澪「なぁ、梓」

梓「なんですか?秋山先輩」

澪「あっ、あのさ…」

梓「?」

澪「梓の、その、…だな…えーっと、さぁ…」キョロキョロ

梓「はい(えっ?秋山先輩、なんでこんなにキョドってんの?)」

澪「あのな、あ、梓の、初恋っていつだ?」

梓「へ?」

澪「あ、ち、違うんだ!?そのっ、今度の歌詞の参考にしようと思ってさ」ワタワタ

梓「そうなんですか…(次の歌詞、初恋がテーマなのか)」

梓(この人は彼氏がいても少女だなぁ)ホゥ

梓(思わず一句詠んじゃったよ)

澪「あ、あぁ。そうなんだよ」

梓(たまには…ロックな歌詞書いてほしいなって思っちゃったのは言わないでおこう)ウンウン

澪(なんでか頷かれてる?)

梓「というか、初恋で歌詞を書くのであれば先輩自身のことを書けばいいんじゃないですか?」

梓(それだとそっくりそのまま律先輩宛てのラブレターな曲になるんだろうけど)

澪「あぁ…まぁ、そうなんだろうけどさ……」

澪「たまには自分の価値観で自分の世界を表すんじゃなくってさ、他人の体験で詩を書いてみようと思ってな」

梓「それで俺の『初恋』ですか」

澪「あぁ、うん。そうなんだけど…ダメかな?」

梓「ダメじゃないですけど…聞いてもつまんないですよ?」

澪「つまらないかどうかは私が決めるから大丈夫だ!!」キラキラ

梓「そうですか(なんか輝いてるなぁ)」

澪「うん!そうなんだ。だから、梓!聞かせてくれ!」ワクワク

梓「あぁ、はい。えぇーっとですね…」

澪「うんうん!」

梓「…いくつだったかな…多分、2才か3才くらいだったと思うんですけど…」

澪「2才…随分早いな…」

梓「両親共通の知り合いの知り合いの友達の主催だかなんだかのクラシックのコンサートに行ったんですね」

澪「1人でか!?」

梓「……両親とです」

澪「あぁ、なるほど!続けて続けて!!」

梓(なんか今日の先輩調子狂うなぁ…)

梓「ていうか、いくら歌詞のためとはいえ、俺だけ言うのはちょっとフェアじゃないと思うんで」

澪「確かに」ウムウム

梓「秋山先輩の『初恋』の話も聞かせてくださいよ」

澪「えっ!?」

梓「別に減るものでもないし、いいじゃないですか」

澪「いや、で、でも……」

梓「じゃあ、話続けますね」ニコッ

澪「あ、ちょっと!?」

梓「で、コンサートに連れていかれたんですけど、そんなまだ2、3才のガキンチョにとってそんなとこ面白くもなんともないわけですよ」

澪「うんうん」

梓(あ、聞くんだ)

梓「なにやらそのコンサートホールには託児所みたいな、いわゆる『コンサート中に騒がれると迷惑だからガキはここへ』みたいな一室がもうけられてまして」

澪「へー。そんな部屋あるのか」

梓「俺はそこに預けられたんですね」

澪「うん」

梓「まぁ、当然の如く、友達なんかいませんから1人で用意されたおもちゃで遊んでいたら」

澪「いたら!?」

梓「いつの間にか同じ年くらいの女の子が横にいて俺が遊んでるのをジーっと見てたんです」

澪「えっ…なにそれこわい」ザワッ

梓「えっ、別に怖くないですよ!?」

澪「そ、その女の子、お、おばけじゃないのか!?」

梓「違いますよ!?てか、なに勝手に人の初恋話を怪談話にしてんですかっ!?」

澪「おばけじゃないのか、よかった。なら、話を続けてくれ」アンド

梓(この人なんでモテるんだろう…やっぱ外見か…まぁ、人のこと言えた義理じゃないけど)

梓「いつの間にか女の子が横にいたのにも驚いたんですが」

澪「うん」

梓「やっぱ一番驚いたのはその外見ですかね」

澪「外見…」

梓「真っ白……というかすこしクリーム色の髪、で、ちょっとパーマかかってるのかいないのか…とにかくふわふわってかおっとりしたかわいい女の子だったな、っていうのを覚えてます」

澪「日本の人じゃないのか?」

梓「かもしれませんね。ホントに見た目はまさしく、『外国のお人形』って感じで。もちろん服装も」

澪「へぇ~」

梓「生まれてこのかた黒髪以外の人間というものをそれまで生で見たことなかったんで」

澪「まぁ、2才だしな」

梓「もう、言ってしまえば一目惚れですよね」

澪「あぁ、じゃあ、その女の子が…」

梓「はい。俺の『初恋』の人ですね。名前も知らないし、会ったのはその1回こっきりですし、話らしい話しもしてないですけど…」

梓「妙に目が離せなかったのを覚えてます」

梓「これが俺のうすっぺらなら初恋話です」チャンチャン

澪「なんか…切ないな」

梓「ですかね?ん~まぁ、でも『初恋』なんて実らなくて当然ですし」タハハ

澪「え?」

梓「え?」

澪「今なんて…?」

梓「え…初恋は実らなくて当然…って言ったんですが…」

澪「」

梓「秋山先輩?」

澪「それ……本当か……?」ガクガク

梓(えっ?『初恋は実らない』ってデフォじゃないの?もしかして先輩知らないのか?)

梓「あ、いや、で、でも、それはまぁ、たいていの人がそうであるだけであって…全部の人に当てはまるわけじゃないと思うんですが」

澪「本当?」ナミダメ

梓「……」

梓(あー、こういうふとした先輩の仕草にみんなオチてるわけだ)

梓(今のかわいかったよコンチクショウ!)

澪「どうした梓?やっぱりどんな人でも初恋は…」

梓「あ、いえ、まぁ、誰でもってわけじゃないと思いますが」

梓「秋山先輩の場合はきっとこのままうまくいきますよ」

澪「そ、そうかなぁ…」

梓「大丈夫ですって。てか、秋山先輩をフったら多分律先輩はファンクラブの人やらなんやらからリーチくらいますから」

澪「……え?」

梓「大体律先輩はもっと自分が恵まれてることを自覚するべきなんですよね」

梓「先輩みたいな人の初恋の人&現在進行形で彼氏なんだから」マッタク

澪「……あ、梓」

梓「はい?あ、だからですね、秋山先輩。秋山先輩と律先輩みたいに─」

澪「す、ストップストップ///」

梓「は、はい!?」

澪「な、なんで私の初恋の人が『律』だってわかるんだ!?」

梓「あー……それはですね」

澪「う、うん!?」

梓「今先輩の口から聞きました」

澪「……はい?」

梓「まぁ、かまかけたってやつですね。しかし、まさか本当に秋山先輩の初恋の人が律先輩だったとはな」

澪「」

梓「まぁ、いいじゃないですか。素敵だと思いますよ?初恋が実ってるだなんて。俺みたいなやつからしたら羨ましい限りですよ」

澪「……そうかな///」カァァ

梓「はい。そうですよ」ニコッ

澪「そっか…なんかありがとうな梓」

梓「いえいえ(この話の流れはよくわからないけどなんか感謝されたー!)」

梓「あの」

澪「ん?」

梓「今まで律先輩のが秋山先輩にべたぼれなんだなって勝手に思ってたんですけど」

澪「な、なんだよ……」

梓「意外と相当秋山先輩のが律先輩にぞっこんってことに今日気づきました」

澪「」

梓「律先輩はホントに幸せものだなぁ~」ニヤニヤ

澪「くっ??///そ、そういう梓こそどうなんだよ!?」

梓「えっ、何がですか?」

澪「唯だよ、唯!」

梓「ナ、ナンノコトヤラ」ハハハ

澪「意外と唯好きなやつ多いぞ?」

梓「え゙っ!?」

澪「まぁ、取られたくなかったら頑張るんだな!」

梓「は、はぁ…」

澪「てか、梓、唯好きなんだな。今知ったよ」ニヤニヤ

梓「」

澪「ふむ。かまかけるのもなかなか面白いな」フフフ

梓「しまった…」

梓(てか……えっ、平沢先輩…マジか…でも秋山先輩が強気ってことは)

梓(本当かもしれない…)

澪「さて、梓のおかげでいい歌詞が書けそうだ~」

梓「貢献できてなによりです(一先ず頭の隅っこに追いやろう)」

澪「片想いの」テヘッ

梓「」

梓(あー、なんかあれだ。初めて『律先輩ファイト』って思えるほどに秋山先輩の子どもらしい一面を見たってことにしとこう)ウンウン


9通りめ 澪と梓 終わり



律「なー、昨日のあの番組見たか?めっちゃおもしろかったよな?」クヒャヒャ

澪「あ、ごめん。昨日テレビ見てないんだ。詞考えててさ…」

律「えー、んだよー。お前が好きな芸人でてたからてっきり見てるかと思ってたんだけどなぁ~」

澪「ご、ごめん。…あ、でもその分歌詞の方はしっかりできてさ」ガサゴソ

姫子「はよー」スタスタ

律「あ、立花ぁ。ちょーどよかった!」

澪「……あ」

姫子「え?なに、田井中くん」

律「たしかお前もあの芸人好きだったよな」

姫子「え?あぁ、うん、まぁそうだけど…」

律「じゃあさ、昨日のあれみたか?◯◯が△△でドン!ってやつ」

姫子「あ、うん。見たよ。昨日はすっごい面白かったね」

律「だよなー!!じゃあさ、じゃあさ、あれ見たか?」

澪「……」

姫子「え?なになに?」

律「ほら、先週の□□っやつ!」

姫子「あぁ、うん。最初つまらなかったのにラストで」

律姫子「あのオチっ!!」

澪(ハモった…)

律「ふははっ、マジであれやばかったよなぁ~」

姫子「うんうん、今思い出しただけでも笑えてくる」フフフッ

律「だよな、笑えてくるな、やー、よかったよ」

澪「……」

姫子「え?なにが?」

律「いや、あの番組って結構マイナーだからさ、話せるやついないじゃん?」

姫子「あぁ…確かに。私もあの番組について人と話したの初めてかも」

律「やっぱり。また来週も面白そうだし、楽しみだな」

姫子「だね。あの終わり方からどう続くのかが楽しみだよ」

律「ん。あ、てか、お前バッグ持ったまんまだな。なんか呼び止めてすまん」

唯「姫子ちゃーん、おしゃべりしよーよー」

姫子「あぁ、まぁ、気にしないで。じゃあ、唯が呼んでるからまた」タタタッ

律「おう!」

律「……」

澪「……ずいぶん楽しそうだな」

律「おう!?み、澪、まだいたのかよ!?」

澪「いたよ。てか、『まだ』ってなんだよ、『まだ』って」

律「なんだよ、ただの言葉のあやだろ?別に気にすんなよ」

澪「立花さんと、結構話すのか?」

律「へ?いや、そこまで話したことないけど。なんで?」

澪「……いや、律、立花さんがあの芸人好きなの知ってたから…」

律「あぁ、いや、前に唯が『姫子ちゃんもその番組見てるらしいよ』とかなんとか言ってたの思い出してさ」

澪「へー」

律「まさか、あんなマイナーなの見てるとはな。人は見かけによらないな」クシシッ

澪「そ、それよりさ!これ!!昨日書いた詞なんだけど!」スッ

律「ん?あぁ……」

澪「ど、どうかな!?最近ではうまく書けた方だと思うんだけど!!」

律「そっか、わかった。後で目通したらいつもみたいに唯に渡しとくな」

澪「……え」

律「ん?なんだよ。あ、もうこんな時間か。席ついとかないとな。お前も早く席戻った方がいいぞ!」ジャッ

スタタタタ

澪「……」

澪「……なんだよ、もう」

澪「……ばか律」


10通りめ 姫子と律



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