下校後、二人で歩けるなんて!
二人きりで歩けるなんて、なんて嬉しいんだろう。
胸の鼓動が高鳴っているのを、梓に聞かれないか心配だ。
いや、梓もそう思っているかもしれない。
手をつなぎたい、唯みたいに抱きつきたい・・・。
でも、ここはみんな見てるし恥ずかしい・・・。

澪「な、なぁ、あずs―」

梓「先輩!私、向こうのショップが見たいんです。見に行って良いですか?」

澪「う、うん」

梓「澪先輩、どうかしました?」

澪「ど、どうもしないよ。そのショップに行こう。」

ここから道を外れたところにある公園。
大きな木が中央に鎮座している。
遊具がなく、小さい砂場だけだから、人気が少ない。
そこにいけば、梓にあんなことやこんな―って、
違う違う!なんて想像してるんだ、私は!



唯「りっちゃーん、もう帰らない?おなかすいちゃったよー。」

律「さっきドーナッツ食べたろ!しかも、私より多く!」

唯「なんか疲れちゃったぁ。尾行って、楽じゃないね。」

律「ムギはどうする?確かにもう時間が時間だし、親とか心配するんじゃないのか?」

紬「う・・・名残惜しいわ・・・けど、確かにもう帰らなきゃ・・・。」

律「よし、この話は後日あいつらから根掘り葉掘り聞かせてもらおーぜ」ニヤッ

唯・紬「おーっ」ニヤッ



梓は本当に楽しそうだった。
時折見せる笑顔は、今は私だけに向けられている
      • そう思うと、より一層胸が高鳴った。
梓も同じ気持ちだと良いな・・・。

梓「もう暗くなってきましたね。」

澪「あ、ほんとだな。いつの間にか時間が経ってたんだな。」

梓「そろそろ帰りますか?」

澪「あ・・・じ、じじ時間あるかな?」

梓「え?あ、は、はい!」

澪「よ、寄りたいとk、とこがあるんだけどさ・・・。」

梓「どこですか?」

澪「こ、こっちなんだ。」

早歩きで歩きだす。
顔が真っ赤に火照っているのが、鏡を見なくてもわかる。
目的地はもちろん公園。
わき目も振らずに歩いていると、後方から梓の声。

梓「ま、待ってください!澪先輩!」ハァハァ

澪「あ、ご、ごめん!私、気がきかなくて!」

何たる失態。こういうときに手をつなげばよいものを!
でも、今の私には梓をあの公園に連れて行くだけで、
顔が熱くてどうにかなりそうだった。


梓「あの・・・つ、繋いでください。」

澪「え?」

梓「て、手をつなぎませんか?そうしたら、はぐれませんよ?///」

き、きたぁ!梓から私の手を求めてきた!
顔はうつむいていてわからないけど・・・。
きっと真っ赤になっているのをみせたくないんだろう。
これは間違いない・・・梓もきっと・・・。

澪「じ、じゃ、じゃあ、繋ごうか!」

梓「は、はい!」


手をつないで歩調を合わせて歩く。
つないだ手を通じて二人の鼓動がシンクロする。
満ちた月の明かりの下。真っ赤な顔した二人が歩く。
なんか、また次の詩が浮かびそうだな・・・。

手をつないでから一言もしゃべらずに、目的地に着いた。
といっても、しゃべるほど余り距離がなかったのも事実だ。
手をつないだまま、鎮座した大木近くのベンチに座る。
空を見上げると、満天の星空が見える。


澪「きれいだ・・・。」

梓「え?!」


梓が数センチ飛び上がった気がした。
つないでいた手も放してしまう。
どうやら、私が梓を「きれいだ。」と、言ったと勘違いしたらしい。
あわわわ!

澪「ち、ちちちがうぞ!ほら、星空!星空がきれいだなって!」

梓「あ・・・そ、そうですよね!」

澪「あ、で、でも、梓がきれいじゃないってことじゃないぞ!かわいいぞ!」

梓「え・・・?」

澪「あ・・・。」

勢い余ってつい口に出てしまった。
訂正しようにも言葉が出ない。
何か、何か言わなきゃ・・・。


梓「わ、私も・・・澪先輩、きれいだと思います。」

澪「え?」


梓「わた、私、その・・・」

も、もしかしてこ、告白されちゃうのか?!
う、嘘だ!そんな!でも、梓に言わせてよいのか・・・?
告白なら、上級生の私からビシッとカッコよく言うべきじゃないのか?
うー、どうしよう・・・。

こう考えている間にも梓は次の言葉を出そうか出すまいか口ごもっている。
考えている暇は、ない。

澪「好きだ!」

梓「にゃっ?!」ピョコン

梓がまた数センチ浮いた気がした。
私の声にびっくりしたからじゃないだろう。
私が、私の口から告白されたことがきっとまだ信じられないのか、
目をぱちくりさせている梓。やっぱりかわいいよ。

澪「お、女の子同士はおかしいと思うかもしれないけど・・・。」

梓「澪先輩・・・。」

澪「私は梓が好きなんだ・・・。だめかな?」



数分の沈黙。あれ?この流れで断られるのか?そんな・・・。
と、思ったら、梓は肩を震わせてうつむいていた。
どうやら涙を流しているらしい。

梓「私もです、澪先輩!一目見たときから、澪先輩が―。」

私はそれ以上聞こうとせず、梓を抱きしめた。
今まで我慢していた分、ぎゅっとぎゅっと・・・。



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