唯「だから私軽音部やめるね?」

律「へ?」




憂「え? お姉ちゃん軽音部辞めたの?」

唯「うん、自分より上手な子が入ったし」

憂「どうしてまた、お姉ちゃん楽しそうだったのに」

唯「四人いれば軽音部は誰だって良いんだよぉ」

憂「そうかな、お姉ちゃんがいなかったら……」

唯「新人さんより下手くそな先輩がいたら部のみんなもやり辛いよ」

憂「お姉ちゃん……」

憂「それで、これからどうするの?」

唯「どうしようかなー、のんびりするのも良いし、何もしないのも良いけど」

憂「ギター……は?」

唯「……ギターはとっておくよ」

憂「部屋に置いておく?」

唯「うーん、部屋にあると弾いちゃいそうだからなー」

憂「私の部屋に置くのはだめだよ」

唯「うー、憂のけちんぼー」

憂「こればっかしはダメ」




よくじつ!
きょうしつ!

澪「昨日、部活に行けなかったから律に聞いたんだけど、本当に部活辞めるつもりか?」

唯「あれ、澪ちゃん早いね、訊くために早く登校したの?」

澪「本当、なのか?」

唯「もうさわちゃんには……軽音部辞めたらさわちゃんなんて呼べないかな」

澪「どうしてって、訪ねて良いか?」

唯「わからない澪ちゃんには言えないよ」

唯「私が部を辞めた理由を、今の状態でわからない澪ちゃんには言っても意味ないよ」

澪「なんでだ、私たち友達じゃなかったのか?」

唯「軽音部を辞めたら友達じゃなくなるのかな」

澪「え?」

唯「軽音部を辞めたら、私はただの平沢唯? それとも、元軽音部の平沢唯?」

澪「……辞めたって、唯は友達だ」

唯「だったら、軽音部辞めても良いよね?」

澪「唯!」

唯「叩くの? 友達なのに?」

澪「友達だから叩くんだ、唯が間違ったことを言っているから!」

唯「どうして、部を入ったり出たりするのは当然の権利だと思うけど」

澪「なんで勝手なことばっかり」

唯「勝手?」

澪「そうだ、私たちに何の相談も無しに辞めるなんて勝手じゃないか」

唯「へー、澪ちゃんは仮に自分が辞めるって事に決めても部のみんなに相談するんだ」

澪「私は相談する、部のみんなは仲間だからな」

唯「部のみんなは、部を辞めたとたんに仲間じゃなくなるんだね」

唯「ねえ澪ちゃん、どうして私が必要なの? 私が自信を持てる理由を教えて」

澪「唯がいなきゃ、演奏もままならないだろ」

唯「そうかな、中野さんは上手だから、私の事なんてすぐに忘れちゃうよ」

澪「忘れない!」

唯「私の失敗の回数なんて、今まで食べたパンの枚数くらい覚えてられないよ」

澪「唯は、唯は全部覚えてるって言うのか?」

唯「全部じゃないよ、お話、聞けなかった?」

唯「ねえ澪ちゃん、もう一回聞くよ」

澪「……ああ」

唯「軽音部に私がいなくちゃいけない理由を教えて」

澪「それは……」

唯「わからない? 友達なのに? 仲間なのに?」

澪「それとこれとは」

唯「そうだよね、ただの部員の悩みなんて澪ちゃんにはわからないもんね?」


和「そこらで止めておきなさい、唯、それに澪も」

和「二人とも冷静になりなさい」

澪「和……」

唯「和ちゃん、さすが頼りになるねー」

和「茶化さないで」

唯「だって和ちゃん怒ってるんだもん」

和「怒りたくもなるわよ、わざわざ違うクラスに来てまで喧嘩の仲裁を頼まれるなんて」

唯「迷惑?」

和「とにかく澪、お互いに冷静になりなさい、時間が経てば見えないものでも見えてくると思うわ」

澪「でも、部活は……」

和「別に再入部は生徒会事項でも禁止されてないもの」

唯「再入部するかどうかはわからないよー」

和「そうね、唯の意思次第だものね?」



唯「ふぅー」

紬「おはよう唯ちゃん」

唯「おはよう、ムギちゃん」

紬「今日は良い天気ね?」

唯「そうだね、今日は冬服だと暑くなりそうだね」

紬「……えーっと」

唯「大丈夫だよムギちゃん、私、ムギちゃんとお話しすること今は特にないから」

紬「!?」

唯「軽音部を辞めたことでお話がしたいなら、私はムギちゃんとお話しできないよ」

紬「でも、それが一番訊きたいことなの」

唯「だったら、琴吹さんの事なんて知らない」

紬「……分かった、でも、ね?」

唯「ん」

紬「私は超能力者じゃないから、言われなくちゃ唯ちゃんの言いたいことは分からないから」

唯「そこで察してよって言うのはわがままかな?」

紬「言いたいことを言うなら、聞く準備はいつでもあるから、言いたいことがあったら言ってね」

唯「言ったところで分かってもらえるとは思ってないから期待してないよ」



律「なんだなんださっきから、唯、遅めの反抗期は恥ずかしいぞ」

唯「おはようりっちゃん、朝はおはようだよ、恥ずかしいよ」

律「……おはよう、唯」

唯「朝の挨拶は人間としての基本だよね」

律「聞きたいんだけどさー」

唯「答える答えないは私次第だよね」

律「勝手に言うけど、嫉妬か?」

唯「……」

律「後輩の方が上手な事なんてたくさんあるじゃん、拗ねてんのか?」

唯「……」

唯「え、りっちゃん……」

律「言っとくけどなー、音楽じゃ年下が上手だろうが何だろうが」

唯「りっちゃん」

律「ん?」

唯「私と過ごした一年間はもう、楽しい思い出かな?」

律「あ?」

唯「なんでもない、そう思うなら、そう思って」

律「……私にも言わせろ、おまえが辞めたことで気に病む奴がいるって事忘れんなよ」

唯「辞めた理由がどこにあるのか分からないのに辞めた人間を責めるの?」

律「私には唯の考えてることは分からない、でも、辞めた理由は分かってる」

唯「じゃあ、引き留める理由もないよね?」

律「お前、音楽って実力とかでどうにかなるもんだと思ってるのか」

唯「え?」

律「コンクールとかで良い成績取るって言うなら分かる、でもな、部活って言うのは楽しいからするんじゃないのか」

唯「私が下手でも楽しいの?」

律「下手な奴が仮にいて、楽しくないとかいう奴は変な奴だ」

唯「りっちゃんは優しいね」

律「おう、軽音部でジャージが似合う一番のイケメンだぜ!」

唯「りっちゃんもドラムへたっぴだよね」

律「……」

唯「軽音部の中でもへたっぴな二人が、コンクールを目指してる訳じゃないから下手でも構わない、楽しければいい?」

律「この際、下手でも何でも関係ないだろ?」

唯「そんなのは子どものお遊戯で言ってよ、幼稚園生じゃあるまいし」

律「はぁー、分かった、話を聞くつもりはないってな、んだけどさ」

唯「なに?」

律「待ってるから」

唯「卒業までこないかもしれないのに?」

律「私は待ってるのが性に合わないけど、待っててやる」

唯「高校を卒業したら関係ないでしょ」

律「高校生ガールズバンドが大学生ガールズバンドになるかもしれないし、浪人生ガールズバンドになるだけだ!」

唯「無理しないでよ」

律「無理してるのは唯だろ」

唯「私は無理なんかしてない、せいせいしてる」

律「嘘つけ、部活を辞めるって言う何週間前、梓が入ったくらいからいつも表情が陰気だったのは誰だよ」

唯「!?」

律「そして今も陰気だ」

唯「……な、何週間も前から陰気だったら、そ、それは元から……」

律「待ってるから、いつでもこい」


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