憂「さあ、待ちに待った桜高軽音部、麗しい5人の選手による不眠選手権、実況は私、平沢憂、解説は生徒会長真鍋和でお送りします」

和「どうも。解説の真鍋和です」

憂「さあ、いかがでしょうか和ちゃん。

  いったい人間は何時間眠らずに耐えられるのでしょうか?」 
   
和「えーっとですね、2007年にイギリスの男性が264時間の不眠記録を達成しています。
  ですが、ギネスブックは、不眠による健康被害を考慮してこれ以上挑戦者が現れないよう、記録の掲載を中止してるわね。 
  普通の人間の不眠限界は、72時間と言われていますね。一般に72時間を超えると、吐き気や悪寒がひどくなり、食べ物が喉を通らなくなりますね、その後に幻覚が見え始める方もいるそうよ。 
  一体彼女たちが何時間眠らずに過ごせるか、全国のファンが期待をふくらませて画面を見ています。 
  」 
   
憂「さー、お姉ちゃんたちは世界記録を更新することができるのでしょうか?

  それではルールを説明させていただきたいと思います。」 


憂「これから、桜高軽音部の5人の方に、一片25mの立方体の閉鎖実験棟に入ってもらいます。

  部屋内部の状況は、24時間リアルタイムで放送しますが、不正を防止するために、頭に自力では外せないヘッドギアをつけてもらいます。 
   
  このヘッドギアで、脳波を取り、別室の医師団が起きたふりをしていないかどうかのチェックを行います。」 
   
和「睡眠期に入ると、覚醒期に見られたα波が減衰し、低振幅の脳波が現れます。

  5名の睡眠学の権威の方が別室で脳波を判定し、五人中3人が睡眠と判定した状態で1分が経過すると、その人はアウトになります。 
   
  だから、例えば瞼を切り取って目を開いた状態のままでいても、起きていた事にはなりません。 
   
  こういう不正をする輩が、72時間を経過するとでてくるのよ。」 
   
憂「寝てしまったら、その時点でアウトですよ~皆さん、頑張ってください!お姉ちゃん、頑張ってね~」

憂「あ、部屋の状態が画面に映し出されます。

  何もない、白くて広い部屋で、みなさん手を振っています、元気そうですね、先ほどまで眠っていたのでしょう。 
   
  時計が動き始めるのは、5分後です。 
   
  さあ、次のルールの説明に移ります。」 

憂「このような閉鎖実験室で、何もせずに起き続けるのは、彼女たちも辛いだろうという事で、ルールを追加しました。

  まず、スタート時点で、物を持ち込むことができます。あ、リストが着ました。 
   
  えっと、律さんはジョジョの奇妙な冒険1部から7部まで全巻。これで退屈を紛らわす気ですね~ 
   
  澪さんはN女子大学の赤本!えらい!勉強するつもりのようです。 
   
  紬さんは、ティーセット一式を持ち込んでいます。お茶をするつもりでしょうか? 
   
  梓ちゃんは、愛用のむったんを持って来ました。
  アンプの持ち込みは、不許可なのですが、練習をして時間をつぶすつもりのようです。 
   
  そして、お姉ちゃん、平沢唯はポテチにコーラ!何を考えているんだ、お姉ちゃん! 

  各人の持ち物を見て、どうでしょうか、和ちゃん。」 


和「うーん、この時点で一番いい物を持ち込んだのは、律ね。

  最初の6時間は、いかに脳をリラックスさせるかの勝負になる。その点で、ムギや唯も悪い選択じゃないわ。 
   
  リラックスさせつつ、退屈しない、漫画はうってつけのアイテムよ。 
   
  私も漫画喫茶にいれば、寝るのがもったいなくて漫画を読み続けて夜をふかすことも多々あるもの。 
   
  一方で、一番失敗しているのは澪。勉強を6時間も続ければ、退屈するし、頭を使って眠くなるから。」 
   
憂「さあ、澪さんは失敗したようですが、巻き返しなるか!?

  そして、6時間おきに、外部に物を注文する事が出来ます。 
   
  水や食べ物も、この6時間のタイミングで要求してください! 
  物についての審査は、別室の実行委員会で精査され、不適切な物以外は許可され、速やかに彼女たちの手にわたります。 

憂「例えば、「マトリックス」の映画が見たい、とあれば、DVDだけを渡すなど融通のきかない事はせず、しっかりDVDプレーヤーとモニターをお渡しします。

  しかし、梓ちゃんのアンプのように、他の人に多大な影響を与えるものならば、不許可になる場合もあります。 
   
  食べ物も、カレーを食べたいなどの献立の要求は基本的にOKです。一食分のご飯と、500mlの水が支給されます。 

  ただ、ふぐ刺しなど、調理と調達が難しい食材の場合は、用意できない旨を伝え、改めて要求する機会が与えられます。 
   
  一方水だけを飲みたい場合は、2Lペットボトルのミネラルウォーターが支給されます。 
   
  また、お姉ちゃんのように、コーラやコーヒーなどの要求も基本的にOKです。コーヒーはカフェインが含まれるため重要ですよ~ 
   
  量は6時間分に足りると判断できる分量を支給します。大体コーラなら2L、コーヒなら350ml缶6缶ですか。 
   
  ポテチとコーラは、一セットとみなし、許可されました。セットで頼んでも、許容内なら柔軟な判定が下ります。 
  
憂「ただし、参加者は、他の参加者の要求に異議を唱える権利を有します!
  異議は別途、今選手権の最高評議会で審議され、妥当と見なされれば要求は通りません。 
   
  参加者同士のものの貸し借りは原則OKです。ただ、貸す側は絶対的な拒否権を有します。 
   
  ヘッドギアにはマイクがついており、参加者は主催者側に要求をすることができます。また、ライブカメラから、各人の視点で楽しむ事が出来ます。 
   
  トイレは簡易トイレを5つ用意しました。トイレの中だけはカメラが切られます。」 
   
和「トイレの処置に、視聴者からの苦情がきそうね。」

憂「さあ、あと30秒で時計が動き出します。みなさんの健闘を祈っています!お姉ちゃん、頑張れ!」

和「ステージⅠ、ってところかしら。」




……

憂「さあ、開始から3時間が経過しました。さすがにまだ脱落者はいません。各人の様子はいかがでしょうか、和ちゃん。」

和「ふあぁあ……眠いわ……唯がポテチとコーラを消費しきって、ムギと一緒にお茶をしながら談笑しているわね。
  途中から梓も参加したみたい。 

  こういうリラックスできる談笑が必要なのよ。 
  最初の72時間はね。不眠世界記録のイギリスの男性は、一人でビリヤードをしたりしながら216時間、11日を一人で過ごしたらしいわ。 
   
  それに比べたら大分緩い初期条件なのよ。 
   
  律は、ジョジョを読みながらニヤニヤしてるわね。今は三部のンドゥール戦よ。花京院の両目が得体のしれないスタンドに切り裂かれたページだわ。 
  たぶん、律は飽きたらムギのお茶会に参加すると思うけど。 
   
  澪は必死に過去問を解いている。でも残念ながら、そういう姿勢は往々にして無駄になるの。」 

憂「たしかに。もし澪さんが優勝すれば、日本国の国力で現実可能な範囲であらゆる願いを1つ達成できる権利が与えられますからね、

  そうです、この勇気ある挑戦の優勝者は、超法規的措置であらゆる願いが叶えられるのです」 
   
和「世界征服とかは無理よ。自衛隊じゃアメリカや中国に勝てないから。でも、世界一の大金持ちになりたいとかなら可能よ。

  日本国政府には、優勝者のため、国民の財産を接収する用意があるから。 
   
  だから、澪もN女子大合格とはいわず、東大入学だって可能なのよ。 
  政府は東大に圧力をかけるほうが無理難題な要求に比べたら朝飯前だから。」 
   
憂「それでも勉強する澪さんは、真面目ですね~

  でもそうなると、優勝者が誰かも気になりますが、どのような要求を行うかも注目ですね」 

和「ムギなら、温泉に行きたいとかささやかな要求をしそうだからいいけど。律が優勝したら、王にしろ、とか要求しそうだわ。

  そうなると憲法改正の必要があるから面倒よ。」 
   
憂「さあ、どうなるお姉ちゃん!」




……

憂「さあ、6時間が経過しようとしています。

  只今の状況ですが、澪さんが勉強を放棄して、お茶会に加わっています。律さんも、ジョジョの4部のレッチリ戦の途中で放棄してお茶会に参加しています。 
   
  まるでいつもの放課後ティータイムだァーッ!」 
   
和「ムギのティーセットは、予想以上の効果をもたらしたようね。
  全員がリラックスして6時間を迎えられる。いつものようにだらだらおしゃべりしながら。 

  でも一体あの5人の中に、このゲームの本質を分っている人はいるのかしら?」 

憂「少しだけ、和ちゃんはいらだたしげです。それもそのはず、視聴率は現在1.5%の低水準で推移しています。

  お姉ちゃん達の日常を見たい、変態しかみていないのかー! 
   
  この放送はEテレビジョン、NHKBSで終日放送されています。放送終了予定は、優勝者が現れるまで、となっています。」 
   
和「視聴率が上がり始めるのは、やはり72時間たってからね。それまでは茶番だけど、本人たちにとっては重要な時間よ。」




……

憂「さあ、6時間が経過して、5人の要求が出揃いました。おっと、その前に、解説の交代です。解説は和ちゃんに変わりまして、鈴木純ちゃんです!」

純「よろすく~」

憂「和ちゃんは6時間の休憩後、私と交代して実況に移ります。

  支給される品は……おっと、全員が食べ物ですね。さすがにお腹が空いたようです。 
   
  律さんはカレー、澪さんもカレー……全員がカレーです。これは調理係は楽だぞー!」 
   
純「せっかくだから、もっとリッチな物を注文すればいいのに。」

憂「それもそうですね。でも、カレーなんて、女子高生らしくていい!」



憂「カレーが届きました。美味しそうに頬張るお姉ちゃん可愛い!」

純「解説させて頂きます。

  カレーは、東京一旨いと評判の××堂のビーフカレー、ご飯は北海道産のコシヒカリを使った、絶品のライスカレーになります。 
   
  ××堂はどっちの料理ショー……モガモガ…」 
   
憂「ダメ!純ちゃん、民放の番組を宣伝しちゃ!」

純「……失礼しました……」




……

憂「10時間が経過しました。お茶会もさすがにお開きですね。律さんはジョジョの奇妙な世界に戻っています。

  澪さんは、N女子大の過去問を解きながら、眠そうにしています。 
   
  紬さんは、相変わらずニコニコしている。強いぞー! 
   
  梓ちゃんは、目をこすりながらギターの練習を、そしてお姉ちゃんはアイスを要求しながらゴロゴロ転がっています。 

  お姉ちゃんにアイスを渡しに行きたい!そして抱きしめたい!」 
   
純「うーい、私も眠いよー」

憂「純ちゃん、しっかり仕事して!」

純「ねむねむ」

憂「さあ、参加者よりも解説の純ちゃんが寝そうです。どうなる、この不眠耐久選手権!」

純「ねむねむ」

憂「コラ、純ちゃんのせいで、視聴率が1%を切ったよ。最初から見ていた変態さんも、眠くなってきたみたい。」

純「こりゃ大変だ。むにゃむにゃ。」



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