……


和「実況変わりまして真鍋和です。」

純「おはようございます、解説、鈴木純です」

和「私達って会話したことあったかしら?」

純「記憶にないですね。」

和「そう。」

純「……よろしくおねがいします。」


和「……12時間が経過して、参加者の物品の要求がスタジオに届きました。

  律、コーヒー。澪、コーヒー。ムギ、タクアン……だと……?梓、コーヒー、唯アイス。 
   
  うーん、ムギと唯が異色のコンビですね。そろそろ眠気の第一波が来る頃、律と澪と梓は順当にカフェイン飲料を頼み、 
   
  一方でムギと唯は自分の好物を頼んだ。 
   
  コーヒーの3人には、350ml缶のコーヒー、律はブラック無糖、澪と梓には微糖入りコーヒーが要求通り6缶ずつ支給されます。 
   
  ムギにはタクアン一本。これはなかなか多いが、ムギの一日のタクアン消費量を委員会の方で審議してタクアン1本分、おおおよそ500gに決定しました。 
   
  ムギは本当に一日500gもタクアンを食べるのか? 
   
  唯はアイス。それも、銘柄を指定してきました。10種類以上のアイスが指定されていますが、唯選手の健康を考慮し、6種類1つずつ支給されます。 
   
  アイスは溶けるおそれがあるので、小型冷凍庫がセットで支給されました。 
   
  ふぅ、いかがですか、眠そうにしている解説の鈴木さん。」 

純「これは意外と、ムギ先輩と唯先輩に軍配が上がりそうですね。」

和「それはどうして?」

純「と、いうよりも、まだカフェインを要求しなくても起きてられるという自信からくる選択でしょう。

  それならば、これからの長期戦、まだまだ持つという証。一方で、コーヒーを要求した3選手は、マラソンで言えばまだ1km地点なのに、ペースをあげている状態です。 
   
  マイペースに進んだ方が、有利に決まってますよ。このマラソンは42kmで終わるわけじゃないんだから……」 
   
和「初めて解説らしい仕事をした、鈴木さんの一言でした。おっと、唯選手、いきなりお気に入りのアイスにしゃぶりついている。

  たしかにそうしてゴロゴロする姿には、日常の一こまを感じさせますね。 
   
  ムギはタクアンを切って、眉毛に貼り付ける遊びをしている。こちらもまだ余裕を感じさせる。 
   
  コーヒーを飲んだ3人は、目を血走らせていますねまだ12時間でこれは良くない。緊張しているのかー!」 
   
純「……意外と仕事熱心ですね」

和「……」




……

憂「解説、純ちゃんと変わりまして平沢憂です。またお会いしましたね。」

和「よく眠れたかしら?」

憂「ええ、そりゃもうぐっすりと。

  え?先程から6時間、実況と解説が無言だった?NHK本社に苦情の電話が鳴りっぱなしのようです。」 
   
和「私も必死に盛り上げようとしたんだけどね。やっぱりウマが合わないわ。」

憂「3回に一回このようにつまらない実況と解説になりますが、視聴者の皆様、ご容赦ください。これから面白くなりますから。」

和「さて、18時間が経過し、少し面白い動きがありました。」

憂「と、いいますと?」

和「律が主催して、円を囲み、眠そうになったら隣の人をつねる、という体制を敷いているの。

  やっぱり誰も本質を理解していないわね」 
   
憂「でも、それは想定内の出来事じゃないでしょうか?」

和「それもそうかしら。その共同戦線もいつまで持つか……

 そして、交代交代に面白い話をする、ということもやっているわ。 
 
 律や唯の話は面白くて、視聴率が高いんだけど、梓の話がつまらないくて視聴率が下がるわ。残念よ。 
 
 お偉方から怒られるのは私達なのに。」 
 
憂「おーっと、思わぬ娯楽を提供してくれていますね、参加者の皆さんは。」

和「それに、もっと下ネタを話せという苦情がスタジオにも届いているわ。何かいいアイディアないかしら?」

憂「うーん、普段のティータイムからなぜか下ネタは言いませんからね。律さんに期待、というところでしょうか。」



和「さて、3回目の支給品。

  律は、コーヒー3缶にカロリーメイト3箱。澪は水2Lにカロリーメイト1箱。ムギも水2Lにカロリーメイト1箱。 
   
  梓ちゃんは、眠眠打破6本。出ました、眠眠打破です。受験勉強の秘密兵器がここで出たァー! 
   
  唯は、水1Lにポテチ3袋。ポテチが大好きですね 
   
  いかかですか、解説の平沢さん」 
   
憂「お姉ちゃんはポテチ1袋毎晩食べても太んないんだ~

  っと、それはおいておいて、そろそろ軽食を取りたくなったのか、梓ちゃん以外の4選手はカロリーメイトにポテチに水ですね。 
   
  梓ちゃんは食欲が無いのか、究極のカフェイン飲料を投入だー! 
   
  食欲がわかないのでしょうか?でも18時間不眠なら、受験生には当たり前。情けないぞ、梓ちゃん!」 




……

和「22時間経過しました、ここで視聴者からのお便りです。

  東京都のペンネーム、かずにゃん2号さんからのお便りです。何々、 
   
  「ずっと同じ部屋にいて、皆さんはエッチしたくてムラムラしたりしないのですか? 
   とくにあずにゃんが欲求不満になってないか気になるにゃん。ブヒブヒ。 
   」 
    
   ひどいお便りが届きましたね、どうですか、解説の平沢さん。」 
    
憂「……無様だね。

  でも、睡眠不足は性欲を減退させるのは、皆さんも経験がおありかと思います。 
   
  私もお姉ちゃんの高校を受験する直前は、1週間の睡眠時間の合計が10時間を切り、お姉ちゃんを見ても少ししかムラムラしませんでした。」 
   
和「なるほど。実体験を交えた、いい解説でした。さて、現場に山仲さわ子リポーターが近づいています。先生?」



さわ子「はい、現場の山中さわ子です。

  この、大きな金属の扉の向こうで、教え子達の死闘が繰り広げられているとなると、緊張してきます。 
   
  中には入ることが出来ません。支給品は、別の人が通れない小窓を通じて人の手を介さず、支給されるので、はい。 
   
  何人たりともこの選手権の妨害を企てる事は出来ません。 
   
  ここの場所も、極秘です。知っているのは、ごく一握りの関係者と、スタッフのみとなっています。 
   
  私もまた、誘拐されるおそれがあるので、この施設をもう離れる事が出来ません。 
   
  以上、現場から、彼氏絶賛募集中の山中さわ子がお送りしました。」 



和「はい、ありがとうございます。ここで、スイスのジュネーブから続報です。

  本日未明より緊急招集された、国連人権理事会の臨時会合で、今選手権の主催に加担した日本国政府に対する非難声明を賛成多数で可決しました。 
  また、同刻、人権理事会の理事国である日本国を理事資格停止の処分とする旨の決議を2/3以上の賛成をもって議決しました。 

  本非難声明議決に先立ち、ニューヨークで開かれる臨時国連総会でも日本国政府に対する人道上の罪に対する勧告、並びに安全保障理事会において日本国政府に対する制裁と勧告が審議されており、 
  本非難声明は日本国に対する重大な制裁を、安保理が決定する可能性を示唆しています。 

  日本国政府はただちに、国際社会に対して、重大な内政干渉とする非難声明を、内閣総理大臣名で発表しました。 
   
  以上、東京のスタジオからでした。」 
   
憂「いやー、大変な事になってきましたね。気をとり直して、放送を続けます。」




……

純「実況、変わりまして鈴木純です。

  じっけ……失礼、選手権のスタートからちょうど24時間、1日が経過しました。 
   
  まだ脱落者はでていません、どうでしょうか、憂さん?」 
   
憂「そろそろ、ですかね。人間的な欲望に、動物的な欲望が打ち勝つ頃合いは。

  24時間不眠、それくらいは誰もが経験していますが、そこには目的があります。 
   
  受験勉強であれ、徹夜麻雀、であれ、飲み会であれ、残業であれ。また、軍人は作戦行動中に3日不眠で行動するプログラムもあります。 
   
  でも、彼女たちは女子高生です。鉄の意思を持って推し進める目的もなく、ただ漠然とした現実感のない願いの為に戦っています。 
   
  その目的を忘れ、動物的な欲望に身を任せた時が、ステージⅠ、ふわふわ時間の終りの時ですね。」


純「さあ、憂選手、いつにもまして怖い!

  さて、24時間経過時点での支給品です。 
   
  律先輩はミントガム3箱に、目薬、眠眠打破1本。他にもたくさん要求していましたが、委員会で許可されたのはこの3品です。 
   
  澪先輩は、眠眠打破2本に……おっと、映画だ。ここで映画をチョイスしたぞ、澪さん。題名は、『リング』。不朽の名作、ホラー映画だ!」 
   
憂「怖がりの澪さんは、ホラー映画を見ると眠れなくなるらしいです。その習性を逆手にとったナイスな一手ですね。」

純「ムギ先輩は、そろそろ眠くなってきたのか、ここでようやくカフェイン入の飲料を頼みました。眠眠打破3本。それに……マッチ針です。何をする気だ、紬先輩!」

憂「もしかしたら、一番本質を理解しているのは紬さんかもしれません。

  タクアンという保存食は、まだ2/3以上残っています、そして2Lの水もまだ半分残っている。そしてここでマッチ針。これから起きる惨劇を予想しての、先見の明のある一手です。 
   
  痛みで気絶するまいとするのでしょうね、指の腹にマッチ針を刺せば、痛みで起きている事が出来ます。」 
   
純「でも、ナチスのレポートでは、24時間経過はまだその段階ではない、とありますが、いかがですか?」

憂「……恐ろしいことですが、紬さんは120時間経過後のステージⅢを予想しているのかもしれません。

  ステージⅢでは、6時間ごとに、あるアイテムが必要になりますから、この余裕のある段階で、水や食料や道具をためておくのは必須ですよ。 
   
  そして、その段階に突入するとまともな思考ができなくなるから、あらかじめ『指針』を立てておく必要があります。そうしなければ対応できません。」 


純「さあ、これは紬さんの有利か?

  そして、梓は、おーっと、何を思ったのか、お風呂を要求してきました。これは委員会で審議されています。 
   
  梓は、もうつついたら眠りこけそうだ。ここで気分転換!といきたいところでしょう。 
   
  しかし、女子高生の入浴シーンは、公序良俗に反する恐れがあるぞぉー!」 
   
憂「どうなるのでしょうか」

純「そして、唯先輩は、水1Lとカロリーメイト2箱。彼女は眠気を知らないのかぁー!先程からカフェインを一切とってません。しかし、眠そうです。」

憂「そういえば、お姉ちゃん、コーヒー飲むと眠れなくなるから嫌いなんだ……」

純「しかし、しかぁし!今回の選手権の趣旨を取り違いしているぞ!コーヒーを飲むんだ、唯先輩!」



純「おっと、委員会から梓への返答が着ました。お風呂は不許可です。やはり、公序良俗上、放送できない上、お湯を入れたまま、扉を開けずにバスタブを閉鎖実験棟内に移すのは大変ですから。」

憂「NHKの本社に苦情が殺到する様が目に浮かびますね。」

純「梓、ここで代わりにお茶2Lと唐辛子をチョイスだ。辛いもので紛らわす作戦か!」

憂「お茶にもカフェインが含まれているから有効ですよ、この作戦は。」

純「そして、先程から、部屋内で女子トークが一切ありません。みな俯いて眠気をこらえています。

  時折、眠りそうになる梓を唯先輩と律先輩がつねっていますね。」 
   


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