放課後──

澪「梓、今日は部活休みにするから」

梓「聞きました。唯先輩もなんですね……」

律「ああ。今から探すけど梓も来るか?」

梓「はい。でも私は純も探さないと……」

紬「もしかして純ちゃんも……?」

梓「はい。唯先輩や憂みたいに朝から連絡がつかないんです。
   憂と違ってサボりの可能性もないわけじゃないと思いますけど……純のお母さんに聞いたら朝にはもういなかったって」 

澪「心配だな……」

律「もしかしたらこの一件……犯人は同じ奴かもな」

澪「犯人って……嫌なこと言うなよ律……」

律「とにかく探そう。私達に出来るのはそれしかない」


────


律「唯~!」

律「唯~~~! どこだ~~~?」

律「駄目か……」

あてもなく探すのにも限度があるな……。
せめて何か手掛かりがあれば……。

澪「っはぁ……はあ……唯達いた?」

律「いや……」

澪「まさか……本当に事件に巻き込まれたんじゃ……」

律「可能性は高いな……」

何だろう、何かが引っかかる。
何か見落としているような……そんな感覚が襲う。

紬「ダメ……唯ちゃん達いない……」

律「ムギも駄目か……。心当たりあるところは全部探したのに……クソッ」

しばらくして梓とも合流、「……純も見つかりませんでした」と言う報告を受け、私達はただ黙って立ち尽くした。
時刻はもう夜の8時。いくら夏の日が長いといってもこれ以上は持ちそうにない。

梓「さっき純のお母さんから連絡があったんですけど……警察にお願いしたそうです。
   学校側と話して他にもそういう子がいるって聞いたらしくて……唯先輩達も探してもらえるみたいです」 

紬「……これ以上探すのは私達も危ないわ。後は警察に任せましょう……」

澪「……うん」

律「……」

何だろう、この違和感は。
違う、何かが。


それから家に帰り、親と今日のことを話すと、律も女の子なんだから注意しなさいと怒られた。
いつも通りご飯を食べ、お風呂に入り、パジャマ姿でベッドにダイブ。

月明かりだけを部屋に充満させ、私はこの不思議な感覚の正体を突き止めることにした。

律「携帯に着信はなし、か」

まだ三人は見つかってない。いなくなったのは今日の朝……いや、本当に朝なのだろうか。
梓の話じゃ純ちゃんのお母さんは朝には純ちゃんはいなかったと言っている。
つまり昨日の夜から明け方までに純ちゃんを見ていない可能性が高い。

もしかしたら夜中に何かあったのかも……?
でも家に無理やり押し入って純ちゃんだけさらって行ったと言うのはおかしい。
それなら純ちゃんのお母さんが気づいている筈。 唯と憂ちゃんの場合はどうだ?
両親がほとんど出払っているのを犯人が知り、無理やり二人を……。

律「くっ……」

そんなこと考えるだけで胸が苦しくなる……。
でも……可能性がないわけじゃない。
でもそれだと純ちゃんがいなくなったことと関連性がない……。

純ちゃんがいなくなったのは自分から出ていった可能性が……。


あ、ああ……あああああ……!!!!


全身に嫌な鳥肌が沸き出す。
昨日何があったかなんて散々朝話していただろう!
バカだ私は……これなら三人の関連性は繋がる。
そしてこれは純ちゃんが家を抜け出した理由にも繋がる!

すぐさま携帯を手に取ると澪に電話をかける。

澪『もしもし……どうしたの?』

2コールで取ったものの疲弊しているのがわかる声だった。大方見つかったと言う電話だと思ったら私だったというオチだろう。
ただ今はそんなことを気にしている時間はない。

律「わかったんだ。今回の事件が! だから協力して欲しい、全部が遅くなる前に」

────

────

時刻はもう0時を過ぎていた。澪が調べた今は使われてない倉庫を回り始めて既に2時間が経過している。

ピリリリ──

律「見つかった!?」

澪『いや……』

律「そうか。もう危ないから澪は帰った方がいい」

澪『そのまま返すよ、律。自分だって女の子だってこと自覚してるか?』

律「……それ今日お母さんにも言われたよ」

澪『……でも本当なのか? 唯達がどこかに監禁されてるって……』

律「間違いないよ。澪は見てないから知らなくても無理はないけど、この状況、昨日やった都市伝説特集の一つに似てるんだ」

澪『……』

電話越しでも息を飲むのが聞こえる、

澪『なんて都市伝説?』

今は怖がってる場合じゃないと奮起したのだろうか、そう聞き返してきた。

律「……かごめかごめ」

澪『それって……』

律「聞いたことはあるだろ? か~ごめかごめってやつ」

澪『童謡だっけ』

律「うん。詳しく話してる暇はないから省くけど、
   好きな人を一日籠の中に閉じ込めればその閉じ込めた人と閉じ込められた人は永遠に結ばれるとか何とか」 

澪『……そんなこと本当に信じる人が』

律「いるんだろ、私達の中に、な」

澪『!!?』

澪『私達の中にって……』

律「いいか澪。この都市伝説が達成されるには条件が二つある。一つ目は『鳥』を一日閉じ込める」

澪『『鳥』……つまり実行犯の好きな人ってことか』

律「ああ。それともう一つ、『鶴』と『亀』を生け贄にしなきゃならない」

澪『鶴と亀……?』

律「勿論そのままの意味じゃない。この『鶴』と『亀』は……『鳥』と最も仲の良い人物二人を指す。
  つまり唯、憂、純ちゃんと仲の良い人物ってことだ」 

澪『そんな……』

律「だから足りないんだよ……一人。多分、実行犯が」

澪『でもおかしくないか? その『鳥』役を考えた場合に純ちゃんがいるのはおかしい』

律「そこは私も思ってた。憂ちゃんが『鳥』役だとしたら『鶴』と『亀』は純ちゃんと梓だろうし、
   唯が『鳥』役なら純ちゃんより私とか澪とかムギだろう」 

澪『いや……もしかしたら』ガッ 

ガッ ガッ ガッ ゴスッ ……。

律「み、澪……?」

『……』

律「みおおおおおっ!?」

律「なんだよ……? 嘘だろ……?!」

澪まで……?
そんな……なんで……?

律「絶対見つけてやる……」

何が永遠に結ばれるだ……!!
あるわけない都市伝説を信じて友達をどうにかするような奴……私が許さない。

────

薄い飛沫が舞う夜の道をただ走る。
澪が言いたいことはわかっていた。
この事件はまだ終わっていない、純ちゃんと関連つけるには一人足りなかったのだから。
それを言う途中で、澪は誰かに……。

でも犯人は気づいていない。私達が探す場所を定期的にメールで知らせ合っていたことを。
つまり澪が電話の前に送って来た最後のメールが澪の居場所、そして犯人が『鳥』を監禁している場所になる。

律「ここか……」

半年かそこらに不況の煽りを受けて倒産した廃工場の前で、私は憤慨する思いを抑えながら中に入った。

鍵は予想通り開いている。

ドアの辺りに何かを引きずったような血の後がある。

中は一つの光もない。

暗闇の中から見ればこのドアから差し込んだ僅かな外の明るさが、私が来たと言う最高の合図となっているだろう。

足を踏み入れる。

シン──としている。

物音は僅かな雨音だけ。

静かだ、静かだ、静かだ、




誰だ、お前




ガッ……


私の最後の記憶は、何かが倒れているような影と、檻の用な物があり、中に人が入っていたことと、
恐ろしい形相で私に殴りかかってきた、あいつの姿だった。



────

「か~ごめかごめ……籠の中の鳥は いついつ出やる 夜明けの晩に 鶴と亀が滑った 」

紬「唯ちゃん……」

唯「……」
















紬「やっと見つけた……。こんな所にいたのね……、今出してあげるから」

唯「駄目……ムギちゃん」

紬「えっ……」

ガッ……ガスッ……グチャッ……グチャリ……。

「後ろの正面だ~あれ」フフッ

唯「……」

「駄目じゃないですか、ムギ先輩。もうちょっとなんですから。邪魔しないでください」

唯「……あずにゃん」

梓「澪先輩と律先輩だけで十分だったんですけどね……生け贄は」

唯「……」

梓「あれ? どうしてこんなこと?、とか、なんで? とか、言わないんですか?」

唯「……もう、遅いよ」

梓「ですよね。私は三人も殺した人殺し、後は唯先輩だけしか残されてませんから」

梓「私思ったんです。何でこんなことで永遠に結ばれるのかって」

唯「……」

梓「このかごめかごめは愛の重さを相手に押しつけることで無理やり閉じ込めた相手と結ばれるやり方なんだってわかりました。
   鳥への愛が鶴と亀を殺す。 鳥が籠から出してもこの罪の籠がいつまでも鳥を逃がさない……。 
   唯先輩への愛がいけないんです。だから唯先輩本人にも責任はあると思いません?」

梓「だから唯先輩はこれからもずっと私と一緒にいてください……じゃないと、私……唯先輩も殺して……」

唯「大丈夫だよ、あずにゃん」

梓「えっ……」

唯「大丈夫だから、ね?」

梓「唯……先輩? こんな私でも……愛してくれるんですか?」

唯「」ニコッ

梓「やっぱり……、唯先輩が大好きです……私」

梓「ちょっと早いけど、出してあげますね……。もう愛の確認は終わりましたから」

ガチャリ──

唯「あずにゃん……」

梓「抱き締めて欲しいです……唯先輩」

唯「……」

ギュッ……

梓「暖かい……」

梓「ふふ……なんだか熱い……です……唯先ぱ……い」

ドサッ──

唯の手には闇の中でもはっきりとわかるほどの紅色の血がこびりついた包丁が握られていた。

唯「ごめんねあずにゃん。あずにゃんのことは大好きだけど、憂の好きとは違うから……ごめんね」

唯「ギリギリ間に合ったかな……。まさか自分が『鳥』役をさせられるなんて思ってなかったよ。
呼ぶ手間が省けたと思ったらまさかあずにゃんもかごめかごめをしてるなんて。
さ、二人の首を持って行かなきゃ。そうすればきっと憂もあずにゃんが言ってたみたいに私を真の意味で愛してくれるよね」

唯「か~ごめか~ごめ……」グチャッ,グチュッ

夜明けの晩の工場に、少女が歌うかごめかごめだけが響いていた。


────

「ねぇ、この噂知ってる?」

「何々?」

「自分の好きな人を一日中籠に閉じ込めるとさ、両想いになれるってやつ」

「あっそれ私も聞いたことある! でも私の聞いた話だとその好きな人が大切にしている人を二人を殺さなきゃいけないんだって!」

「うっへ~何か一気に都市伝説っぽくなったな~」

「…というか都市伝説でしょ」

「こんなこと信じてやる人いるのかな~実際」

「いないいないそんなの。てかそもそも犯罪じゃん」

「わかんないよ~? 恋は盲目って言うしさぁ? もしかしたらガバッってさ~」

「キャーお助け~」



おしまい