唯「ようやく学校に着いたね」

梓「じゃあまずは部室に行きましょう」ズルズル

紬「みんなおはよう」

唯「ムギちゃんおはよう!」

紬「あら、澪ちゃんは一緒じゃないの?なんでそんな薄気味悪い蝋人形をひきずってるの?」

梓「ムギ先輩、よく見てください。これが澪先輩です。撥ねられて満床よりも寄生されない部室です」

紬「大丈夫なの?先に保健室に運んだほうが……」

律「ばかやろう!勝手に動かして、もし危ない病気だったらどうするつもりだよ。
  私達が引きずって保健室に連れて行くよりも、担架に乗せて運んだ方がずっと安全で楽ちんだろ。
  何でどいつもこいつももっと澪のことを考えてやれないんだ!部員だろ、大事な仲間だろ!?
  そんな澪が窮地に陥ってるんだぞ。旧知の仲だけに。」

紬「ぷっ。ごめんね、りっちゃん。私が間違ってたわ。部室に運びましょう」ズルズル




ドスン

律「とりあえずここに置いておけば大丈夫かな。唯、ムギ、暇そうだったらさわちゃんを呼んでくるぞ」

紬「ちょっと待ってりっちゃん。ここにこのまま置いておくと腐りだすんじゃないかしら」

唯「腐っちゃたら大変だよ。ベースを弾くたびに指が落ちちゃうよ」

律「落ち着け唯。澪はまだ死んでないんだから腐らないよ。縁起の悪いこと言うなよムギ」

紬「言い方が悪かったわ。このままでは死んでしまう可能性があるでしょ。だからコールドスリープ
  させたらどうかしら。この冷蔵庫はうちで開発された新型で、コールドスリープの機能がついてるの」

唯「さすがムギちゃんだね!」

梓「でもずっと入れてると電気代が馬鹿になりませんよ」

紬「明かりが消えたら省エネモードになるから大丈夫よ。
  ちゃんと食料だけを適温で冷やすようになってるわ。
  無駄な機能さえなければ省エネ大賞を取ってたはずの逸品よ」

律「じゃあ澪を冷蔵庫に押し込めるぞ。ふんぬーーー」ゴリゴリ

律「ふう。唯、ムギ、教室に行くぞ。梓たちもまた後でな」

唯「了解です、りっちゃん隊員!」

梓「私達は2年生の教室に行きますね。何かあったら連絡してください」



唯「やっぱりさわちゃん忙しそうだね」

紬「そうね。お昼休みにしましょう」

和「あら、今日は澪は一緒じゃないの?」

唯「澪ちゃんは自転車とぶつかっちゃったんだよ」

和「え!それでどうしたの?怪我はなかったの?」

律「特に痛いとかは言ってなかったな。学校来るときは引きずってたよ。今は部室で冷やしてる」

和「そう。だったら先生に伝えてくるわね」

律「サンキュー。和」




昼休み

和「おかしいわね、澪はまだ来ないのかしら」

律「というよりさわちゃんだろ。ちゃんと伝えてくれたのか、和?」

和「伝えたわよ。自転車とぶつかって足をちょっと挫いたから、部室で足を冷やしてるんでしょ」

唯「ちっがーうよ、和ちゃん。澪ちゃんと自転車がぶつかって痛いとか言えないくらいぼろぼろになったから
  学校まで私達が引きずってきたんだよ!今は部室の冷蔵庫でこーるどすりーぷにしてるんだよ」

和「ちょっと、大分話が違うじゃないの、律!」

律「私はちゃんと嘘偽り無く伝えてるぞ」ブーブー

和「わかったわ。急いで先生に言ってくるから、あなた達はここで待ってなさい」タッタッタッ



ドドドド

さわこ「どういうことなの、あなた達!何ですぐに私に連絡しないの!」

律「ごめん、さわちゃん。でもさわちゃん忙しそうだったから」

さわこ「忙しそうでも優先順位ってものがあるでしょ!まったく自転車を盗んだだなんて……」

唯「え?違うよ、盗んで無いよ」

さわこ「あら?でも和ちゃんが……」

和「ぶつかってぼろぼろになった自転車を勝手に学校まで引きずってきたんじゃないの?
  痛いとか冷蔵庫のくだりがよくわからなかったんだけど……っ!そういえばなんでまだ澪は来てないの!
  もしかして律や唯の会話の主語が『澪』だったとしたら……話は繋がるわね」

さわこ「どういうことなの?」

和「澪は自転車とぶつかった。学校に来るときは引きずってて今は冷やしてる。つまり、足を挫いてるんです!」

さわこ「なんだ、そういうことなのね。じゃあ治りが悪いようだったら保健室に連れて行ってあげなさい」

唯「さすが和ちゃん。りっちゃん、許可が出たよ!」

律「よし行くぞ!和も一緒に来てくれ」




部室

和「澪はどこにいるの?」

紬「この中よ」ガチャ

和「なんで学校に干からびたエスパー伊藤がいるの?警備の人を呼ばないと……」

唯「違うよ和ちゃん。これ澪ちゃんだよ!」ズボッ

和「なら余計問題じゃない。校医の先生を呼んで来るわ」

律「待てよ和!今お前が保健室に行ったらどうなるのか良く考えてみたのか!?」

和「え?」

律「お前が保健室に先生を呼びに行く。私達は担架を持ってきて澪を保健室に運んでいく。
  同じルートを選ぶのならそれでもいい。でもお互いが違うルートを選んでいたら行き違いになるだろ。
  その場合どうする?お互いがお互いを探して、学校中を探し回ることになるじゃないか」

和「だったら携帯電話で連絡をとればいいじゃない」

律「まだわからないのか!電車の中で、体の不自由な方のそばでは携帯電話の使用はご遠慮ください。
  今の澪の体が自由だと思うのか。可哀そうに氷付けにまでされてしまって。
  正直、和がそこまで思いやりの無い人間だとは思わなかったぞ!」


和「そうね、ごめんなさい。あなたの言う通りだわ」

唯「保健室に行く前にまずは担架を借りてこないとね」

紬「担架はどこにあるかな」

和「そうねえ、普通は病院や救急車にあるけど……学校の中から探すとなると難しそうね」

律「そんな!だったら澪は、澪はどうしたら……。ちくしょう!」

和「落ち着いてよ律。担架のことで啖呵を切らないで。担架は何のために必要なの?」

律「そりゃもちろん保健室まで澪を楽に運ぶためn」

唯「あ、だったらキャスター付きの椅子にくくりつければ!」

律紬『!』

和「ね?唯たちは澪をふん縛る荒縄かピアノ線を用意しておいて。私は椅子を借りてくるから」

唯「ありがとう和ちゃん」



和「椅子を借りてきたわよ。そっちの用意はできてるかしら?」

唯「バッチリだよ。ピアノを壊すのに手間取ったけど、ムギちゃんが一撃で解体してくれたんだ」

和「そう。じゃあ早く澪を縛っちゃって。
  唯、あなたもエスパーでボンレスハムを作ってないで手伝いなさい」

唯「違うよ和ちゃん、これ澪ちゃんだよ」

和「そう。じゃあ椅子にも縛っておいて。搬送中に激しく揺れると傷口が広がっちゃうから」

紬「これでよし、と」ギュリギュリ

律「では行くぞ皆の者ー。ついてこーい」

唯紬和『おー!』



律「そんな……まさか」ガクッ

紬「こんな偶然がありうるのね」

和「まいったわね。部屋を出てすぐに階段があるなんて。想定外だったわ」

唯「どうしよう。これじゃあ運べないよ。みんなで持ち上げてみる?」アセアセ

律「いや、それはダメだ。和がさっき言ったように揺れると傷が広がるし、何より重たい」

紬「迂回してみるのはどうかしら」

唯「ふぇ、どういうこと?」

紬「たしかこの階にもう一箇所非常階段があったはずよ。そこからならひょっとして」

律「ナイスだ、ムギ。よし早速いってみよう」



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