そして日々は、常と変わらず移り変わってゆく。

ゆったりゆるゆると流れ行く、私たちの日常。

でも。そんな変わらない日々の中でも。

私たちの内面では、ゆっくりゆっくり少しずつ。

緩やかに、けれども確実に何かが変わってきている。


最終話 憂「えぴろーぐ!」



とある朝!平沢家!!


憂 「お姉ちゃん、朝だよー!はやくご飯食べちゃって?遅刻するよー!」

唯 「あーい・・・おふぁよぉ、憂~・・・」

憂 「おはよ、お姉ちゃん。トースト、もう焼けてるからね」

唯 「ありがとー・・・いただきまふ・・・」ペタペタ

憂 「はい、おあがりなさ・・・お姉ちゃん!それ、ジャムじゃないよ!ご飯ですよだよ!」

唯 「ぱくっ・・・んぐ!?おえー・・・」

憂 「ああ・・・遅かった・・・」

唯 「憂~まずいよ~」ウワーン

憂 「まったくもう・・・待ってて、新しいの焼いてあげるから」

唯 「はーい。それにしても、合わないもんだねぇ。江戸ムラサキとトーストって」

憂 「それはそうだよー」

唯 「・・・あ、そだ。憂、あのね」

憂 「なぁに、お姉ちゃん」

唯 「今日の帰り、少し遅くなるから。和ちゃんとね、ちょっと約束があるの」

憂 「・・・そうなんだ」

唯 「うん。晩ご飯までには帰るからね!」

憂 「あまり遅くなっちゃダメだよ。気をつけて帰ってきてね?」

唯 「うん。ありがと、憂!」

憂 「えへへ、ううん」

唯 「あむあむあむ・・・ごっくん。ふぅ、ごちそう様!」

憂 「食べ終わった?それじゃ、そろそろ出よっか」

唯 「うん!」


そう、まるで亀の歩みのように。

何かが少しずつ、変わっていく。



通学路!


憂 「あ、お姉ちゃん。私、ちょっと寄るところあるから。先に行ってて?」

唯 「え・・・だって寄り道してたら遅刻しちゃうよ?どこに行くの??」

憂 「うん、ちょっとね。すぐに済むから遅刻しないよ。心配しないでね?」

唯 「すぐ済むんだったら、お姉ちゃんも一緒に行く!そんで待ってるよ!」フンス

憂 「ううん、大丈夫だから学校に行ってて。じゃ、また後でねー!」タッタッタ

唯 「あ、憂ー・・・行っちゃった。どうしたんだろうー???」

和 「・・・唯?」

唯 「あ、和ちゃん。おっはよー」

和 「おはよう。・・・あそこ、走っていくのって憂よね?学校とは別方向だけど、どうかしたの?」

唯 「分からないけど、なんか用事があるんだって。どうしたんだろう」

和 「ふぅん」

唯 「学校遅れちゃわないかな・・・?うう、心配だよぉ」

和 「平気じゃない?」

唯 「あっさり。和ちゃん、冷たいねぇ」

和 「いや、これが駆け出していったのが唯だったら、心配にもなるんだけれどね。憂なら、なんと言うか安心」

唯 「むっ。それってどういう意味かな」

和 「言葉通りの意味だけど」

唯 「むぅーー・・・」

和 「ほら、ふくれてないの。私たちも行きましょ?」

唯 「はいはい、分かったよー」

和 「・・・」

唯 「ぶつぶつ」

和 「・・・」

唯 「ぶつぶつぶつ」

和 「もー・・・いつまですねてるの?」

唯 「だって、和ちゃんがさー」

和 「ちょっとした冗談じゃない。もう、仕方がないわね」


ギュッ


唯 「ひゃっ」

和 「手、繋いで行こうか。人通りが多くなる所までだけれど」

唯 「う・・・うん・・・///」

和 「ふふっ。ねぇ唯、今日の放課後は何をして遊ぼうか?」

唯 「う、うん!お互い生徒会や部活があって、思うように遊べないもんね。今日は久々に予定が合ったんだし、色々楽しみたいなぁ」

和 「じゃ、キチンと予定をたてておかないとね。貴重な時間、唯との大切な時間を一分でも無駄にしないように」

唯 「そうだね!じゃあね、じゃあね・・・えっと、まず一番最初に行きたい場所はねぇー・・・」


・・
・・


通学路!別の場所!!

憂・純・梓の待ち合わせ場所!


純 「梓、おっはよー!」

梓 「あ、純。おはよう」

純 「・・・?」キョロキョロ

梓 「憂ならまだ」

純 「へぇ、憂が最後なんて珍しいねぇ」

梓 「だね。最後にギリギリになってやってくるのは、純の専売特許みたいなもんだもんね」

純 「えー、そんなことないじゃん。そんなん、たまにじゃん。たまに」

梓 「そーだったかなー。どーだったかなー♪」

純 「いじわるなヤツめ」

梓 「あはは」

純 「・・・むぅ」キョロキョロ

梓 「・・・」

純 「憂、まだかなー・・・」キョロキョロ

梓 「純、ちょっとは落ち着きなって」

純 「だってー・・・」

梓 「ほんっと、純は憂がいないと色々とアレだよね」

純 「あれってなんだ」

梓 「ていうかさ、ほんと憂と純。いっつも一緒にいるよねぇ」

純 「え、そうかな?」

梓 「感心しちゃうくらい」

純 「んー。普通でしょ、普通」

梓 「ううん。なんかさぁ、もう。二人でワンセットってくらい。最初、付き合ってんじゃないのって勘ぐってしまったほどだよ?」

純 「あ・・・あほか・・・///」

梓 「赤くならないでよ、冗談じゃない。マジで照れられると、こっちまで照れちゃうから///」

純 「ご、ごめん」

梓 「で、でもさ。付き合ってるは冗談にしても、ほんと二人は仲が良いよね。中学から一緒だったんでしょ?」

純 「うん」

梓 「最初ふたりと知り合ったころ、ちょっと不思議だったんだよね。何でこの二人が、こんなに仲がいいんだろうって」

純 「ん・・・?どゆこと?」

梓 「だってさ、あまり純と憂って共通点が無さそうじゃない。憂は優等生タイプだし、純はどっちかと言うと・・・」

純 「・・・言わないで」

梓 「ま、まぁ正反対なタイプ同士、どうしてこんなに気が合ってるんだろうなって。何でなんだろうなって思ってたのね」

純 「・・・」

梓 「あ、ごめん。気を悪くさせちゃった?」

純 「んーん。違うよ。えっとね、憂ってさ・・・」

梓 「うん」

純 「本当に、超がつくくらい。まっすぐで一途で・・・いい子なんだよ」

梓 「うん?うん・・・それは分かるよ」

純 「そんな超一途な憂はさ、まっすぐ過ぎて、時に心の針が極端から極端に振り切れてしまう事があるんだ」

梓 「それって、どういうこと・・・」

純 「ごめん。具体的なことは伏せさせてもらうけど。でも、そういう事が過去に何度かあってね」

梓 「・・・」

純 「だからさ、私。憂を放っておけない。側にいなくちゃって、そう思ってるんだ」

梓 「純、あんた・・・」

純 「ほら、いい加減な私が側にいることで、ちょうど良いバランサーになれればなって。あはは」

梓 「ふぅん・・・純ってさ。何にも考えてないようで、けっこう色々考えてたんだね」

純 「んっ!?それって褒めてるの?けなしてるの!?」

梓 「あは、ごめんごめん。でもさ、憂のためにそこまで考えてあげられるんだもん。純って本当に・・・」

純 「・・・なに?」

梓 「憂のこと、大好きなんだね」

純 「っな!?///」

梓 「そこで赤くならないでよ。友達としてって意味に決まってるでしょ」

純 「わ、分かってるよ!赤くなんかなってないよ!もとから赤ら顔なんだよ!」

梓 「えーー・・・そんな慌てなくても良いのに。純が憂の事を大好きなのは、知り合ってすぐに分かっちゃってた事なんだから」

純 「は?どゆこと・・・?」

梓 「あのね、入学して二人と同じクラスになれて。それで、一番最初に目に付いたのが純だったから、かな」

純 「意味がわからにゃい・・・」

梓 「正確に言うと、憂と一緒にいる純だったから、てことになるのかな」

純 「ますます意味が???」

梓 「憂と一緒にいる時の純がね、すごい良い笑顔だったから」

純 「・・・え」


梓 「見てるこっちまで引き込まれちゃうような笑顔でさ。ああ、この子は友達の事を本当に大切に思ってるんだなって。分かっちゃったんだ」

純 「・・・」


(純 「平沢さんがお姉ちゃんを好きなこと、知ってたから」)

(憂 「・・・え?」)

(純 「うん、知ってたよ」)

(憂 「な、なな、なんで・・・?」)

(純 「すっごい良い笑顔だったから!」)


純 「・・・私」

梓 「ん?」


(純 「平沢さんがお姉さんと一緒にいる時の笑顔。見てるこっちまでほだされちゃうような、最高の笑顔だった!」)

(憂 「え?え?」)

(純 「たまたま、ね。二人が一緒にいる所を見ちゃってさ。でね、そんな平沢さんを見て。ああ、良いなぁ。良い笑顔だなぁって」)


純 「私、もしかして・・・」

梓 「純?純、どうしたの??」


(憂 「ね、鈴木さん。私がお姉ちゃんにこんなにこだわるのは、どうしてだと思う?」)


純 「わ、私っ///」


(憂 「・・・私、お姉ちゃんが大好き。姉としてだけじゃなく、一人の女の子として・・・」)


純  ボンッ!!ぷしゅー・・・

梓 「うおお、純が煙ふいた!い、いったい何がどうしたっていうの!?ていうか、暑苦しい!」

純 「ひ、ひどいね・・・まぁ、気にしないでくれたまえ・・・」

梓 「???」

梓 「それにしても憂、本当遅いね?そろそろ行かなきゃ遅刻・・・」

憂 「純ちゃん!梓ちゃん!おはよー!!」テッテッテ

梓 「お、噂をすれば影。おはよう、憂」

憂 「おはよう、梓ちゃん!純ちゃんも。遅くなっちゃってゴメンね」

純 「う、うん・・・///」

憂 「・・・?」

梓 「憂が時間ギリギリに来るなんて珍しいよね。なにかあったの?」

憂 「う、うん。実はちょっとコンビニによってて。それで遅くなっちゃったの」

純 「コンビニ・・・あ、その袋・・・雑誌・・・かな??」アセアセ

憂 「うん・・・」

純 「あっ!もしかして!」

憂 「うん」

梓 「??なに?なんなの??」

純 「梓には話してたよね、憂の夢のこと」

梓 「漫画家さんでしょ、それが・・・て、もしかして??」

憂 「そうなの。この前投稿した分の結果発表が載る号が、今日発売だったの。いてもたってもいられなくって・・・」

純 「朝一で買ってきちゃったってわけか」

憂 「えへへ・・・」

純 「そ、それで結果は・・・?」

梓 「もう確認したの?」

憂 「しちゃった・・・」

純 「なんだよー!そういうのは一緒に見ようよ、もー!」

梓 「落ち着きなってば・・・で、憂。どうだったの?」

憂 「・・・」ガサゴソ

純 「ごくっ」

憂 「このページを・・・」パラパラ

梓 「・・・」

憂 「見てっ」バンッ!

純 「・・・」

梓 「・・・」


純・梓 「おおーーーーーーーーーーーーーー!!!」


・・
・・


変わらぬ日々。

それでもその中で、少しずつ変わってゆく私たち。

その変化が、変わらないはずの毎日をちょっとだけ良い方向に軌道修正してくれる。

それをきっと人は”成長”って呼ぶんだ。


私一人だけじゃ変われない。

日常を一緒に過ごしてくれる、大好きな人がいる。

今にしかいない自分と、今にしかいないその人と。

今しか過ごす事のできない日常の瞬間を過ごしてはじめて。

私は”今の私”の一歩先を進む事ができるようになるんだ。

成長・・・してこられたんだ。


憂 「・・・純ちゃん」

純 「ん、なに?」


だから・・・成長を見守り助けてくれた、その人のことを。


憂 「・・・あ、えと」

純 「んー??」


私、愛おしいと思ってる。


純 「なになに?」

憂 「・・・や。なんでもない」

純 「なんだそれ!」

憂 「だって・・・///」

梓 「今度は憂が赤かくなってるよ?なんというシンクロ具合。ユニゾンかっての」

憂 「え///」

純 「や、私は赤くなんかなってないしね。赤ら顔は元からだしね!」


今日は昨日と違った、どんな自分になれるだろう。

どんな、純ちゃんの顔を見ることができるんだろう。


梓 「はいはい。よく分からないけどさ。あんたたちって、本当いいコンビだよね」

憂 「そんなの」

純 「当然でしょ!」


また今日も、変わらない日常が幕を開ける。


おしまい