この四月から私は大学生になりました。

さわこ先生に憧れて教育学部を専攻したました。

と言えば、聞こえが良いけど、本当は初等教育を選んで幼稚園の先生にでもなれればいいと思ってます。

と言えば、聞こえが良いけど、本当はクラブ仲間が全員この大学を志望したので一番入りやすそうな学部を選んだだけです。

ともあれ、みんな合格でき、学生寮も一緒です。

まさかムギちゃんが寮に入るとは思っていなかったけど、

紬「寮の方が安全だし、安心できるからって許してもらえたの~」

ムギちゃん家なら、セキュリティどころかSSでも準備できそうな気がするけど、

ムギちゃんのことだから断ったんでしょう。

入学前には日本の東側で大きな災害が起こり当初は心配もしたのですが、

日本の西側に住んでいると被害の状況もわからず、いつの間にか話題は発電施設に変わり、物理学が全然わからない私にはどうでもいいように思えてきています。

多分、大変な事が起こってるんだと思いますが、私が悩んだところで状況が好転するわけでもないので、悩まないことにしています。

そんな私を悩ますのが部活代です。

高校の軽音楽部の仲間も一緒に大学の軽音楽に入ったのはいいんですが、部費が半期で1万円。

一年で2万円にもなります。

学費に比べたら 1/50 程度なので親にお願いすれば出してくれそうですがで好きで入った部活なので、

それくらいはなんとか自分で工面しないといけないことは、さすがの私でもわかります。

まっとうなバイトだと大学生でもせいぜい時給800~900円。

それでも月に30時間ほど働けば3万程にはなりますが、

バイトはいいけど1・2回生のうちは授業もびっしり詰まっていて、おまけに寮は門限もあるし、

バンドの練習時間も限られているので、バイトは休日に限られてきます。

せいぜい月に20時間かな?

先輩たちは

「学生はお金が無いのが当たり前だからお金のありがたさがわかるんだよ」

ごもっともです。

なぜかムギちゃんはバイトに興味津々です。

なんでも

紬「学費以外は要らないっていったから」

とか...

ムギちゃんの学費には寮費も入っているから、お小遣いと昼食代を自分でなんとかするつもりなんだろうけど...

ムギちゃん(もちろん澪ちゃんも)の成績なら特別奨学生で学費免除も可能なのに...

あっ?特別奨学生は2回生以降か...

ムギちゃんの世間知らずだから(それ以上に私が世間知らずなのですが...)そんな事を言ったんだろうけど...

庶民の私から見ても、少しは親に良いと思います。

あっ?そうそう?

昨日、憂に電話したらギター買ったって言ってた。

なんでもストラトキャスターというギターらしい、

憂が軽音部に入ったのは知ってたけど、ギターを弾くとは思っていなかったなぁ~

てっきりキーボードだとばかりおもってたけど...

とにかく私たちが卒業しても、軽音楽部はなんとか継続できているらしい。

詳しくは教えてくれなくて

憂「OBとして部活に来てみて!!」

としか言わなけど、あずにゃんを部長としてしっかり部活はできる見たいです。

日本は大変な状況のようですが、私は何をしていいのかわかりません。

選挙権はないし、ネットでつぶやくほど意見は持たないし、

気に入らないことだけに過剰に反応するようなこともないし

そもそも気に入らないような事を気にする性格でもないし...

澪ちゃんはいろいろと意見があるみたいだけど、決してネット上で発言はしないといってます。

なんでも、

澪「インターネットって顔が見えないから意向が伝わらないような気がするし、曲解・誤解で批判されると思うと耐えられないし...」

澪「それなら、伝えられる相手が少なくてもライブで伝えられる方がマシ」

ふ~ん、そんなものかぁ~

繊細な澪ちゃんがライブの方がマシって思う位だから、インターネットって変なせかいなんだなぁ~

唯(世の中、お互いを認めあうようにならないのかな?)

それは究極の理想論だということがなんとなくわかるけど、そこに近づきたいって思う私がいる。

唯(近づきたいって思うこと自体が青臭いってことなのかな?)

う~ん...

わからないやぁ~

そんなことを思いつつ、先輩から「20歳の原点」という一冊の本を借りた。

ふ~ん、40年前はそんなに自分を追い詰めてる人がいたとはねぇ~

私は共感どころか恐怖すら覚えた

でも...

唯(この本は絶対に澪ちゃんに見せたらだめだよねぇ~)

そう!!

澪ちゃんは危ういんです。

私が言うのもなんですが、絶対彼氏を作るべきです。

高校時代からあんなにラブソングを作詞してきた澪ちゃん。

人一倍恋愛をして、人一倍守られたいはずです

ただ人一倍はずかしがりだから難しいんだろうけど、本当に好きな人ができたら情熱的な気がします。

高校生と違って大学生になると、恋愛に関する話(噂をふくむ)は生々しいほどに耳に入ってきます。

先輩方の話を聞いていると、恋愛への憧れ90%・恐怖10%です。

本当に恋愛をしていれば恐怖はもっとあるんでしょうけど、私も律ちゃんも澪ちゃんもムギちゃんも恋愛関係になった彼は居ません。

まさに

  • 彼氏いない歴=実年齢

です。

でも先輩たちの話を聞いていると、

「大学生になると自然と彼氏ができる」

とか

「失恋して初めて恋愛を知る」

とか

経験したいような、したくないような...

ただ、

「どんなことがあってもはげましてくれる友達がいるなら大丈夫!!」

と、異口同音に言っていたので大丈夫なんでしょう。

私には、律ちゃんも澪ちゃんもムギちゃんも居ます。

大失恋しても大丈夫なような気がします。

多分、みんなもそう思っているんでしょう。

唯(思いっきり素敵な出会いに期待しよう!!)

と思っても、こればっかりは縁次第です。

唯(出会いに気づけるかな?気がつければいいなぁ...)

とか思いつつも、恋愛に過剰な期待をするわけでもありません。

とにかく

唯(なんとか部費のメドをたてなきゃ!!)

そういえばムギちゃんはアルバイト雑誌をたくさんもってたけど、

みんなで一緒にできるようなものはなかなかみつからなかったなぁ~

唯(そういえばムギちゃんはカブトムシ採りのバイトに飛びつきそうになったって晶ちゃんがいってたっけ?)

カブトムシって、実は桜の木にもたくさんいるんだよねぇ~

だから、都会でも結構とれるんだけど...朝が早いから無理だよねぇ~

それになにより、私たち乙女のするバイトではないよね~

あっ?そういえばウシガエル駆除のバイトもどこかでみたことがあったっけ?

でも、あれは深夜のバイトだから寮規違反になるから論外だね!!

うーん...

そうだ!!先輩にしてみよっと!!

先輩たちだって同じ経験をしてるはずだもんね!!

寮にかえって、律ちゃん達と談笑していると、話題はやっぱり部費のこと。

あの律ちゃんですら真剣に考えてます。

唯「律ちゃんの事だから、すっかり忘れてて滞納しても平気だと思ってんだけどなぁ~」

律「なにぉ~、その言葉をそっくりそのまま唯に返してやる~~」

なんてやりとりをしている事自体が成長なんだと思います。

唯(少しづつだけど...小さいことだけど...自分の責任を自覚できてるんだなぁ~)

なんだか、少し大人に近づけた気がします。

さてさて責任を自覚できているんならなんとかしないとなぁ~

律「ともあれなんとかしないといけないよなぁ~」

そんなとき


唯「あっ?」

唯「そういえばギー太の残りの代金をまだムギちゃんに返していないや!!」

一同「...」

紬「ゆっ、唯ちゃん!!あれは5万円になったんだから私に返さなくても良いのよ?」

紬「私に返すお金があったら部費に回したらいいわ。」

ムギちゃんは、筋が通っているのか天然なのかわからない事を言ってくれた。

とにかく、ここはムギちゃんの言葉に甘えよう。

唯「そっ.そう?ならギー太のことはもう少し後で考えることにしよーっと」

話はちょっと前に戻るけど...

律ちゃんと澪ちゃんと私の3人はムギちゃんには内緒でちょっとしたバイトをしました。

律「部費のことを考えると、高校時代にあんなに充実した部活ができたのはムギがいろいろと持ってきてくれたからだよなぁ~」

澪「そうだよ、もしあれだけのことを部費から出そうとしたら、お茶とお菓子だけで足がでただろうし」

唯「ねぇねぇ?部費の事も大事だけど、その前にムギちゃんにささやかな恩返しをしない?」

唯「私達は年に2万円の部費に四苦八苦してるけど、高校時代のお茶やお菓子代に比べたら大したことないんじゃないかな?」

唯「部費も大事だけど、ムギちゃんが私たちのためにしてくれた事に少しでも恩返ししようよ!!」

澪「お~、唯!!良い事言うなぁ~」

律「なんだなんだ?大学生になって急に大人になったってかぁ?」

唯「んもぅ~茶化さないでよ。私は真剣に言ってるんだよ!!」

律「わかってるって、ウチらの考えは一緒だよ」

私たちはムギちゃんに内緒で二日ほどの短期バイトに精を出し、手にしたバイト代をすべて費してペンダントを1つ買った。

ブランド製ではないけど、3人で決めたハンドメイドのペンダントです。

サプライズでプレゼントした時のムギちゃんは、プレゼントしたこっちが泣きたくなる位喜んでくれました。 

ムギちゃんに喜んでもらえた事は、私たちにとってとても大切なことでした。

唯(ムギちゃんは高校時代から、この気持ちを知っていたんだなぁ~)

唯(ムギちゃんって、私たちよりほんの少し前を歩いていたのかも知れない)

でも、ペンダントをプレゼントした翌朝、遅刻寸前になるまでペンダントにあう服を選んでいたムギちゃんは、やっぱり愛すべきムギちゃんでした。


さてさて本題の部費...

先輩に聞くと前期分は前期中に払った良いので夏休みにバイトしてからでもいいかな?

と思ってたけど、夏休みの合宿があるんでその合宿費も工面しないといけません。

しかも、桜ケ丘軽音楽部OB(OG?)として、後輩達の合宿にも顔を出す必要があります。

唯(う~ん...)

唯(結構、入り用だなぁ~)

ここでもムギちゃんパワーに感服するしかありません。

高校時代は先輩もおらず、私たちが自由に行動でき、しかもムギちゃんが別荘を提供してくれたし...

でも、今は先輩方がいて、おそらく軽音楽部の伝統としての合宿などがあるんで、1回生の私たちだけ別行動をすることも、ムギちゃんの別荘を使うこともできないし。

とういうわけで2つの合宿に参加せざるを得ないです。

唯(はぁ~...本当に自分のやりたいことをやるって結構お金がかかるんだなぁ~)

私らしくもなくいろいろと悩んでしまいます。

私らしくもありません。

今まで憂に頼っていたから急に自立心が芽生えたのかな?

これが取り戻せない時間?

戻りたくっても戻れない時間があって、それがこれからどんどん増えていくんでしょう。

思い出・想い出は戻れない時間の積み重ね?

唯(お~、格好良い事思いついた!!先生になったら教え子に絶対言ってみよう!!)

でも、私は初等教育を専攻したいので教え子って幼児?

唯(幼児に言っても意味ないしなぁ~...高校・中学教員を目指そうかな~...)

幸いにも1回生の時点では専攻を決めなくてもいいから、この件は先送りです。

唯(なんか今の私って先送りばっかりしてるなぁ~)

唯(卒業するときにあずにゃんには、スタジオでいつでも会えるとか言ってたけど)

唯(実際、あずにゃんとはまだ会っていないし...)

唯(そもそもあずにゃんは軽音楽部の部長の上に受験生だし...)

唯(あずにゃんの事も先送りになってるなぁ~)

唯「そうだ!!みんな貧乏が悪いんだ!!」

なーんちゃってね!!

私がこんなこと言ったらいけないよねぇ~

...


横道にそれてばっかりだけど、しっかり考えなきゃ!!


今夜はムギちゃんの部屋に集まっていろいろと相談をしています。

紬「うーん、私もいろいろと探したけど、みんなで一緒にできるようなバイトはないわねぇ~」

律「やっぱ、4人一緒ってのは無理だよなぁ~」

澪「でも、私は...一人ではとてもバイトなんかできそうもないし...」

唯「私も一人だとなんだか不安...」

一同「うーん...」

そんなとき、

コンコン

ドアをノックする音がした

紬「はぁい、空いてますのでどうぞ」

恵「こんばんわ」

思わぬ人が入ってきた...

高校の先輩であり、在校時は生徒会長であり、初代澪ファンクラブ会長であった曽我部先輩だった。

恵「ねぇねぇみんなバイト探しているの?」

律「はいそうなんです。」

恵「1名だけだったら、ツテがあるんだけど...」

一同「...?」

恵「これはできれば澪さんにと思ってるんだけど、いいかな?」

澪「えっ?」

恵「実はね中学生の家庭教師のバイトなのよ」

恵「週に2回、1回2時間で英語と数学を教えるの」

恵「もちろん教え子は女の子で、時給は1500円ってところ」

恵「時給はそんなに高くないけど、悪くもないと思うわよ?」

澪「ねぇ澪さん?どうかな?」

曽我部先輩の話では N女は名門大学なので家庭教師や塾の講師といったバイトは結構あるらしいです。

もっとも学生課で紹介されないのは、後任は先輩からの指名になるので必然的に埋まるそうです。

曽我部先輩はいくつもの生徒を抱えていて評判もいいので、いくらでも声がかかるそうですが、

さすがに今以上に生徒を抱えることはできないので、澪ちゃんに声をかけてくれたようです。

律「澪!!これは澪にぴったりじゃん!!お願いしてでも紹介してもらいなよ!!」

紬「そうよ澪ちゃん!!生徒は女の子だし、なにより澪ちゃんは頭脳明晰だもん♪」

澪「そっ、そっかな?」

一同「うん♪」

恵「決まりね!!」

澪「でも曽我部先輩...私で努まりますか?」

恵「大丈夫よ!!心配しないで!!」

澪「じゃ、じゃあお願いします。」ペコリ

唯「うわぁ~よかったね澪ちゃん!!」

律「本当だぁ~バイト決定第一号だ!!」

紬「おめでとう澪ちゃん!!澪ちゃんだったら丁寧な家庭教師になれるわ!!」

澪「あ、ありがと...澪「とにかく頑張ってみるよ」

澪ちゃんは、澪ちゃんにぴったりなバイトが見つかりました。

数日後の寮でのひととき、今夜は律ちゃんの部屋で談笑しています。

するとムギちゃんが、

紬「あ、あのね?」

一同「ん?」

紬「私もバイトが決まりそうなのよ」

一同「え~っ?」

まさかムギちゃんがバイトを見つけるとはおもいませんでしたが、話を聞けば納得です。

紬「このまえ、学校帰りに楽器店の前を通ったときに、『ピアノ講師募集』というのをみつけたのよ」

紬「資格としてはバイエルなんとか、山波の何級以上ってあったけど、私はそんな資格もないもないから、『一度、聴いてみてください』って一生懸命頼んだらね」

紬「『では一度弾いてみてください』と言ってくれたから、私が弾けるいちばん難しい曲と、だれでも知っているような曲を弾いたのよ」

紬「そしたらね?担当の人が目を丸くして『ぜ、是非とも来てください。なんなら専属契約ということで、あなたの望む条件で契約します』だって?」

紬「それで、専属とかは要らないので、週に6~8時間でいいからピアノ講師のバイトをさせてくださいって言ったの」

紬「時給2000円で、週5時間のバイトが決まりましたぁ~」

一同「うわぁ~」

唯「凄いねムギちゃん!!」

律「そうだよ」

澪「ムギのピアノ演奏って凄いもんなぁ、それを活かせるなんて凄いじゃないか!!」

紬「うふふ、ありがとう」

ムギちゃんはムギちゃんの才能を活かせるバイトを見つけました。

後で、どんな曲を弾いたのかを聴いたら

紬「ショパンの『英雄ポロネーズ』と、リストの『ラ・カンパネラ』って曲よ。唯ちゃんも聴いたことがあると思うよ?」

多分、弾いてもらったらわかると思うけど、曲名を聞いただけではわかりませんでした。

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