……

和「30時間が経過しました。解説平沢憂に代わりまして、真鍋和です。」

純「実況鈴木純です。」

和「……」

純「……」

和「支給品は、律が……ビール?おっと、ここでちょっと法律に抵触する問題です。
  酒を飲んで大脳を軽く麻痺させ覚醒状態に移る。女子高生らしからぬ発想です。 
  しかし、少量の酒は一時的な覚醒に有効だ!飲み回せば、楽しくなるぞぉー!飲み会の4次会、5次会的発想だ。」 

純「……法律はどうしますかね?」

和「今委員会で検討中です。」

和「澪はさらにホラー映画追加、『十三日の金曜日』『エクソシスト』『呪怨』です。なかなかのチョイスだ。」

純「これでちょうど6時間持つ計算になりますね。」

和「ムギは、おっと、今度はお茶2Lとカロリーメイト1箱。やはりリスのように、貯めこむ、ムギ。」

純「これからが楽しみですね。」

和「梓は……お茶1Lに、新品の制服と下着、そして洗濯バサミ?何を考えている、梓!」

純「ギャグマンガであるでしょ。洗濯バサミを挟んで、痛みを堪える。
  そして制服は汗で気持ち悪いから着替えようとしているんです。」 
   
和「放送法に違反するので、トイレで着替えてくださいね。

  唯は、またアイスだ!アイスで乗り切る気か、平沢唯!」 
   
純「24時間経過後、徐々に体力が低下していきますから、お腹を冷やすアイスは好ましくないですね。下痢になる恐れがあります」


和「おっと、官邸からです。臨時の閣議決定がくだされたそうです。
  未成年飲酒禁止法の特例措置として、参加者5名に特例として実験期間中の飲酒ならびに、関係者による種類の供与を認める。 
  同刻、最高裁判所長官から、超法規的措置に基づき本法令を限定的行使に限り許可する、旨の伝達が着ました。 
  翌日の臨時国会で、賛成多数で時限立法の特別法として可決されるようです。 
   
  また、未成年者喫煙禁止法、麻薬及び向精神薬取締法の特例の追加措置も同時に認められます。 
  それに基づき、関係する国連条約を日本国政府は破棄しました。」 
   
純「仮に法律違反だったからといって何がいけないんですかねぇ?」

和「古館さんのまね、似てないよ、鈴木さん。でもこれでビールが律に支給されたわ。律のやつ、普段から飲んでるんじゃないかしら?」




……

和「36時間が経過しました。まだ1日半ですね。これくらいなら、体力のある男の人なら平然と出来るのでしょうけど、

 女子高生で、この退屈な環境に、無機質な部屋。徐々に精神が蝕まれてもおかしくありません。」 
 
憂「解説は鈴木純に代わりまして、平沢憂です。梓ちゃんの様子がおかしいです。顔に洗濯バサミを貼りつけているのですが、先程から一言も発していない。」

和「律は、ビールを一缶だけ飲みました。さすがに酔いすぎると、後々大変だと分かっているんですね。唯もちょびっと飲んで、すごい饒舌です。」

憂「お姉ちゃんが梓ちゃんに抱きついても、梓ちゃん、いつものように喜んで反応しません。むしろ、無反応です。」

和「澪はホラー映画見てもあまり怖がらなくなりましたね。慣れとは恐ろしいものがあります。」

憂「ホラー映画の登場人物がホラー映画を見て怖がり続ける作品なんてあるんでしょうか?澪先輩の滑稽度はそれくらいのものですね。」

和「良い解説ですね、憂さん。澪も気がついたのか、水と食料を注文しました。
  折角一流シェフがいるのに、皆軽食ばかり注文します。それも、あまり食べられず、残ってしまっている。 

  律はトランプを注文しました。これで時間をつぶす気か、大富豪を梓以外の4人で楽しんでいます。時折、唯が梓をつねって叩く以外、梓はうなだれています。」 
 
憂「そろそろこの選手権の本質に気がついたのかな?」

和「ステージⅠも終盤に近づいて参りました。全国から梓への応援メッセージが届いています。

  京都府の、あずにゃん大好きっ子さんからのお便りです。 
   
  『あずにゃん頑張れ!ボクが付いてるぞ!あずにゃんぺろぺろ』 
   
  この手のメッセージが山ほどNHKに届いており、梓人気をうかがわせますね。」 
   
憂「これからの梓ちゃんの活躍に期待です!」




……

和「40時間が経過しました、ここで緊急事態です!

  梓選手の脳波について、先程から医師団の鑑定が始まりました。梓選手は、洗濯バサミでまぶたを釣り上げていますが、微動だにしません! 
  おっと、医師団の1人が睡眠段階に突入したとの判定を下しています。 
   
  他の医師も、脳波の動きに注目しています。 
   
  全国から梓への応援メッセージが届き続けております!」 
   
憂「いやぁー、眠っていると思いますよ。」

和「ちょっと寝息も聞こえてきます。しかし、睡眠の判定は慎重に行われます。

  あ、医師団の残り4人も、睡眠の判定を同時に下しました。 
   
  これにて、梓は脱落です!」 
   
憂「テレビをご覧の皆様、3、2、1、ぼん!はい、梓ちゃんの頭が吹き飛びました。

  そうです、被験者の5人には伝えていませんが、眠れば火薬を内蔵したヘッドギアが起爆します。 
   
  4人はトランプをやめ、呆気に取られています。 
   
  このメッセージは伝わったか?悲鳴をあげているのは、澪先輩にお姉ちゃん! 
   
  律先輩は怒号をあげています。 
   
  梓ちゃんの首から上がなくなりました。 
   
  肉片が飛び散っております!近くにいた、お姉ちゃんに、梓ちゃんの焦げ付いた肉片が飛び散って悲惨な様相を呈しています! 


和「それにしても早すぎる!40時間弱での脱落!視聴率は急上昇しています。裏番組のバラエティーにはたまったものじゃない!」

憂「和ちゃんですら、興奮しています!現場のさわ子先生、どうですかー?」


さわ子「はい、施設内のスタッフの間でも、ざわめきが聞こえます。思ったより早かった一人の脱落。

    眠っても殺されはしないとたかを括っていたのでしょうか? 
    
    この大きな金庫のような扉の向こうから声は聞こえてきませんが、緊迫した状況がありありと伝わってくる気がします。 
    
    頑張れ、みんな!」

    
和「ありがとうございます。さあ、40時間経ってようやくステージⅡ。4人とも、眠気は一気に吹き飛んだみたいね」

憂「震えているお姉ちゃんも可愛い。失礼。確かに、脳波に大きな乱れが見られますね。」


和「この緊張状態でさらに何時間持続するかしら?」

憂「ナチスの実験では、大体60時間程度は緊張が持続するとレポートでは評価があります。

  また、731部隊の実験で、他者への危害を容認する条件下では、24時間弱で殺し合いを始める、とのデータがありますね。 
   
  今回は、暴力について条件を定めていませんが、仲良し4人なのでそんな事態には陥らないでしょう。 
  なので、60時間後、つまり実験開始からおおよそ100時間経過後に次の犠牲者が現れそうですね。」 
   
和「具体的に、誰になりそうなの?」

憂「まだわかりません。しかし、精神力の弱い人から、徐々に緊張が解けていき、眠りに落ちる、とのデータもあります。
  また、過度に闘争本能の強い人も体力を消耗し、緊張が持続しないとレポートでは報告されています。 
   
  グアンタナモ基地での、ゲリラ兵を用いた同実験では、ナチスや731部隊での一般人実験よりも、全てのスコアが高いが、より闘争的な兵士ほど、消耗が早いという記録がありました。 
  強靭な精神力ではほかに類を見ないゲリラ戦士の中でも、まるで爬虫類のようにじっと部屋の中で身を潜め、決して精神を高ぶらせず、かといって眠らず。ステージⅡ終了まで250時間持つものもいました。 
   
  しかし、そこから先は……」 


和「おや。律が叫び続けているわ。何々、私達を解放しろ?甘ったれた事言うんじゃないわよ。

  まるで国連人権理事会ね。 
   
  澪は泣き続けているし。まあ、梓と澪は仲がいいからしかたないのかしら。唯は案外すぐ泣き止んだみたい。そして、これから起こることに気がついたのかしら?」 
   
憂「お姉ちゃん、時々鋭いですから。

  まぁ、2週間、不眠で生き延びれば、国連の介入で全員助かるかもしれません。これは伝えた方がいいのかな?」 
   
和「伝えるべきじゃないわ、憂。あくまで閉鎖実験なのよ。彼女たちは、これが全国で放送されているなんて知らない。」

憂「全国放送……そういえばグアンタナモ基地の実験は、トップシークレット……あ、放送中だって忘れてた。ごめんなさい。」

和「米国には謹んでお詫び申し上げます。」



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