唯「ごめんね」

和「なっ……」



和「ど、どこまで?どこまで言っちゃったの?」

唯「んー……まあ全部……かなあ」

和「ぜ……全部……?」

唯「うっかり口滑らせちゃったらみんな食いついて来ちゃってさあ」

和「……」



しばらく前

澪「あついなぁー」

律「そうだなあ」

梓「練習する気起きないですね」

唯「じゃあ今日はお休みってことで」

澪「ダメだよ、学園祭も近いんだし」

唯「うえー」

律「唯ー、アイス買ってきてくれ」

唯「あずにゃん行ってきて」

梓「いやだ」

唯「ため口!?」

梓「こんな糞暑いのに外に出るなんて正気じゃないですよ」

澪「まーなあ」

梓「まさしく炎天下ですよね」


律「あ、そういえば炎天下で思い出したんだけど」

澪「なんだよ」

律「このまえ……えーといつだったかなあ、
  ビッグサイトの前を通りかかったらさあ」

澪「うん」

律「なんかよく知らないけどめっちゃ人が集まっててさ」

澪「へえ」

律「死ぬほど暑いのに人がぎゅうぎゅうに集まってて
  見てるだけで体感温度5度くらい上がったよ」

澪「なんの集まりだったんだ?」

律「さあ、遠巻きに見かけただけだし」

梓「いつもなにかしらイベントやってますよねあそこ」

唯「それっていつやってたの?」

律「たしか12日」

唯「じゃあコミケじゃないかな」

澪「コミケ?」

梓「なんですかそれ」

唯「えっとねー、いっぱい人が集まって
  同人誌を売ったり買ったりするの」

律「同人誌って?」

澪「同人誌というのは同好の士、つまり同人が
  協力して自費出版した冊子だよ、
  一人で書くのが個人誌、大勢で書くのが合同誌と分類されるんだ」

律「へー」

唯「うんまあそんな感じ」

梓「なんか面白そうですね。
 唯先輩行ったことあるんですか?」

唯「うん、和ちゃんと一緒にね」

律「へー、和ってそういうの好きそうだよな」

唯「中学の時とかよく同人誌のイベントに連れ回されてさー……はっ!」

澪「ん、どうした」

唯「い、いや……なんでもない」

唯(しまった、言っちゃったよお……)



回想

4年前、唯にとって2回目の同人誌即売会

唯『今回もいっぱい買ったね、和ちゃん』

和『ふふ、この日のためにお小遣い貯めてきたからね』

唯『それにしても男の人が書いてある本ばっかりだねー』

和『気にしないで。それより唯』

唯『なに?』

和『前にも言ったけど私がこんなとこに来たなんて
  絶対誰にも言っちゃダメだからね』

唯『どーしてー?』

和『唯には分からないかも知れないけど……
  同人誌なんて買うのはオタクのすることなの』

唯『あー、オタクって知ってるよ、電車男で見たよ』

和『そうそのオタクよ』

唯『じゃあ和ちゃんもオタクなの?』

和『そうよ、唯にだけは打ち明けるけど他の人には言わないで』

唯『なんで?』

和『なんでって……恥ずかしいでしょ、
  中学生にもなってアニメや漫画が好きで
  しかもBLにまではまっちゃうなんて』

唯『びぃえるって何?
  私も漫画とか好きだよー』

和『BLはBLよ、ついでに言っとくと
  唯の好きな漫画と私の好きな漫画はちょっと違うの』

唯『ふーん?』

和『とにかく誰にも言わないでね、わかった?』

唯『うん、よく分かんないけど内緒にしとくねっ』

和『ありがと、唯。そうだ、帰りにアニメイトによりたいんだけど
  付きあってくれる?』

唯『うん、いいよー』

 回想終了


―――――――――――


唯(あのときの私はまだ分かってなかったけど)

唯(今の私なら分かる、オタクとはどういうもので)

唯(オタクがばれたらどうなるのか……)


唯「さっ、練習しよっか」

澪「なんだよ急に」

律「今日はもう暑いから練習しないって言ったじゃん」

梓「そうですよ」

唯「え、そうだっけ? でも急に練習意欲が湧いてきた感じかなあ」

律「そうか、じゃあ一人で練習しとけ」

梓「私は扇風機の前から断固として動きませんから」

澪「おいずるいぞ扇風機独占するな」

唯(うう、練習を初めてうやむやにしようと思ったのに……
  まあ結果的に気は反らせたから……)

律「そういえばさっきの話に戻るけどさあ」

唯「!」

澪「なんだよ律」

律「唯と和もそのコミケとかいうのに行ってたわけ?」

唯「い……いや、行ってないよ」

律「なんだ、そうなのか。
  詳しいみたいだから行ってたのかと思った」

唯「い、行かないよお……
  ただどんなものなのかは知ってるけど、有名だし……」

律「ふーん」

梓「あれ、でも……そのコミケって12日にやってたんですよね」

唯「え、うん」

梓「12日から14日くらいまで、
  唯先輩部活に来ませんでしたよね?」

唯「えっ?」

梓「そのコミケとかいうのに行ってたんじゃないんですかー?」

唯「いやあ行ってないってばあ、
  なんでそんなこと聞くのさあ」

澪「そうだよ梓。その会場はめちゃくちゃ暑いんだろ?」

唯「うん、そう」

澪「暑いの苦手な唯が行くわけないじゃないか」

唯(言えない……ついに念願のサークル参加を果たした和ちゃんの売り子を手伝って
  一緒にコスプレまでしたなんて絶対言えないよ……)

梓「…………」

唯(あずにゃんはなぜか私を怪しんでる……)

澪「そうだ、同人誌でさ、
  唯はどういう本を買ってるの?」

唯「えっ、私は買ってないよ、
  いつも和ちゃんの買い物に付き合ってるだけ」

澪「ふうん、じゃあ和はどういうの買ってるんだ?」

唯「えっ、えーっと……」


 和『今回はタイガー&バニーが熱いわねえ
   髭のオジサマが主役ってことで始まる前から目をつけてたけど
   ここまで盛り上がるなんて予想外だったわあ
   でもだからこうして良い同人誌がいっぱい出てるわけなんだけど
   やっぱりヒゲ受けは至上よねムッフwwww』


唯「普通の……文芸的な……小説?みたいな」

澪「へえ、和らしいなあ。
  今度貸してもらおう」

唯「う、うん……貸してくれると思うよ」

梓「……」

澪「なあ、今度同人誌のイベント行くとき
  私も連れてってくれないか?」

唯「えっ!?」

澪「だめかな」

唯「う、うーん……そうだねえ、あんまり大人数で行動すると
  周りに迷惑かかっちゃうかも……」

澪「じゃあ一人で行くからさ、教えてよ」

唯「うん、でも和ちゃんに聞かないと分からないかも……」

澪「じゃ和に聞いといて、お願い」

律「なんだ澪、興味津々だなあ」

澪「唯の話聞いてたら楽しそうだなって思って。
  私も行きたくなっちゃってさ」

律「そういうの好きだなあー澪は。
  なんというかオタク臭いというか」

唯「ビクゥ!!」

律「んぅ、どうした唯」

唯「い、いやなんでもないよお……ちょっとトイレ行ってくる」



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