放課後!マック店内!!


純 「憂、ごめんっ!!」


着席するなり、テーブルに額をぶつけんばかりに頭を下げる純ちゃん。

いきなりすぎて硬直してしまう私。


憂 「ええ・・・っ!?ちょ・・・いきなりどうしたの・・・?あ・・・頭上げて・・・」

純 「許してくれる?」

憂 「許すもなにも、意味が分からないよ」

純 「許すって言って!じゃなきゃ、頭上げない!」

憂 「えー・・・」

純  フカブカー

憂 「あう・・・じゃ、じゃあ許すよ・・・許すっ」

純 「マジ?よかったぁー・・・ありがとっ」ガバッ

憂 「で・・・私は今、なにを許したの?」

純 「うん・・・実は最近、憂のことをちょっとだけ避けてた・・・その事を・・・」

憂 「え・・・」

純 「憂が悪いわけじゃないんだ。私がね、自分でそんな風に”思っちゃった”ことにビックリしちゃって」

憂 「・・・」

純 「そしたら、憂に何だか悪くって。顔、あんまマトモに見られなくなっちゃってさ」

憂 「そんな風にって・・・なにを思っちゃったの?」

純 「・・・二つ」

憂 「うん・・・一つは?」

純 「憂が、怖かった・・・」

憂 「・・・え」

純 「あの時の憂が、ね。私、ちょっとおっかなかった。憂のあんな顔、見たことが無かったから・・・つい・・・」

憂 「純ちゃん・・・」

純 「それが・・・いっこめ・・・」

憂 「う、うん・・・二つ目は?」

純 「もう一つはね。憂のお姉ちゃんに・・・焼もちを妬いてしまって・・・」

憂 「・・・ええっ、今なんて??」

純 「焼もち・・・二度も言わせんな・・・」

憂 「ごめん。で、でも、どうしてまた・・・」

純 「だって!私言っといたじゃん!何かあったら相談してね。一人で突っ走らないでねって。なのに憂ったら・・・」

純 「私の言うことなんか忘れて、一人であんなことしちゃうんだもん。それでね・・・私なんかより、そんなにお姉ちゃんの方が大切なのかって思っちゃって」

純 「・・・んで、焼もち・・・」

憂 「あんぐり」

純 「そんな口あけてポカーンってしなくっても良いでしょ!私だって変だって分かってるんだから!」

もともとお姉さんへ向ける笑顔があまりに幸せそうで。それがきっかけで憂のことを好きになったんだし。

どれだけ憂がお姉さんを大切に思ってるかってのも、ちゃんと知ってる。

だからね、こんな事で焼もちを妬いたり、必死にお姉さんを助けようとしてた憂を怖がるなんて、自分でも筋が通ってないって分かってるんだ。

でも、その場だけのことでも。一度でもそう思ってしまった自分が、自分で何だか分からなくなっちゃって・・・

憂に悪くって、申し訳なくって。そしたら顔もまともに見られなくなっちゃって。


純 「で・・・気まずくなっちゃって・・・つい・・・」

憂 「・・・」

純 「で、でも、許してくれるんでしょ?許すって言った!聞いたもんね!だからね、憂・・・」

憂 「・・・」

純 「う、憂・・・?」

憂 「・・・良かった」

純 「へ?」

憂 「私、純ちゃんに嫌われちゃったんじゃないかって、ずっと心配だったんだ」

純 「え!?わ、私が憂を嫌うなんて、そんなことありえないよ!てか、それは前にも言ったじゃん!」

憂 「うん・・・そうだよね。ごめん」

純 「嫌われるというなら、むしろ私のほうが・・・」

憂 「ねぇ。純ちゃん・・・」

純 「へ?」

憂 「そうだよね・・・みんな。みんなね、悩んでるんだよね」


それってすごく当たり前のことなんだけど、自分には自分の悩みしか見ることができないから・・・

つい、苦しいのは自分だけだって錯覚してしまう。

辛いのに、こんなに頑張ってるのに。なぜ、思うとおりにならないんだろうって。

でも、そうじゃないんだね。

誰もが一生懸命なにかに悩みながら、それでも頑張ってるんだ。

一緒なんだよね。純ちゃんも私も。

そして、みんなも・・・


純 「う、憂・・・?」

憂 (そう、みんな頑張ってる。一度はお姉ちゃんを見捨ててしまった和ちゃんも)

憂 (小学生の頃のことを後悔し続けてきた寿さんも。今の純ちゃんも・・・)

憂 (みんな未熟な今の自分を乗り越えようと、頑張ってるんだ)

憂 (だから、私も・・・!)

純 「ど、どうしたの憂・・・フリーズ??」

憂 「あのね、純ちゃん。私も一緒だよ」

純 「な、なにが・・・??」

憂 「今回の事では、いろいろ後悔する事ばかり。自分が嫌になりそう。純ちゃんに怪我をさせてしまったことも・・・」

純 「それは大したことがなかったんだし、気にしないでっていったよ?」

憂 「ううん。私ね?純ちゃんに何かがあった時は、絶対に私が守る。前にね、そう決めていたの」

純 「は!?///」

憂 「なのに今回は、逆に守られちゃって。そのうえ私の代わりに痛い目にまで遭わせてしまって・・・」

純 「なんなの、その決意。初耳なんですけど・・・?」

憂 「だって言ってないもん」

純 「ちょ・・・照れるから///」

憂 「焼もちっていうのもね。実は私も現在進行形で妬いてる最中でして・・・」

純 「え・・・」

憂 「お姉ちゃん。学校に来れるようになったんだ。純ちゃん、知ってるよね」

純 「うん」

憂 「和ちゃん・・・真鍋先輩がね。お姉ちゃんの引きこもった心の扉を開けてくれたの。お姉ちゃん、心を取り戻せた」

憂 「まだ、完全じゃないんだけどね。大きな前進」

純 「そっか。良かったよね」

憂 「うん、良かった。嬉しい。なのに・・・もっと手放しで喜ばなきゃならないはずなのに。私・・・」

憂 「どうして、お姉ちゃんの心に明かりを灯してあげられたのが私じゃないんだろうって・・・その事がとても悔しくって・・・」

純 「憂・・・」

憂 「私はお姉ちゃんの妹。だから、誰よりも濃い絆で結ばれてるんだ。そう信じてたし、今でもそう思ってる。思ってるけど・・・」

憂 「妹は、それ以上でも以下でもなく。けっきょく妹でしかいられないんだなって思い知らされちゃった」

純 「・・・」

憂 「当たり前のことなんだけどね」アハッ

憂 「・・・小さい私。お姉ちゃんの事を第一に考えるなら、こんなことは思ってもいけないのに。でも、考えてしまう。卑屈になってしまう」

純 「憂・・・」

憂 「だからね。こんなことを思っちゃう自分の方こそ、なにもかも思い通りに遂げられない私こそ、純ちゃんに嫌われちゃったんじゃないかなって。とても心配だった」

純 「それで憂は憂で、なんとなく私によそよそしかったんだね」

憂 「・・・うん」

憂 「でも!だけど私は純ちゃんt
純 「おっし!」

憂 「んんっ??」

純 「鈴木純!バニラシェーク飲みます!」ズズー

憂 「わ、わ?純ちゃんがすごい勢いでシェークを啜ってる・・・!?」

純 「ずずー・・・ごくごく・・・」

憂 「顔・・・真っ赤だよ?」

純 「ぶはーっ!くぅ、シェークの一気飲みはさすが苦しいわ!さ、つぎは憂の番だよ!」

憂 「え、なに?なにが??」


純ちゃんは今しがた自分が啜っていたシェークを私に差し出し、ニヤリと笑った。


純 「残り半分。憂が飲みな」

憂 「なんで?意味が分からないよ・・・」

純 「固めの杯だよ!」

憂 「・・・え」

純 「義兄弟の契りは血の繋がりにも勝るのさ。このシェークはその絆を結ぶための杯なんだよ!」

憂 「・・・純ちゃん、なんか変な映画でも見たの?」

純 「お父さんが借りてきた任侠映画。面白かったよ?変じゃないよ?」

憂 「わぁ・・・」

純 「・・・上手く言えないけどさ」

憂 「・・・?」

純 「ここ数日。憂とろくに話せなかった何日間か。私ね、すごく寂しくてつまらなかった」

憂 「純ちゃん・・・うん、私もだよ・・・」

純 「憂が言う通りさ。姉妹は姉妹以上にも以下にもなれないのかもしれない。私は一人っ子だから、そういうの良く分からないんだけど・・・」

純 「でも、友達なら。友達だったらさ・・・きっと今以上にだってなれると思うんだよね」

憂 「そ、それって・・・」

純 「義兄弟ってのは冗談だけど、私はもう、寂しい思いはしたくない。憂にもさせたくない。だから、そういう意味でのこれは・・・」

純 「ずっと一緒にいるよって。いようねっていう。約束の杯・・・」

憂 「じゅ、純ちゃん・・・」

純 「つーか、シェークなんだけどさ!杯って言っとけば、それっぽいでしょ。名は体を顕すというし!!」

憂 「・・・ふふ。それ、ちょっと意味が違う」

純 「そうだっけ?」

憂 「でも、良いよね。素敵な考え方。うん、私もずっと純ちゃんと一緒にいたい。というかね・・・」

憂 「・・・よぉし!平沢憂、私も飲みますっ!」ズズー!

純 「おおっ!瞬く間にシェークの残量が減ってゆく・・・!」

憂 「ずーーー、ごっくん。ぷはぁ、ごちそう様っ!」

純 「見事な飲みっぷり」

憂 「恐縮です。・・・私ね。臆病にもなっちゃうけど、嫌われない限り、純ちゃんからは絶対離れないよ」

純 「うぁ・・・ハッキリ言うね///」

憂 「だって、卑屈になって勝手に結論出して。それで純ちゃんと離れちゃったら、私って何にも成長できてないって事になっちゃうじゃない?」

純 「ふむ・・・?」

憂 「だから私にとってはね。今のは自分の決意を固める。そういった意味での固めの杯だったの。大きい人になるための」

純 「お互い、意味合いの違う固めの杯になっちゃったか」

憂 「うん。だけど、向かう先は一緒。だから、これからもよろしく、ね・・・?純ちゃん」

純 「もちろん!」


まだ・・・なにも解決していない。

お姉ちゃんへのいじめが再発しない保証はなかったし、そのお姉ちゃんは明るさを取り戻せないままでいる。

私の思い違いや激情から、絡まってしまった和ちゃんや寿さんとの心の縺れも、いまだ解けないまま。

でも、何とかなる。何とかできないわけがない。

純ちゃんと出会ってからの数ヶ月。

私は色々なことを教わり、飲み込めずに失敗もし、だけど今は心を前向きにもって。

成長できた。少なくとも、成長しようと心を強く固めることができた。

そう。この気持ち。折れない心があれば。

道をたがえず、ただまっすぐに。最良の未来に向かって行けないはずがない。

なぜなら。私の隣にはこれから先。今までだってそうだったように。

純ちゃんが。大好きな親友が共にいてくれると、そう言ってくれてるのだから。


純 「さて。その、これからのことだけど・・・」

憂 「うん、そう。これからのことだね」

純 「さしあたって、まずは・・・」

憂 「まずもって決めるのは・・・」

純 「夏休みにぃ・・・」


憂・純 「遊びに行く場所!」


憂 「だね」

純 「うん!」


停滞しかけた時間が今、再び動き始める。


第六話に続く!



第六話 憂「日常」



ある夜の平沢家!キッチン!

憂 「さてっと、明日のお弁当の支度をしなくっちゃ」

憂 「なににしようかなぁ。簡単確実美味しいもの・・・。とは言っても、さすがにお弁当にホットケーキはあれだし・・・」

憂 「食材は何が残ってたかな?冷蔵庫の中身はっと・・・チェックチェック」

憂 「ん~・・・あ、鶏肉が残ってた。これ使って、なにか・・・」


ピコーン←ひらめいた音


憂 「・・・良いこと思いついた!」

憂 「えへへ・・・よぉし、さっそく純ちゃんに連絡しないと!」


ピポパピ・・・


憂 「・・・鈴木さんのお宅ですか?あ、純ちゃん?憂だよー」

憂 「うんうん、大したことじゃないんだけど。あのね、明日のお弁当の事なんだけれど・・・」

憂 「あ・・・あのね・・・」

憂 「うん、そう!じゃ、そういうことでよろしくね!」

憂 「それじゃー。また明日!」


ガチャ


憂 「へへ・・・明日が楽しみ!純ちゃん、喜んでくれると良いなぁ・・・」


そして・・・



翌日のお昼時!教室!!


A子 「しゃー!昼だ飯だぁ!今日もがっつり食うぞー!」

B子 「・・・やっぱり食べすぎじゃないの、A子。最近太ってきたんじゃない?」

A子 「ちゃうちゃう。これ、筋肉がついてきたのね。体格良くなってきたから、そう見えるだけだよ」

B子 「・・・そうかしら」

A子 「さ、机くっつけっこー。憂ちゃん、純も!早くこっち来て。もうお腹ペコペコだよ」

純 「あいおー!」

憂 「はーい」


ガッチャン!(四人の机が合体!)


A子 「あ、そういえばさ。憂ちゃん」

憂 「なぁに?」

A子 「私と同じ部活の、寿詩子って・・・憂ちゃんと小学校が一緒だったんだって?」

憂 「・・・あ。う、うん・・・」

純 「・・・!」

A子 「クラスも一緒だったんでしょ?仲良かったの?」

憂 「えっと・・・その・・・」

純 「ちょ、ちょっと!」

A子 「え、なに?」

純 「なんなのよ、藪から棒に。何でそんなことを聞くわけ?」

B子 「・・・純?」

A子 「なんでって・・・C子からそう聞いたからだけど。あ、あれ・・・なんか変なこと聞いちゃった?」

憂 「ううん、そんなことないけど・・・」

B子 「ていうか、なんで純がしゃしゃり出てきてるわけ?」

純 「そ、それはその・・・」

A子 「・・・?ま、いいや。んでね、本題。今度この四人にC子も入れて、五人で遊びに行かない?」

憂 「え・・・」


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