…」クスクス

律「ちがうよ~~!!スプーンじゃなくて目だよ!!目!!」ホラホラ シャキーン

澪「全然似てないよぉ~~…」

律「……へへっ……」

律「みおちゃん」

澪「ん?なに、りっちゃん」クスクス

律「もしさ、みおちゃんのこと、笑うやつがいたら僕がそいつのこと『ダメだよ』って怒ってあげるね!」

澪「え…?」

律「だから、大丈夫だよ!みおちゃんの作文、みんなちゃんと聞いてくれるよ!!」

澪「…怒ってくれるの?」

律「うん!こうして…うるとらまんせぶんになってすぐに駆けつけるから」シュワッチ!

澪「えへへ…やっぱ似てない」クスクス

律「そうかなぁ?」シャキーン

澪「…じゃあ、りっちゃんは私のヒーローだね」

律「……へ?」

澪「だって、私のこと、守ってくれるんでしょ?」

律「あ……」

澪「…ちがうの?」

律「…ううん。そうだよ」

律「僕がみおちゃんのヒーローになるよ!誰かにいじめられたり、笑われたり。いやなことされたらすぎに言ってね?」

律「みおちゃんのこと、ぜったいたすけてあげるから!!」シュワッチ!

澪「…うれしいな」

律「ほんとぉ?」

澪「うん…ありがと、りっちゃん。私、作文がんばるね!」

律「うん!みおちゃんならできるよ!!」ヘヘヘ


―――――





律「おおうぅ!?」がばっ

律「……んあぁあ……夢か……てか、今何時…」ガサガサ

律「2時半すぎ…」

律「昨日、立花さん送ってからそのまま寝たのか…シャワーあびよう…」

律「それにしても、なんか…なつかしー夢見ちまったなぁ~~」ハハハ

律「……」

律「『りっちゃんは私のヒーロー』…かぁ…」ボスン

律「はぁ…なにしてんだか…俺…」


律「…澪」


16通りめ(1'通りめ) みおとりつ 終わり



和(はぁ…、律のあの提出物忘れの癖はどうにかならないもんかな…)

和(…もう今度から秋山さんにでも頼むか)

和(今日はこれからもう何もないよな、たしか。…まぁ、一端生徒会室に戻ろう)スタスタ

「お~い!のどかぁ~~!!」タッタッタッタ

和「ん?」クルッ

律「おーい!!」

和「おい、律。廊下走るなよ」

律「ははは。わりーわりー。そんなことよりさ、和!」

和「ん?なんだよ?さっき部室であったばっかだろ。てか、追いかけてきたのか?」

律「あぁ…。てか、さっき、わるかったな。俺、お前とムギが付き合ってるなんて知らなくてさ」ハハハ

和「…いや、べつに謝られてもな。俺も教えなかったから」

律「つーか、ムギとか。お前もなかなかやるよな。抜け目がないというか」ハハハ

和「…なんだ?殴られにきたのか?おまえ」

律「!?いやいやいやいや!?め、めっそうもない!!!」

和「じゃあ…なんだよ」

律「おう!あのさ、和!」

和「?」

律「バンドやろーぜ!!」

和「じゃあ、俺生徒会行くから」スッ

律「だーーーーっ!?ちょっとまったぁああああ!!」ガシッ

律「話だけでもきいてくださいっっっ!!!!!」

和「…ッチ…なんだよ、その『バンドやろう』って…。お前もうバンドくんでるだろ」

和「そもそも俺は楽器ができない」

律「いやさー、その、なんというか。俺たちなんだかんだでもう3年生だし、今年で文化祭最後だろ?」

和「ああ…まぁな。確かに今年で文化祭最後だな」

律「てか、さっき舌打ちしたか?」

和「いや?」

律「空耳か…さっきも梓に鼻で笑われたから…」

和(こいつ…不憫なやつだな…)

律「まぁ、いいや。話を戻そう。いやさ、もちろん、けいおん部としてバンド演奏はしたいと思ってるんだけどさ…その」

和「?」

律「…なんというか、どうせ最後ならいつも出来ないことやってみたいって思ってさ」

和「いつも出来ないこと…俺とバンド組むことがそれなのか?」

律「ん~、はずれでもあたりでもないというか」ヘヘヘ

律「あのさ」

和「ん」

律「文化祭で対バンしたいんだ。HTTと」

和「へぇ~~…そうなのか」

律「あぁ………反応うすっ。で、ぜひ和にそのバンドのメンバーとして一緒に演奏してもらいたいんだよ」

和「というか、対バンってなんだよ」

律「そっからかよ!?」

和「当たり前だろ。あとさっきも言ったけど、俺は本当に楽器弾けないからな」

律「ん。まぁでも、和にはキーボードしてもらおうって思ってるから。これもう決定事項な」

和「…楽器弾けないって言ってるのにもう楽器が決定してるなんて…。しかもなんでキーボード?」

律「お前がムギの彼氏だからだ!!!」ド――ン

和「いや、まて。わけがわからない。なんだその理屈は」

律「へへ…!!まぁ、いいじゃん!!キーボード、ムギに教えてもらえよ!!あいつ本当に演奏うめーから」

律「ついでにもっと仲良くなってキスでも一発かましてやれよっ!!」グッ

和「だまれ」

律「調子にのってすいません」

和「…」

律「…と、とにかく…。文化祭まではまだ3ヶ月くらいあるし!!曲もなるたけキーボード素人が弾けるやつ選ぶからさ!!!」

和「…」

律「まぁ、…考えるだけでも考えといてくれよ!!お前も生徒会でいろいろ忙しいと思うし!!」ポンッ

和「…俺のほかには」

律「ん?」

和「俺のほかには誰か決まってるのか?バンドのメンバー」

律「あぁ…。一応、去年の文化祭のステージ部門の応募だと4人以上なら応募できるんだよな?それ今年も同じか?」

和「まぁ。大体の流れは去年と一緒だと思うから、今年もそうだと思うけど…」

律「なら、俺と梓と純でもう3人決まってるから…」

律「あとはお前だけだな…和!」

和「…そうか」

律「おう!だから、まぁ、考えといてくれよな!!最後の文化祭、一緒に思い出つくろうぜ!!」

和「…」

律「じゃ、俺、部室もどるわー。曲決まったらすぐ知らせるから!!」タッタッタッタ

和「おう…あ…律!!だから廊下は走るなって!!」

律「ははは。きにすんなきにすんな!!」タッタッタッタ

和「…ったく」

和「…」

和「…思い出か」


17通りめ 律と和 終わり



唯「ねぇ、和ちゃん」

和「ん?なんだよ、唯」

唯「最近さ、憂に彼氏ができたんだー」

和「…」

和「…へぇ~~。そっか、よかったな」

唯「うん」

和「最近学校来てるみたいだし…」

唯「その彼氏になった子がね、憂のこと助けてくれたんだ」

和「…助けた?どうやって」

唯「私があれだけ言ってもダメだった憂に…家にまで来てくれて土下座で泣き名がら憂に謝ってくれてさ」

和「謝った…?なんでそいつが?」

唯「んと…『憂のことシカトしてごめん』とかなんとか聞こえてきてたけど…ごめん。
あんま聞いちゃいけないかなって思って途中から外に出てたからわかんないや」

和「…そっか」

唯「うん…」

和「…」

唯「…」

唯「和ちゃんさ…ホントに私のこと、好き?」

和「…すきだよ」

唯「うそだ…」

和「…本当だって…てか、いきなりなんでそんなこと聞いてくるんだよ」

唯「…あのね、いいこと教えてあげよっか?」

和「…?なんだよ」

唯「和ちゃんの言うとおりに、もし、本当に、和ちゃんが私のこと好きなんだとしてもね」

和「だから、好きだって」

唯「うん、それ違うから」

和「えっ…」

唯「だから、もうやめて」

和「…どういう意味だよ…それ…」

唯「和ちゃんが、私を好きなのは、さ、」

唯「私が憂と似てるからだよね…?」

和「…」

唯「へへ…気づいちゃったっていうか、私はずっと和ちゃんのこと見てたから、知ってるんだよ?」

唯「ねぇ、和ちゃん、私がいつも和ちゃんのこと見ててもね、いつだって和ちゃんの視線の先にはさ…憂がいたんだ」

和「…」

和「ゆい…」

すっ

唯「さわらないで」

和「…」

唯「あ、あははっ、ごめんね?」

和「あ、い、や…」

唯「でも、いま…和ちゃんに触れられたらきっと…」

唯「…きっと、私本当にもう、ダメになっちゃう気がするんだ」エヘヘ

和「…」

唯「もう和ちゃんと憂と、仲良しの3人でいられなくなる気がするの」

唯「もう、同じ場所になんて戻ってこられなくなるって…」

唯「…わかるから」

和「…ゆ…い…?」

唯「えへへ」

唯「あ、でも、そうなると…和ちゃんの初恋も、もう終わっちゃったんだよね?」

和「…」

唯「ね?」

和「…でも、憂が学校に復帰できたんなら…それが一番いいに決まってる」

和「そもそも…憂がクラスのやつらに無視されたのだって…全部、俺のせいだし」

和「ういが…また幸せそうに笑ってくれるだけでも、俺はうれしいから…」

唯「…つらかったよね、和ちゃんは、和ちゃんでさ」

和「…」

唯「和ちゃんは悪くないのに…。ただ、好きな人の名前を言っただけなのにね」

和「そんなことない…俺が、軽率だったんだ。考えが甘かったから…」

和「でも、本当に悪いと思ってるなら…俺は憂の前で喉をかっ切ってでも謝るべきだったんだよな」

和「死ねばよかったのに…俺なんて…」

和「まぁ…、その程度の気持ちだったってことか…俺の憂への気持ちなんて」

和「…こんなに…うすっぺら…」

和「なにもしなかったやつより、土下座でもなんでもしたそいつのほうが全然人間人間してる…」

唯「そんな風に…もう自分を責めちゃやだよ、和ちゃん」

和「簡単にできたらいいんだけどな」

唯「…じゃあさ、こうしようか」

和「…」

唯「私も和ちゃんに付き合ってあげるよ」

和「…?」

唯「私の初恋も、もう今日で終わりっ!」ヘヘッ

和「…なんだよ…ゆい…」

唯「いつも『仲良し』でいいよねっていわれて、でも、ホントはちょっとかなしくて」タハハ

唯「あきらめてた初恋は、和ちゃんにとって、憂のかわりでいてあげられることしかできなかったけど…」

和「…なに言ってんだよ…」

唯「別れよっか!!私たち」ニコッ

和「…え?」

唯「…いや?」

和「…なんで別れなきゃいけないのか、わからない」

唯「そう?私はすっごいわかるけど…」

和「好きだよ、唯」

唯「…和ちゃん」

和「ん?」

唯「そういうこと、言うの、やめようね。それ以上何か言われても、逃げてるみたいにしか聞こえないよ」

和「…」

唯「私、憂じゃないんだ。平沢唯なんだ。だから、ごめんね?」

和「…」

和「…」

和「…ごめん」

唯「ううん、いいよ。…あ、でも」

和「うん?」

唯「最後に1回だけ、ギュってしてほしいな」エヘヘ

和「…いいの?さっき嫌がったのに」

唯「私がしたいからいいのです!!」

和「そんなもん?」

唯「そんなもん」

和「…それじゃあ」スッ





ぎゅ



唯「…えへへ…和ちゃんあったかーい」

和「そうか?お前のがあったかいけど…」

唯「…」

和「…」

唯「…ごめんね?」

和「なんで唯が謝るんだよ」

唯「私が、好きになっちゃってごめんね…はぁ…私が、憂ならよかったのになぁ」フフッ

和「…」ギュ

唯「きっと、ううん、絶対、憂の気持ちのほうがうれしかったよね。
  憂の気持ちからしたら、私のなんかうすっぺらかったでしょ?」

和「そんなこと…」

唯「でも、和ちゃんにだったからね…私」

唯「こんなうすっぺらならいくらでもあげたんだよ」エヘヘ

和「…ゆい」

唯「いままでありがとう、和ちゃん」

唯「ばいばい、私の初恋」


18通りめ 唯と和 終わり



14