……

憂「150時間が経過しました、もう6日がが経過しています。紬さんの死から、2日。当初は興奮状態で、眠気が吹き飛んだと思われた3人も、衰弱しきった様子で、座り込んでいます。

  ただ、首を吹き飛ばされるという凄惨な死に様をみせつけられ、眠るのを本能が拒んでいるのでしょうか。 
   
  律さんも騒ぐのはやめて、必死に、起きています。」 
   
和「支給品のリストは?」

憂「はい……えっと、おっ、ここでお姉ちゃんが気が付きました!ついにあのアイテムが!

  お姉ちゃん、『かくせいざい』を要求してきました!」 
   
和「やっと来たわ。この閉塞した泥沼的状況を打開するアイテムが。もっとも唯の事だから、それがもたらす深刻な副作用にも気がついていないんでしょうけど。」


憂「覚せい剤、ダメ、ゼッタイ!だけれども、この実験棟では、麻薬及び向精神薬取締法の特例が認められるので、覚醒剤の使用は法的に問題ありません。良い子の皆さんはゼッタイに真似しないでね。

  もっとも、これからお姉ちゃんを襲う地獄を見たら、決して真似したいと思わないだろうけど。」 
   
和「他の人は?」

憂「律さんが、無水カフェイン錠、澪さんが、スタンガン?ああ、電撃で自分を起こし続ける気ですね。2つとも許可がおりました。」

憂「ちなみに、お姉ちゃんに渡される覚醒剤は、疲労がポン!がキャッチコピーのヒロポンです!

  ヒロポンは、先の大戦で日本軍のゼロ・ファイターも使用していました!長距離飛行で疲労と眠気に襲われるパイロットにうってつけですねー 
   
  現在は、悪名高い覚醒剤の代表です。でも、この選手権のキー・アイテムと言っても過言ではないでしょう!」 

和「解説するわ。ヒロポン、まあ、巷ではシャブとかスピードなんてイケてる名前で呼ばれているオクスリよ。

  ヒロポンはなんだか戦後すぐの闇市の匂いが漂っているけど、シャブやスピードというちょっと若者受けする名前で爆発的に流行したのよね、一昔前。 
  今は、脱法ドラッグなんてのが流行っているけど。 
   
  どれもみな同じで、メタンフェタミン系の向精神薬よ。 
   
  眠気を吹き飛ばし、精神を高揚させる。これほど強力に中枢神経系に作用する薬物はそんなにないわ。」 
   
憂「何か、悪い働きはあるんでしょうか?」

和「憂、顔がニヤついているわよ。


和「当然、お茶の間の皆さんも御存知の通り、これらには重篤な副作用があります。

  それは、ズバリ依存性!として薬物耐性の形成。 
   
  1回に支給されるヒロポンは、3回分の注射。それでも、無水カフェイン錠や眠眠打破なんて比べものにならないくらい効果を示すはずよ。 
   
  一週間も寝ていないけど、全く眠くならなくて活動的になるわ。そして、この絶望的な気分から解放される。 
   
  2時間で落ち着き始めるから、3回打てば大丈夫!最初は依存が形成されていないから、多少打たなくてもいいわ。 
   
  ヒロポンを打ち始めて24時間。それまで溜まった疲労が一気に唯を押しつぶす。そうなると、ヒロポン抜きじゃ、これまでの苦しみが屁のような苦しみが唯を襲う。 
   
  吐き気、倦怠感、不安、頭痛、動悸、口の渇き。眼は充血し、髪をかきむしり始める。 
   
  それからもう唯は6時間おきにヒロポンを要求し続ける。」 


憂「さあ、ステージⅢが始まりました!おっと、ここで選手から異議が唱えられます、律さんからです。」

和「何々……覚醒剤の支給についての異議です。最高評議会で審査されるので、唯に対する支給が少し遅れます。」

憂「律さん、大声を上げて、カメラに訴えていますね。」

和「覚せい剤の怖さを知っているのね、彼女。でも、危険を知っているからこそ、この戦いでの強さも知っている。」

憂「おっと、最高評議会での判定が下りました。律さんの異議は却下!お姉ちゃんに覚せい剤と注射器が支給されます!」

和「当然よ。」




……

憂「155時間が経過しました。お姉ちゃんが元気を取り戻しています!スタンガンで痣を作ってしまった澪さん、カフェイン剤の飲み過ぎで、床に吐瀉してしまった律さんを尻目に漫画を読んでいる!」

和「このままいけば唯の優勝かしら。でも、他の2人も覚せい剤を頼めばまだ分からないわよ。私は澪が落ちそうな気がする。

  なんかメンヘラ臭を感じるもの。」 
   
憂「和ちゃんは澪さんと友達なんじゃないの?」

和「友達だったけど、仲良くすると律がうるさいから……」

憂「けいおん部の内部事情でした。女子高なんてこんなものだよね」




憂「160時間が経過しました。156時間での6時間チェックポイントでの支給品のおさらいをしましょう。解説の鈴木さん?」

純「はい。唯先輩は、ギー太を要求してきました。その時点ではヒロポンで元気いっぱい、練習をしていたのですが、薬がきれて今はぐったりしています。

  それに、イライラしているのか、ギー太を壁にたたきつけてしまいました。意外と攻撃的な面が見えますね。 
   
  ギー太のネックが折れて、制服以外は見る影もない梓と、まだ新しいため、お腹がガスで膨れているムギ先輩の首無死体を連想させます。 
   
  澪先輩は、スタンガンの電池が6時間できれる設定だったので、新たに電池を要求しました。乾電池電池が6時間分が支給されます。意外とマゾですね。 
   
  律先輩は、諦めたのか、何も要求なしです。でも、眼は見開いて、ぴくぴく動いていますね。」 
   
憂「お姉ちゃん、かわいそう!でもあと2時間頑張れば、幸せになれるよ。」




和「168時間、1週間が経過しました。実況はもうこのメガネにも慣れた頃、真鍋和です。」

憂「解説はお姉ちゃんラブの平沢憂です。お姉ちゃんは先程からヒロポンを打ちっぱなし!アヘ顔のお姉ちゃんもかわいいよ!

  もう此処から先は全て覚せい剤の支給しか考えられませんね。これがクスリ漬けの廃人の末路です。 
   
  よだれを垂れ流し、糞を垂れ流し、瞳孔は開き、髪の毛をむしり、歯ぎしりして、どこか宙を見つめている。 
   
  この廃人を見たら、良い子の皆さんもお薬には手を出さないね!ようやくNHK教育らしい放送になりました。 
   
  お腹が減ったら、まだ紬さんが残したタクアンも、カロリーメイトもあるので大丈夫ですよ。水もたくさんある。」 
   
和「良い子の皆さんは真似しないでください。

  さて、律の支給品に変化が現れています。はい、律の支給品はなんとなんと!ヘロインです!」 


憂「いやぁー、予想外ですね。せいぜい覚せい剤で止めるかと思いましたが。」

和「桜高は薬物教育をしっかり施していますからね、律の以外と真面目な側面が垣間見えました。

  薬物の王、ヘロインの登場です。御存知の通りヘロインはケシから合成されるモルヒネ系の薬物で、その薬物作用はモルヒネの100倍とも1000倍とも言われています。 
   
  ヘロインの末端価格は1グラム5万円程度、となり非常に高価ですが、今回特別にベネズエラの国営農園で栽培されたケシを用いた最高品質のヘロインを用意させて頂きました。」 
   
憂「ヘロインまで頼む人はなかなかいませんね、律さんは理解しているのかな?

  ヘロインやモルヒネ系の薬物の副作用……そもそもモルヒネが麻酔に使われているように……オピエイト受容体に……下降疼痛系……大脳皮質興奮抑制……まあ、いいですね! 
   
  眠れば死ぬのはわかっていての選択です。」 
   
和「そうよ。全部自業自得なのよ。」



憂「律先輩、ハイになっている!うなだれる澪先輩に絡んでいる!

  お姉ちゃんも一緒にハイになっている! 
   
  数日前に支給され、余ったビールを二人で飲んでいるぞー! 
   
  澪先輩は10分に一回、自分の首にスタンガンの微弱電流をあて、気絶しない程度に調節して、起きているのに! 
   
  それを尻目に宴会だー!」 
   
和「これはこれは。

   ……」 
   
憂「おや、律先輩に急変だ!顔を真赤にして、空になったビール缶をカメラに向かって投げつけてくる。

  カメラは強化ガラスの向こうにあるので、問題ありません。視聴者の皆様、ご安心ください。 
   
  カメラは決して割れません。ライフルで撃たれても大丈夫なつくりになっております。」 
   
和「はぁ。律は相変わらずバカね。」




純「215時間が経過しました。あと1時間で216時間、9日目突入です。」

和「律が苦しんでいるわ。退薬症状がひどいのも、ヘロインの特徴よ。

  さっきも、ヘロインにあわせて、殺虫スプレーを注文してきた。それをところかまわず振り回して、唯や澪に迷惑を欠けているの。 
  」 
   
純「閉鎖環境だから、虫なんていないんですけどねぇ。

  いったい律先輩にはどんな光景が見えているんでしょうか!そして、まるで狂人とかした律先輩を止めようと、澪先輩が涙を流して抱きついています。 
   
  ボロボロの律先輩の制服にしがみつき、懇願しています。律先輩は止まりません! 
   
  唯先輩は、先程から薬が切れたのか、うーうー唸ってうなだれています。徐々に薬物耐性が形成されています。」 
   
和「救えないわね。」




憂「216時間が経過しました、実況は純ちゃんにかわって平沢憂です。

  大きな変化がありました、支給されたヘロインを、律さんが一気に全て注射しました。 
   
  お姉ちゃんや澪先輩は止めようとしたけれども、律先輩は暴れて止まりません。」 
   
和「大変よ。あんなに一気にいれちゃ。」

憂「どうなるのでしょうか」

和「下手したら、昏睡状態に陥るわ。

  呼吸が停止して、死に至る。でもその前に、昏睡するわけだから、失格になってしまうわよ。」 
   


憂「さー、律さんは正念場を迎えました。

  ここで医師団が反応しました。痙攣しています、汗がだらだらとたれて、口を大きく開けよだれを垂らしているさまがカメラからもわかります。 
   
  脳波も大きく乱れています。」 
   
和「これは薬物中毒者特有の脳波よ。なかなか見れる機会はないから、良く見ておきなさい。

  大きな振幅と小さな振れ幅が、ランダムに襲ってくる。そして、紡錘波が現れ出す。てんかん様脳波との類似性があるわ。」 
   
憂「さすが、インテリ和ちゃんです!

  さて、律さん、がっくり頭をたれた。おっと、ここで医師団にさらに大きな動きが! 
   
  一人が昏睡と判定しました。ただ、昏睡の場合は様子が見られます、5分間昏睡状態を維持しなければなりません。 
   
  脳波は大きく乱れています。ああ、医師団全員が昏睡状態を認めました。 
   
  ヘッドギアから警告音が鳴り響き、お姉ちゃんは律さんから離れます。でも澪さんはしがみついている!」 
   
和「これはあっさり決まるかもしれません。爆発は限定的ですが、頬ずりしている今の状況では、澪のダメージも深刻なものになるわ。」

憂「どうなる、どうなるーっ!頑張れ、お姉ちゃん!」



和「つまらないわ。」

憂「さて、爆発まで30秒を切りました。警告音が一層大きくなっている。おや、お姉ちゃんが二人に近づいたァー!」

和「まさか、心中する気!?」

憂「お姉ちゃん、澪さんの制服を引っ張り、律さんから引っペがした!あ、3、2、1、律さんリタイアー!頭が失われた首から、濃い血液が流れだすー!、」

和「澪の目付きがすごいことになっているわ。悲しみと、怒りと、疲労が、4:4:2でブレンドされている。最上級の人間精神よ。」

憂「この段階で、人間の感情が疲労を凌駕するという記録は、データにはありませんね。さすがは思春期の女子高生といったところかしら。」

和「唯の表情は、なんだかやるせないものがあるわ。だって、彼女が覚せい剤に手を染めたから、律も手を出して、死んだという側面があるもの。
  だから、きっと唯は澪を助けたのよ。 
  自分のせいで澪まで死なれたら、罪悪感がより強くなる。そういうエゴイズムで、唯は澪を助けた……」 
   
憂「やめてよ、和ちゃん!!

  お姉ちゃんはそんな事で人を助けないわ。」 
   
和「憂、笑っているわよ。」

憂「あはは。」



和「ここでお知らせです。

  本日午前2時頃、接収した横須賀の空軍基地から、自衛隊の戦闘機5機がスクランブル発進しました。 
   
  先の安全保障理事会決議1987号に基づき米軍を主力とした国連軍の日本空爆宣言が発令されており、沖ノ鳥島のはるか東で待機する空母艦隊から長距離爆撃機が発進されたものと思われます。 
   
  また、ロシア、中国も進攻準備を進めており、情勢は予断を許しません。 
   
  また本邦政府はジュネーブ条約の破棄を検討しており、破棄された場合、いわゆる非人道的兵器の使用に法的問題がなくなります」 
   
憂「ここは大丈夫なの?」

和「ええ。東京のスタジオ、って言ったけど、それはダミー。国連の皆様、必死に東京を爆撃してください。

 私たちは極めて安全な場所にいます。 
 
 ご安心ください。本選手権はいかなる状況においても放送され続けます」 



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