ザーっ――…

和「雨…」

和「折りたたみすらもってない…」

ザーっ――…

和「やむ気配も…ない」

和「まいったなぁ…」

和(本屋なんて寄らないでさっさと帰っとけばよかった…)

ザーっ――…

和「はぁ…」

「あれ?真鍋先輩?」

和「ん?」

憂「どうしたんですか?こんなところで」

和「……あぁ…憂か。本屋に寄ってて…」

憂「あ、真鍋先輩もそうなんですか」

和「『も』ってことは…」

憂「私も本屋にいたんですよ」

和「へー。気づかなかったな」

憂「ここの本屋広いですからねぇ。帰らないんですか?」

和「今日傘もってないんだ」

憂「そうなんですか…」

和「天気予報外れるなんてな。まぁ、仕方ない。…いずれやむかもしれないし…」

ザーっ――…

憂「…止みそうにないですね」

和「だな…」

和「……まぁ、いざとなったら走って帰るから大丈夫だよ」

憂「……」

憂「…あの」

和「ん?」

憂「私傘持ってるんで。といっても折りたたみしかないんですけど、一緒に入りませんか?」

和「え?いいよ、そんな…申し訳ないし」

憂「でも、きっとこの雨止まないと思うし」

和「…そうかもしれないけど……でも」

和(…憂とはなぁ…)チラッ

ザーっ――…

和(かといって、やっぱこの雨の中を傘もささずに帰るのは…)

憂「帰る方向一緒なんだし」

憂「ね?一緒に帰りましょうよ」ニッコリ

和「……」

和「……じゃあ、ごめん。お願い……します…」

憂「えへへ。よかった」ニコッ

和「あ、入れてもらうんだから傘もつよ」

憂「あ、ありがとうごさいます」

和「いや、入れてもらって助かったのはこっちだから。
こっちこそありがとうだよ」

憂「ははっ。なんだか照れくさいですね。じゃあ、帰りましょうか」

和「だな」

ザーっ――…

ピチャッピチャッ

和「……」テクテク

憂「……」テクテク

憂「ちょっとさすがにこの大きさで2人は無理でしたかね…」

和「まぁ…ないよりマシだから助かったのは本当だよ。ありがとう」

憂「なら、よかったです」

ザーっ――…


和「……なんかさ」

憂「はい」

和「憂と2人きりって久しぶりだな」

憂「……そうですかね?」

和「ごめん、言い直す。誰かとこうやって傘さすのが久しぶりなのかな、俺が」

憂「そうなんですか?」

和「うん。そうなんだよ」

憂「……そうですか」

憂「高校生活はどうですか?」

和「……まずまずかな」

憂「ふふっ。その感想、真鍋先輩らしいですね」

和「そうかな」

憂「はい」

和「……そっか。そっちは受験勉強どんな感じ?」

憂「まずまずですかね」

和「憂の『まずまず』は『大丈夫』と同値だからなぁ」

憂「えぇ~!?そんなことないですよ!?」

和「はいはい。狭いんだから騒がない騒がない」

憂「うぅ~…」



ザーっ――…

和「あのさ」

憂「はい」

和「別に先輩後輩ってわけじゃないんだし、敬語やめてくれないかな?」

憂「敬語嫌ですか?」

和「何気に傷つくんだ。敬語も、憂に『真鍋先輩』って呼ばれるのも」

憂「……じゃあ、敬語やめる」

和「うん。そうしてくれると助かるかな」

和「……」

憂「……」

憂「…ねぇ、和くん」

和「ん?なに?」

憂「どうしてお姉ちゃんと別れちゃったの?」

和「……」

憂「あ、ご、ごめんね?言いたくなかったら、その、無理に言わなくていいから」

和「……唯は」

憂「う、うん」

和「唯はさ、何にも変えられなくて。誰の代わりでもなくてさ。
全然俺の中でうすっぺらに扱えるようなやつじゃなくて」

和「唯のままだったんだ…善くも悪くも」

憂「……」

和「中学最後のたった3ヶ月だけだったけど、あれ以上付き合うのはきっとお互いのためによくないと思ったんだ」

和「だから、別れた」

憂「ごめん。ちょっと…言ってることがよくわからない…」

和「まぁ、わかられても困るから。わからないままでいてほしいかな。俺としては」

憂「……そっか」

和「うん……」

憂「……お姉ちゃんのこと嫌いになったの?」

和「いや。嫌いになったわけじゃないよ。今でも唯のことは人として好きだし」

憂「それって恋愛感情じゃなくて?」

和「恋愛感情じゃないね」

憂「言い切っちゃうんだ…」

和「付き合ってみて、唯はやっぱ『幼馴染みなんだな』って思い知らされたというか…」

憂「そういうものなの?」

和「だったみたいだね…こればかりは自分ではどうにも」

憂「そうだね…」

和「まぁ、唯ならすぐにいいやつできるでしょ。あいつかわいいんだし」

憂「お姉ちゃんのこと、かわいいって思うんだ」ヘー

和「からかうなよ」

憂「ごめんごめん」

和「ったく…」

憂「でもね?」

和「うん?」

憂「小さいときから、和くんって私のお兄ちゃんみたいな存在だったからさ。
ちょっと期待してたんだよ」

和「なにを?」

憂「もしかしたら、このまま本当にお兄ちゃんになってくれるのかなぁって」

和「……」

和「………そうなんだ」

憂「たはは……私の自分勝手な希望だね」

和「なんか、ごめん」

憂「いや、謝ることではないでしょ」

和「……」

和「……あのさ」

憂「うん?」

和「こんなこと言うのもあれだけどさ」

憂「なにかな?」

和「憂が元気になって、また学校に行ってること、唯から聞いたときさ、本当に嬉しく思ったんだ」

憂「……そっか」

和「うん」

憂「ありがとう…」

和「……いや、俺は心配するしか出来てなかったし」

憂「それでも、和くんが私を心配してくれてたなら、それはそれで嬉しいから」
和「……そっか」

憂「うん。そうだよ」

和「……」

憂「……」

和「あ、もうここら辺で。ここからならもう走って帰れるから」

憂「えっ?」

和「傘入れてくれてありがとう。それじゃ!」タッタッタッ

ザーっ――…

憂「行っちゃったなぁ」

憂「風邪ひかないでね?和くん」


7通りめ 憂と和 終わり



唯「ねぇ、りっちゃん」

律「なんだい、唯さん」

唯「りっちゃんの初恋っていつ?」

律「はい?」

唯「いや、だからりっちゃんの初恋はいつ?」

律「いきなりなんだよ、そりゃ……」

唯「ん~じゃあ、質問を変えよう」

律「え?これ言わないと終わらないパターン?」

唯「りっちゃんっていつから澪ちゃんが好きなの?」

律「……なんだその俺の初恋が澪と決まりきったかのような質問は」

唯「え?違うの?」

律「い、いや、そうだけど…」

唯「流石りっちゃん。テンプレな存在」

律「それって誉められてるの?」

唯「半分くらいは…」

律(半分…)

唯「いつから?」

律「はい?」

唯「いつから澪ちゃん好きなの?」

律「えー……」

唯「言ってよ」

律「……小学5年ぐらい…?」

唯「なんで疑問系?」

律「あんま覚えてないんだよ…いつ好きになっただとか…」

唯「いつのまにか好きになってた的な?」

律「……多分」

唯「へ~…」

律「自分から聞いといてその微妙なリアクション!!」

律「てか、そういうお前はどうなんですか!?」

唯「なにが?」

律「いや、今の話の流れからして初恋がだよ!初恋がっ!!」

唯「私の初恋…」

律「うん。唯の初恋。まさか、梓とは言わせないぞ?」

唯「なに?りっちゃん、私の初恋の人が気になるの?」

律「なんでそういう聞き方で返すんだ?」

唯「なんとなく」

律「今日……機嫌悪い?」

唯「なんで?」

律「いや、べつに…(なんか接しづらい)」

唯「普通だけどな…」

律「そうか」

唯「うん」

律「で?初恋誰だよ。こっちは言ったんだから唯も教えろよ」

唯「りっちゃんいってないじゃん。私が当てたよね」

律「……そこでなぜ噛みつく。てか、なんでそこまで言いたくないのかしらないが、どうせ和だろ?初恋」

唯「……」

律「はい、ビンゴ~」

律「いつ頃好きだったんだよ、和のこと」

唯「……」

律「だんまりはなしだぞ」

唯「……中学の終わりまで」

律「『まで』ってなんだよ」

唯「『まで』は『まで』だよ、りっちゃん」

律「……」

律「……え?なんかさ、もしかして…唯と和ってさ…」

律「付き合っ………てたのか?」

唯「……」

唯「……ダメかな?私と和ちゃんが付き合ってたら」

律「いや、べつにダメじゃないけどな………」

律「てか、付き合ってたのか」

唯「」コクン

律「へー……知らなかった…」

唯「言ったことないからね、知らなくて当たり前だよ」

律「まぁ、そらそうだけど…」

唯「驚いた?」

律「なにが?」

唯「私と和ちゃんが付き合ってたこと…」

律「いや、まぁ、それはそれでテンプレなんじゃないかな」

唯「そっか」

律「ん」

律(てことは、いつの間にかけいおん部には和の元と今の彼女がそろってることになるのか…)

律(……)

律(正直、あんま知りたくなかったかも)

律(あいつ…よく平気な顔でこの部室入ってこられるな)

唯「りっちゃん」

律「ん?」

唯「いいこと教えてあげる」

律「おう。なんだよ」

唯「『初恋』って実らないらしいよ」

律「『初恋』まっさかりな俺にそういうこと言うのやめたげてよォ!」オイッ

唯「……ふふっ、澪ちゃんに捨てられるりっちゃん無様」プークスクス

律「ちょっと待て。妙にリアル過ぎて笑えないんだけど、それ」

唯「だって、りっちゃんが澪ちゃん捨てるとか想像できないし」

律「嬉しいような、暗に『お前モテないだろ』と言われているような…」

唯「りっちゃんってモテるの?」

律「……えっ、どう捉えればいい質問なの?それ」

唯「てか、彼女いるのにモテたいとか思っちゃってる人?」

律「……いや、澪にだけピンポイントでモテテれば、それでいいです、はい」

唯「りっちゃん、澪ちゃんにベタボレだね」

律「んなっ?///」

唯「照れない照れない」クスクス

律「……やっぱ今日機嫌よくないだろ」

唯「そうでもないよ?りっちゃんからかうの楽しいし」

律「おいっ!!俺に謝れ!!」

唯「や~だよ~」エヘヘ

律「……ったく。バカなこと言ってないでお前はさっさと梓に告白すれば?」

唯「それはそれ、これはこれだよ、りっちゃん」

律「へ~、てか、やっぱ唯は梓が好きなんだな」キシシシ

唯「あ」

律「『初恋』じゃないなら実るだろ?頑張れよ」

唯「かな?」

律「おう!部長正直嘘つかない」

唯「一気にうさんくさいよ」

律「うるせーよ!」

唯「まぁ、もう少し、様子見するよ」

律「そっか」

唯「うん」

律「……」

唯「……」

律(別に恋愛感情はないけど、気になる不思議)


8通りめ 唯と律 終わり



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